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第44話 動き出した者たち 異世界から来た劣等生 Ⅰ


 「りょう、それはないんじゃないの?

 緊急な討伐依頼なんでしょう。

 そんな、はした金を渡されても、私たちはあなたの依頼を受けたりしないわ。

 他をあたって頂戴」

 「ひとみ、それはないんじゃないとは俺が言いたい。

 お世話になった村人の命がかかっているんだ。

 冒険者の依頼にしては、破格の金額じゃないか。

 村を救うために、俺が個人的に依頼料を出して頼んでいるんじゃないか。

 ここは人命救助だと思って、俺の依頼を受けてくれ」

 「亮、頼みごとをする時にはさ、呼び捨てではなく、瞳さんじゃなくて……」

 「瞳さん、討伐依頼を、お願いしたいです」

 「そうね、頼み事をするのだったらその話し方がいいわ。

 そうは言っても、私たちも命あってのものだしね。

 どうしたらいいのかしら」

 「そこをなんとか……」

 「確かサイの村だったかな。

 私、あなたたちと魔獣の討伐依頼で一度行った事があるわよね。

 確か魔獣の名はツインベアとか言ったかな。

 二つ首の大きな熊だったわよね。

 なぜか私たちの討伐報酬が少なかったので覚えているのよ。

 それに村のためと言うならばさ、あなたが行けばいいじゃない。

 今、有名どころの冒険者、ゼブンクラウンの獅子戸亮ししどりょうくん。

 別にパーティーで行かなくてもグレートウルフなんてあなた一人で十分に倒せるでしょう」

 「おまえなぁ。

 あの時の事をまだ根にもっているのか。

 おまえたちはただ居ただけで、なにもしていなかったじゃないか」

 「そうだったかしら」

 「確かに、俺一人でグレイトウルフの討伐は十分だけど、貴族からの緊急な王都へ呼び出しを受けて、今すぐにでも出発しなくてはならないんだ。

 あの村にはお世話になっているし、手助けをしたいんだよ」

 「私は別にお世話になっていないしー」

 「……」

 「! あぁ、そう言う事か、なるほど、なるほどね」

 「!」

 「あの村にいる、カリンて子のことが気になるのね。

 あなたは良い寄られて、鼻の下を伸ばしていたから。

 何かあって、私たちには言えない関係でもなっているのかしら」

 「そ それはな」

 「なるほどね、彼女を助けてもらいたいのだったら、ほれこの指を見て。

 これくらいは追加で出してほしいわね」

 「わかった、追加で銀貨6枚をだしてやるよ」

 「ちゅっちゅっちゅっ、ノー ノー ノー、貨幣の種類が違っていなくて亮くん」

 「おい、追加で金貨6枚出せと言うのか。 

 さすがにそれはぼったくりすぎるだろう。

 それじゃ、1人金貨2枚の依頼って事になるじゃないか」

 「そういうこと。

 亮、あなたが最初に依頼した金貨10枚では全然足りないわ。

 この依頼はもともとB級冒険者が受ける依頼でしょう。

 グレートウルフの討伐なんて大きい街ではもっと高くだすわよ」

 「村にはお金がない。

 だから俺が出すって言っているのではないか。

 それに俺が最初に頼んだのは金貨8枚で依頼したような気がするが、何でいつのまにか金貨10枚に増えているんだよ。

 金貨8枚でも、日本円で換算すると200万くらいの依頼内容だぜ。

 いつの間にか金貨10枚になっていたのではないか。

 それでも250万、日本円で換算すると250万だぞ」

 「確かに村にはお金がなさそうだわね。

 でも亮くん、あなたはたんまりもってそうに見えるのだけど」

 「……」

 「まぁ、それはそれ、これはこれ、緊急に人命がかかっているならわかる話だわ。

 でもそれだったら、それなりに色を付けてもらいたいわね。

 嫌だったら、他をあたって頂戴」

