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33.追跡者と魔法使い

 クラリスは対人戦においても、即死魔法がしっかりと効果があることがわかって大満足。


 つまり、フェンリルを超える者なら苦戦するかもしれないが、それ以下なら戦いにおいて困らなそうだ。


 しかしながら、特異な攻撃をしてくる相手なら、注意が必要だ。

 予想だにしない攻撃ほど怖いものはない。


「慢心しないようにしないと」

「その心意気だ。慢心ほど危険なことはない。我のようにな……」

「そうだね」

「うむ」


 クラリスと戦ったときのフェンは慢心の塊だった。

 油断に油断を重ねた結果、クラリスのクリティカルデスよって倒されてしまったのだ。

 あれからフェンをあのときのことを痛く反省していた。


 騒ぎが静まったところでコレットがクラリスに声をかける。


「クラリスさんはこれからどうするの? 迷宮探索を続けるの?」

「ここを離れようと思っている。新しい目的ができたから」

「そっか……残念。実家の宿屋をまた使ってもらおうと思っていたのに」

「ごめんなさい」

「いえいえ、謝らなくても。でも、なんとなくそうなんじゃないかと思っていたの」

「どうして?」

「だって、これでも私はたくさんの冒険者たちを見てきたんだから。目を見たらわかる。もう迷宮に興味なさそうだもの」

「さすが熟練の受付嬢だね」

「でしょ! でも旅立つまでは実家を使ってね。もちろん使い魔さんたちも大丈夫!」

「うん。そうする!」


 数日後には迷宮都市カトリアを旅立とうと思っている。

 クラリスが即死魔法しか使えない理由……フェンはおそらく呪いの一種ではないかと言った。


 それを調べるため呪いに詳しいというエルフ族に会いに行く予定だ。

 迷宮都市からずっと東にある太古の森に彼らは住んでいるらしい。

 クラリスは準備が整い次第、そこへ向かうつもりだった。


「よしっ、話は決まり! じゃあ、お仕事が終わったら、クラリスさんの帰還をお祝いしよう」

「うん、ありがとう!」

「お仕事を頑張るぞ!」


 コレットはそういって、仕事場に戻っていた。


「お祝いか……楽しみ」

「良かったではないか、主よ」

「キュル♪」

「といっても、うちには大食らいがいるから、食材を買っていかないと」

「それは我らのことか?」

「決まっているでしょ」

「ふーん……」

「キュ……」


 フェンとデッドが目を細めて、クラリスを見ていた。


「何よ! 何がいいたいの?」

「うむ、大食らいはもう一人いるはずだと我らは思っているのだ」

「それって……?」


 もちろんクラリスだった。

 迷宮では散々魔物を食いまくっていた。

 それを見ていたデッド。その話をよく聞いていたフェン。


 この中で一番よく食べるのは誰かといえば、ぶっちぎりでクラリスだった。


「主が宿に迷惑をかけないために、買い出しだな」

「ちょっとそれは言いすぎ。フェンはまだボクが食べているところを見ていないでしょ」

「デッドから話は聞いている。それに我も食べようとしていたくらいだからな……」

「それはデス力とステータスボーナスのためだし」


 クラリスはもう話はこれで終わりとばかりに歩き出した。


「デッド、フェンいくよ」

「キュル!」


 しかしフェンが立ち止まって動こうとしない。

 クラリスは不思議に思いつつ、もう一度名を呼ぶ。


「フェン、早く置いていくよ」

「うむ、わかった」


 やっとクラリスのところへやってきたフェン。

 しかし、後ろをチラリと見ている。

 その方角にクラリスも目を向けるが、行き交う冒険者たちが見えるのみだ。

 いつもの知っている光景だった。


「どうしたの?」

「いや、我の気のせいだろう。買い出しに行こう」

「そう……わかった」


 フェンは意味のない行動をしない。

 不思議に思いつつも、クラリスは彼がそういうのなら大丈夫だろうと気にも止めなかった。


 しかし、人影に隠れて、じっとクラリスたちを窺う者がいた。

 フェンはそれを感じていたのだ。


「まずは何を買うのだ」

「決まっているでしょ! 肉! 魚もいいけど、ここは内陸部で美味しい魚があまりないし。久しぶりに一般的な肉が食べたい」

「なるほど、魔物の肉ではなくか」

「あれはあれで美味しいけど、ボク以外が食べるとたぶん死ぬから」

「たしかに。本来は人間は魔物の肉を食べられない。主の胃の強さには感服するぞ」

「それって褒めているの?」

「うむ」


 ギルドを出て、クラリスたちは商店街を目指す。

 大通りを歩いていると、ことのほか使い魔たちが目立った。

 行き交う人々が立ち止まったり、振り向いたりしている。

 それもそのはず、大きな体をしたフェンリル。

 パタパタと自在に空を飛ぶデッドリーファイアドラゴン。


 普通の魔法使いなら使役できないほどの魔物たちだ。

 見慣れない光景に人々は興味津々。

 そして、フェンとデッドも外の世界にテンションアップ。

 空を見上げて大はしゃぎだ。


「おお、あれが雲か……青い空も綺麗だ」

「キュルルルルル♪」

「デッド! そんなに高く飛んだら、戻ってこれなくなるかもしれないでしょ!」

「キュルルルルル♪ キュルルルルル♪」

「これは……聞いていないな」


 縦横無尽に空を飛ぶデッド。

 あまりに広い空に、大興奮だ。


「まあ、好きにさせておいてやれ。本来、ドラゴンとは空を共に生きるものだ。初めての空に本能を抑えきれないのだろう」

「そうなんだ」

「しばらくしたら、落ち着いて戻ってくる」


 楽しそうに空を飛ぶデッド。

 とても気持ちいいのか、たまに空に向かって炎を吐いていた。

 下へ吹いていないので安全だろう。


 それがまた人々に大きく注目されるのであった。


「この調子なら、主はどんどん有名になっていくな」

「……望んではいないんだけど」

「我としては嬉しい限りだ。まずは第一歩だな」

「なに? その第一歩って」

「うむうむ、良き良き」

「ちょっと!」


 フェンは上機嫌で歩いていく。

 彼はクラリスに、大魔法使いカトリアくらいになってほしいようだった。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。

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