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第8話 サンドワーム


 戦闘している領域から離れることができた。


 しかし、ここってどこなんだ? 荒地がずっと続いている。

 50キロくらい走り抜けたのは確かだ。

 俊足を新たに使ってスピードアップしているからもっと遠くに行っているのかもしれない。


 逃走するとはいえ、ここまで移動するとは、そういえば私ってこの世界に来る前に地上に出るため、ダンジョンを駆け抜けているんだよな。

 半日もたたず、100キロちかく走っているよ。


 健康志向で走るのだったら良いけど、生き死にをかけた逃走ではこの距離を走破するのは勘弁してもらいたい。


 もう少し移動してみるか。

 ある程度進んだら、荒野から大地が赤黒くなっている場所に入った。


 溶岩? 土が燃えたと言うか焼けただれたと言う感じだな。

 いったいここでなにが起こったのだろう?

 自然現象で起こった気がしない。


 しかし、夜だと言うのに月明かりが明るく見える。

 と言うか、空には大きな月が3つもあるぞ。

 惑星のような大きな星が近くに見えるのだ。


 街からの逃亡が忙しくて、今頃になってきづいてしまった。

 もしかしてあの見えている惑星、私が居た星かな?

 そんな訳ないか近くだったら詩織さんが異変に気づいて迎えに来ているはずだ。


 まったく夜空の風景が違っているのだ、ありえない話だろう。

 いくら他の惑星と言っても、ここまで違ってはいない。


 夜なのに3つの月明かりに照らされて明るい。

 それに空に浮かぶ星が桃色の霧のような光に包まれて見える。

 神秘的な世界だな、ここって本当に異世界なのね。

 元の世界と見える感じが大違いだな。


 辺りの星が大きく見え、落ちてくるのではないかと思えるくらい近くにある。


 昼間ででも星が見えるだろうな。

 あっ、この異世界、昼間ってあるの?

 まずは、そこを確かめるしかないな。


 元居た世界は太陽が西から登っていたし、1日の時間がやけに早くまわるような気がした。

 1日、20時間くらいだったな、この世界ではどうなんだろう。


 あの怪しい街から離れたな。

 ここら辺で、立ち止まり辺りの様子を見てみるかな。


 何もない場所だなここは、ただ焼けた赤黒い土の大地が広がり、火災臭の匂いが漂っている。

 草木が1本も生えてはいない。


 この地点からさきほどの街の逆方向を見てみると、尖った岩山がつならり奥には森が見えるな。


 街はすでに望遠透視能力ルビーアイを使っても見えなくなっている。

 60キロくらいの距離を移動したのは確かだな。

 とりあえず、あの森の中へ入り身を隠そうか、あそこまで行けば追手をまくことができるはず。


 望遠透視能力ルビーアイを使っても森の内部までは見えないか。

 そうなるとここから20キロ以上も先はある。

 しかし行くところがないので進むしかないか、ここへいるよりは良いだろうな。


 ! 気のせいかな、誰かにつけられている?

 追手が来たのか、街の方角から、視線を感じる気がする。

 私を調査するように刺客を寄こしたのかもしれないな。

 

 逃走したのが見られていたか、召喚したモンスターを放っておくのも問題だろうからな。


 いろいろやらかしてしまっている。

 誰かしら気の利いたやつが見張りで斥候を寄こすだろうな。

 しかし、私の索敵で引っかからないとは、追っているやつも特殊な能力をもっているかもしれない。


 今は何とも言えないが、注意はしておこう。

 とりあえず、尖った岩山を抜けて、森に進んでみるか、そこに入ればなんとか身を隠せるだろう。


 しかし、私が進んだ方向は最悪だったのだ。

 赤黒い焼けた台地がの先に、大粒の砂の大地に変わったのだ。


 ! ここはやばい。

 砂の中に魔物がいやがる。

 望遠透視能力ルビーアイで地中を見てみるとかなり大きな、魔物がうごめいている。

 ここってもしかして、サンドワームって魔物がいるのか?

 それも巨大なやつだ。


 3匹ほど確認できた。

 それも、私の方向へ向かってきている。

 サンドワームって魔物は夜でも活動するのね。


 あっ、地中だから昼も夜も関係がないのか?

