39.砂漠と魔法使い
クラリスたちは呆然としていた。
ポカーンとしている顔は傍から見れば、かなり間抜けだ。
それもそのはず!
聞いていた話と違うからだ。
「フェン、どういうこと!? どうして何が起こったの?」
「我にも分からない……」
「キュル……」
太古の森と呼ばれる緑に包まれた大地が広がっているはずだった。
それが見渡す限りの砂漠になっていた。
吹き荒れる風に飛ばされた砂粒が、クラリスの頬に当たってくる。
「場所が間違っているとか?」
「いいや、ここだ。我の知識に間違いはない」
「でも間違っているけど」
「そ、そんなはずは……」
自慢のしっぽを垂らしたフェンは意気消沈。
彼の言葉を信じるなら、ここに太古の森があったはず。
そしてエルフたちが住んでいた。
「ドワーフのラムザさんも太古の森を目指していたらしいし。やっぱりここがそうなのかな」
「ふむ……」
「キュ……」
緑といえば、ぽつんとあるサボテンくらいだが。
「もしかすると何らかの影響で、砂漠化しているのかもしれない」
「例えば何?」
「うむ……呪いとか」
「呪い!?」
クラリスの問題も呪いかもしれない。
もしフェンがいうように太古の森ほどの巨大な一帯を砂漠化するほどの呪いだったら、とても気になる。
「呪いってこれほどまで強いものなの?」
「そうだ。魔法とは違い、とても強力で根が深いものだ。呪いなら大地を荒廃させたことにも納得できる」
目の前に広がる光景は自然破壊と到底思えないほど、規模だった。
それにフェン曰く、エルフ族たちは自然を愛する種族だ。
彼らが、自ら住まう場所をこのようになるまで黙って見過ごすわけがない。
それにエルフ族は魔法とは違う、自然をコントロールする力を持っている。その力を持ってしても、抑えきれなかったのなら、もう呪いとしか考えられないという。
クラリスはフェンから降りて、足元の砂を掴んでみる。
「特に何も感じない。サラサラしているだけ」
「呪いとはそういうものだ。何も感じることはない。主もそうだろう?」
「たしかに……。もしかしてボクのも呪いだったら、こんな感じになってしまうのかな?」
「それはわからない。見たところ元気そうだから今は大丈夫だ」
「ふぅ~、安心した」
クラリスはこの砂漠のように干からびていくなんて考えたくなかった。
呪いにもいろいろと種類があるそうなので、クラリスは自身の呪いは能力を封じるものだと勝手に思うことにした。
「さて、どうする? 主よ」
「とりあえず、散策かな。砂漠になってもエルフ族がまだいるかもしれないし」
「キュ!」
「デッドが調べてくれるの?」
「キュル」
「うむ、上空からのほうが効率的だろう」
「それじゃ、お願い」
「キュルルルル♪」
天高く飛び立ったデッドは砂漠の地平線を見つめた。
しばらくしてデッドが猛スピードで戻ってきた。
「キュル!」
「どうしたの? 人を見つけたの?」
「キュ!」
なにか焦っているようだ。
「キュルルルル!」
「なんと、魔物に襲われているようだな」
「そうなの! 早く助けないと!」
「うむ。主よ、我に乗れ!」
「よっと! デッド案内をお願い!」
「キュッ!」
イエッサー! デッドは先頭を飛んでいく。
クラリスを乗せたフェンも後に続いた。
彼らのスピードなら地平線の先でもあっという間だ。
今回ばかりはクラリスも何も言わない。
魔物に襲われているなら、命を落としてしまうかもしれない。
もし、エルフなら、なぜここが砂漠になってしまったのかも教えてもらえるだろう。
どちらにせよ。見過ごすわけにはいかなかった。
「急いで!」
「おう!」
「キュ!」
小さな竜巻を起こしながら、駆けていくクラリスたち。
その先に大きな赤い物体が見える。
たくさんの足を動かし、お尻には大きな針を持っている。
その形を知るフェンは大きな声で言う。
「よく育ったデザードスコーピオンだ。しかも3匹もいるな」
「強そう」
「ハハッ! 我らの敵ではない。なあ、デッドよ」
「キュル!」
三匹のデザードスコーピオンの前には、フードを目深に被った人が懸命に逃げていた。
しかし、足元の砂でうまく走れていないようだ。
その者と魔物の距離は段々と近づいている。
一匹のデザードスコーピオンがハサミに捉えようと迫っていた。
「デッド、お願い!」
「キュッ!」
更に加速したデッドは一直線にデザードスコーピオンに突貫している。
そして燃え盛る拳を振り上げた。
ファイアパンチ!
デッドが新たに編み出した体術だ。
自慢の炎を拳に集中させることで、爆発的な火力を出す。
デザードスコーピオンの顎にデッドの拳が命中!
そのまま大爆発!
拳の炎はデザードスコーピオンに燃え移る。
またたく間に炎上した。
灰になって崩れ落ちるデザードスコーピオン。
それでも残った二匹はあきらめない。
しつこく逃げる人を追っている。
「フェン、行くよ!」
「待っていたぞ。我も暴れたい!!」
「わかったけど、常識の範囲内でお願いね。近くに人がいるんだから」
「うむ、任せておけ」
魔力全開のフェン。
かなりのやる気過ぎる。
一抹の不安を感じながらクラリスは残った二匹に迫る。
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