第9話 魔神獣ガイデア
砂漠をぬけた。
砂利まじりの大地から、岩山だけのなにもない、さっ風景な地域にはいる。
大きな岩山が目の前にあり、奥には森林地帯が見える。
深い森だな、ここに入れば追ってもまけるだろう。
「ゴゴッ、ゴゴゴゴゴッー、ゴゴゴッー」
岩山をぬけようとしたら、突然辺りが揺れ、地鳴りが発生した。
地震ではない、目の前の大きな岩山が突然、動いてきたのだ。
50メートルはある岩が浮き上がってきた。
原因がわかった。岩山ではなく、巨大な亀が地中から出てきたのである。
50メートルはある岩山をのせた、巨大な亀が全貌をあらわした。
高低差100メートル、全長300メートル以上の巨大な亀が岩山をのせた状態で目の前に現れた。
マジかよ、なんでこんなところでガメラと鉢合わせしなくてはいけないの?
岩山を乗せた全長300メートル級の亀が目の前に出現した。
こんなやつに襲われたらどうするんだよ。動き出しただけだよね。私の事なんか、まさか見てはいないだろう。
そう思っていたが、どうやら目的は私だったみたいだ。
甲羅から頭を出し、私の事をじっと見ている。黄色い水晶のような大きな眼で私を見ているのだ。
いきなり私に顔をむけ、口から青い炎をはいてきた。
「ゴゴゴゴッボシューン」
火炎放射器のような巨大な青い炎が私を襲う。
素早く左に回避して難を逃れる。
青い炎がふれた岩山の破片が、溶けてガラスのようになってしまった。
なんて高温なブレスをはくんだ。あんなの食らったらひとたまりもないぞ。
青色の炎だし、温度が高いのだろう。
もしかして、先ほど通った焼け焦げた大地はこいつがやったのか。
ここいら辺りでも、焼け焦げた匂いが充満していたんだよ。
範囲に焼けた大地が続いていたが、こいつがやった以外に考えられない。
巨大な亀は私の方を見ている。突然、私に話しかけてきた。
話をしてきたと言うより、テレパシーのような感じで伝わってきたのだ。
「腹が減った。春月の新月になったんだろう。
闇夜の空に強い光がさしてきたのだから。
われは贄を所望する。
すぐさまわれに贄を寄こせ。
さもなくば冬月の日と同じように、世界を灰にするぞ」
と言ってきた。
贄だ、生贄の事か?
こいつ、ここら辺りで生贄を差し出させる行為をやっているのか? 誰に対しておこなっているのだろう。
人間かそれとも亜人、獣人、魔獣、魔物?
魔物である私に話しかけてきた、魔物に対して食糧を要求しているのか?
もしかして誰でもかまわず、餌をたかっているのではないか。
なんでこんな巨大な亀が居るの?
こんなの居る時点でこの世界は異常だろうが。
こんなでかい図体してこの亀、どんだけ食うと思っているんだ。
と言うか、こいつ何を食べるんだ。
亀ッて草食だったか、いやなんでも食べる雑食だったのかな?
何を食べているとしても、まかりきれないぞ。
もしかしてこの辺りの草木が一本もなかったのは、こいつが食い散らかしているのか?
どうやらここら辺で起きている異常事態はこいつが関わっているらしいな。
今のところ私を食うみたいな事は、ないみたいだけど、敵対している感じはあるんだよな。
しかし、なんかさっき春月の新月とか夜空に光が差してきたって言ってたけどそれって何のことかな?
