第54話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 Ⅺ
セブンクラウンのメンバーは、瞳から雅が死んだ経緯を改めて聞いた。
瞳の話を聞いて、セブンクラウンのメンバーは怒りを亮にむける。
雅が死んだ理由は亮の軽率なおこないが招いたことにすべてが一本の線のように繋がってしまったのだ。
セブンクラウンのリーダーの星野翔は眉間を右手でおさえうつむいてしまった。
「亮がプライズガーデンのみんなに依頼したグレイトウルフの討伐はグレイトウルフが3匹に狼が38匹ですって。
私は村へ迷い込んだグレイトウルフが1匹わるさをしていると聞いていたわ。
亮、あなたが言っていた話とだいぶ違うわ。
どう言うことか教えてくださらない」
「討伐した狼の処分を任せたのはいいが、その肉を宴会で振る舞い、村人たちが平然と食べていたなんて……
C級冒険者の黒の牙のメンバーは討伐を失敗したと、亮あなたは口を濁していたわよね。
村人にも多くの被害者がでたのでしょう。
改めて思うわ、この世界の人たちの感覚が理解できない。
昨日、仲良くしてた友達が魔獣に襲われ食い殺される。
その魔獣を討伐して、平然と喜び宴会を開いておいしく肉を食べているのでしょう。
そんな感覚は理解できないわ」
「自分たちの村の出身者の遺品を瞳たちに渡すなんて信じられない。
C級冒険者に与えられるプレートには名前が刻まれている。
それに結婚指輪も、そんな大切な遺品を魔核と一緒に渡されたのでしょう。
嫌みで村長が渡したとしか思えないわよね」
唯と澪と麗は口を揃えたように亮にたいして問いただす。
「……。
仕方ないだろう。
村にはお金がないんだ。
金になる物だとわかって村長が気を利かせて渡したのだろうな」
「はぁ、気を利かせて渡した。
亮、あなたは理解できるの?
私は到底理解できない。
あなたは頭がおかしくなってしまったのではないのかしら」
「なんだと、麗」
「それに事の発端はあなたが、プライズガーデンに依頼したことが始まりじゃないの」
「唯、それは違うわ。
私たちが亮から正式に依頼を受けたのだから、それについては私たちが悪いのよ。
亮を責めないで」
「瞳、あなたはしらないから言うけど、私たちの見解ではすべては亮に責任があると誰もが思っているのよ。
翔、話して良いかしら。
私はもう我慢ができないわ」
「あぁ、はっきりさせておいたほうがいいな。
そうでないと雅が浮かばれない」
「俺の何が悪かったって言うんだよ。
なんの落ち度もねえじゃねえか。
言えるんだったら言って見ろよな」
「では、遠慮なく話させてもらうわ。
これは私のあくまでの見解ね。
間違っているのだったら亮、あなたが訂正して、おそらくはできないと思うわ」
「さっさと話せよ。
なぜ俺が雅を殺したと言うことになるのか、聞きたいぜ」
「まずはグレイトウルフの討伐の依頼は、あなたが出す必要はなかったのよ。
亮、あなたがおこなえば済んだ話なのよ」
「それは、おまえらがしっているとおり、王都で緊急に貴族に呼ばれたんじゃないか。
断れはしないだろう。
だからこいつらに頼んだんだ」
「その必要はどこにあったのよ。
呼び出された、誰に?
私たちしらない貴族に。
それも末端の爵位すら持たない下部の貴族じゃないの。
私が聞いたのは、いえここにいる全員が聞いたのは、お世話になっているストレング公爵からの緊急の呼び出しだとあなたからの手紙を渡されたわ。
このとおりよ」
唯は受け取った手紙を亮に投げつけた。
「あなたは、私たちにうそを言ったわね」
「そ それは、そうでもしないとおまえらは集まりはしないじゃねえか」
「私たちだって忙しいのよ。
それはあなたが良くしっていることでしょう。
個別で役割をこなすと言って別れたところでしょうが。
別れた矢先に手紙まで寄こしてすぐに招集?
