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異世界転移したけど推しが活躍する予定の新刊を読みたいから帰りたい。  作者: 恵ノ木
第一章 エストティティア王国 王城
3/10

出会い

 それから体感で約1時間、千春は王から尋ねられる、ゆったり世間話に応え続けた。

 今日のそっちの天気はー?とか、好きな色はー?とかから、今日の朝ごはんはー?など、本当に、些細なことばかり。

 答えましたよ、答えましたとも。面倒だったけれど、女騎士の方が、めちゃくちゃ睨んでくるんだもの!!


 今はそんな問答も終わり、やはり何の説明もないまま、王城のどこかの個室に放り込まれている。鍵もかかっていて抜け出せない。言わば軟禁状態。


 閉じ込められてから、おそらく3時間が経過した。ここはゲストルームのようなものだろうか。だだっ広い部屋には、ソファ、テーブル、そして今千春が腰掛けている、超絶ふわふわなベッドがあるくらいで、暇を潰せる本も、菓子も、何もない。そして時計も無い。


 窓はあるが外は曇っているので、日差しの角度から時間を割り出すこともできない。そもそも1日は24時間なのだろうか?


 三回のノックの音の後、失礼しますと、柔らかい声。

 ガチャリと鍵の音の後、開かれた扉の隙間から、かすかに香ばしい匂いが香る。そういえばお腹が空いていたかもしれない。


「ご夕食をお待ちしました」


 柔らかい香り。肉と温められた乳製品の。シチューだろうか?そういえば王に好物を聞かれたときに、シチューのことを伝えた覚えがある。なるほど、さっきの無意味のように感じた時間は、おもてなしをするためだったのか。よかった。どうやら歓迎されているようだ。


 開かれた扉の先。子供だろうか、小さいシルエット。白いエプロンのような前掛けをつけた衣服を身に纏い、木製の四角いプレートを持った、ネズミのようにでかい耳と髭が生えている、ネズミ頭の子供が立っている。


 ……あれ?ネズミ頭?


「こちらのテーブルに置いてもいいでしょうか?」


 見間違いではないよな?

 顔が、毛むくじゃらで。人間よりも高い位置に耳が生えてて、もちろん人間みたいな形などではなく。

テーブルに食べ物を置く手も、毛むくじゃらでふわふわ。


「あの、ではその、私はこれで」


 可愛らしい高い声を残しつつその場を去ろうとしたネズミさんに、とっさに駆け寄る。


「待って!!」

「ちゅやぁああ!!」


 びっくりして一瞬飛び上がったネズミさんは、千春の目を見てカタカタと震える。


 頬が熱い。にやけが止まらない。初めて見た。本物だ。本物の獣人だ……!!


「なななななな、なんの、ご、御用でしょうか…!?」


 おっと、怖がらせてしまったようだ。帰ってもらったほうが本人のためかもしれないけれど、しかしなぁ。せっかくの獣人。もっと見ていたい。


 そうだ。


「この世界のこと、教えてもらってもいいかな?」


「は、はぃいい?」


 あわあわしているネズミさんに、キラキラした目を向ける。

 この子からいろんな情報を聞けるのだったら、顔を眺められるし、世界のことも知れるし、一石二鳥だ!!

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