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41.エルフの里と魔法使い

 フランに案内されながら、砂漠を南東へ進んでいく。

 クラリスがフェンに跨っていると、デッドがなにかを持って寄ってきた。


「キュル!」

「どうしたの……これはまさか……」


 手に持っていたのはこんがりと焼かれたハサミだった。

 見覚えがある。

 つい先程倒したデザードスコーピオンのものだ。


 実にいい香りがする。

 ごくり……。


 フランはクラリスたちの前を歩いているので、こちらの様子はわからない。

 食べたい。

 デッドがハサミの殻を割って、ぷるんとした身を見せてきた。


「おおおおっ!」

「キュ!」


 それをクラリスの口元へ差し出した。

 こうなったらもう食べるしかない。


 ぱくり……んんんんん!?

 うますぎて死ぬかと思った。


 しっかりとした弾力がある身。

 それでいてほのかに甘く、濃厚な旨味がある。

 蟹に似た味だが、それを遥かに超えていた。


 それにハサミは大ぶりなので、とても食べごたえがある。

 蟹をちまちま食べるよりも、ずっと贅沢な気分にさせてくれた。

 もぐもぐ……。

 デッドと一緒に目を盗んで食べていると、


「主よ……我にはないのか……。これほど献身的に運んでいるというのに」

「ごめん。つい夢中になってしまった。デッド、フェンにも食べさせてあげて」

「キュ!!」


 口惜しいが、このままではフェンが拗ねてしまう。

 ああ見えて、彼は子供っぽいところがあるのだ。

 残った半分をフェンの口元へ持っていくと、がぶり!

 殻ごと一口で食べてしまった。

 それにはデッドもクラリスもびっくりだ。


「ちょっと全部は食べすぎ!」

「キュ!」

「良いではないか。我は体が大きいのだから。それにしても、美味しいものだな。今まではカトリア様の用意してくれたドッグフードばかり食べていた。魔物がこれほど美味しいとは……今後は倒した魔物はすべて空間魔法で貯蔵しよう」


 フェンは口の中で、殻をバキバキ言わせながら、満足そうだった。


「おかわり!」

「キュ!?」

「もうないって」

「ならば倒したデザードスコーピオンのところへ戻るか?」

「駄目。せっかくここまで来たのに。大変だよ」

「ふむ、残念である」


 後ろでクラリスたちが騒がしくしていたものだから、フランが振り向いてきた。


「どうされたのですか?」

「うむ、我が魔物を食べたいと駄々をこねていたのだ」

「クラリス様の使い魔さんたちは、魔物を食べるのですね」

「そうだ。今まで食べる習慣はなかったが、さきほどのデザードスコーピオンがかなり美味であったのでな」

「キュ!」


 フランが言うには、使い魔となれば魔物を食べなくなるそうだ。

 なぜかというと、魔物を食べていると主従関係の契約に問題が出てしまうからだそうだ。


「初めて聞いた。デッドとフェンは大丈夫なの?」

「我は問題ない」

「キュ!」


 クラリスは彼らの言う通り、影響はなさそうだと思った。

 もしあれば、デッドは特にたくさん食いまくっているので、迷宮内で主従関係がおかしくなっていたはずだ。


「やはりクラリス様は魔法使いとして特別なのですね。使い魔に魔物を食べさせておいて、ちゃんとコントロールできているとは……恐れ入りました。普通の魔法使いでは不可能なことですよ」

「そうなんだ」


 これでは口が裂けても、ボクも食べています! なんて言えない。

 考えてみれば、主であるクラリスが食べて平気なのだ。

 その使い魔となったデッドとフェンもその影響下にあっても不思議ではない。


 魔物を食べられるおかげで、二つ名持ちならステータスボーナスももらえるし、いいこと尽くめの魔物飯だった。


「あれを見てください。丁度いいものがいました」


 フランが指差した方角にサボテンが生えている。


「……ただのサボテンがなにか?」

「あれは魔物です! しかも二つ名持ちです。エルフの間では有名な魔物で、疾風のサボボテーンと呼ばれています。フェンさんのお腹を満たせるかもしれません」

「二つ名持ち!」

「はい。とても速いため私たちには追いつけません。ですが、クラリス様たちなら」

「なるほど、主よ。狩ってきてもよいか?」

「キュル!」


 やる気満々の二匹。

 こうなったら、主であるクラリスにも止められない。

 フェンはしっぽをフリフリ。デッドは準備運動まで始めた。


 クラリスはそれを見て、静かにフェンから降りる。


「いいけど、遠くまで行かないでよ」

「心得ておる。行くぞ」

「キュルル!」


 二匹は競い合うように疾走していった。

 遠くにいるサボボテーンはそれに敏感に気がついて、戦うことなく逃走。


 フランが言っていたとおり、かなりの速さだ。

 それでも使い魔たちは負けてはいない。

 少しずつ距離を詰めていた。


 クラリスはそれを見て、それほど時間がかからずに戻ってくるだろうと確信した。


「じゃあ、いこうか」

「本当にいいのですか?」

「いいのいいの、あの二匹に付き合っていたら体が持たないから。あれはちょっとした散歩みたいなものだから」

「あれでちょっと……」


 砂埃を巻き上げながら、北の地平線の向こうに消えていく二匹。

 それをフランは呆然と眺めていた。

 しばらく二人で歩いていると、砂漠にぽつんと緑が見えてきた。

 その中心には大きな湖があり、太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。


「あそこがエルフの最後の砦ファンレーンです」


 フランはエルフの里を目前にして、安心したような顔していた。

 ここまでの案内。クラリスたちが強いといえども、魔物が跋扈する砂漠だ。

 やはり緊張していたようだった。


 クラリスもオアシスの中にある里を遠目から眺める。


 生い茂る木々によって適度な日陰があり、思ったよりも住みやすそうな環境だ。

 もっと砂でザラザラした里を想像していた。

 これならおいしい水も飲めるし、汗でベタついた体もきれいに流せそうだ。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。

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