第7話 逃走
うむむ、これからどうしたものか。
とりあえず、気配を消し、音をたてずに移動しよう。
望遠透視能力を使い辺りの状況の確認をする。
街中にいるのか、周辺には誰もいないな。
どうやら街の正面門付近で大勢の者たちが争いをしている。
夜中だと言うのに、大規模な戦争をやっているのだ。
この戦争のため、竜召喚をおこなわれたようだ。
守護者のドラゴンが言っていたように、ろくでもないことにまきこまれたな。
望遠透視能力で確認すると街全体を城壁で取り囲んでいる。
街の様相は元の世界にあった、オルネニア武游国に近いか、いや、あれほど広い大規模な街ではないな、密集して街並みが作られている。
城壁の中には街だけで、田畑とかその他の関係のものは一切ない。
城郭都市いや、城塞都市と言われるやつかな。
望遠透視能力で確認すると街の内外に罠が仕掛けてある?
城壁まわりには、特に多い、それも魔法の罠が仕掛けてある。
戦争のために仕掛けたのか、地雷と似たように使われているみたいだ。
特に城壁まわりには、ひき詰めて仕掛けてある。
危険がきわまりない。
索敵で探っても、街のいたるところに魔法反応の感知ができる。
なんなんだろうこの街は、かなり異色な感じがする。
! おっと危ない。
普通に落とし穴とかもあるのか、定番な罠だ、魔法の罠と併用しているのか。
落とし穴は見えるかたちで仕掛けてある。
尖った槍が中に仕込まれていて、落ちた時の事を考えるとぞっとする。
戦争中みたいだけど、街なかまでも罠とか普通に仕掛けるのか?
この街は不明な点が多すぎるな。
ここに居ては絶対に危険だと言う事だけは間違いなく言える。
魔力は消費するが、安全を確保できるまで索敵能力を全開で使用しよう。
誰も居ない街の中を徘徊する。
中央にでかい王城が見えるな。
まわりには、外堀があり水路が流れ囲んでいるのか、左右に流れる川のような水路もある。
川の水を引き入れているのか? 近くに川が流れているのかもしれない。
おかしなことに城の中にも誰も居ない。
これだけ守りを固めた街だよ、街中で争った形跡がないのに、なぜ人がいないのだろう?
みんな避難してしまったのだろうか? お城の中に1人もいないなんておかしすぎる。
城塞都市って、城壁を前面に押して、中から支援して戦うのではなかったのか?
戦い方はいろいろあるから私の知らないだけだろうか。
私を召喚した大きい胸の女性、アルテイシア姫様とか言っていたな、私はすいかの姫と名付けたけど、彼女は王族の関係者なのだろう。
ここに住んでいた人なんだよね。
でも城の中には誰も居ないんだよ。
城を捨てて、王様が逃げてしまったのか?
まさかそんな事はないか。
王様自ら軍を率いて指揮をとり戦っている。
勇ましい王様とかいるからな、街中の人を避難させ、城の者総動員で戦っている。
そちらの方が可能性がたかいな。
この街の仕様はやはりオルネニア武游国と似ている。
定番な魔法が使える中世ファンタジー仕様の街並みだ。
狭い道が複雑にいり込んでいて袋小路にあたる。
街なかが汚く臭い匂いが鼻をつく。
下水道はあるようだが、垂れ流すだけで、浄化技術が進んでいないのか、それとも手入れが悪いのかもしれないな。
! ここはスラム街かな?
