第15話 奴隷魔法の解除
ここは、おとなしくしているのが良いな。
私が動いて話が大きくなったら、元の世界の二の舞いだ。
異世界から召喚してきたモンスター、1匹。
私が動いたってどうってことはないと思うんだけど……
『現実逃避しようと考えている』
私に似た魔物が北西の岩場がある森に生息していると聞いた。
その中に紛れ込んで迎えに来るのを待っていれば良いはずだ。
北西には亜人たちが住んでいる集落があるらしく、ゴブリン、オーク、鬼人が住んでいるらしい。
特に鬼人が危険でゴブリンなど従えていると言う話を聞いた。
さらに悪い話も聞いてしまった。
亜人たちは私みたいな魔物を狩って食べていると聞いたのだ。
これって私にとっては大問題だろう。
亜人たちの食糧にされているのだ、絶対に仲良くはなれない。
これは争いが必至と考えて良い。
まったくなんて世界だよ、私を食糧にするとはね。
そういえばでかい巨人がいたけどあれって亜人だよな。
サイクロプスとかトロールって言う巨人族か?
城壁の争いで見かけたんだよな。
やつらも私と同じ種族のモンスターを食糧としている。
まったくナンセンスと言っていいよ、私を食べるなんてありえん話だろう。
残念な事にエルフはこの大陸には住んでいないらしい。
他の大陸から来ているらしいけど、強い種族らしく、恐れられている存在と聞いた。
奇麗なエルフさんとお近づきになりたいけど、こちらの世界でも無理そうだ。
人間がローパーの魔核を狙って狩りに来るとか聞いた、この世界のローパーにも魔核があるのね。
もしかして元の世界から召喚されて逃げ出したやつが野生化したのではないのか、そうなると私と同じ立場なのか。
ローパーは同種だと争わないので、私を受け入れてくれるかもしれない、期待をしたいな。
しかし、この異世界って、私にとってどんだけ危険なところなんだよ。
私の存在自体に火種がついてまわりそうだ。
第一に、召喚した人間から追われている。
それもお姫さまが絡んでいる、国単位で動くのか。
第二に、亜人たちの食糧として狙われている。
私を食べるなんて、襲って来たら逆に食べてやるからな、覚悟しとけよ。
第三に、人間たちから魔核で狙われる。
おそらくはアイテムとして使われるのだろう。
欲深い冒険者が魔核を狙いにくるのだろうな。
強い冒険者とか来るとたまったもんではない。
第四に、翼人、黒翼人もいるらしい?
こちらとは完全に敵対してしまったらしいな、いや元から敵だったか、元の世界で散々悪さをしていたからな、この異世界でも同じような事をやっている可能性がある。
問題がある種族だと言う話だから。
でも、あいつらは光分散攻撃で消滅した可能性が高い、問題はなさそうだ。
やってきたとしても返り討ちにすればいいしね。
第五に、魔神獣がこの世界にはいてそれぞれの大陸を仕切っているらしい。
一柱かけたので、他のやつらがやってくる可能性もあるのか、巨大亀みたいのがいるのだろう。
それ以外にもいろいろありそうだ、現状況は四面楚歌それ以上ではないか、なんてことだよ。
襲って来るやつらはすべて返り討ちにすると決まっているが、これからどれくらい被害が出るかがわからんな、でも自然の摂理だからこれも仕方ないな。
すべて正当防衛として扱おう。
そえと話を聞いて一番気になった事はやはり奴隷の魔法の事か。
支配の刻印と言うアイテムを使い、従属する魔法を行使する。
従属魔法、奴隷魔法とも言われているらしい。
これについての対応策を考えないと……
私にすいかの姫さんが使用した魔法だろう。
あの時は危なかった、反射盾魔法が効いて良かったけど反射しなかったらどうなっていたことやら。
跳ね返って、すいかの姫さんに魔法がかかってしまった。
赤い炎が全身に覆われ、吸い込まれるように体に入ったのを見た。
あれが従属魔法の効果をあらわす魔法なのか。
従属魔法にかかると、体に赤い薔薇の花模様が浮かびあがるらしい。
従わないと模様が痛みだすと言う。
それに加え、強制力を強めるために、首輪などに補助魔法をかけ、より強く効力を発揮するみたいだ。
解除する方法は、かけた術者と従属させている本人以外は解けないと言っていた。
しかしなぜだか、私が魔法無効化領域魔法を使ったら従属魔法の効果が消えたらしい。
魔法を効果を完全に無効化すれば解除はできるみたいだ。
でも危険なことをしたのだろう。
2人の幼い犬の獣人たちはひどく苦しん、付けていた首輪が燃え千切れてしまったほどだからね。
