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第41話 動き出した者たち 銀次と銀二朗 Ⅱ


 「おい、おまえたち、おまえさんらの仲間がいたら、わしに教えてくれんか。

 わしが保護してやろう」

 「……わかりました。お願いします」

 「よし、その前に何か腹に入れよう。

 腹が空いていよう、わしが用意してやるからな」

 銀次はアイテム収納カバンから、食糧と炊き出し用の道具を出し料理を作る。


 「銀二朗、おまえも炊き出し用の飯の作り方を覚えておけよ。

 材料は芋と小麦と塩と香草とあと根野菜があったらいい。

 小麦は練って水で溶きながら塊を作る。

 スープは野菜を煮てうまみをとり、塩で味付けしたものだが、簡単で結構いける。

 胡椒を入れればもっとうまいが、おそらくここでは貴重品だ。

 同様に小麦がはいっているが、これも貴重品になる。

 普通は芋と香草と塩くらいしかはいっていないからな。

 芋はしってのとおり比較的にどんな土地でも育てやすい。

 芋は食べ物がない時のわしらの生命線になるから、大切に扱えよ」

 「わかっているよ、おやじも言っていた。

 確か男爵と言う芋がなければおっちんでいたとかな」

 「ああ、わしらの若い頃のはなしだ。

 芋しか食えない時代があったからな、それでも飢えをしのぐにはよかった食べものだ」

 「ほれ、できたぞ、おまえたちも、食べなさい」

 銀次は4人の若い獣人に大きな木の器にいっぱいによそおってあげた。

 「食べていいのですか?

 でも私たちだけ食べるなんて、腹を空かせている仲間の獣人に申し訳ないです」

 「大丈夫だ。食糧はわしがたんと持っておる」

 「そうだぜ、気にすることはない。

 このじい様は、獣人界をまとめてた元大族長だからな。

 金はいっぱい貯め込んでいるんだ。

 気にしないで食べて体力をつけた方がいい」

 「……」

 「わかりました。遠慮なくいただきます」

 「おかわりもあるからな、たんと食べなさい」

 4人の獣人は芋すいとんをおいしそうに食べ始めた。


 …… …… ……


 「召喚したご老人たちには悪いが、ここから撤退させてもらうぞ。

 銀二朗、巨大亀の様子はどうだ」

 「それが海岸線にむかっている。

 どうやら海に入りそうだ」

 「なるほど、あの巨体では地上を動くのにままらんのだろう。

 海に入り泳いで移動するのがやつの行動の手段かもしれんな」

 「そうらしいな」

 「話によるとこの大陸であばれまわり、自分の食べる食糧もままらないらしいからな。

 このまま別の大陸へ移動してくれることを期待しよう」

 「ああ、望みは薄いかもしれないが、期待しておこうぜ」

 「わしらも移動じゃ、仲間の獣人のところへ案内してくれ」

 「はい」


 魔神獣ガイデアは食糧を求め海を泳ぎだす。

 それから数日後に、ミスティリア大陸に流れ着き、上陸を果たす。

 飢えている魔神獣ガイデアはミスティリア大陸の全土の種族を相手に争いを始めたのであった。

 

 …… …… ……


 銀次と銀二朗は、生き残っていた獣人の仲間を集め、魔神獣ガイデアを去ったエクスタ大陸の復興を目指す。


 幸いにもギンジが40年間、貯め込んだ食糧と生活必需品の物資がある。

 族長としてつちかった知識をふるに使い、村をつくり街をつくり大きな獣人たちが住まう集落ができた。


 7年の月日を投じなんとか復興をさせたのだ。

 しかしそんな中で事件が起こる。


 「銀じい様、こんな夜更けにこんなところでどうしたんだい」

 「月を見ていたんだよ。

 今日は3つの月が明るく照らしているのだ。

 こんなの元の世界じゃ見れないからな」

 「そうだな、それでどうするんだ。

 このエクスタ大陸に9魔神獣の1柱の魔神獣チャガマと名乗る鉄の釜を身に着けた巨大化け狸が来たそうじゃないか、それも手負いな状態らしい。

 人間たちが復興させていた北の大地が被害を受けたらしいな」

 「ああ、わかっている。

 どのみち戦うしかないのはわかっているが、多くの者が犠牲になるだろう。

 しかし、わしの直感力では勝てるとふんでいる。

 あの巨大亀よりはましだ」

 「そうだろうな。

 なんせミスティリア大陸から、魔神獣ガイデアを恐れ逃げてきたやつだと聞いた。

 他の大陸を渡っていたが、そこでも逃げて、逃げて最終的に何もないこの大陸に来たと言う話だ。

 他の大陸で討伐してもらいたかったぜ」

 「エクスタ大陸は復興しはじめで基盤が脆い。

 何もないところだが、やつには隠れるくらいにはちょうどいい場所なんだろう。

 獣人たちも復興して来たんだ、この獣人界をやつのすきにはさせん」

 「討伐隊を近く募るそれでいいかな」

 「ああ、わしみたいな老い先短い者が死ぬならばいいが、多くの若いもんが死ぬかもしれん。

 守る者があるならば、それも運命として受けいれねばならないことなのだろう」

 「ああ、そうだな」

 「しかし、本当に今宵は3つの月があかるいな、元の世界では考えつかない」


 そんなさなか夜空が輝きだした。

 それも昼間のように明るく輝きだす。


 「銀じい様、なんだこれは空がまるで昼間のように明るいぞ。

 銀じい様」

 「ゾクリ」

 銀二朗は銀次が毛を逆立てている姿をみて恐れおののく。

 

