表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/63

第55話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 Ⅻ

 

 私たちは雅の死を受けいれてからかわった。


 元の世界との違いを改めて認識し、意識を改革していく。

 そんなさなか、プライズガーデンの全員が異能を授かったのだ。


 ゼブンクラウンのメンバーからスキル、魔法、異能の使える情報をしり得た。

 私が思っていたとおりに、魔核が異能に関係しているとわかったのだ。


 異能だけではない、この世界で使えるスキル、魔法も関係しているのだと言う。


 魔核を一人づつ渡され、自分が強く思い描いた異能に近い能力が使えるようになった。

 しかし、何事でもあるが能力的には最初は思うようには使えない。


 私も今回は、前と違うの異能を授かったみたいだ。

 

 私の能力は見た物の情報を得る能力と、ちょッとした先が読める直感力が得られた。

 

 自分でも前回と違う能力? と思っているが直感力が私の頭の中で言っている。

 前回とは違う能力だと。

 

 今はその問の答えはわからないが、次期にわかると直感力は言っている。

 それが何を示すのかわからないが、私の未来で起きる分岐点になるだろうと。

 

 もっと能力を向上させればいずれわかる時がくると思っている。


 そうすれば、帰る方法が見つかると直感力が言っているのだ。


 しばらくはゼブンクラウンのメンバーとともに行動して、力を得ることに没頭する。


 …… …… ……


 この国で冒険家業をこなし、それなりにメンバーは力をつけてきた。


 力をつけるとそれなりに有名になってくる。

 私たちの力をあてにして群がってくる者たちがでてきた。


 そんな時に、セブンクラウンに国で有力な力を持った貴族を紹介してもらう。

 うわさに聞いていたストレング公爵(男性)67歳だった。


 どの国でもそうだが、冒険者家業は有力な後ろ楯がいないとやっていけない。


 セブンクラウンがお世話になっているストレング公爵に紹介されたのだ。


 貴族とは交流を持ちたくないが、これも生きるために仕方なくつきあいをはじめている。

 元の世界に帰るためには今は必要だ。

 私の直感力が言っている。


 しかし、そのせいでこの異世界で有り得る負のできごとを垣間見てしまう。


 すでにこの世界に来て3年はたつ頃だった。


 …… …… ……


 私たちは今、ストレング公爵の領地で冒険者家業をやっている。


 主に領地内の周辺地域に出没する魔獣の討伐だ。

 それとストレング公爵に親しい貴族の領地での魔獣討伐もおこなっている。


 公爵領とあって比較的に安全な地域だがそれでも魔獣は存在する。

 私たちは周辺地域の魔獣を駆除する仕事を請け負っていたのだ。


 公爵家とはなるべく距離を置いて行動している。

 セブンクラウンのメンバーが仲介に入り仕事を請けおこなっていた。


 セブンクラウンもなるべく貴族と関わりたくないが、亮の件でストレング公爵に負い目を感じて奔走している。


 ストレング公爵はこの国の国王の叔父にあたり国の重鎮の1人だ。

 中でも、財政関係を携わっている。


 国の大半の食糧事情は、ストレング公爵の領内で賄っているのだ。

 辺鄙へんぴな農村はいくつもあるのだが、その土地の領主にまかせて国では税収を一斉取ってはいない。

 地方には取れるほどの税収はないと考えているらしい。


 ストレング公爵内の農業事業には、セブンクラウンも一役かっていた。


 セブンクラウンの1人、根岸麗ねぎしうららがもともと園芸部に在籍して、植物の事情に詳しかった。

 農業部門にも精通していたのであった。


 異能も、植物に関するもので、植物を自在に操作できる異能を持っていた。


 ストレング公爵の孫娘にあたるアンレローゼ姫(18歳)の護衛として雇われ、非常に親しくなった。


 花の事で気があい、手入れの仕方を教えたりして仲良く過ごしていた事がある。


 アンネローゼ姫は勤勉で、根岸麗から教えてもらっていた植物の知識を本にまとめストレング公爵へ提供していた。

 その中には農業で役立つ新しい知識が記されていたのだ。


 ストレング公爵は、かわいい孫娘からもらった本であれば実戦しなくてはと思い農業にとり入れて見る。


 アンネローゼ姫の本に書かれていた内容は、どれも画期的で新しい農業の知識だった。

 

 ストレング公爵は本をいただいた時からすでに実戦して成果を出している。

 

 野菜の新しい栽培の方法、痩せた土地でも作れるジャガイモなどの新しい芋の開発。


 それに加え、今年は麦のさくづけ方法を変えた。

 半年ほど土地を休ませ肥料を加えた土地に新たにさくづけした。


 ストレング公爵の鶴の一声でアンネローゼ姫の政策がとおってしまったのだ。


 ものの見事に政策は成功し、麦は豊作で過去最大で実も大きく質もよい。

 自分の領地が麦の穂が黄金に輝いて見えるほどだったと言う。


 ストレング公爵もうちの孫娘は天才だとまわりに絶賛するほど喜び惚けている次第だ。

 

