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13.デス力と魔法使い

 蜘蛛をたくさん食べて、大満足!

 お腹いっぱいだ。


 クラリスは虫を食べることに戸惑いがあった。

 それも一線を越えてしまえば、平気になってしまった。


「慣れって……怖い」


 蜘蛛をバリバリと食べれるようになってしまった。

 なにか……大事なものを失ってしまったような気がしてならないクラリスだった。


 そして魔物を食べることで、今回は腹痛が起きなかった。


「もしかして、これも慣れてきたのかな」


 これは人外っぽくなっていて、また怖い。

 もしあの腹痛が襲って来られても、大変なのでいいとしよう。

 とりあえず魔肉を食べても、大丈夫な耐性を得たことにしておく。


「そうだ。ステータスはどうなっているかな」


 ライセンスカードの表記を確認する。


・クラリス(15歳)人間♀

 魔法使い《Lv24》

 【HP】 :60

 【MP】 :650

 【力】  :10

 【魔力】 :220

 【敏捷】 :20

 【運】  :10

 【デス力】:150


 まずは蜘蛛を食べる前からわかっていたことから。

 レベルが1上ったことで、他のステータスも上昇していた。

 本来ならたくさん戦って、レベルが上がるはず。


 しかしここは50階層だ。

 湧く魔物が質が違う。

 たった一匹でも、低レベルのクラリスをレベルアップするだけの経験を、余裕で得られる。


「一気にレベルアップできそう。それより、【デス力】だよね」


 【デス力】が50上がっている。

 蜘蛛を食らったことでたしかに伸びている。


 これはもう間違いなさそうだ。

 

 魔物を食べることで、即死魔法【デス】が強化される。

 今まで倒せなかった魔物を倒せるようになる。


 クラリスの心が踊り出す。今までずっと無理だと思っていたことが、解消される希望が見えてきたからだ。


 もっと魔物を食べれば、強くなって自力で迷宮から脱出できるかもしれない。

 蜘蛛の死体はまだ残っている。


「よしっ、もう一度食べよう!」

「キュ!」

「えっ、デッドも食べるの?」

「キュキュ」


 一緒にもぐもぐタイム。

 デッドが炎を吐いていい感じに焼き直してくれる。

 熱々のパン(蜘蛛)を頬張る。


 お腹いっぱいだと思っていたら、まだまだ食べられる。

 魔法使いは食事を摂って、それをMPへ変換する。

 その中でクラリスはMPをたくさん保有するため、群を抜いた大食らいだ。


 レベルアップしたことで、更に食べる体になってしまっていた。


「ふぅ~、食べた。食べた」

「キュキュキュ♪」


 デッドはお腹がパンパンになってしまっていた。

 自慢の翼で飛べなくなっており、地べたに転がっている。

 あまりにもまんまるなので、しっぽの生えたボールのように見えてしまうほどだ。


 一方クラリスのお腹は……やめておこう。


「さあ【デス力】はどうなっているかな?」


 意気揚々とライセンスカードの【デス力】表示を見てみる。


「えっ」


 何も変わっていなかった。

 こうなってしまえば、答えは簡単だ。


「同じ魔物だと、アップしないんだ」


 そういうことだ。

 ベヒーモスも食べてみたが、同じ結果だった。

 お腹は満たされるが、本命の【デス力】は上がらない。


 もっと力をつけて、この小さな空間から出て行きたかった。


「この階層で一番強そうな蜘蛛を倒したんだから、なんとかなるよね」

「キュ!」


 しばしの休息をしたクラリスは立ち上がる。

 頷くデッドを肩に乗せて、お世話になったこの場所から旅立つ。


「上の階層への道を見つける。デッドも協力して」

「キュキュ!」


 隙間から出たクラリスは、こそこそと身を隠しながら進むことはしない。

 堂々たる歩みだった。


 天井に潜む蜘蛛たちは襲われる前に先制攻撃だ。


「デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス、デス」


 落ちてくる蜘蛛は躱しながら、前へ前と歩いていく。

 レベルも凄まじい勢いで上がる。


 この魔肉に要はない。ただし、たまにドロップアイテムが落ちているので、それだけは拾っておく。


 ドロップアイテムはミスリルの糸だ。

 魔力がよく流れる金属を糸状にしたもの。

 ちょっとやそっとでは切れることがなく、とても頑丈な品だった。

 今のところ、何か使えそうなことは思いつかない。


 50階層のドロップアイテムを捨てておくのはもったいなかった。


 途中、もじゃもじゃの魔物にも遭遇する。

 すかさずデス!


