第49話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 Ⅵ
「日が暮れて来たわね」
「まさか村にたどり着いたその日に、グレイトウルフの討伐をするとは思いもよりませんでしたわ」
「今夜は徹夜になるのかしら、お肌が荒れてしまう」
「なにをのんきなことを言っているのよ、香。
狼が30匹も来るかもしれないのよ。
緊張感がないわね」
「村長は、今日か明日って言っていたから、明日かもしれないわ」
「どうなんでしょう。
村長さんは曖昧な事しか言っていない気がします」
「確かに、この世界の人たちは正確な数と日数を言わないんだよね。
曖昧な事しかいわないし、10なのに5とか半分だったりすることがあるのよ」
「確かにアバウトで細かい数字は示さない事がおおいよね。
お金に関しては許さないのだけど、その他はあきらめてしまうことがあるわ。
もしかして狼の数を間違えて言っていないかしら」
「ありそうなことだわ。
まず正確に狼の数を数えていないよね」
「それはありえる。
でも、グレートウルフは、3匹いることは確かなんでしょう」
「数が多くても私たちだったら対応できるわ。
準備はできているから大丈夫よ」
「うーん、私はね、できれば今にでも来てほしいわ」
「どうしてですか、瞳さん」
「あの村長と話をしていると、いらいらして来るのよ。
早めに討伐を終わりにしたい。
たぶん、今日にも狼が来なかったら、明日の朝に村長が来て、私たちに無理な要求を言ってきそうだわ。
そういう雰囲気をかもしだしているでしょう」
「確かにそれはありそうですね。
私もまさか着いた今日にも、山への中へ入って狼を討伐して来てほしいと言う考えは予想できませんでした」
「確かにね」
「サイのじいさんの考えは私たちにはわからない」
「サイのじいさん?」
「この国の村とか街とか、名は治めている人物の名前がついているのよ。
知らなかったのかしら」
「確かに言われてみれば、私たちが居たエリンの街、国の名はベルンフォードも人の名ですね。
気にしていなかったのでわかりませんでした」
「サイって言うのは、あの村長さんの名前だよ。
そんな感じの名前でしょう、あのじいさん」
「確かにそうね。
! おっと、どうやら雑談はここまでのようね。
討伐の対象がお出ましよ」
「山の方から土煙があがっているのが見えるわ。
どうやらグレイトウルフが狼の大軍を引き連れてきたわよ」
「真っすぐこちらに向かってきます」
「寄り道しても良いのにね」
「みんな戦闘態勢を整えて。
柵をこえてきた場所に、杏と雅は、予定どおりに光魔法を放って。
香と紫は抜けてきた狼を隙間を埋めるように魔法を放つ。
もしくは効果が薄い、狼に追い撃ちをかけて光魔法を放って。
剛くんと宙くんは抜けてきた狼を防いで、つぶしちゃっていいから。
純くんは私たち女性陣の護衛よ。
みんな、硬質化と物理防御盾魔法をかけるわよ」
瞳は防御系魔法をパーティーメンバー全員にかけ守りを厚くする。
「いよいよ来たわね」
「う、わ、ー、こ、わ、い」
「何言ってるの香、棒読みで言わないでよ」
「ドタドタドタドタ、バン、ドタドタドタ」
「狼が柵をこえてきた。
今よ、光魔法を放って」
「光魔法」
「光魔法」
杏と雅は突進してくる狼の目の前に光魔法を放った。
30メートル先に5メートはなる光の球が2つ現れ、狼の群れはその中を突っ込んでいった。
「キャイーン」
「ズサーン、ズザサササーン」
光の球の中へ突っ込んだ狼は目をやられ、前のめりに倒れ込んでしまった。
狼が重なるように倒れ込む。
「光魔法」
「光魔法」
杏と雅は同じ場所にもう一度光魔法を放ち、光の壁を作り出した。
その中を次々と狼たちは突っ込んでいった。
そして重なるように倒れ込む。
「バカみたくうまくいったわね。
抜けてこっちに来る狼はいないわ。
香と紫は倒れている狼に追い打ちをかけて」
「OK、光魔法」
倒れている狼に対し香と紫は追い打ちで光魔法を放った。
「光魔法、光魔法、光魔法、光魔法、光魔法」
香と紫は狼を包み込むうに光魔法を個別に放っている。
杏と雅が作った光の壁を通って狼は倒れている。
その上に追い打ちで光魔法のかかっている狼に突っ込んでしまう狼が続出する。
狼どうし重なり合いながら光魔法を受けてしまっているのだ。
「どう瞳、ちょっと作戦とは違ってきているけど、こんな感じでダメージを負わせられるわよ」
「すごいわね。
狼が目をまわして口から泡を吹いているのもいるわ。
これって人に使ってはやばいわよ」
「そうね、だから一般人には使うなってセブンクラウンの人たちは言っていたのね」
「私たちが光魔法の魔法を使っただけでも威力は凄いのね」
「! 何匹か立ち上がりこちらに来る気配を見せているわ」
「でも足元がふらついて威勢がわるいわね」
「あっ、グレートウルフが2匹いるわ。
こっちに向かってくる」
「剛くん、宙くんお願い」
「まかせて、瞳さん」
剛と宙は飛びかかってくるグレイトウルフを迎え撃つ。
宙は盾をカウンターで武器に使用する方法を教わっていた。
