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第61話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 XVII 


 私たち異世界へ転移してきたクラスメート12人は、ベルンフォードの国でしりあった親しい人に別れを告げ旅立って行った。


 ストレング公爵の取り計らいもあり、ヨルヌダ国の国境を無事にこえてシャンズ大陸に行く船に乗り目的地に無事に到着できたのだ。


 しかし、今までしらなかった異種族多様な文化の面での洗礼を受ける。


 …… …… ……


 シャンズ大陸、地形が星型を型どった形をしている。

 中央に大きなロスト山と言う巨大な尖った山が聳え立っている。


 ロスト山? 失った山? なにか深い意味があるのだろうか?

 遠い過去に海から噴火してできた大陸ではないかと憶測がつくのだが違うのだろうか。

 過去に不吉な事件があったので失った山と言う名前がつけられたのかもしれないが、今の私たちはしる余地もない。


 ロスト山を取り囲むように47の国がまわりに存在しているらしい。

 国の大きさは日本の都道府県と同じ大きさだと言う。


 年単位で国が増えたり減ったりしている?

 国の名は統治者の名前がついてころころかわるらしい。

 毎年どこかの国の名前が変わるのが普通にあるようだ。

 

 ヨルヌダ国から船に乗り、シャンズ大陸のアルカバネ国のワンズと言う港町についた。

 どうやらアルカバネの国名もワンズと言う町の名前も治めている人の名をとっているようだ。

 町の名もころころかわるらしい。


 船で15日ほど航行すれば問題なくつけると言う話だったが、予定より5日もはやい10日でついてしまった。


 十数年前から海が穏やかになり、魔獣などが一斉、海の中から姿を消したそうだ。

 そんな事があるのかと疑問に思うが、大型の海の魔物は今は居なくなったと言う話だ。


 海で魔獣に襲われることがなくなったので船の航行しやすくなったと言う。

 これからは大航海時代が始まると言われている真っ最中だ。

 しかし、逆にそれが不気味と話をする人もいるらしく不吉な前兆であるとも言われている。

 それほど海に出るのは危険な事だったらしい。


 ワンズと言う港町は異種族が多く行きかっている。

 私たちが今まで見た事のない種族が数多く見られるのだ。


 ベルンフォードの国は人間が多く住んでいたが、南のヨルヌダ国では確かに亜人が多かった。

 それ以上にこの港町は異種族が多いのだ。


 それも鬼人族、魔族?、リザードマンといった魔物と言われる亜人も見かけたりする。

 ヨルヌダ国でも獣人は見かけたが鬼人族や魔族は見たことがなかった。


 ベルンフォードの国では人に近い獣人が商人として見かける程度だったがここへ来てさすがに驚いてしまった。

 まさにファンタジーの異世界と言うべきそのものなのだ。


 異種族の交流がある活気があふれる港町だと普通は胸をときめかすのだろう。

 しかし、私たちは今までの経験でどうしても警戒から入ってしまう。

 それほど多様な種族がいるので習慣が読めないのだ。


 …… …… ……


 「うわー、すごい異種族が行きかう港町だよ」

 「えぇ、そうね、ちょっと怖い感じがするわね」

 「それはあるかも」

 「確かにそれもあるが修行と知識を得るのは最適な場所な気がする」

 「そのとおりだ。

 危険はあるかもしれないが、ここでの経験をつめれば俺たちの能力は確実にあがるだろう。

