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第56話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 XIII

 

 「アンネローゼ姫さま、お客様が参りました」

 「どちら様でしょうか?」

 「冒険者、プライズガーデンの方々で、木綱瞳きづなひとみさま、竹内紫たけうちゆかりさま、空条宙くうじょうそら神斗純かみとじゅんさまの4名さまが根岸麗ねぎしうららさまのお見舞いをしたいと訪ねて参りました」

 「プライズガーデンの方々ですか、お通ししてください」

 「かしこまりました」

 「ねえ、うらら

 「どうしたのアンネローゼ」

 「プライズガーデンの方がお見舞いに来てくれたそうよ。

 あなたの話していた神斗純さまもいらっしゃるらしいわ。

 良かったわね」

 「別に嬉しくはないわよ。

 そんなんじゃないから」

 「そうかしら、私は会うのが初めてでして、ちらりと窓越しで先ほど見ましたが、あなたが話していたとおり背が高く優しそうな方でしたわね。

 素敵な方ですわ」

 「駄目よ、アンネローゼ、純くんにちょっかいかけたら許さないんだから」

 「わかっていますわ。

 今連れてきますね」

 

 …… …… ……


 「姫さま、お久しぶりです。

 プライズガーデンのリーダーを務める木綱瞳です」

 「瞳さん、あなたに会うのは2度目でしたね。

 堅苦しいあいさつはぬきにしましょう。

 麗さんはこちらです。

 どうぞ見舞ってやってください」

 

 「麗、体調はどう」

 「瞳、お見舞いに来てくれたのね。

 少しは良くなったわ」

 「まさかあなたが倒れるなんてね。

 思いもよらなかったわ」

 「私だって女の子ですからね。

 精神的に今まで気をはっていたのですから、今回は少しはじけてしまったようです」

 「そうらしいわね。

 そう言う事だったら、今はゆっくり休みなよ。

 代わりは私たちがやってあげるわ。

 「ありがとう、瞳」

 「そうそう、おいしいお菓子を純くんが作って来たのだけどどうかしら。

 でも、今は寝ているんじゃ無理かな」

 「お菓子ですか。

 瞳さんたちの国のお菓子ですよね。

 前にいただいたのですがとてもおいしかったですよ。

 お茶を用意しましょう。

 皆さんでいただきましょうね」

 「そうですね」

 

 『ちょっと、アンネローゼなんで寝ている私を差し置いて、純くんが私のために作ってくれたお菓子よ。

 それを食べようとしているのよ。

 私は食べられないじゃないのよ』

 と言う訴えを、麗の鋭い目線から瞳は読み取った。


 アンネローゼ姫は麗をほっておいてプライズガーデンのみんなとお茶をはじめてしまった。

 

 アンネローゼ姫はこういった空気が読めないところがあると瞳は思った。

 麗の視線が痛く瞳に突き刺さる。


 「このふわふわしていますお菓子はマフィンと言うのですね。

 甘さ控えめでやわらかくてとても美味しいわ。

 私たちが食べているお菓子は、硬く甘い焼き菓子が多いですからね。

 こんなふうにやわらかいお菓子ははじめてです。

 とてもおいしいですね」


 『ちょっとそれは、私のお見舞いで純くんが作ってくれたお菓子でしょう。

 なんでアンネローゼがおいしそうに食べてるの、それに食べすぎよ。

 私の分がなくなってしまうわ』

 と言う視線が瞳にはわかる。


 ごめんね、麗、姫さまってこういう人なんだわね。

 しらなかったわ。

 私たちもあなたのかわりにいただいておくことにするわね。

 悪く思わないでと、麗に目で答える。


 「本当においしいですわね。

 そうだ純さんでしたか。

 せっかくなので動けない麗さんに食べさせてあげてくれませんか。

 わたしたちだけいただいたのでは申し訳ありません」

 「かしこまりました」

 純は麗の元へ行き、お菓子とお茶を振舞ってあげるのだった。


 麗の目線で『グッジョブ』と親指を立てている姿がなぜか見える瞳であった。


 1時間程お茶をいただいて帰るプライズガーデンの4人だった。

 