 「銀じい様、どうした」

 「フハハハ、これは愉快、愉快だ。

 この光、俺は見た事があるぞ、光の神と称するえせ神が死んだ時の事だ。

 ……東だ。

 ミスティリア大陸、そこだ、そこに間違いない」

 「何が間違いないんだよ」

 「来られている、来られているんだよ」

 「どうしたんだよ、銀じい様」

 「神だよ、わしが崇拝している神の使徒が降臨したんだよ」

 「神の使徒だってあの」

 「そうだ、古代神の使徒『みつぐ』さまがな。

 これはいい、魔神獣ガイデアは確実に死ぬ。

 わしの直感が確かに言っている。

 そしてこの大陸に逃げてきた化けだぬきも次期に死ぬとな」

 「なんだって」

 「これはあいさつをしに行かねばなるまいな。

 そうなると土産が必要か。

 ちょうどいい、化けだぬきの玉袋を土産にあいさつをしに行こうとするかのう。

 きっと土産は喜ぶと思うぞ」

 「銀二朗、ミスティリア大陸の情報をすぐに調べさせろ。

 今後、変わった事が起きるはずだ」

 「わかったよ、銀じい様」

 「さてと、わしはひとねむりするかのう。

 休息をとって化けだぬきを討伐しにいかんといけないからな。

 朝、起きるのが楽しみで仕方がない。

 ウハハハ」

 「どうしちまったんだよ、銀じい様よ。

 本当にボケちまったのか、それともやけクソになってしまったのかよ。

 まあいい、どのみち、あの化けだぬきを討伐しないといけないからな」

 

 …… …… ……


 数日後。


 「銀じい様、今、ミスティリア大陸を知らべに行ったものが帰って来たところだ。

 それでな魔神獣ガイデアが大陸から居なくなったそうだ。

 ミスティリアの大陸の獣人界では死んだとうわさが流れているらしい」

 「ウハハハ、わしの言ったとおりだろうが」

 「ああ、確かに銀じい様の直観力は大したもんだな。

 しかしあの魔神獣ガイデアだぜ。

 実物を見た時は、俺は勝てないと踏んだのだからな。

 あの化け物を倒しちまうなんてどんな化け物だよ」

 「銀二朗、前から言っているが化け物と言うではない」

 「ああ、すまねえ悪かったよ。口が過ぎたな」

 「わかれば良い。で銀二朗よ、化けだぬきの討伐隊は組織したのか」

 「ああできたぜ、精鋭部隊26人だ。

 もちろん俺も入る」

 「おまえはやめておけ、わし一人で十分だ」

 「! はあ何いってんだよ、銀じい様。

 齢90近くなるじい様が一人で戦える訳がないだろう」

 「大丈夫だ、わしには神がついているのだからな」

 「……わかったよ、銀じい様にまかせる好きにしてくれ」

 「ただし、俺も行くからな」

 「ああ、だがわし一人で討伐する。余計な手出しはするなよ」

 「わかっている」

 「フフ、観客がいても問題はない」

 「そうかよ、そう言うことにしておくぜ」

 「神が来ているのだ、無様な真似を見せたりせんよ」


 …… …… ……


 それから数日後、北に住み着いた魔神獣チャガマ、化けだぬきの討伐をしに出かけて行った。

 銀次が言ったように本当に一人で討伐してしまったのだ。

 

 「すげえ、銀じい様。

 本当に一人で倒しちまったよ」

 「言っただろう、俺一人で十分だと」

 「ああ、だけどその左目……」

 「気にするな左目がつぶれただけだ。

 命にはなんの別状がない。

 それに齢90近くにもなるんだ。

 いつ死んでもおかしくない、そうだっただろう」

 「そうだったな」

 「それよりも、化けだぬきの玉袋をきれいに解体してくれよ。

 『みつぐ』殿の手土産にするのだからな」

 「わかったよ、しかしあんなものを食うとはね」

 「狸の玉袋は精力が付いていいのだ。

 わしも若い時に世話になったからな」

 「なるほど、それでやけにこだわっていたのか」

 「そう言う事だ、ウハハハ」

 『俺は、いやみついでにいったんだがな……』

 「む、なんか言ったか銀二朗よ」

 「なんでもないよ」

 「そうか、おまえはミスティリア大陸にいる獣人たちと連絡がつくよな」

 「ああ、大丈夫だぜ」

 「そうか、それじゃわしは近々、ミスティリア大陸に行くから面倒を頼む」

 「ああ、わかっている。

 その辺の事は俺にまかせて起きな」

 「言うようになったじゃねえか、銀二朗」


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