 どう考えても好意的な考えで、こちらに向かってきているのではないよな。


 殺気をまきちらして私の方へ向かって来ている。

 おそらくは餌の対象として向かっているのだろうな。

 あらら、私って食べられてしまうのか。


 大きさからして地中にいるサンドワームは15~25メートルをゆうにこえている。

 バカでかいな、それも3匹かよ。

 他にもいないか確認するが、今のところは私にむかっているのは、3匹だけのようだ。


 こちらとしては、良い事なのかな。

 サウンドワームを狩って食糧にすれば当分は持つのだろう。


 でも、今は食べたい気はしないんだよ。

 こちらへ来る前に地上へ出た時、先に草木を食べてきてしまったんだ。


 外で食べてくれば1食分、持ち帰らないで済むからね。

 倉庫に草木を入れ終わったところで、休む予定だったのに余計なことに巻き込まれてしまったよ。

 まったく、今日はなんて日だ。


 ! 望遠透視能力ルビーアイで地中の中を良く見たら、サンドワームが掘った穴らしい通り道が無数にある。

 うわべだけが砂利になっていて、地中はどうやら粘土状の土になっている。


 アリの巣状態だな、ここら辺一帯がはサンドワームの住処なのだろう。

 しかし妙だな、3匹しかいないとは、大きさもあるしもしかして餌が足りなくて共食いとかして居なくなってしまったのかな?


 いやはや、とんでもないところへ来てしまったな。

 ここってサンドワームのホームグランドだよね。

 やつらの有利な戦いができる。


 私って食べられてしまうのかな。

 あんなにでかいんだから相当食べるよね。

 でもあの大きさからして私ってあっと言う間に食べられて終わりになってしまうよ。

 丸呑みされて食われてしまう。


 しかし、こんなところに生物が来るのか。

 誰もこんなところに来そうもないので、そのせいか共食いして数を減らしたように思える。


 サンドワームは、競争するように私のところに向かってくる。

 飢えているみたいだ。

 

