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第22話 援軍


 「アイリーン様、どうやら魔法部隊が索敵を終えたようです。

 ユリング様が居ます場所が特定できました」

 「そうか、生きているのだな」

 「はい、生存の確認は取れたようです。

 しかし、心拍数が少なく危険な状態かと・・・

 散策した魔法部隊一同で、ゴルゴダの街の地図と照らしあわせたのですが、街はずれの貴族街の屋敷の地下に囚われていると判断しました。

 貴族街の東の城壁に近い場所との特定です。

 これは助けに入るチャンスだと思いますが、どうなされますか」

 「希望が少しだけだが、あるのだな」

 「街はずれと言っても貴族街です。

 駐屯兵とは別に屋敷には屈強な衛兵がいるでしょう。

 屈強な衛兵相手にわれわれでは立ち向かえるかが気がかりでなりません。

 今はまだ、夜は沈みきってはいません。

 時間的にもう少し立った方がよろしいかと思います。

 今のうちに軍を2キロばかり進めたいと思いますがどうでしょうか」

 「そうだな、そうしよう」

 軍を街に進め始めようとした時に、後方から地鳴りのするような音が聴こえてきた。

 

 兎族の耳には地鳴りするほどの音が聴こえてきたのである。

 ものすごい速さで近づいてくるのだ。


 「カザック、これは敵か」

 「いえ、違います。

 これはアーガッシュ族長が率いる熊族の者たちです。

 アーガッシュ族長の声が聴こえます」

 「ああ、確かに私にも聞こえる」

 「アイリーン、聞こえているか、おまえらじゃこの距離でも聞こえているだろう。

 面白そうな事をしているじゃねえか、俺にも参加させろ」

 と、何回も繰り返しているようだ。


 「今ので3回ほど同じ事を言ったのが聴こえたよ」

 「確かに、そのようですね。

 あの熊族の族長が駆けつけてくれたのですね。

 総数は約500名ですか? それでも心強いです」

 「ああ、ここは進軍を止め合流しよう」

 …… …… ……

 「お、いたいた。

 よう、アイリーン奇遇じゃねえか、こんなところへ何しに来ているんだ」

 「ゴルゴダの街に仕掛けるのだが、協力してくれるのか。

 私たち、一族の恥のために」

 「恥って、なんだそりゃ、なにかあったのか」

 「……」

 「俺はおまえが、ゴルゴダの街に仕掛けると聞いたので、それで来たんだが、理由なんか知らねえな。

 まあ、バカな俺でも、あの街がらみじゃ、何となくだが想像はつくけどな……

 まあ、なんだ、力は貸すぜ」

 「そうか、そうだったのか、ありがとう」

 「今のところ、500名しか来ていないが、次期に1万2千の兵がくる。

 ちょうど、亜人との争いの準備していたところだ。

 軍の編成も装備も準備万端てやつよ。

 今だったら俺の軍だけでゴルゴダの街はつぶせるぜ」

 「そうだな、そのようだ」

 そんな話をしていたら、急速に近づく者の気配が察知できた。


 「む、敵か、速いな」

 「違う、彼らは」

 風のように一瞬の間にアイリーンとアーガッシュの前に1人の獣人が現われた。

 そのあとを続くように100名の狼の獣人が現われたのである。

 

 「エアーウルフ、ブルースターのガロウか」

 「どうやら間にあいましたね。

 アーガッシュ殿、いきなり出て行くなんて早すぎますよ。

 何も聞かずに出て行くとは、コクロウガ様とレオニード候も困っていましたよ」

 「そうだったかな」

 「それで、コクロウガ様からの伝言です。

 今回、獣人界全部族をあげて、奴隷になっている獣人たちを開放すると言う事です」

 「ふん、あいつらも動いたって訳か」

 「そうです。

 それで、今回の指揮するのはコクロウガ様を大将とし、副大将を虎族のオーウェン様、参謀に鼠族若頭ヨハネス様と鼬族族長リーガン様がつくそうです。

 そのような話で通っております。

 よろしいでしょうか?」

 「おいおい、あいつらも珍しく動くのかよ。

 戦闘には向いていないやつらだが、知識と知恵には頼れる事がある、別に俺はいいぜ」

 「そうですか、それは良かったです。

 それでして、鼠族若頭のヨハネス様から、伝言を受けております」

 「言霊の術を、霊玉に入るようヒミコ様がかけてくれました。

 大まかな作戦を話した事が伝えられています。

 お聞きください」

 ガロウは蒼い色の霊玉を取り出し、特殊な魔法をかける。

 赤色に変わり、言霊の魔法が発動し霊玉から声が聞こえる。


 「あ、ああ ああ、聴こえているかな?

