6.中世ヨーロッパが前世?
お久しぶりです。ちょっと詰まってたのですが、やっとお届けです。
「そういえば、よっちゃんは今日何か買うの?」
「ううん。特に買うとか決めてないけど、何か面白そうなゲームがないか見に行こうと思って。それと『赤い糸の行方』の予約がそろそろ始まっているから、予約しようと思って。」
「あれ?あと一か月後の発売だったっけ?」
「うん。そうだよ。楽しみ~~~~。フフフ・・・」
よっちゃんのテンションが上がっている。
もう先ほどの出来事は完全に忘れているようだった。
さすが、ゲームマニアである。
ゲームの話になると他のことはどうでも良くなるようだ。
ゲームの話をしていると、トリスに着いた。
トリスに入って恵理は本、よっちゃんはゲームコーナーへとそれぞれ別れていった。
恵理は美香が言っていたラノベコーナーで、前世とか転生の話が載っている本を何冊か選んで購入した。
会計が済むと、よっちゃんも結局何かのゲームを買うみたいでレジに並んでいた。
「あ、恵理ちゃん!ちょっと待ってて」
「うん」
恵理は頷き、レジの横のスペースで待つ。
「おまたせー。」
「じゃあ、帰ろう」
帰り道、恵理はふと、よっちゃんなら前世のことをどう思うかなと考えた。
「ねえ、よっちゃん。」
「ん、なーに?」
「あのさ・・・よっちゃんって前世とかあると思う?」
「んー、どうなんだろう。でもゲームの世界に転生できたら幸せだよねーーー」
(・・・・うん。やっぱりいとこだ。美香と同じこと言ってる。)
恵理は話題を振ったことを後悔した。
家に帰ってから、何冊か買った本のうちの一冊を手に取る。
それを読もうとして、ふと手が止まる。
(今日会ったマークに似た人・・・素敵だったなぁ。・・・でも、名前も聞けなかった)
そう考えて、ちょっと暗くなる。
恵理は気分を切り替えて、本を読むことにした。
本を読み終えて溜息をつく。
期待して読んだものの、あまり参考にはならなかった。
他の本もパラパラと読んでみたが、内容はそれほど変わりがなかった。
大抵は、前世がこの世界にいた日本人で、何かの事故で死んで、ゲームの世界に生まれ変わるというパターンだけだった。もしかして違うパターンもあるかなと思ったのだ。
しかも大体主人公はふとしたことで前世をすべて思い出すという感じで、恵理のようにほんの一部しか思い出せないこともなく、どうやって思い出せるかヒントとなるようなことも見つからなかった。
(何かヒントになることでもと思ったけど、そう上手くはいかないか・・・)
少し暗くなってソファーにうつぶせになる。
ソファーの横にはテレビがあり、点けっぱなしになっていた。
何気なく顔をあげてテレビを眺めていたが、テレビの映像をみて固まってしまった。
昔の映画の再放送のようだった。
昔のヨーロッパの設定だろうか?
舞踏会でいろいろなドレスを着た貴族達が踊っている場面だった。
(昔の中世ヨーロッパが私の前世なのかも!?あのドレスの広がった感じも似ているし・・・)
「ただいま」
「あ、お兄ちゃん・・・。お帰り。」
居間のソファーで、前世のことを考えていたので、知也が帰ってきたことに気づかなかった。
「今日は早いんだね」
「あぁ。やっとテストも終わったしな。」
最近知也は試験勉強で忙しく、連日図書館で調べ物をしていたりして、帰りが遅くなっていた。
なのでこうやって話すのは久しぶりだった。
「・・・なぁ恵理。なんか悩み事でもあるのか?」
「え?ううん。そんなことは無いよ。」
「・・・・そうか?」
急いで否定したが、相変わらず鋭い。
けれど夢に関係した話は、ひどく心配されてしまうので、言わないことにした。
ましてや前世なんて、自分でもまだ半信半疑なのに、知也に言ったら呆れられるに違いない。
「あ、それよりもお母さんが焼いてくれたクッキーがあるよ。一緒に食べよう。」
「・・・そうだな。」
「じゃあ、コーヒー淹れるね。」
「恵理、明日は休みだろ。たまにはどっか行くか?」
「え?ほんと?!」
「ああ、テストも終わったからな。恵理の好きなところに連れて行ってやるよ。」
「やったぁ!じゃあ、駅前の新しいパフェ屋さん。あそこのパフェ食べたい。」
「おう、いいぞ」
最近できたケーキ屋さんがあるのだが、そこのパフェが美味しいと評判になっていた。
知也はあまり甘いものは食べないのが、嫌な顔せず付き合ってくれる。
「ありがとうお兄ちゃん!大好き~!」
ポンポンと頭を撫でてくれる知也。
小さい頃からこうやって頭を撫でてくれる。
もう子供ではないと思うのだが、こうやって撫でられると何故かうれしくて安心するのだ。
にこにことうれしそうに笑うとつられて知也も笑顔になった。