幸いすぐに回復魔法をかけたから、助かったようなもので、一歩間違えれば死んでいた可能性がたかい。
今回は運が良く生き残れたのだろう。
従属させている主人と魔法の効果でつながっている感じがあると聞いた、近ずくといわく間があるみたいだ。
それがまったくなくなったと言っていたからね。
強制的に魔法無効化領域魔法を使って魔法効果を遮断し解除してしまったのだろう。
付けられていた烙印が消えれば従属は解けるみたいだ。
主人と魔法で繋がっているのか、強制的に解除したからいまごろは影響が出ているかもしれないな。
もしかしたら、かけた本人は、死んでいることも考えられるのか、いくらなんでもさすがにそれはないだろう。
しかし嫌な魔法だな、元の世界にはなかった魔法だ。
ろくでもない魔法を考えついたもんだよまったく……
話を聞くのはここまでにしておこう。
犬の獣人たちのおなかが鳴る音がするので気になってしまっている。
残念なことに彼らが食べられる食糧は私は持っていないのだ。
それにこの世界の闇の部分はまだありそうなので、これ以上聞いてしまうと私のメンタルが持たないのでここまでにしておこう。
2人の幼い犬の獣人を開放してあげる。
彼らいわく、ここから北東に行けば、獣人たちが集まっている国があるらしい。
なんとか帰れそうなので開放してあげよう。
「チトくんとチコくん、解放してあげよう」
「ありがとうございます。
この御恩は忘れません」
「この御恩は忘れません」
「それは別に良いんだけど、君たち、ここから獣人たちの国が近いと言っていたけど無事に帰れるのかな?
それにそんなボロをまとった様子だと獣人の国に入れるのかも心配だよね」
「たぶん大丈夫だと思います。
同じ獣人です。
人間から逃げてきたと話せば受け入れてくれると思います。
本当はお金が少しでもあれば、門番に通してもらえると思うんですけど、ありません。
でも大丈夫だと思います」
「お金か」
空間収納魔法に入れてあった金貨があるので10枚ほど取り出して渡してあげる。
この世界でも金が使えるのか反応を見てみるのだ。
「これをさしあげよう」
「これは金貨! 良いのですかこんな、大金をもらって」
大金かそれでは金はこの世界でも価値が高いのだな。
この世界でも使えるのか、金てどこでも使える重宝した金属なんだ。
価値があると言うのがわかっただけでも良いだろう。
そう考えるとお金を使った取引とかおこなっていることがわかるか。
当たり前にお金を使っているけど、異世界ではお金と言う概念があるのかわからないからな、物々交換とかで取引とかありそうだ。
「別に良いよ。私には使い道がないしね。
それを門番に渡せば通れるのだろう」
「はい、通れます」
「やったね兄ちゃん」
「そうだなチトこれで生きて母さんに会えるかもしれない」
「ただし条件があるのだけど聞いてくれるかな」
2人の犬の獣人は尻尾を立てて「びくり」とした。
「そう怯えることはないよ。
たいしたことではないからね。
私とここで会ったことは内緒にしてもらいたいのだ。
君たちは私に会ったこともない。
そしてあの巨大な亀を私が倒した事を見なかったことにしてもらえないかな。
もちろん、私が人間に召喚され逃げてきたこともね」
「わかりました。
命の恩人です。
誰にも言わないことを約束します」
「約束します」
「それは良かった。
その金貨は人間界から逃げ出した時に奪ったとかなんとか言ってごまかしてしまえば良いだろう。
ちょうど今人間たちが戦争をやっているみたいなので、隙をついて逃げ出してきたとか言えば良いんじゃないかな」
「はい、そうします」
2人の犬の幼い獣人は顔御見合わせ、頷きながら確認している。
「それじゃ私の事を誰にも話さないでね。
私は同族が居ると言う北西に行って見ようとしよう」
そう言って2人の犬の獣人の前から立ち去って行く。
2人の犬の獣人は頭を下げながら私を去るのを見送っている。
うーん、だいたいの話は聞けたのだが、問題は先ほどの2人の犬の獣人がうそを言っていないかどうかなんだよね。
聞いた話だとうそを言っているような話はまったくないし、つじつまがあう事が多い。
助けてあげたのだからうそを言う事もないだろうな。
だから私の事を誰にも言わないと思う。
日本人気質で、誰でも簡単に信じてしまうのは良くないんだよ。特に異世界では騙されやすそうだ。
話を聞く限り信用しても大丈夫だろう。
(いつも根拠がないのに信じてしまうんだよな)
透明化能力を使い同種のローパーの元に行って見る。
着いてから考えるとするかな。