 ま、良いか、俺は鼠族の若頭をやっているヨハネスだ。

 鼬族族長のリーガン殿と急ごしらえで考えた作戦を話す。

 急ごしらえと言ってもゴルゴダの街は俺の頭の中で把握済みだ。

 仲間が多く捕まっているんで情報が多く入っいるんだよ。

 本当は1日、せめて半日もあれば、良い作戦を考えられたのだが…… 

 急遽、こしらえた案だ。

 単純明快の力技で行く。

 単純な作戦だが話しておくぜ。

 この作戦にはコクロウガ殿とオーウェン殿も了承を得ている」

 そう言ってある作戦案を霊玉から聞かされる。


 「…… …… …… 」

 「これは本当に単純な作戦だな、人間の野盗なんかが良く使う作戦か。

 俺の頭でも考えられる作戦ではないか。

 要は城壁で囲まれた街を取り囲んで、四方の要門を夜襲で侵入し抑え、逃げ場を失くし内部から城を抑えるって単純な事だろう。

 貴族街にぬけ道があるらしいが、地下の門も抑えて置けば良いんだよな」

 「はい、そのとうりです。

 地下の門の奇襲にはコクロウガ様が直々に入るらしいですね」

 「そりゃそうだろうな。

 王族、貴族どもに逃げられたとあっちゃ元もこうもないからな。

 それで貴族街に近い東門は虎軍が8千配置させ突入する。

 南門に近い奴隷区は俺の軍1万2千と虎軍の1万、あわせて2万2千で、オーウェンの指揮で突入するのか。

 ここは最重要区だな。

 強いやつらが必要ならば俺の軍が最適だろう。

 オーウェンの指揮ならば安心して任せられる。

 解放した仲間の安全もあいつが指揮するならば問題はなかろう。

 ガイアス兵長、おまえ行ってオーウェンのサポートにまわれ、やつの指示に従うんだ」

 「わかりました、お任せを」

 「北と西はそれぞれ、狼軍と虎軍の混合軍が1万づつ配置して突入させる。

 門を確保し、戦いの状況に応じて対応する。

 ヨハネスが指示を出すのでこちらも問題はなかろう。

 どの部隊も何人かは鼠族のやつらが付いていると言う話だからな。

 あいつらは弱いが悪知恵がまわる。

 支持を仰ぐといいか。

 後方支援で鼠軍と鼬軍があわせて3万が城壁周りを取り囲み、松明たいまつを掲げ奇声をあげながら太鼓の音を奏とともに威嚇するんだよな。

 街の中の人間は恐怖のどん底に陥るぞ、パニック状態に陥るのが目に浮かぶわ」

 「おっしゃるとおりですね」

 「その他、補給部隊でそれぞれ各部族の獣人が5千ほど繰り出し、護衛で獅子族の軍が2千ほど配置か。

 獣人界の守りは残りのやつらが守る。

 亜人たちと魔獣の動向もあるからな。

 亜人や知恵のある魔物も気になるが今回は動く事はなかろう。

 ガイデアが死んでほっとしているのはやつらも同じだからな。

 まあ、妥当な案じゃないのか」

 「獣人界はレオニード候に任せると言う事です」

 「そうだな、あとは貴族街にある地下門の向け道を抑え、コクロウガ殿が5千を率いて突入するって寸法か。

 ここが要だな、ヨハネスの言いようだと、抜け道の先に転移の儀式門があると言うのだから重要なところだろう。

 これは破壊しておくのだな、われ先に逃げ出すのが人間の王族、貴族のやる上等手段だからな。

 逃げ込んだやつらの始末はコクロウガ殿に任せるとしようか。

 これはわかり易くていい作戦だな。

 俺は突入したら熊族の精鋭部隊500人で城を攻め落とせばいいんだな」

 「そのうようですね」

 「これは俺にピッタリの作戦だぜ。

 ヨハネスの野郎、洒落しゃれた事をしやがる。

 盗賊のような夜襲の作戦だが、奇襲にはちょうど良いんじゃねえのか」

 「ええ、そうですね。

 それで地図を承ってあります。

 これが、街の見取り図です。

 ここに赤色の印があるのは魔法が掛かった罠が仕掛けてあると推測されると言う話です」

 「? なんで、ヨハネスはそんな事を知っているんだ。

 まあ、良いか、推測だが当てにしておこう。

 気を付けるとするかな。

 しかしなんだ、戦闘は3日間迄か。