まさか光分散攻撃を使った時に強い光をさしたんだけどそれとは関係がないよね。
その光のせいで目を覚まし起きて来たとか、そんなことはないよな。
きっとたぶんないと思うので気のせいだろう。
汗はかかないはずなのに、体から冷えたものが漏れでて来る感じがする。
気のせいじゃないな、こいつ、夜空の光で目をさましやがったのか。
こんなの放置していたらえらいことになる。
ここで倒しておくか、いや殺しておこう。
こいつが目覚めたせいで他に被害がでてしまうと寝つけがわるい。
最上位の魔法を使えば倒せると思うんだけど、正直MPが気になる。
半分以上あるのだが、これから何が起こるかわからないからな。
! こんな巨大な亀にあう、これ以上の事がこれからあるのかよ。ないな、これ以上の緊急事態はありえないだろう。
ちぃ、私は中世の魔法ファンタジーの世界に来てしまったと思ったが、モンハンの世界に来てしまったようだ。
生きて帰れるかわからなくなってしまったぞ。
シューティングゲイトのやつ異世界って言っていたけど、あいつが行った異世界ともしかして違う世界に来ているのではないか、別の異世界に来たとしか思えん。
くそう、平穏な生活はここまでなのか。
いつも起きた時に、微妙に退屈だとか思うんだけど、その考えは今日から改めよう。
召喚魔法陣に入った事をこれほど後悔することになるとはな。
巨大亀は私の方を見ているけど、一向に近寄ってはこない。
もしかして、体が大きすぎて動くのが難しいのか、一歩も動こうともしない。
ブレスをはいた時に、疲れた感じがあったんだよな、目覚めたてで体調がもどっていない、それとも歳なのか。
そいう事であればやつを殺すのに絶好の機会ではないか。
無益な殺生は好まない方針だったが、今は別だ。
こんなバカでかい亀がいたらここら辺の生態系が狂ってしまうだろう。
現に焼けただれた大地が途方もなく続いていたからな。
こいつは退治しておいた方が良さそうか。
もう少しだけ様子を見て情報を探るか。
「おまえ、私の世話をしろ、そうでないとおまえを食ってしまうぞ」
巨大な亀が私に言ってきた。
「カチン」
おまえだと、なぜか不快感が増す。
「バカじゃねえのか、おまえ自分で動けよ、うすのろ亀が」
なぜかカチンと来たので悪態をはいてしまった。
完全にこいつと敵対したと判断する。
「なんだと、知恵のないローパーの分際でわれを侮辱する気か。
ミスティリア大陸を治めている9魔神獣の一柱、大地のガイデアさまに対してなんと言う口をほざく。
おまえらローパーは全員皆殺しだ。
種族そのものをわれの腹の中に納めてやろう」
そう言って、大きな体を揺さぶり動き出した。
えっ、私の種族のローパーって魔物をこいつは知っているのか?
腹の中に入れるとか言っていたので同種のローパーがこの世界にいるのか、それも食べてしまうのね。
それになに、9魔神獣の一柱って? 中二病設定がこの異世界にあるのか。
この世界にはそれぞれの地域を治める魔獣の長みたいのがいるのか?
こいつ、ミスティリア大陸を治めているとか言っていたな、そちらの事もちょっと気になるんですけど。
9魔神獣の一柱、大地のガイデアと名乗った巨大な亀はゆっくり起き上がり、森の方へ歩いていく。
もしかして、あちらの方角に、私と同じローパーがいるのかな?
ちょっと興味深いけど今はまずいか。
同じ種族の者がこの世界に居て、私のせいで被害があうと言うのは良くない話だ。
ならばやはり戦うしかないか、と言うかすでに戦うのは決めている。
ここは殺るしかないだろう。
あの巨体だが、倒せる方法は上位魔法で2つの魔法の選択があがる。
この世界では魔法の威力は増している。
おそらく問題なく倒せるだろう。
問題なのは大量のMPを使うのと、魔法が両方とも危険すぎて、あとでどうなるのかわからない事だ。
1つ目は重力飛連弾魔法あれを全部当てて、超重力球魔法にまで発展させれば強力な超重力の渦が出来る。
巨大な亀を囲む超重力の渦が出来るのだ。
さすがにあれを食らえば巨大な亀も生きてはいられまい。
だがあの魔法は衝撃がでかいし、音も大きいのが鳴るんだよ。
それに魔法の威力が増しているはずだ
そんなの使ったら、辺り一帯を巻き込んで、自分にまでダメージを受けてしまう。
この世界で使ったら間違いなく巻きぞいを食らい、自分にも大ダメージが受けるだろう。自爆になるのは勘弁してほしい。
そしてもう一つ気になることがある。
詩織さんが結界を張ってある中、臭獣神人に放った時に、見た事のない奇妙な生物がうごめいていたんだよ。
あれは絶対やばい、深淵に済むもののけたぐいのものだろう。