 元の世界に帰れる算段がつくかもしれない」

 「そうかもしれないけど、生き残れたらの話よね」

 「それはあるわね」

 「ひとみそんなことよりおなかが減ったわ。

 どこか適当な店に入って食べて見ましょうよ」

 「そんなことなどと言って、かおりは緊張感がないのかしら。

 適当な店って言っても、それなりのお店に入らなくてはここではやばくないかしら。

 あきらかにベルンフォードの国よりやばい感じがするわよ」

 「そうね。

 お金はたんまり両替してきてあるんだからさ。

 そこそこ高そうな店に入っても大丈夫じゃないの?」

 「こちらの大陸はベルンフォードの倍の物価と聞いたけど、その分ヨルヌダ国で両替した時のお金が倍に増えたじゃないの」

 「香、増えたじゃなくて貨幣の価値が違うだけよ。

 物価も高いのですからね。

 ある意味、ベルンフォードの方が貨幣価値が高く国力があると言っていいわね。

 質の良い物が安く手に入るのよ。

 こちらではどうかしらね。

 私の直感力では食事関係もやばいと言っているのよね」

 「とりあえずオープンテラスで食べられるところを探しましょうよ。

 街の様子も見て見たいわ」

 「そうね、そうしましょう」

 

 …… …… ……


 「瞳、この店はどうかな。

 店の中は満席で人気があるみたいよ。

 外にある席は空いているみたいだしここにしましょうよ」

 「港町だから魚料理が多いのかな?

 中の店員さんは猫のかわいい獣人さんがいるのよ。

 もしかして魚料理をつまみ食いしたりしてね」

 「どうしようかな。

 なんかこの店はやばい気がするんだけど」

 「そんな事を言っていたらどこの店でも食べられないわよ。

 ベルンフォードの国へ来た時もそうだったでしょう」

 「うーん、違う別の意味でベルンフォードの国よりもやばいと言っているみたいなんだよね」

 「嫌いだった野菜も魚も克服して今は食べられるんでしょう。

 早く入りましょうよ、瞳」

 「なんかどこの店も別の意味で私の直感力でやばいと言っているのよね」

 「瞳さんの直感力でなくてもやばいとわかるよ」

 「どうしたの宙くん、汗なんか垂らして」

 「だって、ほらあのリザードマンかな?

 大きな魚の上にゴキブリを油で揚げたような虫を乗せて食べているからね」

 「えぇぇ」

 それを見たクラスメート全員は冷や汗をかいてしまう。


 「マジかよ」

 「ゴキブリか?

 ベルンフォードの国では港町では魚料理は食えたが、虫を食べる習慣はなかったよな。

 いくら他種族が多くいるからってそれはないだろう」

 「普通に人も混ざって食事を取っているんだぜ。

 虫を目の前で食っていて気味がわるくないのか?」

 「この大陸では虫を食う習慣があるのかもしれない」

 「シャンズ大陸では普通なことなんでしょうね」

 「ちょっと意味合いが違うかも。

 あの大きな鬼の亜人は骨のついた生肉を齧っているわ。

 血がしたたり骨ごとがぶりとね」

 「マジか生肉をか!

 この世界では火を必ずとおすっと思っていたが、亜人は大丈夫なのか?」

 「亜人たちの食文化が違うって言ってもこれほどの差があるのかしら。

 それも異種族ごちゃまぜで見たことがない料理をそれぞれ食べたりしている」

 「本当に気にしないでみんな食べているわね」

 「これは人間の料理の専門店を探したほうがいいと俺は思うぞ。

 この店では何が出てくるか見当がつかない」

 「確かに、港町で魚貝がメインの料理屋だろうがなんか違う気がする」

 「…… …… ……」

 「!

