第46話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 Ⅲ
「ねぇ、宙くんたち、男性陣は荷物が重くないのかしら」
「僕は全然大丈夫だよ」
「剛くんと純くんはどうかな。
僕より重いテントの部品を運んでいるからね」
「僕は大丈夫だよ。
この異世界では力持ちになったみたいで軽く運べるから」
「俺もそうだ」
「そうなんだ。
私たちは宙くんたちが荷物を運んでくれて助かっているのよ」
「僕だって索敵が得意じゃないから、紫さんたちがおこなってくれて助かっているよ」
「それじゃ、お互いさまだね」
「そうだね」
「そういえばさ、確かアニメとかライトノベルで異世界ものがあるじゃない。
空間にスーっと入って、荷物が運べる能力があったじゃないの。
あの能力が使えればいいのにね」
「空間収納魔法のことかな」
「そうそう、空間収納魔法だったわよね」
「僕も前から使えたらいいなあって思っていたところだよ。
セブンクラウンの皆さんが使える異能のように、僕にあったらいいなあって」
「確かに異能としてはほしい能力ね。
でも私は違う能力がほしいわ」
「それはどんな能力?」
「フフ、それはね。
瞬間移動の能力だわ。
だって歩かなくても、すぐに移動できるじゃない」
「確かにそれもありだね」
「紫が考えそうな楽な能力だわね」
「えぇ、それってひどくない。
瞬間的に遠くへ移動できるのよ。
夢の能力だわ」
「それって紫さんが考えているのは、転移魔法の能力かな。
どちらにせよ空間魔法と言う部類にはいるよね」
「空間魔法!」
「うん、空間収納魔法も同じように空間魔法の部類にはいるよ。
空間魔法が使用できたら、もしかしたら元の世界に帰れるかもしれない。
異世界転移も可能でしょう」
「紫、それはアニメとかライトノベルの話でしょう。
期待を持たない方がいいわ」
「でも、セブンクラウンのみんなは、人知を超えた異能が使えるじゃない。
私にできてもおかしくはないわ」
「はいはい、わかったわ」
「でも、空間魔法って夢があるわよね」
「僕もそう思う。
でもね、アニメとかライトノベルで語られる異能って、見方を変えて使用すればどれも怖い能力なんだよ」
「そうなの?
夢があって楽な能力ばかりじゃないのかな」
「確かにそうだけど。
楽で簡単に使えるから怖いんだよ」
「?」
「例えば僕がほしいと思った、空間収納魔法この能力は非常に恐ろしいんだ。
物が入って簡単に持ち運べて便利な能力だと思うよね」
「うん、うん」
「アニメの設定などでは、生きている者以外は大きさなど関係なく無限に何でも収納できるって言う話が多いんだ。
それも使った本人にしか出し入れができない」
「おぉ、すごい、すごい能力だわ」
「でもね、生きている者以外はなんでも出し入れできるんだよ。
それってさ、すべての生きていない個別な物が入るってことなんだ。
だから悪い事に使えば何でも盗めてしまうって事ができるんだよ」
「えっ、確かにお店でやろうと思えば簡単に万引ができてしまうわ」
「そうそう、空間収納魔法で店員の見ていない時に盗みほうだいできる」
「言われてみれば、悪い事がし放題ね」
「そんなことは、かわいいもんなんだよ」
「どういうこと?」
「もしも、食糧とかすべての食べ物を入れてしまえばどうなる。
無限にはいるんだよ。
村や町、いや国でさえ滅ぼすことが簡単にできる能力なんだよ。
大切な物を盗んで脅したりもできるしね。
戦争だって有利にできる。
敵対する相手の物資、食糧、武器をすべての物を空間収納魔法へ入れてしまえばまともな戦いができなくなる。
逆に毒入りの食糧とか入れ替えてしまえば混乱させることもできる。
自分でしか取り出しができないんだ。
ある意味、使い方によっては国を支配できる能力なんだよね」
「確かに見方を変えて使えば、怖い能力だわ」
「紫さんがほしい転移の能力だって恐ろしい事ができる。
例えば自分以外のものを転移させたりする。
もし、転移先が深い海の中、噴火している火山の中、または宇宙空間だったら転移した人間はどうなる。
死んでしまうよね」
「確かに」
「空間収納魔法や転移の能力は特別に強い。
実は使い方によってはアニメやライトノベルで書かれているたいした能力とおもわれていない能力でも、人を困らせたり殺傷できる能力はたくさんにあるんだよ。
その異能をセブンクラウンの人たちは持っている。
僕は怖いと、たまに思うことがあるんだ。