 「それができないから、おまえらプライズガーデンに依頼を頼んでいるのじゃないか」

 「ちらり。

 亮、内のパーティーメンバーを見てよ。

 あなたたちと違って貧相な身なりをしているわ。

 そんな私たちに危険な討伐依頼を押し付けようとしているのよ。

 どうかしているのは、亮だわ」

 「……わかった。

 追加で金貨6枚出そう。

 金貨16枚でサイの村に出没したグレートウルフの討伐をお願いします」

 「そうそう、最初からそう言って素直に出せばいいのよ、亮くん」

 「くぅ……」

 「グレイトウルフの討伐依頼は引き受けたわ。

 みんなもそれでいいわよね」

 プライズガーデンの他7人のメンバーは頷いている。


 「くうぅ、討伐依頼の方はきっちりやってもらうぜ」

 「当然でしょう。

 私たちもまがりなりに、冒険者なのだから」

 「あぁ、確かにへっぽこなおまえたちだが、確実に倒せて信用できるのはおまえたち以外はいない。

 ほれ、金貨16枚だ。

 受け取れ」

 「毎度ありー」

 「俺は王都に出立する。

 サイの村は頼んだぞ」

 「OK、私たちも準備を整え、今日中には出立するわ。

 エリンの街からサイの村まで徒歩で5日でしょう。

 私たちだったら3日で行けるわね」

 「あぁ、頼んだぞ、俺は王都スティベアにへ行ってくる」

 「いってらっしゃい」

 「ちぃ、ぼったくられたぜ」

 「何か言った。

 男はそんなささいな事は気にしないもんよ」

 「……」

 冒険者パーティー、ゼブンクラウンのメンバー、獅子戸亮ししどりょうは冒険者ギルドから出ていった。


 …… …… ……


 「フフフ、瞳、ずいぶんと亮にふっかけたわね」

 「別にいいでしょ、あん

 あいつらたんまり、お金を稼いでいるんだから私たちにも還元してほしいわ。

 それに聞いているでしょう。

 冒険者ギルドの依頼には掲示されていないけど、C級冒険者のパーティー、黒い牙のメンバーが討伐に向かって誰も帰ってこない。

 もう15日以上たつじゃない。

 彼らわ、16人の大所帯だわ。

 確かサイの村の出身の人が多くいるらしいわね。

 村人が冒険者ギルドに来て、懇願していたじゃない。

 助けてくださいと。

 それを聞いて彼らは急いで駆けつけて行ったわ」

 「私はその時には居なかったけど、どうやらそうらしいわね」

 「討伐はおそらく失敗した。

 そうでなければ亮が私たちに頼み事をするなんてありえない。

 もともとB級冒険者の依頼内容だもの、いくら人数が多くいたって彼らでは荷が重すぎる」

 「確かにそうだわね。

 でもグレートウルフだったら私たちは何度も倒しているじゃない。

 ギルドの依頼では一度も受けたことがないけれど」

 「仕方がないでしょう。

 森に入るたびにあいつらが寄ってくるのですから。

 もっとも私たちがしらずに、死の森と呼ばれるところを通って来ただけなのだけど」

 「だから、あれほど亮からお金を取らなくてもよかったのでわなくて」

 「いいのよ、お金があるところからとれるだけとる。

 私たち貧乏冒険者には当然のことだわ。

 それに私たちはいまだにD級冒険者じゃないのよ。

 なんで私たちだけ、等級があがらないのよ」

 「それは簡単な話ですわ。

 私たちは要領が悪いからですわね」

 「確かにそうだけど、みやび、嫌な依頼はあなたも受けたくないでしょう。

 みんなもそうでしょう」

 「確かにそれは思うけど、友達からぼったくるのは僕はどうかと思う」

 「じゅんくんに同意しますわ。

 でも、亮君はお金を稼げる人だから、それに今回は私情もからんでいるのでしょう。

 確かカリンて子と深い関係になったと前に話していたじゃない」

 「そそ、ゆかりの言う事は前からうわさになっていたわ。