 まずは1匹倒して様子を見るか。

 もしかしたらサンドワーム同士で共食いして、殺し合いをするかもしれない。


 奈落のダンジョンでも良くあることだからな。

 獲物の取りあい、油断してると後ろから来て取って行ってしまう。

 全部巻き込んで戦闘状態になるのが多いんだけど。

 生き残ったものが獲物にありつけると言うシステムなんだよな、あのダンジョンは。


 でも私の場合はちょっと違う。

 ローパーの彼女が安全なところへいて、敵が他にいないか見張りをしていてくれる。


 たぶん見ていてくれてると思っている。

 狩りを終わると近くに寄って来ると言う形になっているのだ。

 前は狩った獲物を先に食べてしまったけど、このところはちゃんと行儀よく指示してから食べるようになった。


 一番先に食べるのはローパーの彼女なんだけど、レディーファーストだから、まぁ、良いだろう。


 砂の下に蟻の巣のようなトンネルがあり、地上に出ている穴があるな。

 出てくると思われる穴を見定め迎撃の準備をしよう。

 まさか、別に穴をほって出て来る事はないだろう。


 競うように私の方に向かっている。

 実際にやってみると、穴を掘りながら進むのが大変で遅いんだよな。

 オルネニア武游国で穴掘って痛いほどわかったよ。


 しかし、望遠透視能力ルビーアイが優秀だな、地中も確認できる。 

 ある意味あまりにも見えすぎるんだよ。だけど見えすぎて私のほうの判断が遅くなる。

 そこが駄目なところかな、余計な事を考えながらだと一歩遅いんだよ。


 惑星戦略生物兵器か。

 外来の危険生物駆除にローパーは役立てると聞いたが、こういうところで役立つ能力を秘めてるのね。


 見えづらい危険生物を発見でき、どこでも戦えると言う。

 サンドワームの巣穴に入っても問題なく対応できるのだろう。


 狭いところもなんなく入っていける。

 毒とか消化液とか体内にやばいモノを保持している。

 毒をまき散らして中の巣穴を駆除できるしね。


 ローパーを突入させ、毒を巣穴で散らせることができれば、安全に危険生物を駆除とかできるな。

 自爆覚悟で入るのだろう。

 使い捨ての道具だな。


 危険生物が居なくなったら、毒を中和できる薬品投下して駆除して終わりって感じなのかな。

 なんか宇宙に出て、新たな開拓惑星を見つけたら出来そうな事だよね。

 生物兵器って違う意味で恐ろしいな。


 機械でも出来る感じがするけど、未来では機械の上に生物が置き換わっているのかも知れない。

 機械も生物も同じなのかも知れないな。


 管理者の詩織さんも人工知能と融合してサイバースペースに移住したっていう話だし、機械が進化したら生物に変わるってなんか思えてきたよ。

 そんな発想はあり得ないのにね。


 私みたいな生物兵器が、危険生物の巣穴の中に入って駆除することができるって事が何となくわかって来た。

 だから惑星戦略生物兵器なのか。

 魔法生物と言われるのね。

 理由がなんとなくわかって来たような気がする。


 危険な場所だと思ったが、何となく対応できると考えてしまった。


 そろそろこちらにやって来たな。

 地上に出る穴が限定されているので予想ができる。

 頭を出した瞬間に、魔法をぶっ放すか。


 近づいて来たので、魔法の準備をする。

 ここは重力飛弾魔法グラビトンレイが有効だな。


 地中を掘り下げている時に、途中からこの魔法使って穴を掘り進めていたしね。

 おかげであの時は早く掘り下げられ、オルネニア武游国へ侵入できた。


 地中も問題なく貫通できる威力があるのだから、出てくる穴に向けて先に放っても問題はないだろう。

 頭だけでなく胴体も貫通してダメージが入りそうだしな。


 もぐらたたきだな、頭を出した時に放った方が良いか?

 いや、出てくる前に放った方が良いか。

 

