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魔界貴族侯爵『拳骨』のママレードと『猫背』のジガート②/スヴァルトの強さ

 スヴァルトは、闇聖剣アンダンテを変形させる。

 柄はそのままで、刀身が四つに分かれ、まるで巨大な《爪》のような形へ。

 鍔部分がさらに変形し、右腕を飲み込むような形状へ変わった。

 スヴァルトの右腕が、巨大化する。


「『巨爪(クロウ)形態』……こいつで、ケリ付けてやるよ」

『ふーん』


 巨大な猫魔獣となったジガートは、つまらなそうに鼻を鳴らした。


「オレの闇聖剣アンダンテは、『鋸剣(チェンソーエッジ)』、『大鎌(デスサイズ)』、『双鎌(ツインサイズ)』に『鎖鎌(チェーンサイス)』、そして『巨爪(クロウ)』の五つだ。あと二つは覚醒してねぇ。んで、能力は───……これから、味わわせてやるよ」

『……キミ、馬鹿? 変形……『鎖鎌(チェーンサイス)』はまだ見てないし、あと二つも覚醒してないって言えば、ボクを騙せたのに』

「喧嘩ってのは出し惜しみしたくねぇんだよ。なぁ?」

『理解できないや。まぁ、いいけど』


 ジガートは四つん這いになり、尻尾を高く上げる。

 そして───高速の尻尾が、スヴァルトに迫る。


「来やがれぇぁァァァァァッ!!」


 なんと、スヴァルトは……両手を広げた。

 防御をしない、できないスタイルだ。

 これにはサリオスが驚愕するが、声を出す前にジガートの鋭い尾の先端が、スヴァルトの腹を貫通した。


「ブガァァァァっ!? ぐ、ははは、い、いっでぇぇぇぇ!?」

「せ、先輩!?」

『いやー、馬鹿だと思ったけど、何の策も───……』


 尾は、スヴァルトの腹を貫通した。

 スヴァルトは血を吐き、苦しんで呻いている……が、笑っていた。

 狂気に歪んだ笑みを浮かべ……スヴァルトの身体から、『闇』が噴出した。


『な、なんだ?』

「言ったろ……見せる、ってよぉ?」

『これ、は……』


 闇。

 黒いドロドロした煙、そう表現した方がいいかもしれない。

 スヴァルトの身体から吹き出てきたのは、そんな『もの』だった。

 そして、黒い闇がジガートの尾に触れた瞬間、尾が欠けた(・・・・・)


『なっ!?』


 痛みはない。

 だが、消えた。

 黒いモヤに触れた部分が、消滅したのだ。


「ククク……くはハハハハハハハッ!!」

『おま、何を……な、抜けなっ』

「逃がさなぁ~い……♪」


 スヴァルトは血を吐きながら尾を『巨爪』で摑み固定する。

 正気とは思えなかった。

 スヴァルトは楽しそうに、血を吐きながら言う。


「これが闇聖剣アンダンテの能力、『闇喰(やみぐらい)』だ。オレの身体から分泌される強烈な《闇》は、触れたモン全てを消し去っちまう!! 弱点は、身体から分泌されるから直接触れなきゃならねぇってことと……一度触れたら、もうどうしようもねぇってことだ!!」

『お、お前……ッ!! っがぁ!?』


 闇聖剣アンダンテの『巨爪(クロウ)』が右腕から飛んだ。クロウにはチェーンが付いており、ジガートの身体をがんじがらめにして爪が地面に固定される。

 ジガートは暴れるが、暴れるたびに鎖が絡みつく。

 尾が貫通しているスヴァルトは、ゲラゲラ笑いながらも血を吐いていた。


「な、なんだ、これ……」


 とても、戦いとは言えない。

 闇が、ジガートに浸食を始め、四肢が消滅し、胴体だけになる。そして、ジガートは敗北を悟ったのか、口から透明なケースを吐き出した。


『ッぺ……どうやら、ここまでみたいだね』

「テメェはよくやったぜ? まぁ……テメェら魔界貴族に共通することは、『人間を舐め腐ってる』ってとこだ。だから油断するし、こうやって小細工にまんまとハマる。人間からすりゃ、やりやすいぜ」