 お見舞いに来てくれた事を麗も満足そうにしていた。

 純にあえたのがよほどうれしかったみたいだ。


 「麗、よかったわね。 

 純さんに食べさせてもらって」

 「別にそういうわけじゃないんだから」

 「本当によかった、少しは元気になったみたいだわ」

 「えぇ、元気が出たわ、ありがとう、アンネローゼ」

 「どういたしまして」


 …… …… ……


 純たちが麗のお見舞いに行って帰って来た時に、亮のバカが事件を起こした事を聞かされる。


 それもデミタリアス伯爵の事柄で事件を起こしたのだ。 


 ゼブンクラウンのメンバーとプライズガーデンのメンバーは急遽動き出すことになる。


 デミタリアス伯爵の悪行を暴けるきっかけになるとメンバーは奔走する。


 …… …… ……


 事の始まりは、以前亮がつきあっていたサイの村のカレンと言う女性からの話だった。

 縁はとうに切っていた亮だがたまたま、商業の港町タルタスに行った時に見かけたのだ。


 それも手と口を縛られ船に乗り込む姿を見てしまったのだ。

 その様子を見て商船にかけより事情を聴いた。


 船員から奴隷として売られると聞いたのだ。


 カレンは夫に浮気がばれて、海外に奴隷として売られることになったらしい。 


 ベルンフォードの国では奴隷制度を受け入れていない。

 他国に人民を売るのは重罪にあたる。


 商船はデミタリアス伯爵の傘下に入った貴族が所有する船だった。

 そこで激怒した亮がカレンを助けるために船に乗り込み大暴れをしたのである。


 亮の能力は魔法力を爆発させる能力だ。

 爆音が鳴り響き、人々は何があったのかすぐに野次馬根性で集まって来た。


 商船は破壊され、出航はできない。

 そんな中で監査が入り、船の中にはさらわれた街の住民が何人も見つかった。。

 それにこの国では取り扱いはしてはいけないご禁制の品物や麻薬が大量にみつかる。


 それを聴きつけたストレング公爵の動きは早かった。


 王都にあるデミタリアス伯爵につながる貴族の屋敷に監査を入れたのだ。

 ストレング公爵は国王からの指示を取り付けたので下級の貴族共は何も言えない。

 監査が入りご禁制の密輸品や麻薬が見つかった。


 麻薬パーティなる催しがおこなわれた形跡もあったのだ。


 王都での麻薬の扱いは厳しく、死罪にあたいする。

 デミタリアス伯爵の配下の者は捕縛され厳しい取り調べを受ける。

 

 さすがに王都にあるデミタリアス伯爵の屋敷には監査には入れなかったが、取引があるドミンゴ商会に家宅捜査を入る。

 おかしなことに倉庫にはまったく何もなく空の状態だった。

 

 デミタリアス伯爵が気づき、すでに船に積んで他国に出向させたあとだった。


 しかし、プライズガーデンはその動きをつきとめていた。


 「瞳が言ったとおりあちらの海域に船が進んでいますね」

 「乗り込みましょうか?」

 「うーん、海の上だと私、船酔いするんだよね」

 「仕方がありませんね。

 私が陸地へあの船を転移させましょう」

 「そのまえにセブンクラウンのメンバーをできるだけ呼んできた方がいいじゃないかな。

 私たちだけで制圧はできると思うけど念のために戦力はあったほうがいいからね。

 翔と仁が今ストレング公爵の屋敷にいるわね。

 ゆかり連れて来てくれないかな」

 「了解いたしましたわ。

 事情を話し今すぐに連れて来ます」

 紫は瞬間移動テレポートを使いすぐさま翔たちを連れてきた。


 「杏、あの船だな」

 杏が創造魔法クリエイトで創った双眼鏡で翔は船の行くへを見ている。


 「そうだけど、紫があの船をここへ転移させると言っているけどどうする?

