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34.約束と魔法使い

 食材、確保!

 資金は有り余るほどある。

 あれよあれよと買っていたら、金貨900枚も使ってしまった。


「主よ。露天の品をすべて買うとは恐れ入った。しかも3軒を立て続けにな」

「うん、おかげでお財布がかなり軽くなった」

「キュル!」


 今日食べるだけではない。

 旅立ちへ向けての準備でもある。

 フェンの空間魔法を使って収納した物は、その時点で時間が止まってしまうという。

 そのため、生物など腐りやすい食材でも安心して買うことができた。

 長旅だと、どうしても新鮮な野菜が食べられない。

 栄養が偏ってしまいがちだった。


 だが、フェンがいればもう心配することはない。


「フェンがいれば、楽な旅ができそう」

「うむ、我は最強の荷物持ちだからな。旅でほかに必要な物があれば、どんどん言ってくれ。我が収納しよう」

「頼もしい」

「キュ!」

「えっ、デッドも持つ?」

「キュキュ!」


 フェンを褒めていたらデッドが張り合ってきた。

 しかし、彼が持てるのは小さなポッケに回復薬数本だ。


「デッドは緊急回復係という重要な役目があるんだから。いっぱい持てなくても大丈夫」

「キュ……」

「それに、料理の火力担当ってことを忘れていない?」

「キュ!?」


 そういえばそうだった!

 デッドは手を叩いてうなずいていた。

 これで一件落着だ。


「おっちょこちょいなデッド」

「キュ……」


 ツンと頭を指先でつついてやるとデッドは照れていた。


「これで役割分担ができたね。デッドはボクの料理を手伝う係。フェンは食材を運ぶ係」

「キュル!」

「心得た。冷やす料理があったら言ってくれ。我は氷魔法で助力しよう」

「ありがとう!」


 使い魔たちがいれば、家にいるような感覚で料理できそうである。


「そうだ。魔道具屋さんのおばあさんに、デッドをまだ見せていない!」

「どうしたのだ?」

「この通りの先にある魔道具屋さんでね。使い魔の卵をもらったの。そのお礼として生まれた時は見せる約束をしていたから」

「なるほど、それがデッドというわけか」

「うん」

「キュル?」


 首を傾げるデッド。


「これからデッドが卵だったころに、大事にしてくれていた人のところへ行くからね」

「キュ」

「卵の育ての親って感じの人だよ」

「キュキュ」


 そういわれても、思い出せないようだった。

 卵だったのでしかたない話だ。


「デッドは会ってみたい?」

「キュ………キュル!」


 手を上げて、空中で一回転。

 とてもいい返事だった。


「よしっ、ならいってみよう」

「あの人から、使い魔の卵をもらわなかったら、迷宮を制覇できなかったし。ボクにとって命の恩人だし」

「うむ、では決まりだな」

「行こう!」


 通りをまっすぐ直進していく。

 すると、すぐに古びた魔道具屋が見えてきた。


「あれだよ」

「ボロボロ……」

「こらっ、ボロっていわない」

「いや趣のある店だな」

「そうそう!」


 店の前に立つとおばあさんがカウンターで後ろで座っていた。

 こちらに気がついていない。

 よく見ると居眠りをしていた。


 お店の中を覗くと、また商品にホコリをかぶり始めていた。

 あれから半年以上経っている。


 どうやらクラリスが掃除をしてから、お店はそのままになってしまったようだ。


「中に入ろう!」

「我は外で待っておく。中は狭いのでな。我が入ればすべてをなぎ倒しそうだ」

「わかった。デッド行こう!」

「キュル!」


 ドアを開けると、備え付けられていたベルが鳴った。

 その音でおばあさんが目を開ける。


「おや、お客さんとは珍しいね。どれどれ」

「お久しぶりです!」

「まあ、あの時の魔法使いさんか」

「はい、今日はデッドをお見せに来ました」

「デッド……」


 おばあさんはクラリスの横で飛んでいるデッドを見つめた。

 そして大きく目を見開いた。


「まあ! もしかしてあの時の卵だった子かい?」

「はい! 生まれてこんなにも元気です!」

「キュッ!!」


 デッドは胸を張ってアピール!

 おばあさんは手を叩いて喜んでいた。


「まさか、あの卵からデッドリーファイアドラゴンが生まれるとはね」

「ボクもびっくりです。この子がいてくれたから、今までやっていけました。本当にありがとうございます!」

「いやいや、あの卵からこんなにも強い使い魔を育てたのはお前さんの力だ。誇っていいことだよ。うん……これは将来、すごい魔法使いになりそうだ」


 おばあさんは嬉しそうに微笑んでいた。


「それと店の外にもう一匹の使い魔が仲間になったんです」

「おやおや、まだいるのかい。どれどれ……あひゃっー!!」


 おばあさんはフェンを見て腰を抜かしそうになっていた。

 それもそのはず伝説の魔物――フェンリルだったからだ。


「これは驚いたね。長生きするもんだ。あのフェンリルを使い魔にするなんて、いやはや……私は夢でも見ているのかい」


 ドアを開けて、目をゴシゴシするおばあさん。

 そこにフェンが声をかけた。


「我が主が世話になったと聞く。我からも礼を言うぞ。ありがとう!」

「こちらこそ、フェンリルと会話ができるとは。これは冥土の土産になる」

「縁起でもないことを言うな。それよりも、店が少々散らかっているようだが?」

「この歳だ。クラリスちゃんに掃除をしてもらってから、頑張ろうと思ったが自分だけでは難しくてね」


 そう言っておばあさんは腰を擦っていた。


「腰痛か。なら、こっちへこい」


 ゆっくりと歩いていくおばあさん。

 近くまで来たところでフェンはおばあさんに治癒魔法をかけた。


「これはすごい。腰痛が治った。それどころか、体が思うように動かせる。まるで若返ったようじゃ」

「所詮治癒魔法だ。歳までは引き戻せないが、今よりも良くなっただろう。それと、主よ。いいか?」

「なに?」

「この者によい魔道具がある。それを与えてもよいか?」

「いいよ!」

「さすがは我が主よ。気前が実によい!」


 フェンは大魔法使いカトリアが作った数え切れないほどの魔道具を持っている。

 空間魔法という異次元ポケットからゴソゴソと探った。

 そして、おばあさんに見合った魔道具を取り出した。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。

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