忌み子4
人を殺した
いや、人かどうか、怪しいか
仕方なかった
おれだけ殴ればいいのに
妹に手を出そうとしたから
そんな危ない刃物もってさ
赤い血が全身を染めてる
めっちゃ頑張ってバラバラにしたけど、いつかはおれは捕まるんだろう
冷蔵庫って物が腐らないって聞いた気がするけど、どのくらいもつかな
あーあ
気持ち悪いな
ベタベタだ
昔懐かしい風呂場に行く
父さんがいたときには使ってた
もう…どのくらいぶりにここにきただろう
蛇口をひねる
まずはめいいっぱい水を飲む
それから体を流した
あ、お湯
そうだ。お湯ってのがでるんだっけ
生暖かいそれで体を流す
部屋に戻ると変わらない血まみれの部屋
うわぁ、きたない
めんどくさいな
水をぶちまけて、こすりまくる
そうしながら考えた
どうしようか
おれは外を知らない
あまり覚えてない
でもお金っていうのが必要で
それがないと生きていけなかったと思う
おれは何歳かわからないけど
お金を手に入れることはできそうにない
でも、誰か呼んだら殺したのがバレる
この家があることでかかるお金は、ぎんこーっていところにあるから、多分大丈夫だ
父さんが死んだ時にお金があると、クズが嬉しそうに男に話してたから
おれは、そのお金をとりにいけないけど
どうしよう
仕方なかったとはいえ、クズがいないと食べ物がない
おれは水でいいけど、妹が食べれない
冷蔵庫を見る
「……それは、さすがになぁ」
なんとなくダメかなって
食べてクズにはなりたくないし
今はいい
先のことだ
家中にある食べ物を持ってきて、水じゃない甘い飲み物を見つけた
変な匂いがするのもあるけどなんだ、これ
まぁいいか
「妹。出てきていいぞ」
タンスを開け放っても妹は動かない
それどころか怯える
「大丈夫だ。にいちゃが倒したから、もう怖いのはいないんだ」
それでも、妹は動かない
怒りが湧く
こんなに、妹をちいさくしやがって
こんなところしかいれなくしやがって
もっとはやく
おれが倒せばよかった
「今日は好きに食べていいんだ。飲んでもいいんだ。外に出ても、柔らかいところにいても、音の出る箱を見ても、明るくしても、何しても……」
それでも妹は出れなかった
おれは悔しくて、悔しくて、泣いた
だからタンスの中に食べ物を入れた
タオルを入れて、布団を入れて、少しだけ隙間をあけて光を入れた
妹は食べた
おれも食べた
少しづつでいい
おれが妹をまもる