私もすぐには来られないから、使いの者をだしてもらって、翔に調べてもらったらこんな話になっている。
まったく、なんでそんなうそをついてまで、私たちを集めて貴族に加担するのよ。
あれほど貴族の対応は気をつけると話あったばかりじゃないの」
「私たちが独自で調べて見れば、ストレング公爵と対立している敵対勢力陣営の末端の下部貴族。
それも娘の誕生会に招待されたと言う話だったわ。
こんなバカげた話があるのかしら。
これはま違った事かしらね、亮」
「違いは、ねえよ。
ちょっと前にしりあったんだ。
少しばかり仲良くなって、セブンクラウンのみんなを紹介すると言っちまった。
誕生会があると誘われて、全員で参加させてもらうと言っちまったんだよ。
だからおまえらを呼んだんだろうが、しかし来たのは仁と昴2人だけだったじゃねえか。
それも誕生会には参加しなかっただろう」
「あたりまえだ、なぜ俺たちが参加せねばならない。
俺はただ翔に頼まれて、確認をしに来ただけだ」
「俺も同じだ。
すぐに翔の元にしらせに戻ったよ。
末端とはいえ公爵と敵対している貴族だ。
ストレング公爵の機嫌を損ねたのか対応に奔走したよな。
今のところ翔の口添えで何も言ってこないが、公爵としては気分を害している。
どうするつもりなんだ、亮」
「亮、貴族を相手にするのだ。
身元を確認を取れとあれほど言ったじゃないか。
俺たちが世話になっている敵対する勢力と仲良くなってどうするんだよ。
おまえが誰もかれも肩入れししまえば、俺たちは立場が危うくなるんだぞ。
貴族社会の派閥争いが深刻だ。
どこもかしこも利権争いで揉めている
それはおまえもよくしっているはずだ」
「そ それはわるかったよ。
でも頼まれちまったんだ。
どうする事もできなかったんだよ」
「バカじゃないの、亮、断ればすむ話だったのよ。
言っておきますが、あなたが頼まれた貴族よりも私たちの方が立場が上なのですからね。
逆を言えばこちらから命令できるのよ。
何こんな時になって下手にでているのかしら、わからないわ。
呆れてものも言えない」
「……」
「どうせ、良いカッコしいで、見えをはっただけでしょうね。
私たちを紹介するなどと、亮、あなたが考えそうなことだわ」
「……」
「まず、あなたが言質を取って調べていれば、プライズガーデンに討伐依頼を出す必要はなかったのよ。
自分でグレイトウルフなど討伐できたでしょうに。
それと私たちに緊急だと騒ぎ立てまくり、集める必要もなかった。
余計な手間もかかってしまったわよね。
それも、うそまでついて。
わかる、まずあなたが依頼をする必要がなかったのよ」
「亮、確か金貨20枚で依頼をしたと言ったな。
20枚は最終的にだったか。
最初は金貨8枚だったと言う話だったな。
なぜ、そのお金を使って最初におまえがしりあった貴族の身元を調べなかった。
あれほどどのような素性の者か調べろと言ったはずだよな。
貴族と偽って騙す輩もいるんだぞ。
それをしらないわけでもあるまい」
「それと亮、なんで冒険者ギルドにグレイトウルフの討伐依頼を出さなかったの?
あなたから出しても良かったじゃない。
冒険者ギルドに依頼をだせば正確に調査をしてくれる。
討伐内容も把握できるじゃないの。
あなたが言った話とまったく違っていたじゃないのよ」
「そ、それはこいつらが、金に困っていそうだったから。
気が利いて仕事をまわしてやったんだよ」
「気が利いて仕事をまわした。
話が先ほどと違ってきているわよ。
言い訳はよして、グレイトウルフはB級冒険者の討伐依頼に入るわ。
危険な討伐依頼なのよ。
それをプライズガーデンにおしつけたのではなくて。
別に困っているわけでもなかったわ。
うまくやっていたじゃないのよ」
「あれが、うまくやっていたと言えるか。
こいつらはまだD級冒険者なんだぜ」
「それで、いいだろう。
無理して等級をあげる必要はない。
等級をあげれば冒険者ギルドから危険な依頼が参り込む。
断れない仕事が多い。
おまえもわかっている話じゃないか」
「……」
「それにあなたに討伐依頼を頼んだカレンと言う子だったわね。
どういう関係か私たちはしっているわ。
でもね、人妻と肉体関係を持って討伐依頼を受けるなど人としてどうかなと思う訳よね」
「人妻だって、カレンがか」
「はぁ、あなたしらなかったの?
