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19.70階層のヌシと魔法使い

 エンシェントミミックは、宝箱の体を大胆に使った蒸し焼き。

 調理器具を手に入れて、張り切っていたクラリス。

 しかし、デッドがお腹を空かしてしまい、居ても立っても居られなくなってしまう。


 エンシェントミミックは二つ名持ちだ。

 この魔物は格別な味がするとデッドは前回のことですでに学習済み。


 クラリスが料理の準備をするために目を離したすきに、自慢のブレスを吹きかけていた。


 鍋やフライパン、調味料を手に戻ってきたときには、エンシェントミミックの蒸し焼きが出来上がっていたわけだ。


「キュルルル♪」


 さあ、一緒に食べよう!

 デッドはクラリスを誘っている。


「えええっ、もう調理しちゃったの?」

「キュ!」


 自分の胸をバンと叩いてみせるデッド。

 火加減には細心の注意を払ったらしい。


 そして、クラリスのところまで飛んでくると、袖を引っ張る。


「キュル!」

「私が開けるの?」

「キュ」


 促されるまま、クラリスはエンシェントミミックのところへ。

 蓋はしっかりと閉じられているようだ。


 熱々な宝箱となっているので、手を布で厚めに巻いて蓋を掴む。


「いくよ。それっ」


 モクモクと大量の水蒸気が立ち上がる。

 それと同時に、旨味の詰まった香りが漂い出す。


「これって、貝の香り? とても良い香りがする」

「キュ~」


 宝箱が黄金色のスープで満たされていた。

 これは匂いだけでわかる。


 下手に香辛料で味付けをするよりも、素材だけで味わったほうがいい。

 すでに完成されているのだ。

 そういった類の食材なのだろう。


「スープか……久しぶり。おたまや食器なども持ってきたから、役に立つ」


 おたまでスープを掬う。

 それを深めの皿に波々と注いだ。


「はい、デッドの分。これはボクの分」


 仲良くスプーンを掲げる。


「いただきます!」

「キュッキュルッキュ~♪」


 ガツガツガツガツガツガツガツガツ!

 じゅるじゅるじゅるじゅる!

 ゴクゴクゴク!


 お淑やかさの欠片もなかった。

 これぞ、魔物食い!

 ワイルドだろっと言わんばかりの大胆不敵な食事だ。


「ぷはーっ! うううううううぅぅぅ……」

「キュルルルゥゥゥ……」


 飲み終えたクラリスとデッドは、唸り声を上げる。

 そして、天に向かって吠える。


「美味しい!!」

「キュル!!」


 なんだ、なんだ。これは何杯でもいけてしまう。

 宝箱を持ち上げて、がぶ飲みしたくらい。


「さすがは二つ名持ち。別格……これは魔性のスープ」

「キュ~」


 大きな宝箱いっぱい入ったスープを平らげたクラリスとデッド。

 お腹はパンパンだ。


「これが大魔法使いカトリアが用意してくれた宝なのかもしれない」


 カトリアは食べるためにエンシェントミミックをここに配置したわけではない。

 決してない。


 クラリスが身につけている黄金色の腕輪を守るためだ。

 しかし彼女は納得したような顔をしていた。


「この調子だと、きっと下への階段を守る巨大な魔物も美味しいはず」

「キュ!」


 食べてやる。

 クラリスはかなり意気込んでいた。


 下の階層へ降りることより、食べることのほうが優先されつつあった。


「そうなると、もっと強くならないと!」


 クラリスはライセンスカードを取り出す。


・クラリス(15歳)人間♀

 魔法使い《Lv66》

 【HP】 :630  (+25)

 【MP】 :3550 (+20)

 【力】  :110  (+10)

 【魔力】 :1570 (+5)

 【敏捷】 :130  (+2)

 【運】  :10   (+5)

 【デス力】:1322


 魔法:即死


 なんと【デス力】が1000の大台を突破している。

 レベルも4アップ。それに伴い、各ステータスもいい感じにアップ。

 それに二つ名持ちの魔物を食べたことで、ボーナスステータスもゲット!


