表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/48

16.二つ名持ちと魔法使い

 魔法はクラリスに通用しない。

 それを見せつけても、エンシェントトレントは黙ってはいなかった。

 今度は連続で風魔法【エアカッター】を放つ。


「デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス! もう終わり?」


 【エアカッター】をすべて即死させる。鋭い風のうねりは跡形もなく消えた。

 まだまだMPがあるクラリスは余裕綽々。

 それに比べて、エンシェントトレントのMPは残り少ない。


 つい先程はクラリスを配下のアークトレントを使って取り囲んで、優位に立っていたはずだった。

 しかし、いつの間にか、立場が逆転していた。

 たった一つのだけの魔法しか使わない魔法使いに追い詰められてるのだ。

 自分を見て恐れて逃げようとしていたクラリスにだ。


 エンシェントトレントが手をこまねいているうちに、彼女はここぞとばかりに、アークトレントを一掃していく。


「デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス」


 ひたすら連呼の嵐。

 焦りをにじませるエンシェント。

 こうなったら、奥の手である風魔法【サイクロン】を出すしかない。

 詠唱は長いし、効果範囲も大きい。

 配下のアークトレントを巻き込んでしまうだろう。


 だが、その配下もクラリスよって、次々と即死させられている。

 全滅するのも時間の問題だ。

 それなら、クラリスもろともやってしまおう。配下などは時間をかけてまた増やしていけばいいのだ。


 エンシェントトレントはニヤリと笑った。

 そしてすぐに風魔法【サイクロン】の詠唱に入った。


 クラリスはそれにすぐ気がついた。

 しかし、アークトレントが勢いを増してきて、邪魔をしてくる。


「これは……」


 クラリスの足元に風が巻き起こり始めた。

 【サイクロン】発動の予兆だった。


 風魔法の上位魔法を【デス】できるのか?

 彼女の中のデス感が言ってくる。

 それを信じて、クラリスは即死魔法を放つ。


「デス!」


 風はかき消される。

 【サイクロン】は発動前に消滅したのだ。

 クラリスは確信した。

 この【デス】は、魔法を即死できる。

 それが、中位魔法だろうが、上位魔法だろうが関係ない。


 しかも、今まで失敗していない実績から、対魔法においては成功率100%を思わせる。


 エンシェントトレントは大きな体を後退させる。

 明らかに弱気になっていた。

 すでにMPは、ほとんど残ってはいない。隠し玉だった【サイクロン】に残ったMPを注ぎ込んだからだった。


 そして、残りはただ一体。

 エンシェントトレントのみ。


 にじり寄るクラリス。口にはアークトレントの枝を咥えている。

 そして、あろうことか……バリバリと食べ始めたのだ。


 美味しくいただいた後、彼女の視線はエンシェントトレントへ移った。

 そして舌なめずりをして見せた。


 食われる!?


 そう感じた途端、エンシェントトレントはクラリスへ向けて突進していた。

 歩みは遅くとも、図体は大きい。


 体当たりしたら、あのひ弱そうな人間はひとたまりもないだろう。

 MPのほとんどない魔物にとって、捨て身の攻撃だった。


 デッドがそれを止めようと、炎を吹きかける。

 体は燃え上がるが、歩みは止まらない。


 クラリスは逃げることなく、詠唱する。


「デス!」


 エンシェントトレントは即死しなかった。

 やはり、二つ名持ちの魔物。

 そう簡単にはデスできない。


 クラリスは連続で唱える。確率が低いなら数で勝負に出たのだ。


「デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デスッ!」


 エンシェントトレントは即死しなかった。

 確率はとても低いようだ。

 その結果に、魔物は自身の優位を確信する。

 一時は焦りはしたが、大したことはない。

 所詮は即死魔法だ。

 このまま、体当たりで押しつぶしてやる。


「デス!」


 まだやるのか。無駄なことを!

