第58話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 XV
異国から来た冒険者、紅蓮と楓さん。
男女2人でペアになって活動している。
北東のサンデーニャーラ諸島の先にあるアグニーラ大陸の火の国から来たと言っていた。
2人とも日本の戦国時代の侍に似た服装をしている。
紅蓮さんは背が高く195センチ、銀髪を短く刈り上げ、黒い目をした大柄な男の人だ。
腰に日本刀を2本差し、黒い羽織、袴を着ている。
楓さんも背格好は女性としては180センチと高く赤い長い髪をポニーテールにまとめ瞳が赤く顔の美しく整たりりしい女性だ。
長い刀を背中に背負って、紅蓮さんと色違いの赤い羽織、袴を着ている。
2人とも日本人ではないかと思われるほど容姿が私たちに近いので驚いてしまった。
私たちが冒険者をはじめたころに声をかけてくれて、冒険者家業のやり方を手ほどきしてくれたいわば恩人と言ってもいい人だ。
私の憧れ、彼らのような冒険者になりたいと思っていた。
私たちが異世界から来たいきさつを唯一話し、それを信じてくれている人だ。
2人は雅が死んだ時も相談にのってくれて、私と一緒に泣いてくれた。
俺の国では泣いてくれる人が多いほど天国に逝けるんだと言った事が印象深かった。
世界を旅している2人だったらこの異世界の情報を持っている。
私は思いきって異世界の情報を聞くことにした。
…… …… ……
「よう、お嬢ちゃん。
久しいな。
話があると聞いたが、いったい何があったのかな。
俺が教えられる事だったらなんでも聞いてくれ。
お嬢ちゃんたちは、この世界では信頼できる冒険者たちだからな。
悪事の手引き以外は教えてやってもいいぜ」
「紅蓮、悪事の手引きってまるで私たちが悪い事をやっているような言い方はやめなさい。
そんな言い方わ、失礼だわ」
「ははは、すまねえな。
楓と違って俺は無法者だからな」
「無法者て自分から言うかしら。
バカじゃないの。
もっともこのバカは昔とんでもない事をしでかしたのは確かですけどね。
無法者と言っても過言はないのですけど自分で言うのはどうかと思いますよ」
「えっ、紅蓮さんて自国の火の国で何かやらかしたんですか。
いえ、失礼しました。
詮索はしてはいけなかったのですよね」
「別にいいよ。
たいした事じゃないからな」
「それより俺たちに聞きたいことがあるんだろう。
話してみな」
「実はですね。
……。
……。
……。」
「なるほど、この国をそろそろ出ていくので、世界の情勢をしりたいってことか。
いいぜ、俺たちがまわって来たこの星の情勢を教えてやろう」
「この星の情勢ですか?」
「おっといけない。
先ほどの話は忘れてくれ」
紅蓮の瞳が一瞬光ったように見えた。
『はい、わかりました忘れます』
私は催眠術を受けたように先ほど言った事を忘れてしまう。
「この世界の情勢だったか、いいぜ教えてやろう」
「お願いします、紅蓮さん」
私はこの世界の事を紅蓮さんがしり得た情報を聞いた。
まずこの世界はフィアーズリードと言うらしい。
誰がつけたかしらないが、かなり歪んだ名前をつけていると言われた。
8つの大きな大陸と小さな多く入り組んだ広範囲の諸島群があり、実質9の大陸の中で人間、獣人、エルフ、ドワーフ、亜人、魔獣がそれぞれ国を作りおのおの生存範囲を広げるために争いを繰り返していると聞いた。
9の大陸はまず私たちが居るキューベル大陸を中央にすると。
北東のサンデーニャーラ諸島、その先にあるアグニーラ大陸、紅蓮さんたちの出身の火の国がある大陸がある。
海を隔てて遠く離れた東に問題が数多くあるミスティリア大陸があり、その北に紅蓮さんたちが住んで居たアグニーラ大陸が位置すると聞いた。
南東に行くと獣人たちが多く住まうエクスタ大陸があったのだが、とある魔獣によって滅ぼされ復興中だと聞いた。
その先にはリグロード大陸、光翼神を崇める大きな大陸があると言う。
西にはブルネム大陸、エルフとドワーフが覇権を争っていると言う大陸がある。
南西にはアーガルム大陸、亜人が多く住む魔の大陸だそうだ。
その大陸には3魔王が存在し、大陸の覇権を争っているらしい。
南にはシャンズ大陸、人種が多様な小さな独立国家が多く存在しそれぞれ特色のある国家が混在している。