特別な異能を持ってしまったために、この異世界で変わってしまわないかとね」
「確かにそう考えると怖いわね」
「宙くん、そんなことは杞憂でしょう」
「雅さん」
「私たちはクラスメートで良く知っているわ。
悪い人たちではないと。
確かに特別な異能を持っていますが悪い事に使わないと私は信じています」
「そうね、雅の言うとおりだわ」
「それより、問題なのは同じ異世界に転移したのに、なぜ私たちは異能を持っていないと言う事です」
「確かにそれは言えるわね」
「どうしてでしょう。
なにか条件があるのではないかしら?」
「雅、それが、わからないから問題なんでしょうが」
「ごほん、そうでしたわね。
みんなはどんな能力があったら良いと思っているのかしら。
宙くんは、空間収納魔法。
紫さんは瞬間移動でしょう。
私はね、空が飛べる能力がほしいわ」
「へー、雅って空が飛べたりする能力がほしいんだ」
「うん、大空を鳥のように飛んでみたいわ。
いろんな場所へいけたり見えなかったものが見えて、とても気持ちよさそうに思えるから」
「うーん、この異世界では飛べても難しいんじゃないかな」
「どうしてですか?」
「巨大な鳥が突然、飛んできて食べられてしまうわ」
「えっ、それは問題がありますね。
……。
そういう香さんはどんな能力がほしいのですか?」
「それは決まっているわ。
透視能力よ」
「透視能力ですって!」
「あぁ、なるほど、香の使いたそうな能力だわね。
どうみてものぞき関係にしか使わないわね」
「のぞきですって、香さんはいったい何をのぞくのですか?」
「べ、別に良いじゃないの、やましいものなんてのぞかないわよ」
「本当にそうなのかな」
「それよりも、瞳はどんな能力がほしいの」
「私は先が読める能力がほしいかな。
漫画であるでしょう。
眼の色が変わって、先読みとか遠くを見たりとかいろんな幻術を使ったりできる眼の能力」
「忍者漫画であったあれの話よね。
確か神眼と言うやつね」
「そうそう、その神眼と言う能力ね。
あれって、夢のある能力だわ」
「へー、しらなかった。
意外と瞳って漫画おたくなんだ」
「違うのよ、たまたま兄貴が買っている漫画を読んでいただけよ。
おたくなんかじゃないわ」
「どうだかね」
「杏はどんな能力がほしいの?」
「私は碧染さんに近い能力がほしいかな」
「触れた物の形を変える異能力ね」
「うーん、ちょっと違うけど似てるかな、似てないかな。
何もないところから物を作りだせるとか、なんかの本でちょこっと読んだ事があるの」
「もしかして杏さんのほしい能力って、無から想像して創る、創造能力の能力ではないかな」
「宙くん、それだよ、それ、創造能力って言う能力だよ。
何もないところから物を創りだせるなんて神の所業じゃないか、あんな能力があったら夢のようでいいよね」
「確かに漫画やライトノベルで多くある夢の能力だよね。
剛くんと純くんはどんな能力がほしいかな」
「俺は防御系をアップする能力だ。
すべての攻撃能力を受け付けないという」
「あぁ、剛くんはあのアニメが好きだったから」
「あのアニメって?」
「ライトノベルでアニメ化されたどんな攻撃能力も受け付けない能力と言うのがあったのよ」
「それって盾の勇〇とかではなかったかしら」
「それとはちょっと違うわ。
とにかく防御力が上がって無敵になるという能力よ」
「純くんはどんな能力がほしいかな」
「僕は別にどんな能力でもいいよ。
どんな能力だってあったらうれしいもんな」
「純は夢がないな」
「どうせ使えるかわからない能力なんだし、ほしい能力を浮かび描いてみなよ。
ほれ、言ってみな」
「うーん、突然そんなことを言われてもすぐには思いつかないよ」
「もう、優柔ふだんなんだから、私みたいにさ、透視、透視能力って言ちゃいなよ」
「香、顔が変態になっているわよ。
純くんが困っているじゃないの、いじるのはそれくらいにしておきなさい」
「はいはい、でも、みんな異能について考えるのも良いかもね」
「そうね、この世界のスキル、魔法が使えるんだったら私たちにも異能が使えてもおかしくはないわ。
純くんも考えて見たほうがいいわね」
「わかりました」
…… …… ……
「山道をぬけてきたわ」
「平野に町が見える」
「でもね、町が見えても、ここから2時間ばかり歩かなくてはいけないわよ」
「ええぇ、そんなに、やっぱり瞬間移動の異能がほしいわ」
「それに、町に着く前にグレートウルフに出くわすかもしれないわ。
みんなここからは、気をつけて行きましょう」