辺り一面ごみが散乱し、木材と瓦礫を積んで布シートを屋根に見立てたテントのような家が並んでいる。
人がいるぞ、望遠透視能力で家の中をのぞいて見ると老人と動けなくなった病人らしい人がいるな。
介護している中年の女性の人もいるが、痩せこけ疲弊しているよに見える。
老人と病人を置いて逃げたしたって感じだね。
それか、若い人たちを総動員させて、戦っているかどちらかだろう。
100メートル行けば中世の街並みなのに、この一郭だけは別の町があるようだ。
あぁ、人間の負の部分を見てしまったな。
こればかりは、どの世界でもあるので、実際に目のあたりにするとなんとも言えず、言葉が出ない。
気分を害してしまったのですぐさま移動する。
オルネニア武游国で街中を歩いたけど、こんな臭い匂いはしていなかったし、乱雑な街ではなかった。
確かに一般街らしいところは、貧しそうな感じがしたが、スラム街とかは見なかったんだよな。
! また罠か、魔法の罠がところどころに張ってあるから、移動しずらいんだよ、行きたくても通れないところが多い。
しかし、望遠透視能力を駆使して確認しながら進んでいるのにいけないところが多く出てくるとはな。
魔法の罠もどんな魔法がかけてあるのか、わからないので迂闊に近づきたくないし。
わざと、はまって確認する事などはできないから。
なんじゃこりゃ、この街は、刑務所か? この街事態、あまりにも厳重すぎる。
強固に作られているのかわからないが、異様な感じが見受けられる。
余裕と言うか遊びがこの街では感じられないんだよ、へんな街だ。
そういえば確か、私を召喚した時にいたあのお花畑の女性騎士が言っていた。
いつもの事です、お任せくださいとか、私みたいな危険なモンスターが召喚されることが普通にあるの?
それに魔人も悪魔もいた。
まさかこの街って悪魔召喚とかやっている危ないところではないよね。
それに支配の刻印とか言っていたか、あきらかにやばそうな魔法とかも使っている?
これだけ厳重に魔法の罠とか仕掛けてある。
戦争がおこったためだけに作った街ではないな。
あきらかに、この街事態がおかしいんだよ。
魔法の実験場? 召喚魔法の実験のために作られた街ではないの?
そうでなければ、奈落のダンジョンがいくらフリーなところでも召喚魔法陣なのか現れる事なんかないんじゃないか。
やばい、ここは危険だ、一刻も去らねばならない。
魔法の罠をさけていたら、正面門らしいところに行きついてしまった。
なんで街の正面門に行き着いたのだろう?
城壁外で大規模な戦闘がおこなわれている。
目の前には後方で支援している兵達が忙しく物資を運んでいる。
参ったな、罠を避けて来ただけなのに、最前線のこの場所へ来てしまうとはいったいどういうことだよ。
だけど、城壁外の戦いのせいで私の事を誰も気づいていないので、なぜか安心が保たれている感じがする。
目の前の事が夢中になって後ろががらあきになるとはこういうことを言うのかな。
透明化能力を解いて姿を現しても気付かれないと思う。
望遠透視能力で城壁外をみて見ると、人間以外の獣人や亜人、種族が不明な魔物もいる。
何万人居るんだよ。ネイビス大公と戦った時くらい居るぞ、いや、それ以上か。
それにバカでかいドラゴンが2体も居る。
これって守護者のドラゴンよりでかくないか、全長30メートル以上はあるぞ。
青い竜と金色の竜だ、見た目は守護者のドラゴンに近いかな。
でも大きいだけでそれほど強さは感じられない。
それに加え、10メートルクラスの翼がない恐竜みたいな竜もいるな。
俗にいう地竜だったか、でかいドラゴンに率いられ10体くらいは居るな。
敵対している兵を踏みつぶしているよ。
あんな竜たちと戦うのは、御免被りたいね。
街を出るのには、正面門の近くの罠がないところを通過するしかないか。
刑務所みたいな街にいるのは嫌だし、一刻も早く出られる場所を探すとするか、しかし罠がないのは正門の付近しかないんだよ。
街を取り囲む城壁内には、ほぼ魔法の罠が仕掛けてある。
近くを通るしかないか、争いに夢中で私の事を気づかないのかもしれない。
なんとかうまく通ってみよう。
気付かれず城門近くまでこられた。
補給部隊がせっせと、軍事物資を運んでいるな、裏でこんなに動いているのね。
仕事でもそうだけど、裏方がみんなを支えているんだよな。
なんか、感心する。
でもね、私の事を誰も気づかないとは、大丈夫なのか?
秘密工作員の密偵とかが、内部から崩壊させれば簡単に街を落とせそうな気がする。
ここの戦争は正面からやるだけで、そういう裏工作をする戦争はやらないのか?