私がはなったエネルギーを食らっているみたいだった。
あれが現われてしまったらどうしようかと危惧がある。
あの生物は絶対相手にしてはいけない。
この世界が終わってしまうほど危険な生物だ。
その事を考えると超重力球魔法は使えない。
あとは、私の中で使える最強の魔法、超重力圧縮魔法か。
あれが発動すれば問題なく倒せるだろう。
しかし、あの巨体を全部吸い込めるかが問題か、いや、問題ないか。
超重力圧縮魔法はブラックホールを創るのではなく。
ブラックホールに空間をつなぐ魔法なのだ。
どことも知れないブラックホールに空間をつないで吸い込まさせる。
そういう魔法にイメージをおいている。
だからなるべく開く穴を小さめに作っているのだ。
あまりでかくすると暴走しそうで怖いんだよ。
つないだ穴が開きって世界そのものを飲み込んでしまう、かもしれないからな。
超重力圧縮魔法は小さく短い間だけ発生し、対象を吸い込み空間が消える。
それだけの魔法で良いのだよ、それ以上の事は恐ろしくて出来ない。
前守護者のドラゴンが私に対して言っていたけど、世界を滅ぼせる魔法を使うとかと、確かに私もそう思っているんだよ。
暴走したら宇宙ごと飲み込まれてしまうから。
超重力圧縮魔法は危険すぎる。
だからどうしても使うのが躊躇してしまう。
ダンジョンへ帰ってから魔法の事で守護者のドラゴンに相談しに行った事があった。
魔法についてもう少し詳しく知りたかったのだ。
魔法の発生は自分が思い描くイメージで大きく変わると言う事を聞いた。
星のエネルギーを使いイメージを具現化させて魔法の力に変える。
そのようにできることを、古代神、管理者の詩織さんがどうやら超ハイテク技術で元の世界の生物にほどこしたみたいだから。
それも異世界からの侵略者に対して対抗できる措置みたいだったから、それも最低限にできることを施したのだと聞いた。
それに加え魔物や魔獣達に魔核と言うものを別につけたらしい。
補助アイテムのようにつけたみたいね。
正確には魔物でも魔獣でも本当はなかったらしい。
現地のひ弱な動物につけてみたら、進化して魔獣や魔物に変化してしまったと言う事だった。
正確には前から他の宇宙でも小規模で種族維持の保護のためにやっているみたいだ。
ただ元の世界は侵略行為をしている高位生命体がいるので能力をある程度、向上させなければいけなかったのだろう。
取り巻く環境事態も厳しいみたいだから。
星からエネルギーをかり、魔法と言う超能力を使う。
もしかしたら、この世界もテラ人がほどこした技術が併用されているのかもしれないな。
私も普通に魔法が使えるからな。
管理者の詩織さんから見て、最低限にできることがあの魔法と言うチートな力とはね。
最低限で制限を取り外したらどこまで強い力を発揮するんだろう。
進んだ未来の人類ってどんだけ力持っているのかな、聞きたいけど怖くて聞けない。
それに魔法に関してもイメージでそれぞれの違う効果があらわれるようだ。
体質や特性もあるようだけどイメージがなにより強く影響を受けるらしい。
私は超重力圧縮魔法をかなり恐怖に感じている。
だから発生するイメージが小さく思い描いてしまった。
空間を小さな穴でつなぎ吸い込まれるだけでも、相当な威力があると思っている。
そのために発生したら対象を吸い込んで、すぐに閉じるイメージにしたのだ。
暴走もあると考え、魔法が容易く解除できるようにも思ってしまった。
そのために魔法無効化魔法の魔法に弱い仕様になっている。
それはあくまで私が思い描いた超重力圧縮魔法の魔法のイメージで他の方がイメージした超重力圧縮魔法の魔法とはだいぶ違うのかも知れない。
魔法無効化魔法とうでは解除出来ないようにイメージすればできるかもしれない。
他の魔法のイメージを上乗せして強固に魔法をできるらしいから。
私がそもそも超重力圧縮魔法が使えるのがおかしいらしい。
たまたま空間系の魔法が相性が良かったのだろう。
そういえば、ゲートを開き沙也加さんを帰す事が出来たみたいだからね。
時空を超えて過去に戻って行ったとは、人類史の記録で残っていたらしく沙也加さんが生きていたのはわかった。
地震の復興事業に携わり長生きしたと記録には残っていたらしい。
沙也加さんの遺品で魔核なるモノが発見され、とある裏社会の団体が研究して魔法と言う超能力を発展させたとかなんとか言っていたな。
宇宙に出るには超能力がなければ人類は難しかったと言う話だ。
しかし、イメージによって魔法性質が変わるとは恐ろしい事なのだが、その話を聞いて、余計に超重力圧縮魔法の魔法のイメージを変えることはなかった。
