第32話 黒鬼再来襲
さてと、2匹の傷ついたローパーを回復してあげましょうか、私は上位範囲回復魔法を唱える。
この前、助けたローパーの娘さんには上位回復魔法をかけて元の姿まで回復した。
今回は瀕死の状態だけど、上位範囲回復魔法で十分でしょう。
範囲回復なのでまとめて回復できるしね。
あっ、でも上位魔法でも威力高すぎはしないか? でも触手が切り取られてなくなっているから高回復の方が良いし、お隣さんだから上位範囲回復魔法かけてあげても良いよね。
2匹の傷ついたローパーは上位範囲回復魔法を受け瞬時に回復した。
おぉ、すげー回復速度早っ、瀕死の状態から奇麗に回復したよ。
それに切られていた大きい触手が完全再生している。
やはりこの世界では魔法の効果が大きく作用するみたいだ。
回復魔法はまだ良いけど、攻撃魔法はおさえないといけないかもしれない。
回復してあげたのは良いけど、一向に2匹のローパーは動かない。
生きているのは確かだけど固まったままで動こうともしない。
まさか私が怖くて動けないのかな? そんな事はないはずだ。
今までお隣さんで私の事を日向ぼっこしていて近くで見ているはずだしな。
あっ、そうかダメージを負いすぎて回復してまもないから体力が減りすぎて動けないのか、傷の回復と体力の回復は別だしね。
私も瀕死の状態になった時は治っても動きずらかった。
やはり傷の回復と体力回復は別と言う事か、そう言う事だと食事を取って体力を回復するしかないか、ちょうどよく冒険者の死体があるのでこれを食わせるとしましょう。
その前にこいつらが持っている装備品やアイテムを剥ぎ取っておこう。
装備品とアイテムで、ある程度情報が得られるからね。
どのくらい文明が進んでいるかは、服の作りなどでおおかた予想はできる。
とりあえず冒険者の首を撥ねたのが転がっているので、それを集めて2匹のローパーの目の前において置く。
さすがに私も人間の頭を直接食うのは抵抗があるしな。
でも人間の生首をみても平気になってしまうとは、慣れってこわいことだよな、でもね男性の下半身を見る時は今でも抵抗があるんだよ。
まして下半身を食うのだけはなぜか生理的に受けつけない。
まるごとでは食べてしまえるんだけど。
私は撥ねた冒険者の頭を集め、2匹のローパーの前においた。
2匹とも動こうとしないが、しばらくすれば動き出すから良いでしょう。
それじゃ私は冒険者の装備を剥ぎ取って空間収納魔法へ入れてしまおうか。
あと森の入り口付近にテントが張ってあるので、そいつも回収しておこう。
巣穴に戻ったらどんな装備やアイテムがあるか鑑定してみよう。
私は前に持っていたナイフを空間収納魔法から取り出し、冒険者の装備を剥ぎ取り始める。
ある程度剥ぎ取り終わったら一緒に住んで居るローパーの娘さんがこちらへやって来た。
なんか物欲しそうに見ているな、食事は2日前取ったばかりなのでそうは腹が減っていないと思うけど、冒険者の遺体を切りわけあげてみる。
目の前に置いたら食べ始めた。
ローパーの娘さんが食べ始めたら、お隣さんの2匹のローパーも同じように食べ始めた。
これで体力の回復はできるでしょう。
ついでに剥ぎ取った冒険者の遺体を切りわけ目の前に積んでおいた。これだけ食べれば回復には十分でしょうな。
食べ残ったものは冷却魔法をかけ、空間魔法に入れて保存しておこう。
それじゃ残りの冒険者の遺体から装備品を剥ぎ取る作業を終わらせるとしましょうか。
…… …… ……
ふぅ、これで全部回収できたな、どうやら3匹のローパーも食べ終わったみたいだ。
体をパンパンに膨らませゲップをしている。
巣穴に帰ろうとしましょうか、私が巣穴に戻って行ったら同じようにお隣さんと娘さんも帰って来ました。
まったく今日はひどい目にあいましたよ。
…… …… ……
この異世界に来て28日目、今日は晴れている。
絶好の日向ぼっこ日よりだ。外で日差しをあたっているとおかしな光景を見た。
岩場で日向ぼっこをしているローパーたちがシールド系の魔法を使っているのが見えるのだ。
パリン、パリンとシールドの幕を張る音がして、透明な幕が展開される。
今まで魔法をつかった事がないのに突然、魔法を使いだしたんだ。
それも私が使う物理防御のシールド魔法だね。
も もしかしてこれってシンクロニシティってやつか? 私を中心にして同じように共鳴し合う。
私がシールドの魔法を使うから同じように共鳴して使えるようになった?