 瞳が、船酔いするので船の上では戦いたくないと言っているから」

 「それは構わないが、紫、あの大型の商船をこの陸の上に転移できるのか?」

 「お安い御用ですわ。

 すでに船には瞬間移動テレポートで飛んで行ってマーキングしているわよ。

 いつでもここへ転移できるわ」

 「紫、お願いする」

 「任せて」

 紫は地面に転移の魔法陣を描いた。

 

 書き終えて青色に光った瞬間に双眼鏡で見えていた船が転移され目の前に現れたのだ。


 「ドスン」

 地面に船が落ち大きな地響きが鳴る。

 

 「よし、船を制圧するぞ、男性陣は乗り込め、なるべく船員は捕らえるようにしろ。

 殺すな生け捕りにするんだ。

 純はここで待機して女性陣の護衛をしてくれ」

 「俺らが取り逃がした船から逃げ出したやつも捕まえてくれよ」

 「了解した」

 セブンクラウンとプライズガーデンのメンバーは船の制圧に動きだした。


 船員は自分たちの身に何が起こったのかわからず、瞬く間に制圧されていく。

 その中にはデミタリアス伯爵の重鎮であるイルキア男爵が乗船していた。

 他国と内通し奴隷売買をしていた事が発覚する。


 杏が創造魔法クリエイトで創った手錠で捕らえられ全員が拘束されている。

 

 船の中身にはご禁制の品物や麻薬、さらわれた人たちが大勢監禁されていた。

 すぐさま、ストレング公爵につならる衛兵を呼んで船員のを捕縛させる。


 「これは動かぬ証拠が見つかったな」

 「でもさ、あのデミタリアス伯爵の事だよ。

 なんだかんだと言っていい逃れするかもね。

 重鎮が捕えたりしてもしっぽきりでしらぬ存ぜぬでとおすでしょうね」

 「そうだな、確実に証拠をおさえたのだが、あの男はやりそうなことだ。

 他にも証拠を押さえたがまだ足りない気がする」

 「それだったらさ、ドミンゴ商会に家宅捜査をしているんだったよね」

 「そうだ、今捜査中だが、倉庫はおかしなことにからだそうだ」

 「ここに密輸品と裏帳簿があるよね。

 全部この船に乗っているってわけよね。

 半分くらい荷物を持っていって、私たちがこっそり置いてきてあげようか」

 「そんな事ができるのか。

 できるのだったら頼みたいのだが」

 「私の瞬間移動テレポートと、宙くんの空間収納魔法アイテムボックスがあれば簡単にできるわよ」

 「本当なのか?」

 「えぇ、簡単よね」

 「そうだな」

 宙は空間収納魔法アイテムボックスを使い船にあった密輸品と麻薬の半分の荷物をなにもない空間にいれてしまう。


 「荷物が消えた、本当にこんなことができたのだな」

 「それじゃ、言って来るね。

 宙くん私に捕まって」

 「まってくれ、ついでだが確実性を増したい。

 デミタリアス伯爵の右腕のボーンボレス子爵と言うやつがいるのだ。

 やつの屋敷にも家宅捜索が入っているはずだ。

 麻薬をわかるところに置いてきてくれないか。

 麻薬はご法度品だからな。

 王都の屋敷で見つかったらいかに爵位持ちの貴族でも現行犯で捕まえられる。

 王都での麻薬の流通は死罪だからな」

 「別にそれは構わないけど場所がわからないわ」

 「それだったら私も付いて行くよ。

 場所を支持してあげる」

 「わかったわ、瞳お願いね」 

 「それじゃ、私に捕まって、いくわよ瞳、宙くん」

 「わかったよ、紫さん」

 紫と宙と瞳は一瞬の間に消えていった。


 「凄い能力だな、俺らとは次元の違う異能だ。

 あの量の荷物を持って、一瞬の間に移動してしまうのだからな」

 「あぁ、そうだな。

 プライズガーデンのメンバーは俺らをこえる異能を所持している」


 瞬間移動テレポートをし家宅捜索しているドミンゴ商会についた。

 

