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26.新たな力と魔法使い

・クラリス(15歳)人間♀

 大魔法使い《Lv99》

 【HP】 :2545 (+2465)

 【MP】 :18550 (+2150)

 【力】  :345  (+1530)

 【魔力】 :12380 (+2025)

 【敏捷】 :350  (+130)

 【運】  :30   (+40)

 【デス力】:15450 


 魔法:即死

 称号:魔物グルメ、死の極意


 クラリスはステータスを見て、ガッツポーズ。

 お目当ての大魔法使いへランクアップ!


 なかなか転職できなかったので、まさか違う天職かと焦ってしまった。

 ほっと胸を撫で下ろすクラリス。


 転職に伴い、ステータスが大きく見直されていた。

 ここまでの大上昇が起きたのは、魔法使いのレベルをカンストさせたことによるボーナスだった。


 ほとんどの魔法使いは、そこまでレベルを上げずに大魔法使いに転職を果たす。

 そのため、ギルド内ですら知られていない裏技だった。

 もちろんクラリスはそのことを知る由もない。


 大魔法使いとは、これほどの恩恵が受けられるのだと勘違いしていた。


 それにしても、フェンには及ばないまでも、並の大魔法使いでは足元にも及ばないほどの強さだった。


「これこそ、大魔法使い! ボクもとうとう……その領域に来てしまったか」

「さすがは我が主よ。まだカトリア様には及ばないが、そのうち越えてしまうかもしれんな」

「キュルルル!」


 使い魔たちもクラリスの大成長を称賛してくれる。

 普通なら数十年かかってもおかしくない道のりを、迷宮を制覇することでほんの数ヶ月でたどり着いてしまったのだ。


 ギルドへ帰還すれば、大騒ぎになること間違いなしだ。

 そして、新たな称号をゲットしていた。

 鑑定してみると、


 死の極意:即死魔法だけでレベルを上げて、大魔法使いになった者に捧げられる称号。

      即死魔法の成功率が飛躍的に上昇する。


「すごい称号……」


 さらに即死魔法に磨きがかった。

 これなら死ぬほど連呼しなくても済むようになるかもしれない。


「でも、デス力だけは上がらなかったから、やっぱり魔物を食べないとダメみたい」

「ほう、デス力はそうやって上げるのか」

「そうだよ。フェンを食べればとても上がっていたかも……」


 フェンをじっと見つめるクラリス。

 たじたじになって、フェンは身をすくめた。


「我は主の使い魔だぞ。決して食べ物ではない」

「じゅるり……」

「キュルルル♪」

「やめろっ! この人でなしがっ!」


 自慢のもふもふ尻尾はすっかり垂れ下がっている。


「冗談だよ」


 堂々としたフェンがあまりにも狼狽えるので、クラリスは面白くなって調子に乗ってしまった。

 少し反省。


 ちょっと前までフェンとは命のやり取りをしていた仲だ。

 あの時は本当に怖かったので、ちょっとだけ意地悪をしてしまった。


「ごめん、ごめん」

「くぅ~、あの顔は冗談に見えなかったぞ。おそらく我が蘇生の首輪で蘇るのがあと少し遅かったら、今頃主の腹の中だっただろう」

「……」

「否定がない!? まさか……」


 たしかに食べようと思っていた。

 これからの使い魔としての関係を考えて、胸の中にそっとしまっておこう。

 そう考えるクラリスだった。


「主よ。否定してくれ!」

「ううん……そうだね。そうだといいね」

「曖昧だ!」

「行こうか、デッド」

「キュル!」


 クラリスとデッドは手をつないで、歩いていってしまった。

 残されたフェンは腑に落ちない。

 あれは絶対に食おうとしていた。

 間違いなしだ!


「寝る時は気をつけたほうがいいな。身の危険を感じてならない」


 しばらくの間、フェンはクラリスに食べられてしまうのではないかと怯えてしまうのだった。



 フェンを置いて先に進むクラリス。

 目的は決まっていた。


 この迷宮を目指した理由――大魔法使いカトリアが残したとされる図書館だ。

 彼女が生涯をかけて集めた叡智がそこにあるはず。


 魔法の研究にも長けていたカトリア。

 その彼女が残した書物なら、即死魔法しか使えない原因がわかるかもしれない。


 そうなれば、クラリスもたった一つの魔法だけではなく。

 他の魔法使いのように、多彩な魔法が使えるようになるはず。


「やっと一人前の魔法使いになれる時が……」


 まだ図書館を見つけていないのに、クラリスはもう解決した気分だ。

 ここまで苦労してきたのだ。

 報われたいと思うのも道理だろう。


 心は躍り、スキップをしながら、各部屋を覗いていく。


「ここは違う。デッドも探して!」

「キュ!」


 一緒になって探すが、どこにも見当たらない。

 書物がまったくないのだ。

 これなら、70階層のアトリエの方がたくさん書物があった。


「なぜなの!? ここには図書館があるはずでしょっ!」

「キュルルル」


 クラリスはがっくり膝をつく。

 それを慰めるため、デッドは彼女の頭を撫でていた。


「デッド……ボクはなんのためにここまで来たんだろう」

「キュ……」


 強くはなった。それもめちゃくちゃ強くなった。

 それはとても素晴らしいことだ。

 冒険者にとって、強さとは一番評価されることだからだ。


 しかし、あくまでもクラリスにとって優先されるのは、唯一つ。 即死魔法しか使えない体質をどうにかすることだ。

 そのために冒険者になったと言っても過言ではない。


 項垂れるクラリス。

 ここにカトリアの図書館があるというのはデマだったのか!?


 ここまで来るための苦労が……。


「どうしたのだ? 主よ。そのようなみっともない姿を晒して……。我が主なら、堂々としてもらいたいものだ」


 後ろからフェンがのっしのっしと歩いてきた。

 どうやら、先程の一件から落ち着いて、クラリスを追いかけていたようだ。


「図書館がないの……」

「図書館?」

「大魔法使いカトリアが残したとされるたくさん書物を収めた場所よ」

「ああ……それのことか!」

「えっ、なになに! 知っているの! どこ、どこにあるの!」


 クラリスはフェンに抱きついて、顔を引っ張りまくる。

 早く、一刻も早く答えて! といった感じだ。


「わかった。わかったから、鼻の辺りをグリグリするな。むず痒くてかなわん」

「ごめん……でも興奮しちゃって……。それでどこにあるの?」

「うむ。それは我のことだ!」

「ええええっ!」

「キュ!」


 クラリスとデッドはびっくり。

 まさかフェンが図書館だと思ってもみなかった。


「我は生きた図書館でもある。だから、くれぐれも丁重に扱うのだ。決して食べようだなんて思わないことだ。わかったな」

「はい!」

「キュル!」


 高らかに手を上げてクラリスとデッドは誓う。

 フェンをこれからは食べ物とは見ないことをだ。


「ボクたちはフェンを食べ物だと決して思いません!」

「キュルルル!」

「よろしい! これで我も安心だ」


 満足そうな顔して、フェンはニッコリと笑った。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。

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