3年前に結婚して、旦那さんは商業の盛んな港町タルタスに出稼ぎに行っているわ。
私、会ったことあるもの。
その時、話を聞いてしり得た情報だわ。
まさか、そんな事もしらないなんて、身元は調べた方がいいわよ。
元の世界でも良く聞く話じゃないの」
「そんなバカなはずがあるか、俺はカレンは未婚だと聞いたんだ」
「本当にしらないようね。
情報屋が居るんだからさ、それくらいは調べなさいよ。
一般人を調べるのだったらそれほどお金なんかかからないのだから」
「麗、違うわよ。
私たちでは、お金を積んでも安全優先で調べると言う話になっていたじゃないの。
金額は関係ないわ」
「ごめん、唯、そうだったわね。
間違いを認めるわ、私たちは安全優先でリスクを避けてきたのですからね」
「今回の雅の死は、全部あなたの軽率な行動がつながって引き起こった事じゃないの」
「そ それはわかるが、たまたま、たまたま運が悪かっただけじゃないのか。
それに、村長が討伐した狼の肉を瞳たちに振る舞うなんて思いもよらなんかったんだよ。
このことは回避なんかできなかったじゃないか」
「たまたま運が悪かっただと、ふざけたことを言うな。
回避はできたんだよ。
前にこちらの食べ物について、特に肉についてはあやしい事があるから、クラスメート全員を集め話しあおうと俺たちは持ちかけたよな。
それをおまえが断固として反対して、俺たちをとめたじゃないか。
あの時の事はどう説明がつくんだよ」
「あ、あの時は肉しか食えないのがいたから俺は反対したんだよ。
俺も肉しか食えないから気持ちが痛いほどわかるんだ。
話を聞いたら、こいつらの性格じゃ食べられなくなるじゃねえか。
好きな物が食えなくなるんだぜ。
かわいそうに思えたんだよ」
「それはおまえの主観だろう。
決めるのは本人次第だ。
おまえが反対したせいで、その機会を今まで逃してきたんだ。
それをわかっていないのかよ、亮」
「亮、良く考えて見なよ。
雅が死んだ事は、全部あなたの軽率な行動をとったせいで、点が線として繋がっているのよ。
なぜ私たちがあなたに対して怒りを抱いているのかわからないのかしら。
あなたが余計なことをしなければ、回避できたことなのよ」
「り 理由はどうあれ納得して依頼を受けたのはこいつらだ。
俺は正当にお金を払って依頼しただけなんだよ」
「亮、私たちはこの危険な異世界でできるだけリスクをを起こさず細心の注意を払い安全に行動をする。
特にここに迷い込んだクラスメートには絶対に危険にさらさない。
迷惑をかけない。
そう決めたはずだよね。
リスクを伴い危険な依頼をあなたは瞳たちに頼んだ。
自分の都合が良いためにね。
あなたは自分の都合のために、私たちが決めた約束を破り雅を死にいたらせたのよ。
これについてはどう言い訳するのよ」
「……」
「雅の死についてもそうだが、俺たちは貴族の派閥争いにまきこまれてしまった。
今まで穏便にすませてきたのにな。
ここにいる全員がこれから危険に晒されるぞ。
どうするつもりだ、亮」
「そ それはしらなかったんだよ。
しらなかったんだ。
悪く思っている。
悪く思っていると思うよ」
「しらなかった、悪いじゃ、すまされない事なんだよ。
社会に出てわかったろう。
世の中には許さなない事があるってことを。
謝れば警察はいらない?
