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28.懐かしのギルドと魔法使い

 まばゆい光から目をかけると、そこは迷宮への入り口だった。

 懐かしいの一言。

 クラリスは嬉しさのあまり、泣きそうだった。いや、ほんのりと泣いていたかもしれない。


 時刻は朝。

 冒険者たちが迷宮へ止めどなく入ろうとしていたタイミングだった。

 そこへ突然現れたものだから、大騒ぎ!


 死んだはずの魔法使い。

 その両脇には、デッドリーファイアドラゴンとフェンリルが控える。

 どちらとも、とんでもなく強い魔物だ。


 どよめく冒険者たち。

 騒ぎを聞きつけたギルド職員らが、すぐに駆けつけてきた。


「一体、なんの騒ぎですか?」


 そして、クラリスの使い魔たちを見て、やはり固まってしまった。


「あの……皆さん。大丈夫ですか?」


 クラリスは心配そうにギルド職員たちに声をかける。

 少しの間、彼らの反応が無かった。


「聞こえていますか?」

「ええ……もちろんです。この魔物は見たところ……あなたの使い魔でいいんですよね?」

「そうですよ。デッドとフェンです」


 クラリスは使い魔たちに合図を送ると、地面に座り込む。

 ちゃんと扱えていると示してみせた。


「なるほど、安心しました。もしかして、あなたはクラリスさんですよね。髪が長くなって印象が変わっていますが……」

「はい、クラリスです。ずっと迷宮に潜っていたので、髪を切る暇もなく」


 クラリスは即死魔法しか使えない魔法使いとして、ギルドで有名だった。

 そのことによって、ギルド職員たちにすぐに誰なのか理解してもらえた。


「失礼ですが、クラリスさんはすでに死亡扱いになっています」

「やっぱり……そうなんですね」

「申し訳ありません。迷宮で消息を絶って半年経てば、そのような扱いにする決まりでして」


 クラリスはこのとき、迷宮にいた正しい期間を知ることができた。

 三ヶ月ほどだと思っていたら、地上では半年も経っていた。

 髪もこれほど伸びるはずだ。


「半年もですか!?」

「はい、正確には半年と半月です。しかし、まさか生還されるとは……。詳しい事情をお聞きしたいので、応接室へ来てもらえますか?」

「わかりました」


 ギルド職員に従って、後をついていく。

 そんなクラリスに声をかける冒険者たちがいた。


「クラリス!」


 見覚えのある赤髪。見るからに気が強そうな女性冒険者だった。

 その後ろには、仲の良さそうな戦士と弓使いの兄妹がいる。


「エマさん」


 すぐに思い出して名前を呼んだ。

 彼女たちとは、成り行きでパーティーを組んで冒険した間柄だった。

 そして、はぐれ魔物であるベヒーモスとの戦いによって、クラリスはエマを助けて、迷宮の深くに転落してしまった。


 エマたちはずっとクラリスのことを心配して忘れられずにいたようだ。


「生きているなんて……よかった」

「なんとかですけど。この通り、元気です!」

「ごめんなさい。あのときは……」

「いいんです。ベヒーモスですから、どうしようもないです。それにボクが望んでやったことです。何も思ってはいません」

「私たちが調子に乗っていたのが悪いのに、そう言ってもらえるなんて……ありがとう」


 久しぶりの再会。

 いろいろと話しをしたいところだが、ギルド職員に急ぐように言われてしまう。


「クラリスさん、何をしているんですか? 早くこちらへ」

「あっ、はい。エマさん、ごめん」

「いいよ。元気な顔を見られただけでもよかった」


 クラリスは再会の喜びを感じる暇もなく、足早に立ち去ろうとする。


「主よ、良いのか? 仲間だったのではないのか?」

「パーティーに臨時で参加させてもらっただけで、仲間というほどでは……」

「そうか……。しかし、いい人たちには見えた」

「うん、ボクもそう思うよ」


 だからこそ、体を張ってベヒーモスから彼女たちを助けたのだ。

 半年以上経っても、心配してくれていたことが素直に嬉しかった。

 そんなクラリスの背中にエマが大きな声で、


「よかったら、帰還祝いを一緒にしよう!」

「うん! ありがとう!」


 クラリスは戻ってこれて本当に良かったと思った。

 お祝いをしてくれるとは、すごく楽しみである。


「良かったな、主よ」

「キュル♪」

「うん!」


 上機嫌でクラリスはギルド職員に付いていった。

 建物の中へ入り、案内された部屋。


「ん? ここは応接室なの?」


 クラリスは何度か、利用していたので違うことはわかっていた。

 ここは応接室ではない。そこは応接室の2倍の広さがあった。

 しかも、高級そうな革張りのソファーや、迷宮で発掘されたと思われる魔道具が飾られている。

 重役の部屋といったほうがいいだろう。


 ギルド職員が一礼をして、奥の執務デスクに座る男性に声をかける。


「ハンス様、クラリスさんをお連れしました」

「うむ」


 壮年の男性はハンスというギルド長だった。

 彼が騒ぎを聞きつけて、急遽応接室から自分の部屋に通すように指示したのだった。


 ハンスはニッコリと笑う。

 そしてクラリスとデッド、フェンを順々に見ていく。

 静かに頷いてから、目の前にあるソファーに座るように促した。


「クラリスさん、すまないね。少し確認したいことがあるのでお呼びした。さあ、まずは腰掛けてくれたまえ」

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