その可能性が高いのかもしれないな、隣にいる娘さんもシールド魔法を同じように使い始めたんだよ。
でも突然つかいだして効果とか意味とかわかっているのだろうか? まっ、防御のためのシールドだから、別に魔法を使っても問題はなかろう。
…… …… ……
この異世界に来て30日目、今日も晴れていて絶好の日向ぼっこ日よりだ。
当然のごとく外に出て日にあたっている。
しかし、今日はお客さんが現われたようだ。それも団体客で武装している黒鬼が率いている軍団らしい。
数を数えて見たら、黒鬼が28名、ゴブリンが80名、108名の大除隊だね。
なにしに来たのかおおよそわかるのでこちらとしては臨戦態勢を取っておこう。
大除隊のせいか、無造作に私の方へゆっくりと歩いて来ている。
しかし集団ででかいのが来たせいで私らの食糧である草むらが踏みつぶされていく。
その光景を見ていたらなんかムカついて来たぞ。
それによほどの余裕があるのか中央の金色の鎧を着た黒鬼を先頭に私の前までゆっくりと歩いて来たのだ。
その事もなんかムカつくのだよね。
しかし、私は先頭にいた黄金の鎧を着た黒鬼に目に見張る。
ま まさか、こんなところで黄金聖闘士に出会うなんて。
黒鬼が装着している黄金の鎧に目を奪われたのだ。
これってあきらかにタウラスの黄金聖衣だよね。
そ そっくりだ。
まさか黒鬼が黄金聖衣を着用しているとは思いもよらなかった。
それにうしろへ控えている黒鬼達は、白銀聖衣を着用している?
黒鬼の聖闘士集団が目の前に現れ私は驚愕したのだ。
奈落のダンジョンではスーパーサイヤ人にあい、異世界では黄金聖闘士にあうって何なんだよ。
黒鬼の黄金聖闘士1人に白銀聖闘士27人か、残念ながら青銅聖闘士はいないな。
ゴブリンはそれなりに良い革素材の鎧を身に着けているが聖衣ではないんだよ。
でも前に来た時はそれぽい、鎧を着た黒鬼が居たのでもしかしたらそいつらが青銅聖闘士だったのかもしれない。
冗談でそんな事を考えながら興味津々に黄金鎧をまとっている黒鬼を見る。
「(バカ息子がローパーを狩りに行くといって一向に帰ってこない。理由はこいつのせいだったみたいだな。
それともヒュドラに食われたのか、近くの森でヒュドラを見かけたと聞いてわしが直々に討伐に来て見ればヒュドラが居ないではないか」
「情報が不足しており、申し訳ご座いません、陀獄鬼様」
「ふん、まあよいわ、かわりにローパーの上位個体が生まれて居たようだからな」
「私ははじめてお目にします」
「そうだな、まれにこのように突然変種の個体が生まれるのだよ。めったにおめにかかれものではないからな。
しかし、実にうまそうではないか」
「そうでありますな」
「オークやゴブリンは数多く生まれるから、たまに上位個体が見られることがあるがローパーでは珍しい事だろう」
「左様で御座いますな」
「で、こいつがわが息子を殺したのか、そいつはわからんか、別にどうでも良いか、弱い子供などわしにはいらん。
それよりも、こいつを酒のさかなにヒュドラが来るのをここで待つのも一向か、どう思う比邪羅よ」
「それは良い考えですね。陀獄鬼様」
「わしも好物だが、ヒュドラの好物も居るのだ。
ここへ立ち寄るのはわかっているのだからゆっくりこいつを食ってまとうとするか」
「そうでありますね」