 去年から新たに作られた野菜の収穫も満足できるほど成果をあげている。

 特に新たに開発したジャガイモは痩せた土地でどこでも作れるので地方の農村にもまわせる作物として普及させている最中だ。


 麦の収穫をはじまる直前に人手を増やしている最中の出来事だった。


 …… …… ……


 風が吹き荒れる快晴の夜だった。

 突如、麦畑から火が吹きあがった。

 麦畑に火をはなった者がいたのだ。


 火は四方から発生し、麦畑に瞬くに燃えあがった。

 夜中、警戒していたのだが発生してしまった。


 セブンクラウンとプライズガーデンのメンバーはすぐさまかけつけ消化にあたる。


 彼らの異能を使い消化にあたったのだ。

 

 今回は特に純の異能が際立って役にたった。

 純の能力で火と煙のみを浄化し、鎮火をすることができたのだ。


 火と煙をまったく間に消し去っていった。


 純は普段は病気や毒などで苦しむ人に異能を使っている。

 しかし今回は異能を使い火を消してしまったのだ。


 純は自分の異能の能力を把握していた。

 対象を消え去る能力、消滅だった。


 普段は病気の原因になるものや、毒などを消し去っていたのだ。

 消滅の力を使い火と煙のみ消しさってしまった。


 セブンクラウンとプライズガーデンの活躍により火は思った以上に早く鎮火したがそれでも全体の4分の1が焼かれ、3分の1が収穫ができない状態になってしまった。


 火をつけた犯人は領内でのでき事だったので即日に全員が捕まる。

 麦刈りを手伝いに来ていた8人の者が火をつけたのがわかったのだ。


 それも火をつけたあとに平然と宿屋へもどり就寝していたと言う。


 火をつけた者は全員、見知らぬ男から金貨1枚ほどもらい犯行をおこなったと言う。

 金貨1枚だけで火をつける暴挙ができる荒れた世界だ。


 火をつけた犯人は拷問を受けたうえに、1日はりつけに晒され火あぶりになったと言う。

 お金のために後先を考えずおこなう。

 後日の結果がどうなるのか考えもしない人が多いのだ。


 犯人の親族も公爵により罰を受けると捕まった時に聞かされ、後悔をする。

 教育がいきとどのっていないので、分からなければ何をやっても良いと言う考えが地方の住民にあるのだ。


 …… …… ……


 「デミタリアス伯爵めやりおったな」

 ストレング公爵は憤慨している。


 「星野翔、よくぞ鎮火してくれた。

 被害は最小限に抑えられた。

 あの火のまわりでは全焼してもおかしくはない勢いだったと聞いたぞ」

 「めっそうも御座いません。

 消火の際、出遅れました。

 3分の1を焼けましたことは残念になりません」

 「おまえは謙虚だな。

 そういう国柄だったか、他の者だったら褒美目当てに自身を称賛するほど声を高く謳うぞ。

 謙虚なことは良い事だ。

 今の儂の心情をしっておれば尚更だな。

 この状況で己自身の称賛を謳えば、頭に血がのぼっている今のわしだったら殺しているかもしれんからな」

 「おそれおおい事です」

 「手引きした犯人はわかっている。

 しかしいかせん証拠がない。

 捕まえた犯人たちも、しらない男に金貨1枚で火をつけろと言われたらしい。

 たった金貨1枚で火をはなつ暴挙がおこせる。

 これも国の教育政策が間違ってしまったのかもしれないな。

 地方の出身者は特に教育がなっていない。

 今回、収穫が多く見込めるため領外からも人を雇った。

 わしの見通しが甘かった。

 うかれすぎていたのかもしれん。

 反省すべきことだ。

 しかし、今更、人民は代えられないからな。

 火をはなつ指図をしたものを処罰するしかあるまい。

 わかっているのだが証拠がない。

 星野翔よ、わしに協力してくれんか。

 何としてもデミタリアス伯爵を追い詰めたい。

 やつは裏でいろいろ悪事をやっている事がある。

 それを暴きたいのだ」

 「了解いたしました。

 依頼と言う形でしたら受けたいと思います」

 「おお、そうかそれでは頼もうか。

 やつのしっぽをつかんでくれ」

 「おおせのままに」

 「ときにセブンクラウンのメンバーにはご苦労をかけたようだな」

 孫娘と仲がいい、根岸麗ねぎしうらら殿だったか。

 今取り組んでいる三圃式農業方式をアンネローゼとともに立案してくれた者だな。

 今回の件でショックのあまり寝込んでしまったと聞いた。

 わしの孫娘も相当にショックを受けていたがそれ以上だったらしいな。

 孫娘が倒れると思っていたが、そちの仲間が倒れてしまったようだ。

 柄にもなく孫娘が心配して看病していると聞いた。

 麗殿には心中を察しする。

 ゆっくり、療養を取ってくれと話してくれ」

 「わかりました」