 捜査員と商会の人に、瞳は気付かないように動いてまだ捜索していない倉庫に裏帳簿と密輸品と麻薬をこっそりと置いてしまう。


 そのあと家宅捜索に立ち会っていたドミンゴは倉庫の中に密輸品と麻薬それに裏帳簿が見つかり大慌てをする。

 船に積んで移動させたものがあるのだ。


 ドミンゴは動かぬ証拠を見つけられ観念したのだった。


 「ムフフ、これでいいわね」

 「瞳、なんか悪人にみえるわよ」

 「別にいいじゃないの、さあ次へ移動だわ」


 …… …… ……


 「紫、あの貴族街のはずれに、風車があるじゃない。

 あそこまで瞬間移動テレポートして、あの近くにボーンボレス子爵の屋敷があるわ」

 「わかったわ」

 瞬間移動で移動してしまう。


 「次はここね」

 「どこら辺に置いた方がいいかしら」

 「うーん、私の直感力ではあの馬小屋が良いわ」

 「えっ、馬小屋、あんなところに置いていくの」

 「馬小屋にもこれから捜査がはいるわ。

 どうなるか見ものね」

 「わかった、それじゃ船に積んであった麻薬を置いていくよ」

 「お願い、宙くん」

 宙は空間収納魔法アイテムボックスを使い大量の麻薬を出して馬小屋に置いていった。


 …… …… ……


 「おい、おまえら何もないではないか、この始末はどうつけてくれるんだ」

 デミタリアス伯爵の右腕のボーンボレス子爵は脅しに似たこわいろの声でストレング公爵の息のかかった捜査員に言った。


 「ボーンボレス子爵、どうやら倉庫に何もないようですね」 

 「あたりまえだあるはずはなかろう」

 「それでは馬小屋を捜索させていただけませんか?」

 「馬小屋だとそんな場所にあるわけがなかろう」

 「どうしました、顔が引きつっていますよ。

 何か見せたくない物があるのですかね」

 「ふん、バカかおまえは、あんな臭いところに私は行きたくないだけだ」

 「同行を願えませんでしょうか」

 「まぁ、良い、何もないのだからな。

 行って私の正しさを証明させてやる。

 何もなかったらおまえたちただではすまさんからな」

 馬小屋に入り捜査員が捜査をはじめた。


 「監査長、馬小屋に麻薬が、大量の麻薬が隠されていました。

 こちらに来てください」

 「なんだと、バカなあるはずないだろう。

 さてはおまえら持ち込んだな」

 「そんなことするはずないじゃないですか。

 あなたに案内されて今来たばかりなのですよ」

 「監査長ここです」

 「これは、これはまた大量にありますね。

 こんな量を私たちが持ち込めるはずはないでしょう。

 ボーンボレス子爵どう言い訳をするんですか」

 「バカなこんな大量にはうちは扱っていないぞ」

 「大量に扱っていない?

 妙な言い方ですね。

 少量はまるで扱っているみたいな言い方です。

 ボーンボレス子爵、麻薬はご禁制です。

 それも王都での麻薬の所持は死罪にあたいします。

 いくら子爵さまでも、これだけの量を見つかれば、現行犯で捕まえられます。

 大人しく捕縛されてください」

 監査長はにやりと笑い、部下に言って取り押さえる。

 

 ボーンボレス子爵は大慌てをし憤慨している。

 大量の麻薬が見つかり困惑している。


 ボーンボレス子爵は捕らえる衛兵に対し剣を抜ぬき振り回す。


 衛兵の何人かは傷を負ったが、数にまさりボーンボレス子爵は捕まった。

 頭を地につけ屈辱の顔を見せている。


 王都の一斉の検挙でデミタリアス伯爵の傘下にある者たちは次々と捕まった。


 この事件に関して国が腰をあげる。

 デミタリアス伯爵を王都に呼びつけるのであった。


 しかしデミタリアス伯爵は国王の命令に従わず、一向に王都に来る気配はない。

 国王は国に対して反旗を翻したと判断した。


 ストレング公爵は国王の命令により王国軍1万と自らの私兵1万を引き連れデミタリアス伯爵の領地に進軍を開始する。

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