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第17話 招集


 『獣蒐京』には中央に大きな城があり、各獣人たちが住まう大使館を兼任した区割りの城が設けている。


 城と言っても王や城主が住んで居るのではなく、各部族の代表が集まっている大使館のようなものだ。

 年配で力のある4人の獣人が代表になって仕切っている。

 その1人が狼族の族長コクロウガである。

 

 『獣蒐京』の国は各部族が集まって、集落を大きくしたような国だ。

 中央には大きな1階建て木造の城があり、各部族がまわりを囲むように区別し外回りに膨らむように各部族の村ができている。


 中央の城には各部族の大使など駐屯していて、獣人たちの状況を親密に連絡を取りあっているのだ。


 代表する大きな部族は現在12ほどあり、その中に従えている部族を入れると獣人たちの部族数だけでも50を超える数になる。

 各々生息する12の部族長が『獣蒐京』として治めているのだ。


 12の部族は獅子族、虎族、狼族、熊族、狐族、犬族、猫族、狸族、兎族、齋族、鼠族、鼬族など別れ、その下に複数の同じ種族の獣人たちが付いているのだ。

 中央に12獣人たちの長が会議をおこなう(中央会議場が設けてある。


 「どうしました、コクロウガ殿お急ぎのようで。

 会議は夜からではなかったのですかな?」

 「おお、ちょうど良かった、レオニード候。

 おまえにも聞いてもらいたい話があったのだよ。

 できれば各部族の長もいれば良いのだがな。

 こちらへ来ている者がいれば、呼んでもらえないだろうか。

 魔神獣ガイデアの事で重要な事がわかるやもしれん。

 今、アコヤ婆さまも呼んでいるのでな」

 「? 話が良くわかりませんがお急ぎと言うならば呼んでみましょう。

 各部族の長は到着して者もおります。

 ヴェイド、おまえ各部族長に声をかけてくれ。

 至急に話したいことがあるので中央会議場に来てくれとな」

 「了解いたしました」

 ヴェイドと言われる獅子族の若い側近の1人がすぐさま出て行った。


 レオパルド・レオニード候、獅子族をまとめる若い19歳の青年だ。

 金色の鬣を生やし、整った顔立ち、背も高く、獣人の見た目ではかなりの二枚目である。

 力も持っており獅子王族の直系の王子だ。

 王子でありながら庶民にも慕われている。

 人徳もある優しい好青年だ。

 彼の言う事だったら、どの種族の者も信頼して従ってくれる人物である。

 側近の幼馴染のヴェイドに声をかけ各部族長に集まるように伝達してもらう。


 「助かるよ、レオニード候、おまえが声をかければ皆は問題なく集まってくれるのだがな。

 俺だと若い者の集まりが悪くていかん。

 年の割には人望が薄いからな」

 「何をおっしゃいます。

 獣人たちは曲者くせものそろいですからね。

 コクロウガ殿がいてくれなくてはこまりますよ」

 「そうなのかな、おまえに言われると照れるな」

 「コクロウガ様、先ほどの話、人間界と魔神獣ガイデアの話ですよね。

 人間界の事は私の方で重大な情報が入ってきました。

 調べでは人間たちは魔導王国ザンブグルムとファング帝国が戦争を起こしたそうです。

 それも魔導王国ザンブグルムの首都シャングリアまでファング帝国に攻め入られたとか、戦いは魔導王国ザンブグルムが勝利に終わったようです。

 しかしながら魔導王国ザンブグルムも苛烈な戦いによって相当な戦力を失ったようですね。

 首都シャングリアまで攻め込まれているのでは、被害状況はとてつもない事でしょう。

 それも王族が一早く逃げだしたとかうわさが流れていますね。

 人間の貴族連中がうわさを流しているみたいです。

 そんな中、復興するにも王国の信頼が揺らぎがありますので遅れるでしょうな。

