第14話 ろくでもない魔法
とりあえず、この犬の獣人たちに、知っている事を聞けるだけ聞いてみよう。
でも、幼い獣人たちだ、どこまで答えられるかわからない。
「チト君て言ったよね」
「はい」
「君たちは私をあの街からつけてきたのかな」
「ご主人さまの命令で追うようにと言われました」
「なるほど、その命令を出したご主人さまって誰かな」
「アバントスと言う人間です」
「アバントスね、そいつはなんで私を追うように言っていたのかな」
「姫さまが召喚した魔物が逃げたので追跡し、見張っていろと言われたのです」
「なるほど、そのアバントスと言うやつは何者かな」
「王子さまに使えている人です」
「いつも傍にいる人です」
「ほほう、王子さまって誰かな」
「ザングブルム国のジークフリードと言います。
「なるほどね」
この犬の獣人、教養があるのかな?
まず自分が奴隷になったと言う事がわかっている。
2年前に捕まったと言っていたからそれまではそれなりに教育を受けていたんだろうな。
奴隷と言う言葉も知らない可能性もあるからな。
私と話せるのだからそれなりに知識を持っているのだろう。
しかしなんで私と話せるのだろうか? 人間には通じなかったんだよね。
それにこちらの世界では、管理者の詩織さんたちが授けた話せる魔法のシステムがないと思うんだけど、どうしてかな?
魔法も使えるし、何か元の世界と関係しているのかもしれない。
召喚されてこちらに元の世界の生物が多く紛れている可能性もあるのか?
あ、そうか話せるのはもしかしたら俺の魔核が関係しているのかもしれない。
私の魔核は秘密がありそうで、魔核といよりもコアジェネレーターといった方が良いのか。
詩織さんに言われてからその事が気になって仕方がない。
この星のエネルギーを吸い取って今までどうり魔力が回復できている。
私にある魔核が作用しているのは確かなことだ。
巨大亀とはテレパシーのように会話ができた。
獣人の子供たちも同じよに出来ているかもしれない。
魔法とはイメージの具現化が大きく作用している。
幼い獣人は素直で良い子供たちに見える。
純粋な子たちだから、私からテレパシーみたいに送ると素直に受け取り会話ができるのかもしれないな。
女騎士と話をしたときは、呪文を唱えるとか言っていたからな。
私からの声は聞こえるのだから、あとは要約する事ができるかと言う事だよな。
純粋でないからテレパシーが届いても要約できないって感じなのか。
あのお花畑の女騎士は本当に頭の中がめでたい感じがしたから。
自信過剰と言うか、自分の都合の良い様に受け取りすぎだよ。
私の方はコアジェネレーターが作用して自然に和訳し、その上相手にテレパシーを送って会話ができているって感じか。
ふむ、話は通じる、幼い獣人たちはある程度教養がある世界で生きているって事だな。
獣人たちは進んだ文化形態を持っていると思っていいだろう。
捕まって奴隷になったと言う話だというから、人間と獣人は敵対しているのか?