 それに人間全員を皆殺しにする殲滅作戦とはやつめえげつない事を言いやがる。

 奴隷を除き、街の住民推定25万人、赤子ともども殺すのだろう」

 「そのようですね。

 それに獣人の奴隷の数は約3万5千人いると言う話です。

 助かる数は2割いるかどうかと言う話です。

 奴隷契約をおこなっている王族、貴族、奴隷商人を優先的に1人残らず殺せとのこと」

 「まあ、そうだろうな、魔法で縛られているのだから、やつらが奴隷魔法で殺す事だって考えられるだろう。

 俺たちと一戦、交わるのかもしれない。

 命令されたら、勝ち目はなくとも戦うだろう。

 あんな奴隷魔法を使われたら従うしかないからな。

 それに抵抗して耐えられない者が続出するかもしれない。

 こき使われて疲弊しているのだろう。

 奴隷契約を受けた獣人たちはな」

 「そのとおりです」

 「しかし、気が引けるな、人間の一般人も殺すのだろう。

 無抵抗のやつらまで」

 「ええ、ですがこの街は奴隷を売り買いする街です。

 一般人でも何かしら奴隷の売り買いに関係はしているでしょう。

 そんなやつらは生かしとく理由は御座いません」

 「違いねえな」

 「それに、捕虜として扱っても、私たちが養えますか?

 人数的に無理でしょう。

 それに今までの事がありますから、捕虜として養う事などできませんよ。

 私たちがどれだけの犠牲を払ってきたのですか。

 その数に比べれば少ない数です。

 あの焼かれた大地は、獣人たちが住んで居た街があったのですよ。

 それがガイデアに森ごと焼き払われたのですから、それも人間たちの裏切りによってね。

 それにゴルゴダの街は本来は獣人たちが人間との交易のために作った小さな町だったのですよ。

 ガイデアの傘を引いてやつらは軍を出し攻め込み、占領したのではないですか。

 それをあのような奴隷売買の街にするなんて許せません」

 「まあ、そりゃそうだな、で、なぜ3日間なのだい」

 「補給ですね。

 急遽、軍を動かしたので、後方支援での食糧の供給が間にあいません。

 なんせ一度に8万近くの軍が動いているんですから。

 それもたった数時間でですよ。

 幸い亜人との戦争準備を整えて万全でしたから。

 それでも、補給があるとしても、最悪の事を考えていなくてはなりません。

 補給は万全ですが、慎重に行動はしたいとの事です。

 一端、兵を引かないと獣人界の守りも気になりますから。

 それにわれわれが人間たちから略奪する行為ができますか?

 戦においては何をしても良いと言えども、人間と同じことをしてはいけないのですよ、われわれは。

 ……詭弁を言って申し訳ご座いません」

 「別に良いさ、反面教師の人間たちを見習う事なんかないのだからな。

 しかしこりゃあ、面倒な事になったな、うまくいったらアイリーンに裸踊りでもやってもらわないと割にあわんな」

 「……」

 「アーガッシュ殿……」

 「冗談だよ、そう怒るなよガロウ」

 「それとですね。

 もし、王都へ応援に駆け付けたゴルゴダの兵が戻ってきたら、戦います。

 それは皆に覚悟してくださいと言う話です。

 殲滅戦をおこなうつもりです。

 ヨハネス様は、1人足りとも生かしては返すつもりはないと言う事です。

 数的に勝つのはわかりますが、当然犠牲者が多く出るでしょう。

 今からおこなう夜襲とは違いますからね」

 「そりゃそうだ。

 どの道、亜人と争って死にゆく者たちもいたんだ、気にすることもあるまい。

 それにガイデアの餌になるのではないからな、報われるだろうぜ」

 「そうですね。

 アイリーン殿、私の斥候部隊、100名はあなたの手助けをしろと、コクロウガ様から言い使っております。

 エアーウルフの精鋭部隊を自由に使ってください」

 「ありがとう、ガロウ殿、礼を言いたいと思います」

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