 そう思っていたエンシェントトレントだったが……。


 大きな音を立てて、地面に転んだ。

 なにが起こったのか……まったくわからないようだ。


 立ち上がろうとして、自分の足――根が無くなっていることに気がついた。

 どうしてだ。

 これをやったのは、あの人間しかいない。

 見据えた先にいたクラリスは悠然としていた。


「ボクは思ったんだよ。即死魔法で全部を殺そうとするから確率が低いのなら……もし部位破壊として即死魔法を使ったのなら、確率を上げれるかもって」


 彼女の狙いは当たっていた。

 見事に魔物の根だけを即死させたのだ。


「もうこれで勝敗は決したね」


 後は切り崩すように、デスで部位破壊をしていけばいい。

 エンシェントトレントは、枝を使ってどうにか立ち上がろうとするが、時すでに遅し。

 クラリスは大きく息を吸い込んだ。


「デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス! はい、できあがり!!」


 生え散らかされた枝を次から次へと即死させていく。

 あれほど緑豊かだった魔物の頭はスッキリと無くなっていた。


 見るも無残な丸太になってしまった。

 身動きすら、もうできない。

 されるがまま状態だ。


「せめて、苦しまないように……デス!」


 丸太となって弱りに弱り切ったエンシェントトレントはあっさりと即死した。


「やった! レベルも上がったし! 大収穫!」

「キュキュキュキュ♪」


 クラリスとデッドはハイタッチで喜び合う。

 

 先程、アークトレントの枝をつまみ食いをしたが、いやはやなんとも香ばしく美味しい。

 その味はナッツだ。

 しっかりと上質な油の含んでいて、噛むと柔らかな甘味を感じる。

 デッドの炎によるロースト具合も抜群だ。


 またしても、いけない、いけないと思いつつ……よだれがじゅるり!


 なんと言っても二つ名持ちだ。

 アークトレントを超える美味しさを秘めているに違いない。

 そう思うと、やっぱり……じゅるりだ。


「デッド! いい感じにロースト!」

「キュッ!」


 デッドは炎で絶妙なローストをしてみせる。

 香ばしい匂いが辺り一面に広がっていく。


 これだけで、アークトレントを超えると断言できる。

 クラリスは出来上がったエンシェントトレントのローストにナイフを入れる。


「よいしょっと! はい、デッドの分」

「キュキュッ」


 一緒にかぶりつく。

 うまっ~!! うますぎる~!!


 命がけの戦い。

 その後の食事は格別だ。


「二つ名持ちがこんなに美味しいなんて……アークトレントの何倍も濃厚!!」

「キュ~♪」


 これは癖になりそうだ。

 携帯食として、持っていくことに決定!


「そうだ! レベルも上がったし、【デス力】も確認しないと」


 ライセンスカードを取り出して、ステータスを確認する。


・クラリス(15歳)人間♀

 魔法使い《Lv62》

 【HP】 :550  (+10)

 【MP】 :2950 (+5)

 【力】  :108  (+7)

 【魔力】 :1370 (+2)

 【敏捷】 :125

 【運】  :10

 【デス力】:882


 レベルが2上がっている。それに伴ってステータスもいい感じに上昇!

 デス力は425から882へジャンプアップ!


 二体の魔物を食べたからだ。しかも、そのうち一体は二つ名持ちだ。

 大幅な上昇は、その影響が大きかった。


 そして、気になる点がある。

 各数値の横に見慣れぬものが現れていた。

 カッコで別に数値が追加表示されている。


「もしかして、二つ名持ちを食べたからかな?」


 クラリスの言う通り二つ名持ちを食べたからだ。

 そして、これはステータスボーナスとして、彼女に与えられる力だった。


「レベルアップ以外にも、ステータスを上げれる方法があったなんて知らなかった」


 普通の人間は魔物が食べられない以上、このようなことが起こるなんて知られていないのは当然だった。

 それにこの現象が誰にでも起こるとは限らない。

 クラリスは魔物を食べて【デス力】が発現した。

 その特別な体質にゆえに、今回のステータスボーナスも発生したのかもしれないからだ。


「どんどん人間離れしているような気もしないでもないけど……この迷宮で生きていくには助かる」


 クラリスは頭に角でも生えてきていないかを確認しながら呟いた。


「大丈夫みたい。まだ人間」


 ほっと一息を付いていると、デッドがクラリスの袖を引っ張った。


「どうしたの?」

「キュッ!」

「なにあれ……」


 トレントたちを伐採しまくったことで、辺り一帯が開けた。

 その見通しが良くなった先に、クラリスが見たこともないものがある。

 明らかに人工物と思われる建物が鎮座していた。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