そこまではいかなくても交流はあまりないのかも。
しかし奴隷とはね、嫌な世界に来てしまったな。
正直、奴隷と言う者が実際にはどんなものかわからない。
前世での世界史や映画、漫画、アニメ、ゲームなどの知識でしか持っていないのだ。
聞いた知識と実際にあってみた知識とは全く違うだろう。
悪いように扱われていわれることが大半の見解だろうな。
奴隷の見解もいろいろあるみたいだから。
前世の記憶では奴隷で部類があるらしいと聞いた。
自ら従属して奴隷になる者、侵略されて奴隷にお落ちる者、戦争で負けて奴隷になる者、その他をわければいろいろ出てくる。
自ら奴隷に従属している者は、それなりに衣食住を与えられて良い生活をしていた者もいると聞いたこともあるし、だが大半は侵略されて奴隷になる者が多いのだろう。
奴隷の場合、必要な事以外は何も教えないものだと聞いたことがある。
自分の主人以外、他の人の名前など教えていないと言うこともあるらしいからな。
知識や教養を一斉教えないことが鉄則みたいだ。
知識や教養を必要以上は、絶対あたえてはいけない。
その方が扱いやすく、反抗もされずに済むらしい。
知識がないので、自分が置かれている立場もそれが普通の日常であるとしか認識できていない。
最初から奴隷だったら、自分が奴隷と言う事もわからないと言う話だ。
奴隷と言う意味さえ知識がないので当人たちは理解できていない。
奴隷の前では奴隷と言う言葉を使わないと言う事も聞いたことがある。
逆に自分で奴隷を受け入れる制度もあると言う話も聞いたことがある。
使用人のようにきちんとした生活をさせているスタイルかな。
結婚とかもでき一般人以上に良い生活が出来ていた奴隷が居たと聞いたこともある。
言われたことをやっていれば何の不自由なく生活できるので奴隷を自ら受け入れて、楽に暮らす人たちがいたらしい。
確かにそう考えてもおかしくないかな。
かなり昔は生活環境が厳しかった時代もあるのだろう。
自ら考え行動しなくても楽に生活が送れると言う事で、自ら奴隷になっていたみたいだ。
もっとも主人が良心的な考えを持った人だったのだろうな。
奴隷の話でそういう考えもあるのかなと聞いた時には思ったのだがやはりイメージ的には、悪い意味あいが強いのだろう。
世界史にも労働力の搾取としてひどい扱いを受けていた者たちばかりいたと教えられたから。
しかし、こちらの世界の奴隷は、やばい系の奴隷だよな。
それもやばいって言葉で言いあらわせるのか?
奴隷の烙印? 魔法で強制的に従属させるのだろう。
そんなものを付けて従わせるのか。
やばすぎるって話じゃないだろう。
自分で言うのもなんだが、私みたいな危険なモンスターのあとをつけさせるなんて、やらせてはいけないことではないのか。
それも幼い獣人にやらせるなんて、死亡フラグ前提てことだよな。
完全に使い捨ての道具として扱われている。
誓約を破ったりすると体に痛みとか苦しみとか出る魔法とかかけてあるのか?
それはやばいことでしょう、とんでもない世界に来てしまったのかもしれない。
私にあのすいかのお姫さん、支配の刻印とかなんとか言っていなかったか?
それって魔法を受けていたら奴隷のように従属させられていたかもしれない。
そんなろくでもない魔法がこの世界にあるのか。
もっとも元の世界である意味私は従属のようなことを管理者の詩織さんから感じているけど、気のせいだろう。
怖いけど従属ってまでは言っていないからね。
ブラック企業で働いているものかな?
あれ? 私に従属させる魔法って聞くのかな?
敵に対し操られるとまずい。
ダンジョンで敵対する者に対してだったらなおさらだ、防衛に支障がでてしまう。
私って幻惑系の魔法に弱い気がしたんだけどどうなんだろう。
弱いと言うかモンスターなのに自我がしっかりしているから影響がでているのかもしれない。
自我がなければ誘惑とかの状態異常の影響が少ないかもしれないから。
あっても困惑する目の前の敵に関係なく突撃しているような感じがする。
こればかりはわからないか、でも私に管理者制限と言うおかしなモノがついているらしいから、能力関係で出来ないのかもしれないな。
はっ、私に管理者制限と言う支配の刻印のようなものがついているではないか。
うぅぅ、すでに私は付いていたのね。
似てるような似ていないような気がするが、ある意味同じようなものではないのか。
人間の姿に変身できる魔法が使えるはずなのに、制限が付けられていてできなくなっているって話だからな。
なんてことだ、あのダンジョンで生まれたのが運のつきかこればかりはどうしようもない。
管理者の詩織さんの顔色をうかがうとはね。
しかし、詩織さんは良識があり、そんな悪い事はしないだろうなたぶん。
私の体を改造したみたいなんだけどどうなんだろう。
能力的に上がっているのならば問題はないのだけど、変なもんが新たについていないか心配だ。
まぁ、良いか、管理者の詩織さんの迎えが来るまで考えないでいておこう。
推測で思っていたって実際には違っていてがっかりする事が多いからな。
迎えが来たら聞いて見れば良いだけだ。
詩織さんの機嫌をそこなわなさえしなければ大丈夫だろう。
一応、結論としてはそうなるんだけど。
それなりにこの幼い獣人は話すことが出来そうだな、知っている範囲のところを聞いてみるかな。
私は助けてやった犬の獣人からこの世界の情報を聞きだした。
わかった事は、この世界の名はファイアーズリード、星の名前で良いだろう。
炎? 導く? どういう意味だろう?