 お客さん、お店まえでたむろしていたら困りますよ。

 食事するんだったら入って入って」

 「おぉ、かわいい猫の獣人さんが店からあらわれた。

 それも男の子ね。

 なんかお持ち帰りしたくなってきたわよ。

 はぁはぁはぁ」

 「これ、香また変な妄想を考えているんじゃないでしょうね。

 口からよだれがたれているわよ」

 「お客さん、そんなにおなかが減っているなら早く入って入って、じゃまになるよ」

 かわいい猫の獣人に後ろを押され店内に入ってしまった。


 店の中は異種族ごったがいして人気がある店のように見える。

 私たちはオープンテラスの席に案内してもらって食事を取ることにした。


 「どうしようかな。

 文字がなぜだかしらないけど読めるんですけど。

 ベルンフォードで使っている文字とはあきらかに違っているよね。

 でも何を頼んで良いかわからないわ」

 「僕は水と黒パンと魚貝のスープにするよ」

 「じゅんくん早っ。

 なんでそれを選んだの?」

 「選んだと言うか、今は食事では冒険はしたくないからね。

 定番なものを頼む事にしたんだ」

 「確かに一理あるな。

 定番な食べ物の方がいい。 

 当たったら元もこうもない。

 俺も、それにするよ」

 「私も」

 「私もね」

 瞳と杏とみお以外は純と同じ料理を注文した。


 「ふふふっ、私はあの大きな器に盛られた魚貝の多く入った赤い麺料理をいただくわ。

 麺料理があるとは驚きね。

 書いてある内容は唐辛子のきいたスープに魚貝と麺が入った料理らしいから」

 「私もそれにしようかな。

 辛いの好きだし、魚貝のスープだったらおいしそうよね。

 でも麺はちじれた太麺らしいよ」

 「からめて食べられるからいいじゃないの」

 「瞳はどうする?」

 「辛いのは大丈夫だけど、なぜか大丈夫じゃない気がする」

 「まぁ、いいじゃないの。

 異国だし、どんな味なのか興味があるじゃない」

 「そうね、何を頼んでも同じような感じがするので私もそれにするわ」

 私たち3人は辛い魚貝の入った麺料理を注文した。


 注文した料理が全員に来たが瞳の料理だけ異物が入っていたのでドン引きしてしまった。


 大きな器に盛られた様々な魚と貝が入った太麺の入った赤く染まったスープのなかに黒い物体が際立って見えたのだ。


 「ちょっと、なんで私の料理だけゴキブリが入っているのよ」

 料理を持ってきた猫の獣人のかわいい女の子のウェイトレスに瞳はクレームをつける。


 「あっ、お客さん、カサカサ海虫が入っていたのね。

 運がいいですね。

 それはサービスですよ。

 たまにオーナーがサービスで入れてくれるのです。

 お金は取らないので安心してください」

 「サービスですって! 

 たまにオーナーが入れる?

 カサカサ海虫?

 どういうことよ」

 「カサカサ海虫ですよ。

 海岸沿いの岩場にへばりついている海虫のことです。

 素あげにするととてもおいしいのですよ。

 うちの隠し味にも使われています」

 「隠し味にも使われていまっすて、それじゃみんなの注文した料理にも入っているの?」

 「それは秘密です。

 ごゆっくりお召し上がりください」

 そう言って猫のかわいい獣人のウェイトレスは他の注文を取りに行ってしまった。


 「瞳、隠し味はともかくまわりの人をよく見るとさ、どの席も虫を揚げた料理がテーブルに置いてあるわよ」

 「ここってさ虫を使用している料理店じゃないのかな。

 魚をメインにした料理店なのは確かだけどさ、+αがあるみたいだね」

 「そんな、まさか」

 「確かにリザードマン以外にも普通に人が瞳の麺料理に入っているゴキブリみたいな虫を食べているよね」

 「ゴキブリみたい虫もそうだけど、大きいカブトムシの幼虫みたいなものを生で普通においしそうに食べているのよね。

 なんなのかしらあれは……

 食べているの見てるだけで寒気がしてきたわ」

 それを見てクラスメート全員は引いてしまう。


 「虫がやはり入っているのか?

