37.新たな依頼と魔法使い
ドワーフ。
クラリスが彼らについて知っていることは、地底に住んでいるくらいだ。
地上とは違うグランド・ゼロと呼ばれる特別な場所だという。
しかしその場所に行くためには、何らかの資格を有していないといけないらしい。
王都の図書館で呼んだ書物にはそう書いてあった。
「ドワーフって人間が会えるものなのでしょうか?」
「ハハハッ、会えるとも。現に儂が会っている。クラリスさんはグランド・ゼロのことを言っているのだろ?」
「そうですが、違うんですか?」
「あそこはおとぎ話の世界だよ。人間が踏み入れるには大変難しい。しかし、ドワーフは探究心と研究心の強い種族じゃ」
「つまり……外の世界に出る者がいると」
「その通り。儂が会ったのもその一人。齢200歳ほどの青年じゃったな。ちなみにドワーフは2000年ほど生きるらしいぞ。人間とは比べ物にならないくらい長生きじゃ。まあ……羨ましいとは思えんがな」
おじいさんは人間程度の人生が一番身の丈に合っているという。
「ラムザは今もこの世界のどこかを旅しているみたいじゃな」
そう言って手紙を見せてくれた。
時折、気が向いたら彼がおじいさんへ送ってくれるのだという。
「最近はちょうど半年前かな。ネイリングは売れたのかを知りたいと聞いておった。ちょうどお前さんのことを書いて送ったのだよ」
「返事は来たのですか?」
「いや……まったく。ラムザのことなので飛んでくると思ったがな。その手紙には気になることも書いてあった」
「どのようなことですか?」
おじいさんは言っていいのやらと迷いつつも口を開いた。
「信じてもらえるかはわからんが、ラムザはエルフが住まう森へ行こうとしていたようだ。エルフなどこれこそ、おとぎ話の世界だがな。クラリスさんはどう思う、エルフはいると思うかい?」
「ボクはいると思います。ここよりもずっと東の太古の森に」
「ほう……ラムザが言っていたことと同じじゃな」
「ボクはこれからその太古の森へ行こうと思っているんです」
「これは渡りに船! すまぬが……ラムザがもし困っていたら助けてくれぬかのう」
「いいですよ」
「おおおっ、気前が良い子じゃ」
「ネイリングを頂いたお礼ができていませんし。それにボクとしてもラムザさんに興味があります」
ドワーフに会う機会など、これを逃したらもうないかもしれない。
エルフ族から、自分の体質について聞いて答えが出るとは限らない。
ぜひともドワーフであるラムザからの見解も聞いておきたかった。
それにもしかしたら、彼にネイリングをもっとパワーアップしてもらえるかもしれない。
特にクラリスとしてデメリットはない。
強いて言えば、ラムザがどのような理由で音信不通になっているかだ。
それも使い魔たちがいてくれたら、なんとかなるだろう。
「では、ちょっと待ってくれ。儂からラムザへの手紙をしたためるゆえ」
そう言って、自室へと行ってしまうおじいさん。
しばらくして、手紙とそれと短剣を持って戻ってきた。
「この手紙を。それとこの短剣も持っていってくれ」
「いいんですか?」
「もちろんじゃ。これは儂が最後に作った短剣でな。ミスリル製じゃ」
クラリスは受け取って、魔力を通してみる。
「これって……かなり高純度ですよ。こんな高価な物を受け取れません」
「友人の助けをお願いするのじゃ。これくらいはせんとな」
返すことができそうにもない。
この短剣を売ればおじいさんは今よりも良い暮らしができることは間違いない。
それをしなかったということは、彼にとってこの短剣は特別なものだった。
「これはナイトブリンガー。魔力を吸って、力に変える魔剣。儂の集大成だ。魔法使いのお前さんなら、ピッタリの武器じゃろ? 試してみるがいい」
言われるがまま、魔力をナイトブリンガーに通すと……剣身が赤く輝き出した。
「赤色を出したか……とてもつもない魔力を持っているな。普通の魔法使いなら青色じゃからな。これだけでクラリスさんの強さがわかるわい。お前さん以上の使い手はいないじゃろ」
おじいさんは嬉しそうだった。
ナイトブリンガーに似合った使い手が今までいなかったので、ずっと持っていたみたいだ。
「やはり武器は眠っているよりも、使われる方がいい。鍛冶屋冥利に尽きる」
そんなおじいさんにクラリスとして何もしないわけにもいかなかった。
「やはり代金を払わせてください」
「いいと言っておるじゃろ」
「これだけの武器です。それに似合っただけのお金はお渡ししたいです。たとえ、友人を助ける報酬でもです」
だから、おじいさんはこのような住まいとなっている。
クラリスは思う。職人肌なおじいさんだから、利益など考えずに武具を作ってきたのだろう。
しかし、どんなに素晴らしいものを作っても、それで貧しくなっては本末転倒だ。
「もし、それでも受け取らないと言うのなら、このナイトブリンガーは私も受け取りません」
「ハハハッ! そこまで言うのなら、しかたないのう」
「ありがとうございます」
クラリスは持ち金すべてをおじいさんに渡した。
それがナイトブリンガーを譲ってくれたクラリスとしての気持ちだった。
「こんなにもらってもいいのかい?」
「それでも足りないくらいです」
「十分じゃ。老い先短い老人には使い切れんほどにな。こちらこそありがとう。ラムザのことを頼むぞ」
「はい」
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