襲い掛かってくるグレイトウルフを盾で払いのけ地面に撃ちつけた。
地面にはいつくばったグレイトウルフの頭を鉄の金棒で打ちつける。
「ぐしゃり」
グレイトウルフの頭がペチャンコにつぶれた。
剛はもう1匹の襲い掛かって来たグレイトウルフをバットを振るように横から打ち付けた。
「ドガコン」
大きな音をたてグレイトウルフは吹っ飛んでいった。
すぐに駆け寄り、両手で持った金棒を頭上からおもいっきり振り下ろす。
「ぐしゃり」
グレイトウルフはペシャンコにつぶれて絶命した。
「やったわ、2匹のグレイトウルフを仕留めたわ。
あと1匹はどこかしら」
「瞳、もうちょっとで光魔法の魔法がきれるわよ。
光の中に居るはずだわ」
「香と紫は一端追い打ちで放つ光魔法の魔法を止めて」
「わかったわ。
襲ってきた狼はグレイトウルフの2匹だけね。
その他の狼は光の中」
「そうね、様子をみましょう」
光魔法の魔法が消え、目の前の狼たちの姿をあらわした。
「あわわ、なんて数の狼が居るのよ」
「ほとんどが目をまわして這いつくばっているわね」
「いた、グレイトウルフ、大きな傷跡をつけたグレイトウルフがいるわ。
口から泡を吹いて座り込んでいる」
「これって剣の傷跡よね。
どこかの冒険者がへまこいて、仕留め損ねたやつね」
「どうやらそのようね」
「光魔法の魔法はもう必要はないわ。
弱っている狼たちを止めを全員でさしてしまいましょう」
プライズガーデンのメンバーは這いつくばっている狼を金棒で打ち付つけ止めをさして行く。
モグラたたきのようにつぶしていった。
まさに地獄絵図、つぶされた狼は悲惨な肉塊へとかわっていった。
田畑は肉塊と血の海になってしまった。
「瞳、これで狼は全部討伐はできたのかな?」
「グレイトウルフは間違いなく、3匹は仕留めたのは確かね」
残りの狼も逃げた様子はなかった。
ここにいるのを全部と言っていいわね」
「そうですね」
「瞳、狼の数を数えたわよ。
38匹、グレイトウルフを入れて41匹ね。
村長、30匹と言っていたけど40匹以上じゃないの」
「まぁ、村長は数をおおまかに知らされていたんでしょう。
そんなもんよ」
「これからどうしましょうか?
村の住民を呼んで狼の死体の処理してもらったほうがいいですよね。
このままですと何ですし」
「そうね。
まだ日は落ちていないから、協力してくださるでしょう。
純くんわるいけど、村長さんを呼んできてもらえないかな。
狼を処理してもらいたいわ」
「わかりました」
「みんな、警戒は怠らないで、まだ狼が残っているのかもしれない」
「でも、大丈夫そうね」
純は急いで村長を呼びに行った。
村長はこんなに早く討伐ができたのか半信半疑だったが、純の血がついた様子を見てしぶしぶ確認をしに行く。
村長が来て、驚きの様子を見せた。
討伐された狼ではなくプライズガーデンのメンバーの様子に驚いたのである。
暁が照らしうつして、血のついた金棒を持っている小娘たちが、血と肉の塊を足元におき立っている様子がおぞましくみえたのだ。
「おおお、これは、これは」
「村長さん」
「ビクリ」
村長は声をかけられ、驚きのあまり、猫背であった姿勢をピンと垂直にただす。
「村長さん、どうかしましたか?」
「な なんでもありません」
「そうですか、グレイトウルフの3匹の討伐は終わったと思います。
狼がまだ山に残っているかもしれませんが、群れをまとめていたグレイトウルフの3匹はこのざまですし大丈夫でしょう。
もともと山から降りてはこなかったのでしょう。
狼は降りてこないと思いますが、田畑がこの状態です。
血の匂いに引きつられた他の魔獣が来る可能性があるかもしれません。
即急に処理したいので、対処の方お願いできませんでしょうか。
もちろん護衛として私たちはここへいますので、よろしくお願いします」
「はい、即急にやらせていただきます」
「ツエル、村の者を呼んでこい。
早く、早くするのじゃ」
「それじゃ、お願いしますね」
「私たちは、村のまわりを見回りしておきます。
剛くんあなたはここへ残って村長さんを見ていてあげてくれるかな。
それと宙くんと純くんも、村人の護衛をしてあげて」
「わかった、瞳さんたちも村の見回りを気をつけてね。
なんかあったらしらせてよ。
すぐにかけつけて行くからさ」
「わかったわ、それじゃお願いね」
ふぅ、面倒な村長の相手は剛くんたち男性陣にまかせよっと、その方が当りさわりないから。
「瞳、思った以上にうまくいったわね」
「えぇ、ここまでうまくいくとは思わなかった。
まさか全部の狼が一度に突進してくるとは思わなかった。
よくある漫画とかで何方向からも、魔獣が来て村を襲うと言うけど、そこまでグレートウルフは頭が回らなかったみたいね」
「そうみたい。
グレートウルフが3匹だから、個別で群れを率れて襲ってきもおかしくはなかったし」
「そうそう、そうなんだよ」
「所詮は獣ね。
大群で襲ってくるんだ」
「そうらしいね。
それはそうと私たちは見回りをしましょう。
まだ残りの狼が来るのかもしれない。
何かあったらしらせてよね」
「わかったわ、私はあちらの方に見に行くね」
「えぇ、お願い」




