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第30話 冒険者たち


 この異世界に転移して22日目。

 昨日の朝からどんよりしている曇り空だ、ぽつりぽつりと雨が降っている。


 曇り空なので日光浴ができず、岩場の巣穴にひきこもっている状態だ。

 2日前に食事はしたので腹は空いておらずじっと中で休んでいる。

 

 そんな中、今日は変化が訪れた。住処にしている岩場から草原を隔て約1キロ先に森林に入る。


 森林と草原の手前で広範囲に草刈りをしている人間を見かけたのだ。

 こんな場所で草刈りをしているとは奇天烈なやつらだな?


 人数は8人で冒険者の風貌をしている。ただ単に草を刈っているとは到底思えない。

 草刈りをある程度を終わったら、テントを張る様子がうかがえた。


 こ これはやはりあれか、ついに来てしまったのか、ローパーを狩る冒険者が……

 拠点の造りをおこなっていると言う事だな、まったくもって非常事態発生だよ。


 先日に会った、犬の幼い獣人の話では、人間の冒険者がローパーの魔核を狙いに狩りをしに来ると言っていた。

 鬼族がローパーの肉を求め狩りをすることも聞いたが、ここへ来たときに娘さんを助けた時にすでに経験をしている。


 鬼族はたいしたやつらではなかったけど、思っていた鬼族とはちがっていたし、カッコいい鎧を付けていたんだよ。

 アニメで見た青銅聖闘士の鎧に似ていたんだよな。


 あれから鬼族は来なかったので、問題はないと思っていたのだが、今日は人間の冒険者が来てしまったと言う事だ。

 まったく来てほしくはなかった。


 望遠透視能力ルビーアイで観察して見ると、どう見ても私に対して危険をあたえるほどの人間とは思えない。

 

 昨日から曇り空だったので私は巣穴から出ていない。冒険者には姿を見せていないのだ。

 冒険者がどんな行動を起こすのかこの巣穴から望遠透視能力ルビーアイを駆使し観察を行う次第だ。

 油断せずに注意して観察をすることにする。


 

 「ゲン、ロープを持って来てくれ」

 「はい、わかりましたグレイブさん」

 俺の名はゲン16歳になったばかりの駆け出し冒険者だ。

 

 冒険者になって今日で半年、現在は初心者の F級冒険者からE級冒険者に昇格し、はれて上位パーティーである者たちとの参加が認められた。


 A級冒険者パーティーのベアーファングに荷物持ちとして加えられ、上位クエストの真っ最中だ。


 冒険者をなりわいとしているアルズの町から、7日ほど歩いた場所にローパーが生息する岩場がある。

 この場所はA級指定にされている超危険区域に該当する。

 

 E級の冒険者である俺には本来は入れない区域だけど、今回はA級冒険者パーティーの荷物持ちと言う事でギルドに参加を認めてもらえた。


 荷物持ちだが始めての高難易度クエストが経験できるとあって浮かれてしまっている。


 ローパーと言うモンスターは強いモンスターではないと言われている。

 しかし駆け出しの俺では勝てないモンスターだと言われてしまった。

 今回の狩りで戦闘の中に入るのは禁止されている。


 C級の冒険者が1対1で勝てるモンスターと言われている。俺にとってはかなりの強敵だ。

 今回はサポートで参加するが、いつかローパーを1人で勝てるくらいの強さを身につけたいと思っている。

 

 この場所はA級指定されている超危険区域だ。

 ローパーの肉を好む鬼人族の亜人や災厄と呼ばれる国崩しの魔物、ヒュドラがローパーを食べに狩りに来る。

 そんな魔物が徘徊はいかいしているので超危険区域に指定されている。


 危険は伴うのだがローパーと言うモンスターは魅力的な価値のある魔物だ。特定の魔物には魔核がある。

 その中でもローパーは特別な魔核を所有していて貴重なモノらしい。

 魔法系のアイテムに加工されるので重宝されているようだ。

 