 頭が出てきたら怖いし、近づいたら穴にむかって魔法を放ってしまおう。

 こういうふうに迷うと一歩遅れるんだよね、わかっていてもやってしまう。


 さてと出てくる場所はあの穴だな。

 まさか途中でいきなり穴を掘りだして場所を変えると言う事はないだろう。

 まぁ、変えてもこちらは見えてるので問題ないか。


 巨大なサンドワームが近づいてきた。

 思った通り、予想した穴からこちらに向かってくるようだ。

 掘りながら進んでいるのだったら、こんなに早くは来られないだろう。

 一応、何カ所かある、出口の穴を注意して見ている。


 よしまずは1匹、あの穴だ。

 もぐらたたきではないけど、出てくる直前に魔法を放とう。


 「重力飛弾魔法グラビトンレイ

 巨大なサンドワームが出てきたので、重力飛弾魔法グラビトンレイを発射する。


 「シュイーン」

 「ズドーン、ジュチュシューン」

 しまった。サンドワームが頭を出すのが思った以上に早かった。


 重力飛弾魔法グラビトンレイはサンドワームの体に当たったのだが、半分くらい穴から出てきてしまっている。


 穴にむけて魔法弾を発射したので、地中まで貫通した。

 残っていたサンドワームの胴体に当たり、ぐちゃぐちゃにつぶれた。


 結果はオッケイかな、胴体半分、奇麗につぶれてしまった。


 しかし、もぐらたたき私って下手だな。

 タイミングを外したので、自分でも思ってしまった。

 ちょいと引きつけすぎたな。


 魔法力を弱く撃ったのだが、威力が凄まじい、直径2メートルの重力球は30メートル近く地中に貫通してしまう。


 重力飛弾魔法グラビトンレイは空中でも10メートル飛べば良い方なのだ。

 地中の中だと障害物で飛翔が悪くなる、

 やはり、この世界では魔法の威力が増しているようだ。


 サンドワームは胴体が半分に千切れ、地上へ出てしまいのたうちまわっている。

 上半身と言うか歯がついている頭の部分は無事でいるな。

 すかさず頭部のところに雷のサンダーアローを放ってみる。

 雷の矢はサンドワームの頭に当たり感電死した。


 初級魔法で十分だな。

 わざわざ、上位魔法を使う必要がない。


 先ほどの雷の魔法でサンドワームは砂の上で、丸まって死んでしまっている。

 私は一端、うしろに下がり様子を見る。


 上半身を残したサンドワーム、この状態でもとてつもなく大きい。

 頭だけで2メートル以上でかさがある。

 口が見え鋭い細かなサメのような歯が見える。

 こんなのに噛みつかれたらたまったものではないな。


 他の2匹もこちらに向かっている。

 先ほどの倒したサンドワームを放置し、近くに穴がないところまでさがる。

 2匹のサンドワームが出そうな穴はわかるが、どうやらほぼ同時でこちらにきそうだな。


 しかし、近くに穴はない。

 先ほど倒したサンドワームを共食いするかどうか様子を見る。

 飢えている感じがするのでおそらくは襲うのだろう。


 こちらに来るとしても、通り道がない。

 そのつもりでここまで下がっている。

 魔法を放つ準備をする。


 2匹のサンドワームは同時にこちらに近づき、離れている穴から出てきた。

 でかいな、2匹とも、全長25メートルの大きさがある。

 先ほど戦った、竜とも肉弾戦で戦えるのではないか。

 人間なんかあっという間に飲まれて終わりだろう。


 先ほど倒した、サンドワームの頭と胴体に2匹は食らいついた。

 2匹のサンドワームは死んだサンドワームに食らいつき、取りあいを始めている。


 うわわ、恐ろしい光景だ。

 あれが私だったらと思うとぞっとするな、本当に魔物に襲われてるって感じだ。


 砂が飛び散りサンドワームの本体がからまりあって食らいあってるよ。怖い、怖いな。


 よし、今だここで魔法をぶっ放してしまおう。

 私は獲物を取りあっているサンドワームに対して、中級魔法の雷のサンダージャベリンを唱え放った。


 雷のサンダージャベリンは2匹のサンドワームに直撃し感電死させその上黒焦げにしてしまった。


 中級魔法でも強すぎたか。

 体長25メートルもあるサンドワーム2匹を感電死させ、尚かつ黒焦げにいてしまうとわね。


 怖かったので初級魔法を使うのは躊躇ちゅうちょしてしまったんだよ。

 まさか中級魔法でも黒焦げになるまでとは思わなかった。


 雷の魔法は火の魔法ではないんだから黒焦げになるまで威力があるとは思わないからな。

 この世界で魔法を使うのは初級魔法で十分だな、でも通じなかったら怖いのでやはり上位魔法を使ってしまうのはサガだね。


 しかしほんとうに星の重力が関係してくるの?

 体がやけに軽いしな。

 

 それで威力が増している?

 試しに大きな触手で軽く地面をたたいてみたら、砂が吹き飛び大きなクレーターが出来てしまった。


 おぉ、砂がとび散った。

 自分で飛ばした砂が、体に当って痛かったぞ。

 自分で攻撃して、爆死したほうが痛いではないか。

 それより、なんだこの威力は。


 軽くたたいたつもりが5メートルくらい陥没したクレーターが出来てしまった。

 砂が飛び散り、地面が剥き出しになるとはね。


 この世界ではどうやら肉体のレベルもあがっているようだな。

 やはり重力が、元居た世界より軽いのだろう。

 この世界では全体的に能力が向上するみたいだ。


 これで私に向かってきたサンドワームは全部倒せたかな。

 念の為、他にいないか望遠透視能力ルビーアイで地中を探ってみる。


 どうやら他に、サンドワームはいないようだ。

 しかし地中の奥に大きな空洞があってそこに卵のようなものがあるのを発見した。


 うむ、どうしようかな。

 ここでサンドワームの卵をつぶして置いたほうが良いかな。


 うーん、悩むところだ。 

 止めとこう、余計なことをすることもないな。

 元の世界だったら危険生物なので駆除しても良いけど、異世界だからな。


 ここの世界の連中、ろくでもなさそうだから、別に駆除しなくても良いだろう。

 私はよそもんだから、自分の身に危険がある場合のみ反撃して殺すと決めているからね。

 ダンジョンにいた時の方針も、食べるためにモンスターを殺すって事になっていたし。

 遊びで殺すと言う事はしたくはないから。


 とりあえず、ここを抜けて森を目指そう。

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