 「この、屈辱は近々返さねばなるまい。

 デミタリアス、忘れないぞ」

 「……」

 「星野翔、下がっていいぞ、ご苦労であった。

 あとで褒美をわたす」

 「ありがとうございます」


 …… …… ……


 「翔、どうだいストレング公爵の様子は」

 「だいぶお怒りのようだぞ、仁。

 今は誰も近づかない方がいい」

 「だろうな。

 そういえば、麗がショックのあまり寝込んでしまったのだろう」

 「あぁ、三圃式農業だったか。

 俺はよくわからんが、痩せた土地を休ませ農業をする方法だろう。

 それくらいしかしらん」

 「その方式を採用すると言って驚いていたからな。

 まさか自分の意見がとおると思わなかったのだろう」

 「麗の意見じゃなくて、お姫さまの意見だろう」

 「そうだったな。

 ストレングス公爵も孫娘にはかなりの大甘だから。

 まさかこれほど大規模にやってくれると思わんだろう」

 「まぁ、そりゃそうだな。

 新たな野菜の育成方法や新たな作物、特に芋で成果を出している。

 こちらの世界の似た芋をジャガイモに異能で改良したんじゃないか」

 「あぁ、そうだったな。

 ジャガイモがこの国に普及するようになって、俺たちも少しは食べ物がましになったからな」

 「そうだな、ジャガイモがないとあるとじゃ、食生活が全然違う。

 それに食べられる豆類もできはじめているからな」

 「こちらの豆は毒性が強く苦味があるのだろう。

 食べられなくはないらしいが、おなかが緩くなると聞いた」

 「豆の改良をおこなったんだ。

 熱をとおせば毒を分解できるほどにな。

 ほぼ俺たちの世界の物と変わらんらしいな」

 「そうだな、俺はものすごい功績をあげたと思っているよ」

 「確かに」

 「しかし、収穫前の麦に火をはなつとはいまだに信じられん」

 「俺もうわさ話でしか聞いた事がなかった。

 まさか実際におこるとは、この国は別に敵対している国家とか国内でもそれほど表立って揉めているとは思っていなかったのだがな」

 「敵対している派閥はあると聞いていた。

 しかし表面上ではなかったように思えるがな」

 「俺もそう思っていたけど、違うらしいな。

 妬みがひどくあるのだろう」

 「妬み、妬みだけで火をはなつのか?

 そこまでやるのか」

 「そう言う事がおこる異世界だと言う事だ。

 教訓に入れておいた方がいいぞ」

 「そうだな。

 それと、麗の事はどうする?」

 「純に見舞いに行ってもらおう。

 麗は純のことをえらく気に入っているらしいからな」

 「そうだな、雅の件から純が変わった。

 強くなったぞ、背も高く伸びておまえくらいあるし、いい男になったよな。

 まるで別人のようだ」

 「まったくだ。

 困難に直面すれば人は変わると言うが、目の前で見せてくれた。

 プライズガーデンのメンバー全員が大人になったと言う感じで強くなったからな」

 「そうだな。

 特に純は強いぞ、翔おまえ1対1で戦ったら勝てるのかい」

 「そいつは、無理だ。

 あの異能を使われたら、一瞬で終わる」

 「即答で負けを認めるのかよ。

 おいおい、それほどの異能なのかい」

 「あぁ、瞳が前から言っていた純の能力は気を付けた方がいいと。

 みんなは浄化の能力と思っているだろう。

 だが、今回の件ではっきりした。

 火と煙だけを消しさったのだ。

 あれは浄化の能力ではない、消滅の能力だ。

 それも対象だけ消せると言う最悪の異能だな」

 「確かに、俺も驚いたぜ、あの強風の中、火と煙だけが不自然に消えていくのだからな」

 「あぁ、恐ろしい異能だ」

 「まったくだ。

 それじゃ、異能ぬきでかてるのかい?」

 「それについてはノーコメントだ」

 「はははっ、異能をぬきでもあやしいらしいな」

 「で、おまえはどうだ、勝てるのかい」

 「異能を使われなければなんとかいけそうな気がするが……

 俺は純に極限奥義は教えてないから有利に戦える」

 「ほほう、まだ俺らがしらない古流武術の極限奥義があるのだな。

 純たちを指導している最中、俺ものぞいて学んでいたがその先があるのか」

 「おいおい、さすがに手の内を全部見せることはないだろう。

 でも純だったら教えても良かったぜ。

 あいつだったら古流武術をすべて継承させてもいいと思っている。

 まぁ、おまえらが見ているんじゃ技を見せたくはないけどな」

 「ふん、まあいいか」

 「麗の事は純にまかせるとしよう」

 「そうだな」

 「しかし、デミタリアス伯爵とはまったく厄介なことになったぞ。

 なんとしてもしっぽをつかむしかあるまい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