出会い
それから体感で約1時間、千春は王から尋ねられる、ゆったり世間話に応え続けた。
今日のそっちの天気はー?とか、好きな色はー?とかから、今日の朝ごはんはー?など、本当に、些細なことばかり。
答えましたよ、答えましたとも。面倒だったけれど、女騎士の方が、めちゃくちゃ睨んでくるんだもの!!
今はそんな問答も終わり、やはり何の説明もないまま、王城のどこかの個室に放り込まれている。鍵もかかっていて抜け出せない。言わば軟禁状態。
閉じ込められてから、おそらく3時間が経過した。ここはゲストルームのようなものだろうか。だだっ広い部屋には、ソファ、テーブル、そして今千春が腰掛けている、超絶ふわふわなベッドがあるくらいで、暇を潰せる本も、菓子も、何もない。そして時計も無い。
窓はあるが外は曇っているので、日差しの角度から時間を割り出すこともできない。そもそも1日は24時間なのだろうか?
三回のノックの音の後、失礼しますと、柔らかい声。
ガチャリと鍵の音の後、開かれた扉の隙間から、かすかに香ばしい匂いが香る。そういえばお腹が空いていたかもしれない。
「ご夕食をお待ちしました」
柔らかい香り。肉と温められた乳製品の。シチューだろうか?そういえば王に好物を聞かれたときに、シチューのことを伝えた覚えがある。なるほど、さっきの無意味のように感じた時間は、おもてなしをするためだったのか。よかった。どうやら歓迎されているようだ。
開かれた扉の先。子供だろうか、小さいシルエット。白いエプロンのような前掛けをつけた衣服を身に纏い、木製の四角いプレートを持った、ネズミのようにでかい耳と髭が生えている、ネズミ頭の子供が立っている。
……あれ?ネズミ頭?
「こちらのテーブルに置いてもいいでしょうか?」
見間違いではないよな?
顔が、毛むくじゃらで。人間よりも高い位置に耳が生えてて、もちろん人間みたいな形などではなく。
テーブルに食べ物を置く手も、毛むくじゃらでふわふわ。
「あの、ではその、私はこれで」
可愛らしい高い声を残しつつその場を去ろうとしたネズミさんに、とっさに駆け寄る。
「待って!!」
「ちゅやぁああ!!」
びっくりして一瞬飛び上がったネズミさんは、千春の目を見てカタカタと震える。
頬が熱い。にやけが止まらない。初めて見た。本物だ。本物の獣人だ……!!
「なななななな、なんの、ご、御用でしょうか…!?」
おっと、怖がらせてしまったようだ。帰ってもらったほうが本人のためかもしれないけれど、しかしなぁ。せっかくの獣人。もっと見ていたい。
そうだ。
「この世界のこと、教えてもらってもいいかな?」
「は、はぃいい?」
あわあわしているネズミさんに、キラキラした目を向ける。
この子からいろんな情報を聞けるのだったら、顔を眺められるし、世界のことも知れるし、一石二鳥だ!!