 ローパーの魔核1つで金貨10枚はくだらないと言われる。大きさによっては金貨100枚になる魔核も取引されているらしい。

 冒険者にとっては一攫千金を狙える場所なのだ。

 

 しかし、鬼人族に出くわしたら、どんな強い冒険者でもほぼ死は免れない。

 やつらはゴブリンを従え集団で襲ってくることがあるのだ。

 

 ゴブリンは俺でも倒せるたいした事のない魔物だが、強靭な肉体を持つ鬼人族は別格だ。

 A級冒険者でも倒せるかどうかの強い亜人と言っていい。


 知能が高く知恵もまわる。人間と同じ武器や鎧を装備している上位の鬼族もいるのだ。

 人間も食べるらしくやつらに見つかったら戦闘は絶対避けられない。

 鬼人族にあったらすべてを捨てて逃げ出せとパーティーの間で決まっているほどだ。


 ましてや国崩しのヒュドラと遭遇したならば確実に命はないだろう。

 それでも俺はローパーの狩りに魅力を感じて参加をしてしまった。


 「グレイブ、テントは張り終えたよ」

 「おお、早かったなシュリーン、終わったばかりで悪いのだが、索敵を俺とかわってくれないか、レンジャーであるおまえの方が索敵能力が高いからな」

 「わかったわグレイブ、私がかわるわ」

 「助かる、それじゃ頼むよ。

 そうそう、予定通り、この場所に留まるのは3日が限度だ。

 岩場に居るローパー以外の魔物は比較的ここにはいないのだが、万が一鬼人族などに遭遇したら俺たちは生きて帰れないからな。

 慎重に索敵をしてくれよ」

 「わかって言るわよ、グレイブ」

 「3日だ、3日以内にローパーを狩れるだけ狩るぞ。

 鬼人族が現われたら即撤退だ。荷物を捨ててでも逃げる。命が惜しいからな」

 「そうね、索敵の方は安心して任せて頂戴」


 …… …… …… 


 「エバンス、今回の魔法の罠をどこに仕掛けるか指定してくれないかしら。

 誘い出すのわ、あなたの役割でしょう」

 「前回と同じ場所で良いのではないかな」

 「ああ、あそこの空き地ね。

 誘い出すあなたが一番危険を伴うのだから地形の場所をよく考えてよね。

 足元を取られて逃げ遅れてローパーに捕まれば一貫の終わりなんだから。

 誘い出すルートはあなたがきめなくちゃいけないわよ」

 「うーん、そうだな、前回に狩をした日から月日がたつ。

 あの辺りの巣穴に新しくローパーが住み着いていると思んだ。

 やはり場所的には前回に仕掛けた空き地でいいな、そのほうが誘い出すルートもわかっていいだろう。

  魔法の罠も仕掛けやすい」

 「別に同じ場所なら私的には楽で良いのだけど、誘うのはあなたよ。

 前回の時とは草の長さや生えている植物も違うわ。

 わかっていればいいのだけどね」

 「ああ、大丈夫だ。今から調べに行くところだよ。

 それにここ数日はこの曇り空が続くだろう。俺は3日間は天気の変わりは生じないと思う。

 曇り空だと巣穴からローパーは出てこない。夕方から朝方にかけても巣穴で眠っている。

 やつらは昼型に行動する魔物だ。

 夜の狩りも良いけど見えずらく、他の魔物が来る可能性が高いので危険を伴う。

 今回は昼間の狩りをするのがベストだろう。

 そうなると曇り空が最適だね。

 リーダーもそう判断していると思うよ」

 「確かにそうね」

 「巣穴に仕掛けて引きずり出し、罠に嵌めるのが一番安全な狩り方だ」

 「それじゃ前回と同じ場所に魔法の罠を張るわね」

 「そうしてくれ、幸い天気は良くないのがうってつけだ。

 晴れているとやつらぞろぞろ外に出て、のんきに日光浴をしているからな」

 「その場合は誘って狩るのは難しいもんね」

 「ああ、仲間を呼ばれて数が多いといくら弱っちいローパーでも危険を伴うからな。

