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第47話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 Ⅳ

 

 「みんな、ここからはサイの村まで2時間、慎重に進みましょう。

 かおりみやびゆかりと代わって、索敵サーチを広い範囲でお願い」

 「OK」

 「わかりましたわ」

 「それじゃ、行きましょう。

 みんな油断はしないでね」


 …… …… ……


 1時間ちょっと歩いて、サイの村へ無事にたどりついた。


 「思った以上に早く着きましたわね。

 「そうね。

 午後2時くらいって感じかな」

 「それはないでしょう。

 この異世界では1日の時間は30時間と12分ほどあるんですからね。

 もっと時間はたっていますわ。

 持っていたスマホでみんなで合わせて調べたでしょう」

 「そうだったわね、あん

 「それに1年と言っても、私たちの世界での365日と決めているだけじゃない。

 1年の日数が毎年違っていると聞いたわ」

 「私は3つの月が近づき、輝いた時が1年の終わりと聞いたわよ」

 「なんて曖昧なの。

 聞いた話だと1年は500日前後らしい、それも30日くらい毎年誤差があると言っていたわ。

 それも王都でしか記録していないと言う」

 「確かにね。

 去年の1年の日数を、冒険者ギルド職員に聞いたらしらない人がいたわよ。

 あのぶんだとこの国の人大半がしらないんじゃないかな」

 「日にちなど、誰も気にしてはいないみたいだわ。

 だって冒険者ギルドでも配達依頼や薬草の採取、日数が決められているのに誰も守らないじゃないの」

 「そうよね。

 期日を大幅に遅れても忖度してちゃんと報酬が出るのですから。

 私たちは1日でも遅れたら出ないのに」

 「そうよね。

 届け物が届くだけでも良いのではないと思う。

 冒険者の中でくすねている人がいるかもしれないわ」

 「まるで海外で現代文明をしらない。

 未開な地の人たちみたい。

 私はアホかと、大声を出して言いたくなったわ」

 「実際そうじゃないのよ。

 今更なにを言っているのよ、杏」

 「そうだったわね」

 「そろそろ、時期的には、1年になると聞いていますわ」

 「季節の移り変わりもない。

 季節感なんてあったもんじゃない」

 「元居た世界より1日の長さも長く、1年も日数が毎年違っている。

 さらに季節感がない。

 私たちは歳をとった感じがしないから、気持ち的にわるいわよね」

 「歳とは年寄り見たいな事を考えますね。

 成長って言った方がいいのじゃないかしら。

 でも確かにそう言った、感覚はありますね」

 「これ、杏、紫、香、雅、愚痴を言っていないでさっさと村の中に入りましょう」

 「そうだね。

 グレイトウルフは今のところはいないみたいだ。

 村人の安否を確認しないと」

 「そうね、つよしくんの言うとおり、早く行きましょう」


 …… …… ……


 サイの村の中に入った。

 木で作られた柵が壊され、田畑が荒らされていた。


 討伐目的のグレイトウルフは見当たらず、村の中も誰も外には出ていない。

 どの家も戸が閉まったままだ。


 「確か、村長の家は中央にある大きな古びられた2階建の家だったわよね」

 「そうだと思いましたわ。

 2首熊を討伐した時に、庭先で歓迎されましたから覚えています」

 「そうだね。

 井戸が近くにあった事を覚えているよ。

 普通の人家にはないよね。

 間違いなくここだ」

 「戸締りが厳重にしてあるわね」

 「訪ねてみましょう」


 …… …… ……


 「ごめんください」

 「…… …… ……」

 「返事がありませんね」


 「ドタドタドタドタ、バタン」

 しばらくしてから、村長のお孫さんらしき女の子が戸を開け顔をのぞかせた。


 「どちらさまですか?」

 「私たちは、グレイトウルフの討伐を頼まれた冒険者なんですけど、村長さんいますか?」

 「冒険者? グレイトウルフの討伐?」

 「前にこの村の依頼を受け、2つ首の熊を討伐したんだけどわかるかな。

 えーとね。

 冒険者の獅戸亮ししどりょうの仲間だと言えば村長さんがわかると思う。

 伝えてくれないかしら」

 「ししどりょうさんですか」

 女の子が戸を閉め家の中へ入ってしまった。


 「ドタバタトタバダ。

 おじいちゃん、冒険者の人がやって来たよ。

 ししどりょうっていう人、えーと、しりあいみたい」

 家の中で女の子の声が大き聞こえた。


 大丈夫かな。

 しかし、女の子を出向かわせるなんて不用心すぎるでしょう。

 人さらいが来て、さらわれたらどうするのよ。

 そうでなくても魔獣がいて危ないのだから。


 そう、この世界の人は目上の者が優先で、すべての物事を年長者目線で考えるから嫌なのよね。

 年取っているだけで何もできない年配者が多すぎなのよ。

 声を大きく出すだけで何も自分ではやらない、いえできないのだから。

 