 まだ食べていない魔物は大事な存在だ。

 もちろん、美味しくいただく。


 食べてみると、もじゃもじゃしたところが、綿あめのように実に甘い。

 歩き疲れてきたクラリスにとって、この甘さが身に染みる。


 【デス力】も上がっていい感じ。


 即死魔法【デス】がまた強くなってしまった。


 ここまでくれば、50階層の魔物は100%の確率でデスできる。


「10回中1回は効かなかったのに、すごい!」


 あれほど苦戦した蜘蛛が今では、低階層のスライムと同等の存在となっていた。


「でも、蜘蛛の糸だけは気をつけないと。デッドよろしくね!」

「キュ!」


 戦いに慣れてきたデッド。

 蜘蛛の糸がクラリスに向けて飛んできたときには、炎を吹いて燃やすことができるようになっていた。


 また、空を飛べることで魔物の注意をクラリスから逸らすこともできる。


 クラリスにとって有能な相棒だ。


 50階層では敵なしとなったクラリス。

 ここの主のように、デスしまくる。

 探索は順調で、宝箱を一つ見つけてしまうほどだ。


 中に入っていたのは、鑑定のイヤリングだった。


「エピックアイテムが手に入るなんて」


 このイヤリングには見覚えがあった。

 仲間だった聖女が身につけていた。

 なんでも、鑑定のイヤリングは、目にした敵のステータスなどを知ることができるという。


 聖女はこのイヤリングの力によって、敵の情報をパーティーに教えてくれていた。

 これは戦いとって、とても心強い。

 初見の敵の能力を知ることができると、作戦を立てやすくなるからだ。


 試しにクラリスは、蜘蛛を鑑定した。


・ダークスパイダー《Lv50》

 【HP】 :1560

 【MP】 :230

 【力】  :213

 【魔力】 :90

 【敏捷】 :50

 【運】  :20


 魔法:なし

 弱点属性:光

 ドロップアイテム:ミスリルの糸


 自分と比べてHPが化け物だ。

 【デス】が無かったら、倒せるような魔物でなかった。


「なるほど、名前はダークスパイダー。光が弱点だったのか」


 そういったものの、クラリスには即死魔法しかない。

 弱点属性を想定した戦い方はできそうにない。


 それでも即死魔法を効率よく使うために、鑑定をするべきだろう。

 まずは鑑定してステータスを確認。

 今のデス力なら、ダークスパイダーのレベルなら余裕でデスできる。

 これを基準として、【デス】の成功率を考えていけば良さそうだ。


「でも、これから上に階層へ登っていくから、それほど気にする必要はないかも」

「キュ!」

「うんうん、だよね」


 良い物を手に入れて、テンションも上がってきた。

 一時はどうなるかと思ったが、この調子で上の階層への階段も見つけたい。


 そう思っていたクラリスだったが……。


「なんで、見つからないの!?」


 探しても探しても上への階段はどこにもない。

 あるのは、下への階段だけ。


「もう一度探してみよう。デッドもよく見て!」

「キュ~!」


 一緒になって、もう一度探索したが……同じ結果だった。


「上層へ登れないの!? 聞いてない」


 これはギルドも知らない。

 なぜなら、攻略は50階層まで達していないからだ。


 事前情報として教えてもらえるわけがない。この迷宮を作った大魔法使いカトリア以外、誰も知らないことだった。


 そして、クラリスの目の前には下りの階段がある。


「このままここへ居ても、何も変わらない。最下層へ行けたら出口があるかもしれないし」


 帰り道がない以上、クラリスに残された道は一つしかなかった。

 進むしかない。

 クラリスはゆっくりと目を瞑って、ネイリングをぐっと握った。

 心の中で、「うまくいく」と願掛した。


「デッド、行くよ」

「キュ!」


 肩に乗せたデッドの頭を撫でる。

 喜ぶデッドに癒やされつつ、クラリスは静かに階段を降りて行った。


 最下層には彼女が目指すもの――大魔法使いの知識を集めた図書館があるという。

 そこでクラリスが即死魔法【デス】しか使えない理由がわかるかもしれない。

少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価をもらえると嬉しいです。


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