たぶん今は正解だろう。
私で使う超重力圧縮魔法の魔法のイメージは最低限程度の威力があれば良いと決めたのである。
制限をある中で使う魔法だから、使えなくなっても良いのだ。
あてにしてはいけない魔法だ。
その危険な魔法を使うか躊躇される。
この世界では魔法の威力も上がっているのだろう。
しかし、あのバカでかい亀を倒すことをできそうな魔法は超重力圧縮魔法しか今はないだろうな。
さすがに正面から肉弾戦を仕掛けて勝てる気がしない。
でかすぎるだろうあの亀は。
それに先ほどのブレスは相当威力があった。
それがかなり脅威だ、防御力も高く感じられる。
動きが鈍い事しか欠点は見当たらない。
しかし、なんでこのでかい亀がここにいるのだ。
もしかしてどこかのバカが、異世界から召喚したのではないのか。
この世界の原種の生物だとは思われなさそうなんだけど。
近くの街で召喚をやっているからな、あやしいもんだ。
私みたいなモンスターが異世界から来ることがあるんだからあの亀が異世界から来たとしてもおかしくはないはず。
あたっているような気がする。
とりあえず、私の同胞がこの世界に居るらしいのでやつを倒さなくてはな、やつを倒して同胞のローパーのところへ行き、お世話になるのも良い。
そこで管理者の詩織さんが、迎えに来るのを待つとしようか。
よし今後の方針が少しだけ示せたぞ、手っ取り早く倒してしまおう。
ゆっくりとガイデアと言う亀は動いている。
おいおいまだ50メートルも進んでいないよ。
ずうたいが大きいから動けないのね。
やはり巨大な亀はのろまの亀さんだったか。
私の事を関知せず、岩山をのせた背中を無防備に向けているのだ。
遠慮せずに、不意打ちをさせてもらうぞ。
それが私の戦闘スタイルだからな。
超重力圧縮魔法のイメージをする。
巨大な亀の岩山、甲羅の上部にバスケットボールくらいの黒い穴を思い浮かべ吸い込ませるイメージをした。
イメージは固まった、超重力圧縮魔法を唱える。
「超重力圧縮魔法」
巨大な亀の岩を乗せた甲羅の上に、バスケットボールくらいの小さな黒い空間が現われた。
くっ、残り魔力が全部持っていかれる気がした。
さすが最上位魔法、MPの使う量が半端ではない。
黒い空間が現われた瞬間、空間から引っ張れるように岩山が崩れ亀の甲羅が吸い込まれて行く。
岩山と亀の甲羅はあっという間に砕け散り、吸い込まれていく。
巨大な亀が吸い込まれ体が宙を浮き出した。
ブラックホールに吸い込まれる勢いで宙を浮いているのだ。
甲羅が砕け、巨体が吸い込まれはじめた時に、巨大な亀から絶叫が響き渡る。
「ギョギャー、ギャー、ギャギャギャー」
小さな黒い空間の穴に体が吸われている。
とてつもなく痛いのかもしれない。
巨大な亀は手足をじたばたさせ、絶叫の悲鳴をあげている。
何もできず苦しんでいる。
口から青い炎をはきだし、もだえ苦しんでいる。
巨大亀は不自然な行動をとりだした。
でも空間に吸われてどうにも出来ないでいる。
あまりの絶叫の声にいたたまれなくなってしまった。
巨大な亀が徐々に空間に吸われ、体の形が異様に変形して内臓が外に出てしまっている。
ホラーだな。
宙を浮きながら小さな穴に吸い込まれて、もだえ苦しむ巨大な亀がいるのだからな。
体半分ぐらい吸われた時に、巨大な亀はぐったりしてしまった。
どうやら死んだようだな。
ここで死んで良かっただろう。
それほどいたたまれない絶叫が響き渡っていたのだ。
跡形もなく巨大な亀の体全体が、黒い空間に引き込まれてしまう。
最後にはみ出していたカメの内臓がスーッと引き込まれたら、黒い空間が閉じてしまった。
巨大な亀は超重力圧縮魔法に吸い込まれ消滅したのだ。
わずか30秒も見たない間に、あの巨大な亀は消えてしまったのである。
ぐろいものを見てしまったな。
それにあの巨大な亀の絶叫が耳に入って離れないんだよ。
変なトラウマが残ってしまったよ。
まぁ、私がしてしまったのだから仕方ないか。
しかしあの巨大な亀、ここで食糧をあさっていたのだろう。
相当な犠牲者が出ていたのかもしれない。
そう考えると自業自得って思って良いだろう。
私にあったのが運が悪いと思ってもらいたいな。
しかし、大きな絶叫が聞こえたな。
これでは、ここで異変があった事を気づかれてしまうではないか。
巨大な亀がこの場所から消えただけでも異変なのか?
とりあえず逃走だ。
一刻もやく森林地帯に身を隠そう。行先はちょうど良いな。
透明化能力の魔法で姿を消し、同種のローパーがいると思われる方向へ移動する。




