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第33話 耕す


 「威圧とはこういう感じで使うんだよ、おわかり黒鬼さん」

 「バカな、ローパーが言葉を話しているだと」

 「おやおや、おまえさんには人間と違って言葉が通じるみたいだね。

 獣人の子供とも話が通じたが、どうやら獣人、亜人には言葉が理解できるようだ。

 まぁ、話が通じてもおまえたちは私の敵なんだろう。

 今まで散々ローパーを狩っていたみたいじゃないか、今度はおまえらが狩られるばんだ」

 「比邪羅、具瑠鵡よ、殺せ、この魔物を殺せ」

 「陀獄鬼様、申し訳ご座いません。体の言う事がきかず動けません」

 「私も同様です」

 「何だと、おまえら2人とも儂の最強の親衛隊だろう、おまえらが動けんでどうするのだ」

 「だから言っただろう。

 威圧とはこんな感じで使うんだってね、恐怖で竦んでしまい動けなくなする。

 これが本当の威圧と言うもんだよ。

 おまえのように魔法で上乗せして衝撃波を付与するなんて邪道だね」

 「ぐぬぬ、ローパーの分際でなにをほざくか」

 「それじゃこちらから攻撃させてもらうよ、動けないんだから一回休みと言う事でいいよね。

 今度はおまえらが狩られるばんだ。

 面倒だからまとめて吹飛ばしてやるよ。

 ドロー、私のターンだ。


 「上位無属性衝撃破魔法ルミナス・ノヴァ

(ルミナス・ノヴァ)」

 カードを引いてないが、上位無属性衝撃破魔法ルミナス・ノヴァを唱えた。


 鬼たちの軍勢が集まる中心へ魔法を放つ。

 軍勢の中心上空5メートル付近に巨大な見えない魔法エネルギーの塊が出現し、爆発した。


 放射状に広がった魔法エネルギーの塊は、鬼どもの軍勢を吹飛ばす。

 中心の爆発は威力が増して鬼どもを粉々に吹飛ばし、地面にはクレーターが出来てしまった。


 中心付近にいた威圧で失神していたゴブリンたちを跡形もなく吹き飛ばし消し飛んでしまったのだ。


 あり余る威力のせいで、直径500メートル四方の草木は吹き飛び地面が剥き出しになっている。

 黒鬼たちはごくわずかの者が衝撃に絶え残ったが、暴風に巻きこまれ地に伏している。

 

 あれれ、やばいな、威力を抑えたつもりなんだけど、ここら辺一帯が吹き飛んでしまったよ。

 上位魔法、軽減してこの威力とはどういう事だよ。


 私もシールドとバリア系の両方の魔法を使っていなかったら自分自身でダメージを受けてしまったのではないか、また自爆するところだったよ。

 これは威力を落としても攻撃系の上位魔法は使うもんではないな。


 しかし、なんだ、これはまずい事をしたのではないか?

 ここら辺一帯のローパーの食糧である草や木が吹き飛んでしまったぞ。


 食糧がなくなってしまったら、遠征しに行かなければいけないじゃないか? 

 ローパーは食糧さえ間にあっていれば大人しい魔法生物なんだよ。

 余計な事をさせてくれたな、これでは食糧が足りなくなって暴れだしたらどうするんだよ。

 おのれやりやがったな黄金聖闘士め。


 「ウウ、何が起こったんだ。

  比邪羅、具瑠鵡よ、どこだ、どこにいる」

 「比邪羅と具瑠鵡さんね。

 誰かは知らないけどそこら辺に転がっているのではないかな」

 私はうつぶせに倒れている陀獄鬼の前に立つ。


 「おまえのおかげで、ここら辺で食べられる食糧が減ってしまったではないか、代わりにおまえさんの事を食糧とさせてもらう。

 自業自得だよね」

 「ぐぬぬ、なにをする。やめろ、やめろ」

 「あっ、そうそう、おまえさんが装備している黄金鎧は私がもらっておくからね。

 それじゃ、サヨウナラ」

 倒れている陀獄鬼の頭を大きい触手でたたきつぶした。


 さてと他の倒れている黒鬼どもの頭をつぶしておくか。

 モグラたたきのように転がっている黒鬼どもの頭だけつぶしていく。

 最初から魔法など使わず触手で首を撥ねていた方がよかったと思う次第だ。


 今度から戦う相手の戦力を見きわめ攻撃しよう。

 でも私って臆病者だから余剰に力を入れちゃうんだよ。


 倒れている黒鬼どもの頭をつぶし鎧を剥ぎとっていった。

 アイテム、黄金鎧1つ、白銀鎧7つ手に入れた。


 他の装備は黒鬼ともども粉々に吹き飛んでしまったので、回収は出来ない。

 兜は頭といっしょにつぶしてしまったけど、なくても良い装備でしょう。兜だけ壊れてつけてないのが大半だからね。


 私には全く必要ないアイテムだけど持っていても損はないはずだ。

 あと適当に黒鬼たちが持っていた武器を回収するか、一応なにかあった時ように持っておくのだ。


 さてと剥ぎ取った鬼どもの遺体を小分けに切りわけ、ローパーがいるところへまいておくか、ちょっとでも食糧の足しになるだろう。


 しかし、私が吹飛ばした草原をどうにかしなくてはならない、食糧不足はないと思うのだけど、何があるかわからないから元に戻しておいた方がよいだろう。

 