まぁ、いいか、それより通れそうな場所を探そう。
うーん、罠がありすぎて、通れる場所がない。
これは城壁の一部を破壊し、正面突破をするしかないか。
自分が通れるだけの穴を開ければ良いだろう。
もしくは地下か、この状況では穴をほって進むのはどうなんだろう。
やはり城壁に穴を開けて外へ出た方が早いな、誰にも気付かずに慎重に進もう。
城壁正面門の目の前まで来てしまった。
私の事を誰も気づいた様子がない。
目の前の城壁外では、万単位の兵士と亜人と魔物が戦っている。
これが攻城戦てやつか。
城壁の前には重装甲の鎧を着た大きな盾を持っている部隊と長い槍を持った兵が待機しており、近づくものを押し返し貫く。
城壁の上には魔法部隊が火炎球の魔法を放っているのだ。
中央では敵味方がいり乱れて、乱戦をおこなっている。
望遠透視能力で確認したところ通れそうなところは、城門から500メートル付近に1カ所あるんだけど、城壁に穴を開けなければ通れない。
しかも城壁上には魔法使いがいて火炎球を放っている。
城壁前で、戦っているが兵はいるが、少ないのでとりあえず移動してみるか。
! そうだ瞬間移動魔法があったか、望遠透視能力で座標確認して、瞬間移動魔法を使って外へ出てもいいのではないか。
でも、魔力の使いを極力減らしたいし、それに空間魔法系は移動距離も少なく魔力の消費がとてつもなく大きい。
それに失敗して城壁にめり込んでしまったら大ごとだしな。
ダンジョンで魔力供給してくれるならばともかく、それに身体強化でバーサーク状態ではないと壁ぬけが出来るかもわからん。
ここはやめておいた方がいいな。
こういう時に空が飛べたらいいな、と思うんだよな。
ここだ、通れそうな城壁前まで来た。
城壁の上に魔法使いが数えるほどいる。
辺りには戦っている人がいるけど、少ない人数だから、穴を開け猛ダッシュで逃げてしまえば大丈夫だろう。
逃げ足は速い方なんだよな。
それじゃ、穴を開けてみようかな。
大きな触手でおもいっきり城壁をぶん殴った。
「ドガーン、ドカ、ガラガラガラ、ドカ、ガラガラガラ、ドカ、ドカ、バコン、ドカ、ガラガラガラ、ドカ、ドカ、ガラガラガラ、ドカ、バコン」
どでかい音が鳴り響いた。
えぇぇっ? 穴が開いたのはいいけど城壁も連なって倒れてしまったぞ
殴った城壁が吹き飛び、まわりの連なっている城壁も連鎖的に倒れてしまう。
うそっん、なんでまわりの城壁まで崩れだすの?
上に乗っていた魔法使いも崩れ落ちてきた。
城壁は崩れ去り瓦礫とかしていく。
あちゃちゃ、やってしまったか。
幸い私の方にも瓦礫が落ちてきたがダメージはない。
瓦礫の破片があたっても軽くて痛くはないのだ。
まるでスポンジが上から降ってくる感じがした。
しかし、私が殴った中心、左右対称に500メートルくらい城壁が崩れてしまった。
崩れた余波が届き城門正面の扉にまで到達している。
右半分の扉が大きく吹き飛んで崩れてしまった。
な、なんて脆い城壁だ。
手抜き工事でもしていたのか?
こ、これは不幸な事故だ、故意ではないよ。
城壁に乗っていた人たちには悪い事をした、こんなに脆いとは思わなかったんだよ。
一点突破集中、奇麗な穴を開けるよう強く打ち込んだ、それなのに崩壊してしまったんだよ。
風穴が開いてそのまま逃げられると思ったんだ。
ここはつべこべ考えているより、まずは逃げよう。
透明化能力を使い姿を消す。
私は崩れた城壁をかきわけ、外へ逃走していった。
戦っている兵士が近くに居たが、突然、城壁が崩れたので慌てふためいている。
私に気づいているそぶりは見えないな、よし脱出成功かな、と思ったら私の前にでかい青い竜が立ちふさがった。
なんだこいつ、いきなり飛んで来たぞ、先ほど見た青い竜か。
透明状態の私がここへいるとよくわかったな、特殊能力でもあるのか?