 それをあてつけて金額をつり上げる事など、私たち貧乏冒険者には仕方ないことだわ」

 「俺も少しだけ気がひけるけど、確かに亮はお金を持っているから。

 それに村のためになるんだったら今回の討伐はいいと思う。

 一度行ったことがある村だし」

 「つよしくんも言っているじゃない。

 お金のため、いえ村のために頑張ってグレイトウルフを討伐しよう」

 「よーし、みんな支度を整えて、サイの村へ行きましょう。

 私たちプライズガーデン全員をもってグレイトウルフの討伐を成功させるのよ」

 「オオォー」

 と言う訳で、私たちプライズガーデンの愉快な仲間たちは、ゼブンクラウンのA級冒険者、獅子戸亮ししどりょうの依頼を受けグレイトウルフの討伐に向かうのだった。


 冒険者ギルドの依頼ではないけど人助けのためだ。

 張り切って討伐にでかける。


 …… …… ……


 私たち県立○○学園に通うのクラスメート15人は、1年前に異世界転移をしてしまった。


 正確には17人のクラスメートだったのかもしれない。

 転移と同時に手足のちぎれた、○○君と、○○さんだったと思われる体の一部とともに来てしまったのだ。

 

 その頃、元の世界では大きな地震が世界各国に、いえ地球規模で多発していた。

 異世界転移が地震と関係があるかわからないが、フィアーズグリードと言われる異世界のベルンフォードと言う国に転移してしまったのだ。

 

 クラスメートの無残な亡骸とともに転移をしてしまったので、当初はみんな混乱をしていた。

 しかし、星野翔ほしのかけるくんのリーダーシップに寄って落ち着きを取り戻し難を逃れた。


 何もない荒野に転移させられたが、運よく近くに町があって、町長の計らいで特別に滞在することを許可された。


 しかし、生活するにはお金が必要だ。

 私たちでできる仕事がなく、いわゆる何でも屋の冒険者家業に職をついて今までなんとか生きてこられた。


 すでに1年もたつが、私たちプライズガーデンのパーティー、8人はうだつのあがらないままにすごしている。

 元の世界に帰ると言う大きな目的を掲げているが、そんなたいそうな目的よりも、今を生きることで精一杯だ。


 残りのクラスメート7人は、早々からパーティーを作り、有名どころの冒険者と称賛されるほど活躍をしている。


 私は、転移したクラスメート全員が無事に生き残っているだけで満足している。

 活躍する彼らを見て嫉妬なんてしていない。


 彼ら7人はもともと、他の分野で才能を秀でた人たちだった。

 冒険者になっても活躍できると思っていた。


 なによりも、この異世界では、私たちの体は強くたくましくできているらしい。

 彼らはこの異世界に順応が早く要領が良かった。


 ファンタジーの異世界で使えるスキル、魔法などの覚えが良い上に加え特別な異能を持っていたのだ。

 私たちは残念なことに、8人ともいまだに誰も異能を使えることがない。


 けれど一般の人よりも数倍力があり、魔力も桁外れに高い。

 多少の強い魔獣でも難なく倒せてしまう。


 それにちょっとだけ頭が良いと言う利点がある。


 でも問題なのは、頭が良いと賢いとでは違い、私たちは要領がわるい。

  

 パーティーのメンバー、みんながわかっているのだが、元の世界の常識が邪魔をしてできないのでいる。


 言い方が悪いが、この異世界は悪人にとって生きやすい世界と言っていいほど荒んでいるのだ。


 そんな異世界を私たちは一年間、生き残ってきた。


 私たちはいまだにうまく適応できずに劣等生を演じている。

 

 私はこんな荒んだ異世界など適応したくないと思っていますからね。


 以上、プライズガーデン、リーダー木綱瞳きづなひとみの主張でした。


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