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14.密林と魔法使い

 階層を下へ下へと降りていくクラリス。

 初めての魔物を見つけたらまず鑑定する。

 レベルやステータスを把握して、自分の【デス力】と比較することを忘れなかった。


 デスできそうな魔物から倒しては、食べる。

 【デス力】を強化してから、強い魔物に挑む。

 その繰り返しだ。


 デッドはクラリスのサポート役に徹しており、詠唱しやすいように配慮を欠かさない。


「いい感じだね、デッド」

「キュ♪」


 クラリスのレベルは60に達していた。


・クラリス(15歳)人間♀

 魔法使い《Lv60》

 【HP】 :530

 【MP】 :2850

 【力】  :105

 【魔力】 :1330

 【敏捷】 :120

 【運】  :10

 【デス力】:325


 ステータスは彼女が言う通り、いい感じに育っていた。

 これほどのレベル帯の冒険者は、この迷宮ではいないだろう。

 並の戦士なら、素手で倒せそうな【力】も得た。

 これで荷物運びも楽になった。


 倒した魔物の革で大きなリュックを作成したので、その中にはドロップアイテムがたくさん入れてある。


 地上に戻ってこれをギルドに見せたら、腰を抜かしそうだ。


 【MP】と【魔力】は飛躍的に成長しており、通常の魔法使いでは考えられない数値だ。

 ギルドの受付嬢エステルから、元々【MP】の数値が高いと言われていた。

 それが、【魔力】まで伸びてくるとは思ってもみなかった。

 どれほど高くなっても、クラリスは即死魔法【デス】しか使えないため、いまいちその力を使い切れていない。


 それでも魔法使いなら【MP】と【魔力】はとても重要な要素として他から見られる。

 この数値なら、文句なしに驚かせられるだろう。


 最後に【デス力】だ。

 これはクラリスだけに現れた特別なものだ。

 いままでこのようなステータスを持っている人を知らない。


 即死魔法【デス】の確率を上げる効果がある。

 高ければ、高いほど強力な魔物に【デス】が効くようになる。


 それが325まで上がっていた。


 この数値にするまで、クラリスは魔物を食べて、食べて、食べまくった。

 ダークスパイダーを食べて虫を克服した彼女は向かうところ敵なしだった。


 カラフルな色合いが特徴の蛾の魔物パープルモス。

 素早い飛行ができるトンボの魔物サンダーフライ。

 緑色の奇っ怪な形をした芋虫の魔物モッグキャタピラー。


 どれも思い出しただけで、うっときてしまう見た目の魔物だった。

 しかし、【デス力】を上げるためには、食べるしかない。


 口に入れたら見た目に反して美味しいので、困ったものだ。

 いくら克服したといえど、このところ魔物に虫比率が多すぎる。


 そろそろ、違う系統の魔物が食べたい!


「虫はもう嫌!」

「キュ!」

「違うものを食べさせろ!」

「キュキュ!」


 順風満帆な冒険とは裏腹に、クラリスは内心で荒れていた。

 やはりここは獣系の魔物がいい。


 あの初めて食べた魔物――ベヒーモスのような肉汁たっぷりでやわからな食感が忘れられない。


 もう一度、あの味を!


 思い出しただけで、よだれが出てしまう。


「まともな魔肉が食べたい!」

「キュッ!」


 デッドも同じ意見だ。

 虫は飽きたと言わんばかりに火を吹いた。


「でも今はこれで我慢」

「キュ~」


 クラリスはポケットから、携帯食用のサンダーフライの羽を取り出した。

 バリバリバリバリバリバリバリバリ。

 もぐもぐもぐもぐ。


 煎餅だ。パリッとしていて、サクサク。

 ほんのりとした塩味が絶妙。

 何枚でも食べられそうな中毒性がある。


 気をつけておかないと、せっかくの携帯食がなくなってしまう。

 虫はもうたくさんだと言っておきながら、またしても食べるクラリスだった。


 デッドがクラリスの肩から飛び出して、一直線に進んでいく。


「キュ!?」

「あったの? 下への階段!」

「キュキュキュキュ!!」


 どうやら見つけたようだ。

 デッドは鼻が利く。

 下の階層からのこことは違った匂いを嗅ぎ分けていた。


「よしよし、いい子、いい子」

「キュ~♪」


 デッドが階段を見つけてくれるようになったため、探索も一層楽になっている。

 たしかに下の階段があった。


「ここから70階層……」


 ここまで階層は寒かった。

 それが、階段からは暖かく空気が吹き込んでくる。しかも、ムンとした湿ったものだ。


「また気候が変わるのかも」

「キュ?」

「大丈夫だよ。降りよう」

「キュキュ!」


 一段一段、慎重に降りていく。

 下に進むごとに、気温と湿度の上昇を感じた。


 肌にまとわりつくような空気だ。


「もうすぐ出口……えっ」


 70階層は密林だった。

 先程まで迷宮のような入り組んだ構造はしていない。

 ひたすら大きな空間が広がっている。

 そこに所狭しと背の高い木々が生えているのだ。


「天井に太陽に似た物がある」


 頭上には燦々と輝く巨大な水晶。

 それが太陽のように木々を照らしている。


「なんだか……久しぶり緑を見た気がする。しかも、明るい」


 薄暗い迷宮から、いきなりの密林。

 見渡していると、ここが迷宮であることを忘れてしまいそうだ。


「湿度は高いけど、空気は美味しい」

「キュ♪」


 デッドと一緒に深呼吸。

 やっぱりうまい!