あまり良い意味あいで言われない名前な感じがする。
その星にあるミスティリア大陸の、東の地域ににあるザンブグルムと言う国に私は召喚されたらしい。
確かあの巨大亀もミスティリア大陸とか言っていたな。
ミスティリア大陸を支配する9魔獣の一柱だとかなんとか。
ザンブグルムと言う国は、人間たちが住む魔導王国で魔法がかなり発達した国と聞いた。
この国では特に召喚の魔法が発達しているらしい。
魔物などを召喚をおこない使役して発展を遂げた国らしいな。
そのために、従属させるため支配をおこなう魔法も必然的に発展したのだろう。
そんな召喚魔法を使っていたらそのうち大魔王とか召喚してしまったらどうするのだよ。
いや、すでに召喚してどこぞの大陸にいるかもしれない。
国のいたるところに魔法の罠みたいのが張り巡らせていたのはそのせいか、あきらかにおかしな街だった。
魔法は誰でも使えるのかと聞いたら、一部の才能のある者しか使えないらしい。
使える者は身分が高くなれるようだ。
ちょっとした魔法が使えるだけでも地方ではそれなりに地位とかもらえるらしい。
特にザンブグルムの国では魔法が発展していたせいで、魔法関係を学ぶ人が多く来ていたらしいな。
魔法学園があって若い時期から学ばせているみたいだ。
魔法学園か興味はあるけどこの姿では入学できんだろう。
獣人たちも同じで、魔法や特殊スキルが使える者はうらやまれる存在になると言っていた。
それと、ザンブグルム国はファング帝国と戦争をしていたらしい。
それもファング帝国に攻められて劣勢の立場に陥っていた。
それで伝説にあった竜召喚をおこなってしまったようだ。
巻き込まれた私は、迷惑でしかないよ。
ご主人さまが、ファング帝国と戦争が始まって真っ先に王さまが逃げ出したと愚痴を言っていたと言う。
城に1人も居なかった理由はこれなのか。
なんて王様だと突っ込みたくなったよ。
王さま自ら軍を引きいて戦っている方が可能性があるんじゃないかと思っていた私がバカみたいだ。
ことごとく推測をはずしてくれる。
守護者のドラゴンが言っていた通り、ろくでもない事だったな、後悔の念しかない。
現在いる場所はザンブグルムの国から北に位置する生贄の森と言われているところらしい?