青い竜は興奮しているようで、私にめがけ口からブレスを履いてきた。
氷結系のブレスだ。
私は避けられず、まともに食らってしまう。
冷た、氷結系のブレスか。
上位魔法防御盾魔法を突き破ってきたぞ。
でも冷たいって感じる程度でダメージはない。
いきなり攻撃してきたな、ちくしょう、私は逃走をはかりたいだけなのだ、早々に倒させてもらうぞ。
私は青い竜に対して重力層の魔法のイメージをする。
青い竜の全体を取り囲むよう範囲を指定する。
青い竜の体長が30メートルくらいはあり、いつもより範囲を広くした。
魔法のイメージが完成したので唱える。
重力層魔法
青竜アクア・スミスの上空から重力の波が押し寄せ降り注ぐ。
「ズズズドーン」
青竜アクア・スミス中心に地面が陥没し始めた。
「バキ、バキ、グニョ、バキ、バキ、バキ、グニョリ」
青い竜の体はつぶれ、骨がきしみに折れる音と内臓がつぶれる音が響く。
嫌な音だな、先に仕掛けたのはおまえだ、わるく思わんでくれよ。
青竜アクア・スミスはブレスを履く途中だったようで、頭があらぬ方向に向いていた。
口からブレスを履き、広範囲にまき散らす。
戦闘していた敵味方両方の兵達を巻きこむ。
氷結のブレスでその場が凍り付いてしまった。
あらら、またやっちまったか、でもこれは不可抗力ってやつだ。
仕方がなくおきた事故だよ。
青竜アクア・スミスは重力層魔法を食らって瀕死の状態になった。
首が地に落ち目を閉じてぐったりして動けないでいる。
ほぼ、死んでいると言ってい良い状態だ。
よし、今のうちに逃走だ。
しかし、私の前に10メートルほどの地竜が3匹ほど突進してきた。
「危なっ」
とっさに私は交わす。
3匹の地竜は一端止まり、私と睨みあいになる。
3匹の地竜か、ジェットストリームアタックは使ってこないよな、そんなことは絶対にありえんか。
3匹の地竜は私に威嚇し、助走をつけようと後ろ足で軽く地面を蹴っている。
私は逃げたいだけなのだよ、余計な者はこないでおくれ。
! やばい、こんな戦闘をしていたら、大規模な戦闘に巻き込まれてしまう。と言うか巻き込まれていないか?
こうなれば、全方向へ雷撃を放って近くにいる者すべて排除する。
上位雷撃範囲魔法を唱え魔法を放つ。
「上位範囲雷撃魔法」
「シュバーン、バリバリバリバリ」
全身から雷の衝撃破が放たれ、まわりにいた地竜と兵士たちを巻き込み雷撃で痺れさす。
しかし、私が思った以上に雷撃の威力が上がっていて、3匹の地竜と複数の兵士たちは一瞬の間に消し炭になった。
これはどういうことだ?
いかに上位魔法だとしても、10メートルはある巨大な竜を一瞬にして消し炭にするとはおかしいだろう。
上位範囲雷撃魔法を全方向で放ったばあいは届いても15メートルがやっとの射程内だ。
前方へ、一点集中だとそれなりは飛ぶんだけど、今回は全方向へ放った。
40メートル、いや50メートルくらいの範囲で雷撃が飛んでいる。
魔力の仕様も抑えている。それなのにこの威力とはいったい。
そういえば、先ほど城壁を壊した時に瓦礫が頭上から落ちてきたのに柔らかくて、痛くなかった。
それにここへ来てから体がやけに軽く感じられる。
そう言えば逃げる時も、俊足を使わなくて早く走れたのだ。
これってもしかして、この星の重力が関係しているのかな。
この世界は元居た世界より重力が軽い? まさかね。
とりあえず、今のうちに逃走だ。
透明化能力をかけ直し戦闘領域から離脱する。
何とか無事に逃走に成功するみつぐであった。