 張り付かれたら俺でもやつらを振りほどくのは困難だ。少ない数で狩るのだ妥当だろう」

 「そういうことね」

 「本当にこの天候は俺たちにとって狩り日和だよ」

 「アハハッ、そうね」

 「ハハハッ」

 「それじゃ罠の仕掛けを頼む。俺は狩場の地域を散策してくる。

 気を付けて行って来てね」

 「ああ」


 …… …… …… 


 「エバンスはいないのか?」

 「あ、リーダー、ちょうど今狩場の散策をしにいったわよ」

 「そうか、俺も行くとしようか、今回のローパーの狩りのプランはBプランだそれでいいよな」

 「わかっているわよ。エバンスもそう思って見に行ったのだから」

 「この天気じゃ、それはそうだな。まあ、みんな経験者だわかっていて当然と言ったところか」

 「それはそうだわね」

 「他の者にも見かけたら伝えといてくれ。今日一日は予定通り狩場の確保だ。罠の仕掛け、気を付けてやれよ」

 「はーい、わかっているわ」

 

 うむむ、冒険者の連中、のんきに話しながら笑っているやつがいるぞ、私がいるのにそんな游著なことで良いのかな。

 生物兵器である私がいるんだぞ。


 3倍いや10倍それ以上の戦力を保有しているのだぞ、ザクとはザクとは違うのだよ私はね。


 襲ってくるようだったら確実に返り討ちにしてやるからな。


 冒険者の人数は8人か、見た目、大柄な大剣使い? 剣士が2人、やけにでかい剣を二人とも掲げているな、大型の魔物相手では大剣が普通なのかもしれない。


 2人とも年齢は30歳前後と言うところか、特徴的なとんがり帽子をしている弓を持っている輩がいるな、弓使い、狩人ってやつが一人か、念入りに辺りを確かめて動いているぞ。


 そういえば草原のあちこちに草が生えてない一定の区域がところどころにあるんだよな、その区域を念入りに調べている。

 

 おかしいな、なぜあんな区域がこの辺りに存在するの?

 これって人為的に作った空き地みたいなものかな、前から狩場をしやすくするような場所とか人為的に造っている可能性もあるな。


 魚の釣り場じゃないけど、ローパーの狩場を造っておいてある感じかな、なんか嫌な感じがしてきたぞ、なんせここに人間が狩り場として来るのだろう。


 もしかして人間によってかなりの数のローパーが狩られているのか? やけに手慣れた感じでなんか調べているんだよね。

 許すまじ人間共め目にもの見せてやるぞ。


 あれは魔法使いかな、2人で地面に何か魔法陣を描いているぞ。どこかで見たような感じだな。


 そうだあれは私が召喚された街中にあった魔法陣と似ているぞ、と言うと、なんかしらの魔法のわなを仕掛けているみたいだな、これはちょっと興味深いな。


 街では避けて通ったが、あれにはまったらどんな効果があるか知りたかったんだよね。

 悪いけどここはローパーさんが引っかかるのを見させていただこうか。


 どんな効果があるかは知らないが、後から助けられるなら助けてあげよう。

 その他はまわりで索敵をしているやつらが2人いる。こいつらは職業で言うとレンジャーまたはシーフって感じだ。


 男女2人、それとおまけで若い少年が1人いる。

 こいつは荷物持ちだな。

 ひっきりなしに呼ばれなにかの荷物を届けさせられているな。


 冒険者8人、剣士2人、弓使い1人、魔法使い2人、レンジャーまたはシーフ2人、荷物持ちの少年1人の中級冒険者8人パーティーと言ったところか。


 なるほどね、それではあの冒険者パーティーのお手並み拝見としようかな。

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