「しかし、こやつかなりの度胸があるな、わしがここまで近くに居るのに逃げようともしない。
それどころか他のローパーまで一向に逃げだそうとしないんだからな。
よほどこいつが強い特殊個体で統率がいきととのっているというのか、はたまたただのバカなローパーなのか、どちらかだな」
「左様でありますな、私が蹴散らしますか」
「よい、わしに任せろ、目の前にここまで居座られては、王としての威厳が損なわれるからな。
いい機会だおまえたちにも王の威厳とやらを見せてやろうではないか」
全部聞こえているんですけど、何、この黄金聖衣を着ている黒鬼、王の威厳とか言っているけどバカなの? なにを言っているの? 私が相手だよ意味がわからん。
こいつ私との力の差がわからないの? あきらかに私より弱い感じがする。
まわりにいるローパーが逃げないのが良い証拠だよ。こんななか安心して日向ぼっこをしているからね。
どうやら私たちを狩りに来たのではなく、近くにでたヒュドラを討伐しに来たらしいね。
それと息子とか言っていたけど、青銅聖衣のような鎧着ていた黒鬼だったか。
原型がなくペシャンコにつぶれちゃったやつだな。
こいつヒュドラが現れるまで、私を酒のさかなにして待っていると戯言を履いたぞ、気に入らんな。
それになにか王の威厳と言っているけど、何かやるんだったらさっさとやったらいいじゃないか。
こちらとしてはやられたらやり返すだけで、もうとっくに臨戦態勢は出来ているんだよな。
私の望遠透視能力は20キロ先まで見えるんだ。
見えたのは5キロ手前だけどその時からすでに防御のシールドを張って待っていたんだよ。
とりあえず攻撃してきたら反撃の報復しようと思っているから待っているだけなんだ。
もっとも私のテリトリーに入ってくれば敵なんだけどそれでも我慢してこちらは手を出さないでいるんだから、早く仕掛けるなら仕掛けてこいよな。
「ハアアア、威圧解放」
黄金鎧をまとった黒鬼王・陀獄鬼は、私に対して衝撃波を伴う威圧を放った。
こいつ威圧だけでなく衝撃波の魔法を放ってきたぞ、魔法を使用した威圧ではなないか。
しかし私の魔法シールドに阻まれてダメージがない。
近くで日向ぼっこしている娘さんも同様にシールドを展開させていたのでダメージはなく動揺した感じもまったくない。
「オオオー、わしの威圧にあたって動じないとはたいしたもんだな。
部下のゴブリンどもは頭をかかえて怯えているのにな。
ガハッハハッ、ローパーの特殊個体とは面白いもんだ」
私は起き上がり一歩前に出る。
「こやつ、やるつもりか」
黄金鎧をまとった黒鬼は身を構える。
「ご丁寧にあいさつを有難う御座います。
でもね威圧って言うのはこういうことを言うんだよ。
お返ししますね」
私は殺気を込めて極限状態の威圧を放ってみた。
私の威圧は衝撃波を伴わないが、極限の威圧のため恐怖を伝染させるスキルを伴っているのだ。
黒鬼たち以外のゴブリンの兵たちは口から泡を履き失神、またはショック死で命を落とす輩もでていた。
なぜだか私と同じように岩場で日向ぼっこしていたローパーも一斉に逃げ出し巣穴へ帰ってしまった。
私といっしょに住んで居る娘さんも巣穴へ逃げてしまった。
同族なので効かないと思ったんだけどちょっとやり過ぎたか。
ここから戦闘が始まるのだから、巣穴で隠れて居た方がこちらとしては良いんだけどね。