「すごい……もしかして、迷宮都市でかなり上位のステータスかも」


 ムフフゥ。思わず、ニヤついてしまう。


 【MP】は3000以上だ。

 即死魔法は何回でも唱えられる。【魔力】も高いので【MP】を使ってもすぐに回復する。

 喉が持つ限り、永遠に即死魔法を唱えられるかもしれない。


「これで力があれば荷物がいっぱい持てるんだけど、魔法使いだからしかたないよね」

「キュ!」

「デッドが持つから任せておけ?」

「キュルルル!」


 小さな体のデッドを見る。

 まだまだ成長中だ。彼に似合うのは今持っている小さなバッグがいいところだ。


「ありがとうね。でも今は早いかな」

「キュ~」

「もっと大きくなったら、たくさん持ってもらうね」

「キュル!」


 デッドにはアトリエで手に入れた回復薬を持たせることにした。

 いざという時、クラリスが回復するためのサポートをしてもらうためだ。


「お願いね。竜のお医者さん!」

「キュルルル!」


 満更でもない顔をして、デッドは胸をたたいていた。


「よしっ! しばらくは、このアトリエをホームにしてレベルとデス力を上げていこう!」

「キュ!」

「そして、強くなって、あの大きな魔物を倒すぞ!」

「キュルルルルル!」


 クラリスとデッドは手を突き上げて、意気込んだ。


 それから二週間の時が流れようとしていた。

 密林の階層を颯爽と駆ける二つの影。

 その影を見た魔物は畏れ慄き、逃げ惑う。


 しかし、決して逃れることはできない。


「デス」


 この一言で、即死させられてしまうからだ。


「今日も大漁、大漁!」

「キュル!」


 もちろん、その影とはクラリスとデッドである。

 下の階層への階段を守る魔物以外、すべての種類を食してしまっていた。


 そんなことを続けているとライセンスカードにまた変化が起こっていた。


・クラリス(15歳)人間♀

 魔法使い《Lv80》

 【HP】 :895  (+45)

 【MP】 :5720 (+50)

 【力】  :130  (+30)

 【魔力】 :3024 (+25)

 【敏捷】 :141  (+9)

 【運】  :10   (+5)

 【デス力】:3023 


 魔法:即死

 称号:魔物グルメ


 クラリスは称号という欄に聞き覚えがあった。

 取得条件を満たせば、得ることができるらしい。しかし、その条件がとても難しく、称号を持っている者はほとんどいないという。


 魔物グルメ……名称からすぐに魔物を食べることが取得条件だろう。しかも、もりもりたくさん食べることだ。

 普通の人間なら、魔物の呪いで死んでしまう。そのため、これを取得できた人間は、もしかすると世界で唯一人の可能性がある。


「魔物グルメか……。私はまるで魔物しか食べていないみたいに見えちゃうな」


 まさにその通りだった。

 実際クラリスは、迷宮に閉じ込められてから、一ヶ月ほど魔物しか食べていなかった。


「何か効果があるかもしれない。鑑定してみよう」


 魔物グルメ:魔物を食べることをこよなく愛する者に送られる称号。

       食べることで得られる効果が上昇する。

       さらに魔物を美味しく調理できる。


 クラリスにとって、とても良い称号だった。


「いままで以上の効果を得られる! 称号は今のボク向き。それにもっと美味しく魔物が食べられる!」


 じゅるるる……。

 今でも美味しくて、狩りまくりだった。

 それが今以上なんて、考えただけでよだれが出てしまいそうだ。


 レベル80になったら、あの大きな魔物にチャレンジしようと思っていた。

 少しだけ、予定変更だ。

 まずはこの称号の力で、魔物がどれだけ美味しくなってしまうのだろう。


 食への衝動は抑えきれなかった。


「デッド、行くよ! もっと食材を集めないと!」

「キュル!」

「今日は魔物パーティー」

「キュルルル♪」


 あの危険な魔物以外、この階層に生息する魔物を片っ端から狩っていくことにした。

 すでに70階層は彼女にとって、庭のようなものだ。


「待てぇ~! デス! この待てぇ~、デスデス! もうっ、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス……」


 あっという間に魔物の山が築き上げられていった。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。

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