 カビ臭い空気から解放されて、リラックスしたいところだが、


「やっぱりここは迷宮だよね」


 遠くの方で木々が揺れていた。

 何か大きな生き物が木々を薙ぎ倒しながら進んでいるようだった。

 明らかに強そうな感じがする。


「あそこは避けて進まないと。デッド、空から監視をお願い!」

「キュ!」


 この階層は天井がかなり高い。

 デッドの翼が役に立つ。事前にあの魔物らしき気配を見てもらう。

 鬱蒼としているため、細かくは見れないが、木々の揺れを見ればどこにいるかくらいはわかる。


 クラリスはそれと下への階段も探すように頼んだ。


 デッドは空高く飛び立ち、まずは密林を一周して戻ってくる。


「どうだった?」

「キュキュキュ!!」

「見つかった。よしっ! どっち?」

「キュ~」


 デッドが翼で示した方角は、まさに要注意としていた場所だった。


「えええっ、あそこなの……」

「キュッ!」


 デッドの鼻は間違い。

 今まで違ったことはない。


「結局、戦うことになりそう」

「キュキュキュキュ」

「えっ、美味しくいただけばいいって!?」

「キュ~」

「それは無事に倒せてからっ!」


 気の早いデッドを宥める。

 最近、魔物を見たら食べ物という認識をしてしまって困る。

 誰に似たのだろうか?


 首を傾げるクラリスだった。


「あの距離では鑑定ができないし。まずは【デス力】を上げるしかない」


 戦いに心の余裕を持つためには、即死魔法【デス】が効くようにすることだ。

 つまり、【デス力】を上げることだ。


 この層までデスしてきたクラリスには、デス感が備わっている。

 鑑定するまでもなく、感覚であれはまだ無理そうだとわかるのだ。

 的中率はかなり高い。


「食べよう……あれ以外を!」

「キュ♪」


 その言葉を待っていましたとばかり、デッドは大はしゃぎ。

 クラリスは密林へ踏み込んだ。

 もちろん、あの魔物とは違う方向へ。


 背の高い木々によって、地面には少しの光しか届かない。

 暗いというほどではないが、明るいとも言い切れない。

 そのせいで、地面には草があまり生えていない。


 木々の枯れ葉が積み重なっているくらいだ。

 ふかふかしており、歩きやすい。


「魔物はどこかな……」

「キュ!?」


 デッドが頭上に何かいることを、教えてくる。

 見上げれば、木に何かがなっている。


 それは真っ赤の色をしており、大きな林檎のようだった。


「鑑定!」


・バルーンアップル《Lv62》

 【HP】 :2230

 【MP】 :1130

 【力】  :190

 【魔力】 :390

 【敏捷】 :0

 【運】  :5


 魔法:水、雷

 弱点属性:火

 ドロップアイテム:金の林檎


 なんてことだ。この魔物……魔法が二属性も使える!

 クラリスは即死魔法【デス】しか使えないというのに。


「魔物のくせに……くっ」


 彼女は嫉妬をしていた。

 しかし、今は戦闘中だ。


 あの魔物は魔法に長けているようだ。


「デッド! 先制攻撃っ!」

「キュキュキュキュキュキュ」


 連続ファイヤー! 大きな火の玉がバールンアップルを襲う。

 木に寄生して栄養を得ているため、動かない。


 そのため、連続ヒット!

 メラメラと燃え上がる。

 弱点であることで、バールンアップルは風前の灯火だ。


 鑑定でわずかに【HP】があることを確認する。

 バルーンアップルもこのまま黙ってはいない。

 反撃とばかりに魔法を詠唱し始める。


「遅い! デス!」


 間髪入れずにクラリスの【デス】が炸裂する。

 バルーンアップルは即死した。


 木に寄生ができなくなり、ポロリと落ちてくる。

 そして、クラリスの足元に転がってきた。


 林檎が焼けた良い匂い。

 美味しい魔肉を望んでいたが、スイーツも悪くない。


「いただきま~す!」

「キュ~」


 仄かな酸味。

 その後から、蜂蜜でもかけたのではないか……と思えるほど、蜜を持った焼き林檎の味が口いっぱいに広がっていく。


 虫しか食べていなかったクラリスを優しく癒やしてくれるようだった。


「やっぱり、癒やしは必要」

「キュキュッ」


 デッドも激しく同意。

 戦いの疲れは、甘い物に限る。


 それに、これは見た目がいい。裏側は人のような顔しているが、見ないでおけば問題なし。


 見た目は大きな林檎。

 実にいい形をしている。


 妄想しながら、食べる必要がないので、その点も高評価だ。

 加えてドロップアイテムもゲット!


「毎回こういった魔物ばかりならいいのに」


 本音を漏らしてしまうクラリス。

 しかし、そうは問屋が卸さない。

 なにせ、ここは危険な魔物が闊歩する迷宮なのだ。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。


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