誰が言ったことかしならないが、ここの異世界は警察どころの話ではないぞ。
犯罪の温床がどこもかしこもあるのだからな。
トラブルなどあたりまえにおきるではないか」
「貴族相手にはあれほど口すっぱく注意を払ってと言ったじゃない。
あなたが呼ばれた誕生会で、その女にも手を出し肉体関係をもったんでしょう。
調べはついているのよ。
どう後始末をつけるのよ」
「話を聞くかぎり、ちょうどおまえが誕生会に呼ばれた日に雅は亡くなったと言う話じゃないか。
おまえがその女を抱いて、気持ちよく寝ていた時に、雅は心から悩んで苦悩した結果、自ら命を絶った。
それを思うと余計におまえが腹だたしくてならない。
今すぐにでもこの剣で八つ裂きにでもしてやりたいよ」
「そんなことになっていたなんてしらなかった。
俺はしらなかったんだよ」
「頭の悪いおまえでも、ここまで話せば事の重大性がわかって来たようだな。
おまえは軽率すぎる。
雅を死においやり、皆を危険にまきこんでしまったのだ」
「仁くん、それはちょっと違うよ。
雅さんの件は僕たちが無知で見たくないものを見なかっただけで、それが見えてしまっただけなんだよ。
亮くんは悪くない。
無知で愚かで弱い僕らが悪かったんだよ」
「純、おまえ……」
「仁くん、お願いがあるんだ。
無知で弱い僕たちに教えてもらいたい。
この異世界の事を詳しくしりたい。
生きぬいて行くために。
僕はみんなを守れるように強くなりたいんだ。
仁くん頼むよ、僕に教えてくれないかな。
強くなる方法を、頼むよ、仁くん」
純は深々とセブンクラウンのみんなに頭を下げた。
下げた顔から大粒の涙が落ちていた。
引っ込み事案で臆病な純がこんな席で、ここまで言うとは仁は思いもよらなかった。
それに仁はしっていたのだ。
いや前からみんなうすうすしっていた。
純が雅の事を好きだったことを、それを守れずこんなかたちで雅を失うなんてさぞ悔しかったのだろうと……
「おい純、頭を、頭をあげてくれよ。
おまえは、おまえは何もわるくないんだからな。
おい純、頭を下げないでくれよ。
おまえが俺に頭を下げる事なんて一斉ないのだからな」
仁の顔にも大きな涙粒がこぼれ落ちる。
「わかった。
俺で良ければしっている事をすべておまえに教える。
なんでも聞いてくれ、だからさ、頭をあげてくれよ、純。
おまえが、おまえが一番つらいんじゃないか」
会議場に集まった一同、純の気持ちを察し泣きだしてしまった。
…… …… ……
「ありがとう、仁くん、お願いするよ」
「翔しばらくは、ゼブンクラウンの活動を自粛して、純たちに俺たちがしりえたこの世界の情報を教えよう。
それに強くしなくてはいけない。
そうだろう」
「あぁ、元からそのつもりで俺たちは訪れたのだ。
まさか、こんなことになっているとは思わなかった」
「おい、まてよ、ゼブンクラウンの活動を自粛するのか?
それじゃ俺たちが、今まで積み上げてきた地位も名誉も失ってしまうぞ」
「亮、おまえは正気で言っているのか?
こんな事態に陥っているのに。
今後のためと思ってなるべく俺は口をださずにいたのだが、許すことができないぞ、亮」
「雅が亡くなっているのよ。
あなたのせいで亡くなったのは事実だわ」
「あきれたわ、事の重大性がまったくわかっていないじゃない。
雅が浮かばれないわ」
「あぁ、俺もここまで愚か者だとは思わなかったよ」
「…… …… ……」
「……。
セブンクラウンの活動は当面自粛する。
しかし、貴族間の取引でどうしてもやらなくてはいけない事はある。
今回の件でストレング公爵にも悪い印象を持たれただろう。
それだけは回復せんといけないからな」
「あぁ、貴族間のやり取りは問題があるからな」
「あとはこのバカをどうするかしら、一番の問題な話よね」
「なんでこうなってしまったの?
この世界に順応しすぎて毒されてしまったようね。
私たちは私たちで変わらずにいるって、最初に約束したはずなのに。
ある意味哀れだわ」
「そうだな、亮は俺があずかる。
みんなそれでいいか」
「翔、頼むぜ、おまえしかこのバカを任せることはできない」
「亮、考えを改めろ。
そうでないと俺はいずれおまえを切るからな。
覚えておけよ」
「翔、頼むわよ。
私たちのパーティーいえ、ここに来たクラスメート全員が崩壊してしまうわ」
「あぁ、わかっている、なんとかする」
「……。」