 「バカなやつらだ。

 人間同士いがみあいつぶしあっている。

 自分らでやっているのは構わんが、こちら迄巻き込まれるのは御免こうむりたい。

 ガイデアの件でも裏切ったしな」

 「そうですね。

 それも、戦いの中でも使役していた2体の守護竜のうち、青竜アクア・スミスが倒されましたと言う話です。

 それから余談ですが倒された青竜をめぐり金竜ブライン・ガイゼンと人間たちが争ったらしいですね。

 なんでも死んだ青竜の遺体を、人間たちが奪い合ったとか聞いております。

 そのせいで金竜ブライン・ガイゼンが激怒し、人間たちと争いになったとか。

 金竜ブライン・ガイゼンも手傷を追って人間たちの元から離れたと聞いております。

 詳しい話はまだわかりませんがそのような情報が、部下から入っておりました」

 「あいからわずおまえの情報は早いな。

 本当に感心させられるよ。

 しかし、人間たちに力を貸していた2体の強竜が離れたのか。

 魔神獣ガイデアの消失も含め、人間界は大いに荒れそうだな。

 今がやつらをつぶす絶好のチャンスかもしれん。

 争の準備も整えていたし、ちょうど良い機会だ」

 「? 魔神獣ガイデアが消失、魔神獣ガイデアが死んだのですか。

 それはどういうことですか!」

 「おいおい、落ち着け、レオニード候」

 「私の耳にはまだ入っていませんが。

 昨日の夜中の光の件で、各部族たちが集まり始めたのはわかるのですが、新たに何か情報が入りましたのでしょうか?」

 「ああ、今しがた調べに行っていた部下が戻り、魔神獣ガイデアとともにいた配下の魔雷獣ブロストが消え去ったと報告があったのだ。

 おまえも昨日の夜、奇妙な叫び声を聞いただろう。

 あれ以来、魔神獣ガイデアの消息がたったらしい。

 もしかしたら魔神獣ガイデアの断末魔だったかも知れぬ。

 調査隊の報告で今しがた聞かされた。

 それに生贄の森の魔雷獣ブロストも消えていたと言う。

 ブロストは何者かと争ったような緑色の血の跡が生贄の森にあったらしい。

 緑色の血だ、ここら辺でそのような血を持っているのはガイデアとブロストだけだ。

 ブロストは確実に死んだと推測される。

 ガイデアはわからんが、俺は同じだと思っている次第だ」

 「そうなのですか!」

 「どうやら何者かが、魔神獣ガイデアと魔雷獣ブロストと戦ったのは確かなようだ。

 その者を戦い、魔神獣ガイデアと従っていた魔雷獣ブロストも死んだと考えて良いだろう。

 砂漠に居たサンドワームの群れも、今のところ地上には現れていないそうだぞ」

 「そ それは、どえらいことですよね!」

 「おいおい興奮するなよ。鼻息が荒いぞ」

 「失礼しました。コクロウガ様」

 「別に良いよ。事がことだしな。

 今からそれを、確かめるために重要参考人を連れてくるところだ。

 そのためにアコヤ婆さん、いやアコヤさまにも来てもらう予定なのだがな。

 恐らくだが私はあちらの世界から何かとんでもない力を持った者が来たのかもしれないと判断してる。

 魔導王国ザンブグルムはファング帝国と戦っていたのだよな。

 そうなるとやつら人間どもは、禁忌の異世界召喚でもやらかしたのかもしれない」

 「異世界召喚ですか」

 「まったく迷惑な話だよな。

 我ら祖先も異世界召喚であちらの世界から来たのだから。

 こちらよりずっと良い世界だと聞いているぞ」

 「そうですね、私もそう言い伝えで聞いております。

 しかし、あちらの世界からですか。

 これはまたとんでもない事ですね」

 「そうだな、レオニード候、伝説では遥か昔にあちらの世界から竜を召喚し、この世界で大暴れしたらしいではないか。

 それも確かこちらに召喚された獣人たちの話であちらの世界でも人間たちと数百年前戦いをおこしたと言う逸話が残っておると聞いているぞ。