 ベルンフォードではなかった料理だ。

 俺は虫を食べるのだけは受けつけられん。

 この異世界に来て4年はたつ、しかしだ、料理の洗礼を今になって受けたって感じがするぜ」

 「あぁ、まだ食べていないがな。

 この衝撃は結構おおきい」

 「正直、ベルンフォードの国ってまだ食べ物はましな方だったのかな?」

 「それはわからないけど、異種族か混在しているのだから、食べ物が違うのはあたりまえだよね」

 「でもここまで違うとある意味ひいてしまうわ。

 普通に人もおいしそうに食べているわよね」

 「そうだな。

 目の前の黒パンと魚貝のスープもゴキブリが隠し味で入っているとなるとどうも食べる気になれないがどうするんだ」

 「海に居る虫だから多少はきれいじゃないのかな。

 紫色に光沢があるし」

 「と とりあえず食べるだけ食べてしまいましょうよ。

 今からこの国の食事を慣れる必要があるわ。

 これも異文化交流と思って食べましょう」

 「そうね、みんなも同じ普通の料理を頼んだのですから、食べてしまいましょう」

 「ちょっと待って、私たち2人の大きな器の中はあきらかに違うわよ。 

 何が入ってるかわからない?

 私たちの方が危険な感じがするわ」

 「それは赤い唐辛子が入っているスープだから危険な色に見えるのではなくて。

 決して赤くなって中の物が見えないとは違うわよね」

 「そうそう、あなたが頼んだのだから仕方ないでしょう」

 「同じ料理を店の中でおいしそうに食べている人がいるのだから大丈夫じゃないの?」

 「ちょっと待てって言いたいのは私の方よ。

 私、わたしの料理だけ別になっているわよね」

 「瞳の料理はさ、店長がサービスで入れてくれたのではないの。

 運が良いと言っていたじゃない。 

 カサカサ海虫の素あげらしいからね」

 「特別なサービスらしいから。

 ここは食べるしかないでしょうね。

 ゴキブリの料金は取らないと言っていたから値段が結構するのかも」

 「ゴキブリって言うな。

 このゴキブリを大きくした紫の光沢ある虫を食べろっていうのかいーーー」

 「食べたらおいしいかもしれないわよ。

 みんな普通に食べているじゃないのよ」

 「それじゃ澪、私のと交換してよ」

 「私のとは駄目よ。

 能力ですでに中身を変化させているんですからね。

 見た目もちょっとだけ変わっているでしょう。

 私の口にあうような甘辛い魚料理に変えてしまったのですから。

 なにが中に入っていも変わっているから怖くわないわ」

 「あっ、その手があったか」

 「私のもやってよ、澪。

 そうじゃないとこんなの食えないわよ」

 「しかたないわね。

 ……。

 能力を使ったわよ。

 これで大丈夫なはずよ」

 「ゴキブリが残っているんですけど……」

 「大丈夫よ。

 見た目はゴキブリだけどきくらげに変化させたのですから。

 それに紫だったのが茶色になっているじゃないの」

 「茶色かったら余計にわるいわよ。

 見た目もかえてよね」

 「もう、瞳はわがままなのね。

 ……。

 はい、これでいいでしょう」

 「澪、私のもお願いできるかな。

 なんかこのまま食べるのは不安になってきたわ。

 中からなにが出てくるか想像がつかない」

 「ぷぷぷっ、私にはわかるわよ。

 一番下になまこのような黒い物体がまるまる1匹沈んでますからね。

 それもまだ生きていて動いているみたいね。 

 おかしな話、瞳と澪の料理に入っているのは死んでいるのに杏のだけは動いているんですもの。

 これも特別なサービスかしら、ぷぷぷっ」

 「!」

 「!」

 「!」

 「!、香、何ですって、そう言うのは早く言ってよね。

 純くん、浄化して、私の料理を浄化してよ」

 「一応だけど私たちの体でやばそうな成分がはいっていないか料理を浄化してくれないかな?」

 「わかったよ。

 みんなの料理も僕の能力を使っておくね」

 「純、頼む」

 「私のもお願いね」

 澪の能力で成分を変化させ純の能力で浄化し食べられるようにしてこの場で食事を取ってしまうのだった。


 おそらく本来の味とはまったく違っていると予想される。


 これからの食事に思いやられるとしった次第だ。

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