どの大陸も危険が伴うと聞いた。
世界には輝光神と言う存在、魔王が6柱、それと9魔神獣と言われる知恵がある異世界から召喚された巨大な魔獣たちがいて支配している地域があるらしい。
海の中にも魔獣が潜んでいるが、大陸よりは比較的安全だと聞いた。
理由はわからないが、紅蓮さんは言葉を濁しながら言った。
おそらくは海の関係はまったく把握していないのだろう。
特に今はエクスタ大陸を滅ぼした魔神獣ガイデアがミスティリア大陸に移り住み現在ひどい状況へ陥っていると聞いた。
もともとミスティリア大陸は問題がある国家が多く存在していると聞いた。
それにくわえ魔神獣ガイデアが来た事よりよりひどい状況に陥っていると言う。
どの大陸も危険度は高く、特に魔神獣ガイデアが治めるミスティリア大陸と魔王が覇権を争っているアーガルム大陸、神が治めると言うリグロード大陸は行ってはいけないと教えられた。
私たちはこの世界はもと居た世界より危険だと認識していたが、私たちがいるこの国は治安のよい国で住みやすいと聞いた時にはショックを受けた。
転移してきた時にはある意味運が良かったのかもしれない。
誰が言ったのかわからないがフィアーズリードと言われるゆえんを紅蓮さんが話してくれた。
今もそうだが昔から争いが絶えない世界だったらしい。
どこかしらで大規模な争いが起こっているみたいだ。
魔王に魔神獣それに本物の神? がいる時点で驚きだ。
私はこの国から出て行くか迷ってしまったが、帰れる方法を探すには世界で情報を得て強くならないと直感力が言っている。
これからみんなと話しあい行き先を決めようと思っている。
「紅蓮さん、ありがとう。
貴重な話を聞けたわ。
それに世界地図まで書いていただけるなんて、本当にありがとうございます」
「別に良いさ、俺がまわって来た世界のある程度の情報しか書いてないからな」
「それでも私たちには助かるものです」
「お嬢ちゃんたちが行くんだったら、北東のサンデーニャーラ諸島とその先にある俺が住んで居た国、アグニーラ大陸か。
それか南のシャンズ大陸がいいな。
しかし、どの大陸も奴隷制度がある国家が存在する。
それも魔法で奴隷の烙印を押し人を支配する魔法が存在するんだ。
行くんだったら気を付けた方がいいぜ。
特にミスティリア大陸あそこから奴隷を使役させる従属魔法が開発されたと言う話があるからな。
あそこの大陸は今は。魔神獣ガイデアもいるし危険度が高い。
今のお嬢ちゃんたちでは手がかかるな。
行かない方が良いと言っておくぜ」
「心得ておきます」
「無難なのは南のシャンズ大陸か。
あそこだったら異種族が多く混在するが面白い国家もある。
経験を積むのだったら行って見るのも良いと思うぜ」
「シャンズ大陸ですか」
「あぁ、南のヨルヌダ国から船が出ているはずだ。
この国ベルンフォードとも比較的に仲がいい。
国境も金を積めば問題なく通れるだろう。
行くんだったらシャンズ大陸だ。
サンデーニャーラ諸島は1年前の件以来いまだに船の往来は限られているしな」
「そうみたいですね」
「シャンズ大陸に行くことを考えてもいいだろう」
「紅蓮さん、ご助力ありがとうございます」
「別に良いって気にするな。
できれば俺が住んで居た、アグニーラ大陸の火の国に訪れても良いがな。
いかせん遠すぎるからな。
それに船の航行も海流が激しく行きずらいんだよ」
「そうなのですか」
「あぁ、そうだ。
おっと話はここまでだな。
俺はそろそろ用事があるので行かせてもらうぜ。
あっ、情報代と思ってここの飯代は払っておいてくれよ。
それでいいからさ」
「紅蓮さん」
「それじゃ気をつけて行ってきな。
機会が会ったらまた会おうぜ。
みんなによろしくな」
「ありがとうございました」
私は深くお辞儀をし礼を言った。
不思議な2人だ。
まるでこの世界の人ではなく私たちと同じ世界の人みたい。
でも、私の直感力は違うと言っている。
紅蓮さんを索敵してもまったく情報が得られない。
強さは桁違いに強いのがわかる。
おそらくこの国では一番強いのだろう。
索敵できないのは、私の能力のレベルが低いからかな。
もっと強くなって紅蓮さんたちの情報を引き出せるくらいに能力を高めないといけないわね。
それにはこの国を出て、いろいろ経験をつまなくてはいけないな。