 間違いなく同じ伝説の竜であろう。

 それも古代神が住むと言われる奈落の底に続く遺跡から来たと言う伝説の話だがな」

 「そうですね。

 獣人界でもお伽話で例えられることも言われますよね。

 触らぬ神に祟りなしでしたか。

 子供の頃、よく聞かされましたよ。

 神聖な場所へ悪意を持って近づくと神罰が当たるとおやじから良く言われましたよ。

 だから絶対に近づくな、悪さをするなとな。

 神さまが突然やってきて罰を与えるとかね。

 この世には関わってはいけない事があると、良く脅されましたよ」

 「ハハハッ、そうだな。

 でもそれは言い伝えではないぞ。

 実際にそんな場所があるのだからな」

 「それもそうですね」

 「そうだったな。

 忘れていたが、おまえに見せたい物がある。

 これを見ろ、金貨だ。

 しかし、ただの金貨ではないぞ、持ってみろ」

 「こ これは! 重い。

 この大きさの金貨がこの重さをしているのはおかしいですよ。

 どんな精製術をもってしても、ここまではできませんでしょう。

 それに歪ですね。特に特殊な精製した形跡も御座いませんね」

 「その通りだ。これはあちらの世界の物に間違いない。

 俺はこれをあちらの世界の者が、2人の幼い犬の獣人に渡したのだと思っている」

 「もしかして重要参考人とは2人の幼い犬の獣人ですか?」

 「そうだ、この金貨を10枚ほど持っていたらしいな。

 しかしなぜ持っていたのかを、今から聞くのだがな」

 「そうなのですか。それですと渡した者が確かにいますよね。

 獣人? それとも人間ですかね?」

 「それはわからん。

 ただ人間だとしてもあちらの世界の人間の方がましだしな。

 しかし俺は両方とも違うと思っている」

 「それでは何者ですかね?」

 「もしかしたらだが、高位の鬼人かハイエルフ、それか神かもしれぬ。

 どちらとしても相当な実力者が来ているのだと踏んでいるのだがな。

 異世界召喚されたが、なんらかの理由で人間界を出たのかもしれない。

 この世界の人間たちとはあいいれんだろう。

 文化が違いすぎる。

 こちらの人間には道徳と言うモノがないからな。

 なにか気に触ったのかもしれない。

 高位の鬼人やハイエルフだったら、あのガイデアを倒せると踏んでいるからな。

 あちらの神だとなおさら、糸もたやすく、簡単に倒せるだろう」

 「高位の鬼人にハイエルフですか!

 それとも神ですか!

 なるほど、それは一大事ですね。

 もしこちらに来ているのであれば、なんとしても探さなくてはいけません。

 ぜひ、こちらへ招きいれたい。

 それでは、今この国にいる首脳陣を全員、集めたほうが良いですね。

 それと各部族の長に緊急で別件で、お知らせした方が良いでしょう。

 昨日の夜の件で皆さまこちらに向かっていると思いますが、護衛の兵など連れ、私から迎えに出すことにしましょう」

 「おお、ありがたい。

 さすがレオニード候だな判断が早い。

 わしも見習いたいものだな」

 「なにおおっしゃいます。

 コクロウガ様、あなたでも同じ判断していますでしょう」

 「そうかな、それでは頼むぞ。

 この獣人界でいや、ミスティリア大陸全土に生きる者の命運がかかっているかもしれんからな。

 せめて、獣人界だけどもまとまらねばなるまい。

 魔神獣ガイデアの件で大きく変わるのは獣人、亜人、人間ども、それに知恵のある魔獣たちにも関係することだからな。

 今、2人を連れてくるところだから、私たちだけでも先に話を聞いてみようとしよう。

 一応、人間からの間者かもしれないからな。

 それだけ用心だけはしておこう。レオニード候よ」

 「了解いたしました。コクロウガ様」

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