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40.放浪者と魔法使い

 フェンがデザードスコーピオンへ、氷魔法アイスニードルを発射。

 いくつもの鋭い氷の柱が、魔物を串刺しにする。


 クラリスも負けていない。

 フェンに乗ったまま、素早く詠唱する。


「デス!」


 デザードスコーピオンは問答無用で即死した。

 静かになった砂漠で、クラリスは倒した魔物を見つめていた。


「久しぶりの魔物飯……じゅるり」


 迷宮都市を旅立つまで、ずっとお預けになっていた。

 普通の人たちには魔物は毒なので食べる習慣などない。

 そのため、ある意味で有名になってしまった彼女は、魔物を食べるような姿を見せられなかった。


 うっかり魔物を食べたいなと言ったときは、周りの人たちにかなり引かれたのを覚えている。

 やはり、人前では魔物を食べないほうがいいのかもしれない。

 そのため、クラリスはずっと我慢していたのだ。


「主よ……後ろを見るのだ」


 フェンはそう言われて、振り向く。

 その先には魔物に追われていた人が近づいてきていた。


「魔物は後でな」

「わかっているって……ちょっと見ただけじゃない」

「そうか……今にも食いそうな勢いだったぞ」

「大袈裟だな」


 フェンは疑うような目でクラリスを見ていた。

 それを無視して、クラリスも歩き出す。


「大丈夫でしたか?」

「はい、危ないところをありがとうございます」


 声から女性だとわかる。そして、深く被ったフードを取ると、長い耳が現れた。

 やはり、クラリスが思ったとおり、エルフだった。


 見た目は幼そうだが、エルフは長寿だ。

 もしかするとクラリスよりもずっと年上もしれない。


 エルフが素直にお礼を言ったことにクラリスはすこし驚いていた。

 フェンの話ではエルフ族は人間を嫌っている。

 それなのに、心から感謝を述べているように聞こえたからだ。


 クラリスの意外そうな顔にエルフの少女は笑った。


「私はフランといいます。もしかして、エルフが人間嫌いだという話を耳にされていますか?」

「はい」

「有名な話ですからしかたのないことです。少なくとも私は違います。それが元で色々ありますが……。よろしければ、お名前を聞いてもいいですか? お連れの方々も」

「ええ、ボクはクラリス。こっちの大きいのがフェン。空を飛んでいるのがデッド」

「皆さん、驚くほど強いですね」

「それほどでもないです」

「いえいえ、デザードスコーピオンはこの砂漠でも上位の魔物です。それをすべて一撃で倒してしまうなんて、エルフ族でもそのような猛者は、そういません」


 褒めてくれるフラン。

 クラリスはなぜ、魔物に追われているのかを聞いてみた。


「それは……」


 フランはエルフ族の巫女見習いだという。

 世代交代の儀式をするために、エルフの聖域と呼ばれる場所へ行こうとした。

 そこで、魔物の群れに遭遇した。

 混戦となってしまっているうちに仲間と逸れてしまったそうだ。


「そうだったんですか。大変でしたね」

「クラリス様がいなければ、今頃私は魔物に食べられていました。そうなってしまえば、ここは砂漠のままです」

「!? 砂漠のまま。ということはやっぱりここは太古の森だったんですか?」

「はい、エルフの聖域を魔王軍によって制圧されてしまいました。そのために、悪しき力によって、緑が失われた荒廃した土地になってしまったのです。私は聖域に赴いてこの大地の巫女として契約を果たし、邪を祓わないといけないのです。ですが……このありさまで」


 クラリスはフランの身なりを改めてみた。

 かなり高価な装飾品を身につけていた。見るからに身分が高そうだ。

 それに魔王軍……。まさか、このような遠くの場所まで侵攻していたとは思ってもみなかった。


「クラリス様、お願いがあるのですが……」


 フランは上目遣いで助けを求めるようにクラリスを見つめている。

 これだけで何を言われるのかわかったようなものだ。


「わかりました。引き受けましょう」

「えっ! いいのですか?」

「その代わり、条件があります。ボクは困った問題を抱えているんです。それを調べる協力をお願いしたい」

「それはどのようなものなのですか?」

「先程お見せした通り、ボクは即死魔法しか使えないです」

「レベルが上ってもですか?」

「はい。これでも天職は大魔法使いまでなっています。それでも駄目でした」

「なるほど……それはもしかすると呪いの類かもしれないですね」

「エルフ族は呪いに詳しいと聞きます。ボクを見てもらうことを条件にどうですか?」


 フランは少しだけ考えていた。


「それはこちらとしても問題ない条件です。ですが、二点ほど問題があります」

「どのような?」

「一つ目は、私はまだ見習い巫女です。呪いを調べたり解いたりはできません。聖地で儀式をした後になります」

「それなら大丈夫」

「二つ目は、クラリス様の問題が呪いではなかったときです。その時はご依頼に添えないです」

「もしそうでも、呪いでないことが分かっただけ助かる」

「そう言ってもらえて、ホッとしました」


 思いの外、フランは友好的なエルフだ。

 クラリスにとって、悪くはない条件。

 エルフ族は人間嫌いだと聞いたので、身構えてしまい、損をした気分だった。


「では、エルフ族の村へ案内します。まずはそこで休息を」

「うん、ありがとう」

「いえいえ、私の命の恩人です。きっと村の者も好意的に迎え入れてくれるはずです」

「はずってやっぱり……」

「話が終わったあとで、申し訳ありません。ご存知の通り、エルフ族は人間嫌いです。ですがこのような状況になり、意識が変わりつつあります。自分たちだけではなく外の世界と交流を持って行くべきだと。内向きな考えだったからこそ、外に目を向けられずに魔王軍の侵攻を許してしまったのです。クラリス様にお願いです。力添えください。これを契機にして、エルフ族を開かれた民にしたいのです」


 クラリスとしては、今まで疎まれることには慣れている。

 それに真摯にお願いするフランを見ていると断る道理もない。


「主よ」

「キュル」

「わかっているって! ぜひ協力させてください」

「ありがとうございます!」


 フランは何度もお辞儀をしてきた。

 そのたびに長い耳がピコピコと上下に動いていたのでよほど嬉しかったのだろう。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。 いつも楽しく読ませていただいております。 1話でマーテルに腹をたて、いずれ盛大なざまあを…!と読んでいたのですが、段々と様子がおかしくなって参りました。 確認したところ、タ…
[気になる点] >>「有名な話ですからしかたのないことです。少なくとも私は違います。それが元で色々ありますが……。よろしければ、お前を聞いてもいいですか? お連れの方々も」 「「「お前を聞いてもいい…
[良い点] 面白い [一言] 強力→協力 変わった→わかった
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