 「なに、獅戸亮の仲間、あの有名なセブンクラウンの冒険者たちか。

 今行く、ユーリおまえは邪魔だ。

 2階の部屋にいっていなさい。

 ツエル、お客様だ。

 お茶の準備をしろ、はやくしろ、丁重に冒険者たちをお迎えしてくれ」

 「わかりました。

 おじい様」

 ……外まで家の中の声が聞こえるんですけど。


 なんで大きな怒鳴り声で話すのかな? たかだかお客さんが来たくらいだよね。

 殺伐としたやり取りを聞いて、気分が悪くなったんだけど帰ろうかな。


 でも亮からの依頼を受けたから仕方がないのよね。

 お金をもらってしまったし。


 「冒険者の皆さま方、どうぞ家の中へお入りください」

 ツエルと言われた25歳くらいの女性に通される。先ほどの女の子のお母さんかな。


 茶の間に通された。

 あぐらをかいて座っている年老いた村長が出迎えてくれた。

 

 若い女性の冒険者の私たちを見て顔をしかめている。

 しかし、男性陣を見たら突然、態度を変えてすり寄って来た。


 「おお、あなた方は覚えていますぞ。

 いつぞや、大熊、ツインベアを討伐してくださった方々ではないですか。

 どうぞ、お入りください」

 男性だと急に態度を変えるんだよ、このくそじじい。


 「剛くん、剛くん」

 「どうしたの、瞳さん」

 「今からあなたがプライズガーデンのリーダーね」

 「えぇ、なんで俺が」

 「この村にいる時だけよ。

 そう、いやな顔をしないで。

 村長相手だと、男の人の方が話がとおりやすいのよ。

 ここにいる時だけ、お願いね」

 「そういうことならわかったよ。

 でもフォローはお願いするよ」

 「わかったわ、まかせて」

 私はひそひそ声で話した。

 

