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異世界転移したけど推しが活躍する予定の新刊を読みたいから帰りたい。  作者: 恵ノ木
第一章 エストティティア王国 王城
8/10

神話から繋がれていた

 ______この世界には当初、人間は存在しなかった。魔族も、獣人も、存在しなかった。


 多くの怪物と動物が、大地全体にはびこっていた。

 ある日神はこう思った。「賢い動物を作ってみよう」______



神様ってこう、なんか、時々気まぐれだよな。


千春は、何日か前に男に聞かされた内容を、頭の中で巡らせていた。



______こうして獣人を作ったが、彼らは神の恩を忘れて、やりたい放題に、環境を荒らした。彼らは魔法が使えたが、その魔法で、どんどん森を燃やしていった。神はあきれ返った。


 今度は、魔族を作った。獣人の力を抑えるため、獣人より強く、そして獣人よりも賢い、神の声をちゃんと聞く存在を作った。彼らはその力で、あっという間に獣人たちを懲らしめて、世界を安定させた。しかし、神への信仰心は世代が変わるうちに薄れ、神をも滅ぼし、自分が真の世界の頂点になろうとしだす者が現れた。神は焦った。


 そして最後に、人間を作った。人間には、ほとんど力を与えなかった。その代わり、魔族の何倍もの、獣族の何十倍もの知恵を、人間には与えた。


 人間はその知恵を使って、少ない魔力で道具や武器を作った。自然にあるものを加工して使うのだから、環境を劇的に破壊する事はない。そして、持ち前の知恵と神様の御加護で、人間は魔族をやっつけることに成功した。魔族は海や、大きな山の向こう側に逃げて行って、それ以降、悪さをする事はなくなった______



いや、自然破壊は科学でも劇的にできるだろ、と思ったら、この世界、灯りは火か魔法で、蛍光灯などは無いらしい。産業の進歩が私たちの世界より遅く、電話もテレビも、電化製品は存在しないってのは、後々知った話。



______獣人は、魔族よりもトロいので、人間の世界に残った。神様は獣人には飽き飽きしていたので、人間に、獣人を1匹たりとも残さずに全部殺せと言った。

 しかし、心優しい青年が、

「彼らを殺してはいけません。彼らだって、贖罪の機会は与えるべきです」

 と言った。神は感銘を受けて、獣人を生かした。その監視役を、人間は命じられた______


 

心優しい、かなぁ。

ぐるぐると渦巻く泥の土が、心の中にある様な感覚になる。



 ______獣人は、人間の監視下で贖罪を続けることになった。しかし、監視の目を盗み、悪さを始める獣人が多くいた。悪い事をすれば、それだけ罪を償う時間が延びる。だから、人間は、他の獣人たちのことを思って、悪い獣人はその場で殺すことにした。


 また、種族ごとに能力が違うので、人間は、種族別に監視の目を光らせることにした。

 犬族は賢い。彼らは人間の言う事によく従う。

 猫族は自分勝手だ。取り柄は愛嬌があることくらい。

 鼠族は、なんと言ってもその罪の重さだ。彼らはかつて、脅威的な闇の魔力因子を、世界中に飛ばした。それは人間だけの心を破壊するもので、魔法にかかった人間は意味もなく泣き叫びだした。神はその状況を見て怒り、5年後、「今後一切、鼠族は魔法が使えない」ということを決定した。しかしそれで罪が許されるはずもない。能力も、知恵も、何も無い、卑しい存在の鼠族は、過酷な労働の中で、その罪を償っていかなければならない。


 主な獣人の種類はこの3つだが、他にも鳥族、狼族など、少数の種族が世界に散らばっている______



一通り思い返して、人間にとって都合の良すぎる神話だなと思った。ちなみに、現在でも神と会話できる人は各国数人ずつくらい存在しており、そのどこでも、この話は共通しているだとか。


神様は私自身が会ったことがないので、どうしても、信じないという選択肢が生まれてしまう。何故獣人の人々は、抵抗しないのだろうか。いや、しているのか?


知らないことが多すぎる。もっとチーナと沢山話したかった。

窓辺に進み、城下を見下ろす。大手を振って歩くのは、誰もかれも人間ばかり。まるで獣人なんて存在しない様だ。


……チーナの面影は、どこにもない。

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