『あはは、そうだね……まぁ、次に生まれ変わったら、教訓にするよ』

「生まれ変わりだ? はっ、メルヘンチックじゃねぇか」

『あれ? 知らないの? 魔族は死んでも、蘇るんだよ───……『 って、』

「あ?」


 ジガートの心臓まで闇が侵食し、青い炎に包まれて消えた。

 サリオスは立ち上がり、スヴァルトに駆け寄る。


「先輩、大丈夫ですか!?」

「ッぺ……ああ、なんとかな」

「何とか、って……お腹、すごいことになってますけど」

「こんなの治る。ハーフヴァンパイアだけど、治癒能力はたけぇんだよ。それより、ロセのところに行きな。恐らくだが、あのババァが一番つえぇぞ」

「は、はい……!!」


 スヴァルトは座り込み、ジガートの吐き出したワクチンサンプルを手に取った。


「……あの猫野郎、何を言いかけた? 魔族は、死んでも生き返るだと?」


 ◇◇◇◇◇◇


「『大・拳・骨』!!」

「!!」


 ロセの頭上に、巨大な『握り拳』が落ちて来た。

 魔界貴族侯爵『拳骨』のママレード。その能力は文字通り、『拳骨』を作り出す。

 両手をパシンと合わせ、右の拳を振りかぶると、どこからともなく拳が現れて落ちてくる。

 だが───拳骨は、頭上からしか落ちてこない。

 ロセは、『地聖剣ギャラハッド』を『棘棍棒形態』に変え、落ちて来た拳骨をフルスイングで叩き落した。


「ほぉぉぉ!! アタシの拳骨を叩き落せるなんてねぇ!?」

「めちゃくちゃ重いですけどねぇ」

「くくくぅぅ~!! いいね、アンタすっごくいいねぇ!! 久しぶりに高ぶって来たヨ!!」

「それはそれは」

「決めた!! さぁさぁ、ご覧あれ!! 『魔性化(アドベンド)』!!」


 すると、マーマレードの全身の筋肉が盛り上がる。

 ロセと同じ身長のママレードだったが、身長が一気に二メートルほどに伸びた。着ている服もそのまま伸びたので破れることはなく、身長が伸びてムキムキになっただけで、他に変わったところはない。

 顔つきが厳つくなったくらいで、シンプルな魔性化だった。

 が、ロセは冷や汗を流す。


「驚いたかい?」

「ええ。とっても」


 桁違いに強くなっていた。

 先程の数倍、数十倍の圧力を感じ、ロセも決めた。


「どうやら、私も本気を出す時のようですねぇ」

「ほう!!」


 ロセはコートを投げ捨て、着ていた制服を破り捨てた。

 豊満な胸が露わになり、破った制服できつく結んで胸を隠す。肩と腕を露出することで、少しでも腕を動きやすくしたのだ。そこに、羞恥心はない。

 さらに、棍棒形態のギャラハッドを二つに割り両手で持つと、棍棒が変形して『手甲(ナックル)形態』へと変形する。


「さぁ、殴り合いましょうか」

「…………」


 ママレードは、プルプル震え……思いきり笑った。


「嬉しい、嬉しいねぇ!! このアタシと殴り合うなんて!! くぅぅ……本当に、嬉しいねぇ!!」

「ふふ。実は私……武器を使うより、徒手空拳のが得意なんです」

「くぅぅぅぅぅ!! アンタ、最高だよ!!」


 互いに構えを取り───……硬直する。

 そして。


「ロセ先輩!!」


 サリオスの到着と同時に、二人が飛び出し、拳が激突した。

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