 「どうかなされましたか?」

 「いえ、なんでもないです。

 村を荒らしているグレイトウルフのお話をお聞きしたいです」

 緊張した声で剛くんは話した。


 村長からグレイトウルフの話しを聞いた。

 その話にプライズガーデンのメンバーは驚きを受ける。


 「さ 30匹以上、グレイトウルフが」

 「…… …… ……」

 ありえないわ。


 グレイトウルフは大型の狼の魔獣で、個別で行動する習性が多く、群れることは滅多にしない。


 個が強く群れるのだったらよほど強いグレイトウルフが従えるしかない。

 縄張り意識が強くて、雌以外は生まれた子供でもある程度育ったら追い出してしまう。

 それにで数自体少ないのよ。


 でも、私たちは死の森を通って来たのでグレイトウルフには多く遭遇していた。


 「困ったことになったわね。

 私たちでは討伐は無理かもしれない」

 「そうね、でももう少し村長さんからお話を聞きましょう。

 おかしい点が複数あるわ。

 グレイトウルフが30匹も群れてこの辺にいるなんておかしくなくて」

 「確かに、そもそもグレートウルフの生息地でないのに、この村付近にいるのがおかしいのよ」

 「そうだわよね」

 村長にグレートウルフが現れた時期を聞く。


 「今から100日くらい前ですかね。

 3匹の傷ついた大型の狼が畑でトウモロコシを食い荒らしているのをみかけたんですよ。

 グレイトウルフだとは知りませんでした。

 その時は狼も弱っていまして、村人総出で、山へ追い払ったのですよ。

 その時は幸いにも怪我人もなく山へ追い払う事ができたのです」

 最悪だ、この時点でなんとなく悪い予想がつく。


 「70日ほど前から、数匹の狼を連れた同じ大型の狼が田畑を荒らしに来たんですよ。

 その時は村の皆は逃げてしまい、追い払う事はできませんでした。

 次の日には腹がいっぱいになったのかいつのまにか居なくなっておりました。

 しかし、数日してからまた多数の狼を引き連れて山から下りてきたのです。

 その時には逃げ遅れた村人もでて怪我人もでました。

 それで朝には腹がいっぱいになったのか、また山へ帰っていったのです。

 その日から夕暮れの時間帯に7日前後おきに、繰り返しの毎日です」

 「と言いますと、最初は手負いのグレイトウルフが3匹村へ迷い込んで来たと言う事ですよね。

 追い払い、30日してから山にいる狼を従えて村に降りてきたと言う事で宜しいでしょうか」

 「そのとおりです」

 「……」


 「ふぅ、良かった。

 グレートウルフが30匹じゃなかったのね」

 「良くはありませんわよ、香さん。

 グレートウルフが狼を30匹従えて村を襲っているのですよ」

 「そうだけどさ、雅、グレートウルフ30匹よりはましでしょう」

 「それはそうですけど……」

 「香、雅、私語はそれくらいで、

 村長さん、グレートウルフの討伐へ来た、黒の牙と言う冒険者パーティーに会いましたか」

 「ええ、会いましたよ。

 20日前くらいでしたかね、私らを助けに来てくれたのです。

 この村の出身の冒険者がいました。

 エリンの街の冒険者ギルドへ頼みにいってもらったのです。

 私たちには冒険者ギルドに依頼できるほどのお金はありません。

 しかし、たまたまこの村から出て行った冒険者に会えたのですよ。

 しかし、グレートウルフを討伐に山へ入ったきり帰ってきません。

 すでに20日たち10日ぐらいまえから、またグレートウルフが山から降りてきたのです。

 おそらくは冒険者たちは……」

 「黒の牙の冒険者たちは16名でしたよね」

 「ええ、確かそのくらいの人数でしたかな?」

 「全員、山へ討伐しに入ったのですか?」

 「そうですが、なにか問題でも」

 「……」

 なにを考えているの? 


 魔獣に地理に有利な山に入るなんて冒険者らしくないミスをしている。

 どうせ村長に言われて強制的に山に入ってしまったのだろう。


 初動で村長はミスをしている。

 手負いのグレイトウルフを山へ追い返した。

 最悪の悪手じゃなくて……


 グレイトウルフは山の中で隠れ住んで傷を癒した。

 この山を住んでいる狼の頭を駆逐し、まとめ上げ自らの傘下に入れた。

 人里の食べ物の味を覚えたグレイトウルフが食べ物をあさりに狼を引き連れ降りてくる。

 そんなのわかりきったことじゃないの。

 

 それも黒の牙の冒険者たちは山の中に入り討伐に失敗して食い殺された。

 人の味を覚えた狼たちは田畑の農作物では飽き足らず、村人を襲いだす。


 少しでも考える知識があればこんなことになることは予想はつく話ではないの?

 この異世界に来て1年のまだ世界の事情が疎い、私たちパーティーメンバーでも予想はつくわ。

 

 ここの世界の人たちは知識が疎すぎる。

 エリンの大きな街でも学校がない。

 親から教わって生活をしている。

 

 親が知識があれば、子供にも知識を教えて裕福になれる。

 定番な話だけどこの異世界ではそうじゃない。


 余りにも自分本位で考えるから子供にも知識を教えないんだ。

 そういう社会がこの国で成り立っている。

 どうしようもない。


 目の前にいる村長はそうだ。

 長く生きているだけで何もしらない。

 知らされていないんだ。


 ただ、親から受け継いだ家系で、村の長をしているだけ、なにもしらない、なにもできない年老いたバカな村長だ。


 そんな村長のまとめる村だ。

 村人も知識もない。

 お金を稼ぐ手段をしらなく、冒険者ギルドへ討伐依頼も出せないでいる。

 被害が多くでてから、周辺の村や町が困って討伐を他から出したのだろう。


 ツインベアの討伐も、違う町からの依頼だった。

 この村で暴れているのをしった隣町の者が、先読みして自らの町にも被害が出ると思い討伐の依頼を出したのだろう。


 初動で冒険者ギルドに依頼をできたならば、いえ最低でも2回目のグレイトウルフが来た時には討伐の依頼を出すべきなのに。

 

 お金がなくても冒険者ギルドへ話を入れればいい。

 グレイトウルフは毛並みが良く、普通の狼と違って魔核が心臓付近にある。

 それを目当てに討伐に来る欲にまみれた冒険者がいるかもしれない。


 そういう予想もこの村長はできないのだ。

 危険とわかっていながら動かない。

 村をまとめる資格さえない。

 

 元の世界では、一匹の熊が出てテレビで大袈裟に報道しているニュースをよく見た。

 大人たちが大騒ぎしていると思っていたけど、この異世界に来てからそれが正しかったとおおいに理解できる。


 なんて間の抜けた異世界なんだ。

 怒りさえ湧いてくる。


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