 クレーターを埋めて、吹飛ばした範囲を耕し、草の種をまいて置くか、肥料はどうしようか、森に入って落ち葉を拾い粉砕してばらまいておけば代わりになるのかな、やるだけやっておこう。

 余計な仕事ができてしまった。


 そういえば、確かあの黒鬼さんヒュドラが来るとか言っていたな、倒せば少しでも食糧の足しになるからちょうどいい。

 気を付けて見張っていることにしよう。


 …… …… ……


 この異世界に来て33日目、今日も朝から晴れている。

 朝早くから動き始め、私が吹き飛ばした草原を元に戻そうとがんばっているのだ。


 2日間かけて何とかクレーターを埋られた。

 今はむき出しになった地面を、冒険者の持っていたやりを触手で持って耕しているのだ。


 なぜかモンスターなのに朝から異世界で農作業をするとは思いも寄らなかった。

 それも植えるのは野菜ではなく、草の種だと言うおかしな話だ。


 このまま放置しても、魔法で吹き飛ばした土地が自然に草が生えてくるとはないだろうな。


 まわりでは岩場を背にして気持ちよさそうに日向ぼっこをしているローパーがいるのでそれを見ると何とも言えない気分だ。


 いっしょに住んで居るローパーの娘さんも私をさしおいて日向ぼっこしているので複雑な気分になっている。


 早めに作業を終わらせようと思うのだが、吹飛ばした範囲だけでなく、ぽつんぽつんと草が生えてない空き地があるのでそこもついでに耕すことにした。

 空き地が不自然にところどころにあるんだよ。


 冒険者がローパーを狩り取る為に専用で作った空き地だと思われる。

 釣り場じゃないんだ、造るのをやめてもらいたいよまったく。

 

 空き地を調べて見ると何かの毒に汚染されているのが見受けられる。

 毒の反応からしてローパーが出したやつではないな、除草剤でもまいたのかな? 


 幸いな事に私は魔法で毒を除染できるスキルは持っている。

 ついでに空き地も除染して耕し、草の種をまいておくことにしたのだ。


 除染をする問題はないが、あらたに余計な仕事が増えてしまった。

 面倒な事をしてしまったとつくづく思うよ。

 

 お昼過ぎまで土地を耕していたら、目的のあいつの反応が見受けられた。

 私の天敵であるヒュドラだ。


 ヒュドラにはトラウマがある。

 奈落のダンジョンで生まれた時に兄弟をヒュドラに食われたと言う苦い経験があるからな。

 

 どこの世界に行ってもヒュドラは私の天敵なのだ。

 ここに住んで居るローパーも天敵なのかな? 

 岩場の穴に長い首を突っ込んで食べられてしまうよ。

 まさかそれでヒュドラの首が長く進化したということはないよね。


 望遠透視能力ルビーアイで遠視ているが、ここから約3キロ地点まで迫ってきている。


 体長15メートル、短い足は6本? 8メートルはある長い首で数は4本頭のヒュドラか、腹が減っているらしくどの頭の口からもよだれを垂れている。

 私らを食べるき満々でいるな。

  

 ヒュドラの気配が近づいたせいか、日にあたっていたローパーが巣穴に戻り始めた。

 危険を察知したのね、でも巣にもどっても長い首を突っ込まれて食べられてしまわない?

 入り口を小さく造るか、巣穴をもっと堀り下げるか考えた方が良いよ。


 知恵のないローパーにそれを説いても無理か、今のままで行くと食べられてしまう。

 なんとか教えられないか考えてみるか、かなりの難もんだな。

 

 今回は私がいるから大丈夫だけど、対応策を考えないといけないな。

 強くなってヒュドラを倒せればいいけど、それは無理と言っていいだろう。


 ヒュドラの事もそうだけど気になることがある。

 30分前から、500メートル付近の木の陰で私を観察している人間が居るのだ。

 

 ヒュドラのために索敵を広範囲におこなっていたが、気づくのが遅く、いつから居たのかわからなかった。


 隠ぺいの上位スキルでも使っているのか、気づいたときには望遠鏡のようなものでこちらをみていたのだ。


 レンジャーの冒険者が2人ほどこちらを見ている。

 気づかなかったこともありヒュドラよりもこいつらの動向が気になる。


 モンスターの私が触手で槍を持って土地を耕してるのを見て何を思っているのか疑問に思う。

 視ている人間が不思議に思っているのは確かだと思うけど。


 さてとそろそろ近づいて来たのでヒュドラのとこへむかうとするか、草むらの深いところへ入って防御魔法をかけ透明化能力インビジブルで姿を消して向かおうとしよう。


 冒険者に見られているから直接は魔法はつかいたくないんだ。

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