25.神殿と魔法使い
フェンの後について、クラリスは歩いていく。
神殿の中は塵一つ無いほど、綺麗だった。
「これは魔法で維持しているの?」
「いかにも。カトリア様は偉大な方だった。我が主は、最後の戦いに勝ち、それを引き継いだ。ここにあるものすべて主のものだ」
大きな扉の前で立ち止まると、勝手に開き始めた。
「すごい……」
「この中から好きな魔道具を持っていくといい」
数え切れないほどの魔道具が所狭しと並んでいた。
これらをカトリアがすべて作成したという。
「カトリア様は我を生み出し、最強の魔法を追い求めておられた。この魔道具はその過程で作られたものだ。結局、我はカトリア様が最強の魔法を生み出せたのかは知らない」
「最強の魔法か……」
「しかし、主の魔法によって我は敗北した。これでも最強の魔物としての自負があったのだがな……案外、主の即死魔法がカトリア様が探していた最強の魔法かもしれない」
「まさか……それはないと思う。さっきのあれはまぐれかもしれないし」
「魔法にまぐれなどという言葉は聞いたことがないがな。さあ、どの魔道具を持っていく?」
「全部とかダメ?」
「主は顔に似合わず、欲張りだな」
「もったいないから。無理ならいいけど」
フェンは豪快に笑った。
その後、右側にあったはずのいくつかの魔道具が消えていた。
「何をしたの?」
「収納したのだ。我の空間魔法によってな。元々、カトリア様の荷物持ちとしてこの迷宮内を付き添っていたからな」
「どのくらい持てるの?」
「魔法はMPに依存する。既に我のMPを知っているはずだが」
MPはたしか35万を越えていた。
うん、使い放題だと思うクラリスだった。
「いくらでも入りそう」
「ほぼ合っているな。カトリア様から実に重宝されていた」
「なら、お願いできる?」
「よかろう」
大部屋に置かれていた千点以上にのぼる魔道具がこつ然と消えた。
残ったのは何もない空っぽの部屋だ。
デッドが広々となった部屋をのんきに飛んでいた。
「あのドラゴン……デッドは我との戦いでかなりレベルが上ったようだな」
「うん。ボクはレベル上限に達しているから羨ましい」
「なら、上限解放するために転職すればよかろう」
「できるの?」
「もちろんだ。ここは神殿だ。転職はできるぞ」
「おおおおっ!」
魔法使いから大魔法使いへ!
通常ならレベル60で転職可能となる。
しかし、不慮の事故によって地上へ上がることができなかった。
そのため、転職できずにひたすらレベルが上がっていた。
「祭壇はこっちだ」
「デッド、行くよ」
「キュル!」
魔道具の管理部屋を出たクラリスたち。
フェンの後についてさらに奥へ進んでいく。
目的の祭壇は神殿の中央にあった。
両端は大きな柱に囲まれている。
そして、淡く優しい光が天井から差し込んでいた。
神聖な場所。
どの祭壇を目にしても、身が引き締まるような感覚だ。
「さあ、主よ。神の導きによって、新たな力を受けるのだ」
「うん」
クラリスはドキドキしていた。
過去に一度だけ導きを受けている。
それは魔法使いとして転職したときだ。
初めは全く変化がなく。
もしかしたら転職失敗かと周りに囁かれた経験があった。
勇者エヴァンはそんなクラリスを何も言う事なく、じっと見つめていた。
そして時間はかかったが、ちゃんと魔法使いとして転職できた時、彼は誰よりも喜んでくれた。
クラリスはそのことをよく覚えている。
「どうした? 主よ、転職されないのか?」
「するって、心の準備がまだ整っていなかっただけ。今できたから、フェンとデッドは後ろに下がっていて」
「わかった」
「キュル!」
使い魔たちが見守る中、クラリスは祭壇の上にある水晶に触った。
途端に虹色の輝きを放ち出す。
「ん? なになになに? なんなの?」
「おやおや、変わった光だな」
「キュ?」
フェンも見たことないようだ。
普通は水晶に触ってもこれほどの光を放つことはない。
クラリスは、昔パーティーでの転職に立ち会っているが、このような現象は初めてだった。
「もしかして、失敗?」
「そんなことはない。ちゃんと反応している。水晶から手を離してはいけないぞ」
「……わかった」
クラリスはフェンに言われた通り、水晶をしっかりと握った。
たとえ水晶から反発するような力が起きても、決して離さなかった。
放たれる光は一層増す。
目も眩むようなほどだ。
「まだなの!!」
「これは敵わんな……」
「キュルルル!」
フェンですら、目を開いてはいられない光だった。
やっとのことで、光が収まる。
もう少し長引いていたら、あまりの閃光に目がおかしくなっていたかもしれない。
「なんとか……なった」
「ヒヤヒヤしたが、上手くいったようだな」
「キュ!」
フェンの言う通りだ。
体から迸る力をクラリスは感じていた。
「これで魔法使いから、大魔法使いへ転職できたんだよね! 鑑定で確かめてみよう」
「ふむ、それがいいだろうな」
早速、自身を鑑定してみた。
結果を見るのが楽しみでしかたがないクラリスだった。
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