生贄の森かよ、なんて物騒な名前がついているところなんだ。
どうやら7年前は普通に北の森と言われていたが、巨大な亀が近くに住み着いてから、生贄を差し出すためにこの森を通るために言われるようになったみたいだ。
獣人、亜人、魔物、魔獣などから生贄がこの森に集められていた。
7年前に魔神獣ガイデアと名乗る巨大な亀が、他の大陸から海を渡りこの地に現れたそうだ。
人間、獣人、亜人たち、知恵のある魔獣は敵対していたが共通の敵厄災級の魔獣、魔神獣ガイデアに挑んだらしいのだが力の差が歴然で敗戦したらしい。
しかも早々と人間はあきらめ、連合を裏切ってしまったせいで他の種族に多大な被害を与え敗北し、この地に魔神獣ガイデアは住み着いてしまったようだ。
人間たちは魔神獣ガイデアとうまく取引して、年に1度の春月に食糧を提供をすることで契約をかぎつけられた。
その上この地を守る神獣として祭りあげられた。
この地に住む獣人、亜人、知恵のある魔獣などは、取引に応じられず、人間たちが差し出した食糧が足りない分を補うためにこの森で生贄を捧げる儀式をおこなっていたようだ。
森が臭いのは生贄として死んだ者たちを運んでいたから、大地に匂いが染みついてしまったのかもしれない。
人間が食糧を用意する分はそれほど多くなく、幾人もの生贄が捧げることになったと言う。
この森へ運ばれてくると言うので、その名がいつの間にかついたらしい、と言うかそのままじゃないか。
あの巨大な亀がここら辺一帯の獣人、亜人、知恵のある魔獣などに生贄を求めていたのか。
私にも腹が減った贄をよこせといっていたからな。
年に数回、同じ時期に3つの月が夜に強く輝く春月と言いわれるその時にガイデアが目覚め生贄を食べるみたいだ。
春月の前に、ここら辺に住む、獣人や亜人、知恵のある魔獣が部族同士で争をする。
そこで死んだものを生贄に捧げると言うシュールな内容だった。
生贄が足りない場合、負けた部族の者たちが用意しなくてはならないと言う話だ。
魔物を狩って持っていくか、人間をさらうか、自分の身を犠牲にしておぎなうと言う、何とも悲惨な状況の話を聞いてしまったよ。
世の中知らない事があって良いのだとつくづく思った。
あの巨大亀、私が討伐してよかったんじゃないか。
しかし9魔獣の1柱だったか、あんなのが他の大陸でまだ8匹もいるのかよ。
うぅぅ、元の世界も結構やばいかなと思っていたけど、こちらの世界のほうがもっと恐ろしいところなんだな。
早めにこれは帰らなくてはいけない。
しかしあの巨大な亀は私が葬っておいて正解だったのだろうか?
現状は生贄が必要なくなって獣人と亜人、知恵のある魔獣たちには良いのだろう。
でもあの巨大亀が居なくなったことで争いが起こらなければ良いのだけど。
人間が裏切ったと聞いたし、これってかなり他の種族から恨みかっているよな。
居なくなったの知って人間に報復とかおこなったりするのではないかな?
ただではすまなそうに思えるのだけど、どうなんだろう。
私が巨大亀を倒したのは正当防衛でやった事だし、これは自然の流れで起こった事だよ。
私ってモンスターだから生存本能をかけて戦ったのだから自然の摂理に入るのだろう。
解釈次第では間違っていないはず。
まぁ、戦いの内容はあれだったけど、強力な魔法を使ったので戦いにもならなかったような気がする。
と言うか私の戦いはまともに戦わない事をポリシーにしているし、正面から戦うこと事態がおかしいのだよ。
強力な魔法を持っているのだ、危険だとわっかたら最初から使った方が良いだろう。
それもうしろから後頭部を殴るように不意打ちをするのだ。
今までの戦いで散々懲りたからね、正面から挑むなど愚の骨頂極まりない。
今までの経験からいきなり即死系の超必殺技を使った方が良い、一撃で仕留めないと未知な反撃がくるので危なすぎる。
かっこをつけている場合ではないのだよ。
生きるか死ぬかだ、食べられるか食べるかのモンスターの世界では卑怯という概念がないのだよ。
だから私は遠慮もなく卑怯な手が使える。
見た目が凶悪なモンスターだからまったく問題はないだろう。
むしろフェアプレイで戦った方がおかしいのだ。
あの巨大な亀が居なくなって他の種族がどうなるかわからないが、これも自然の摂理だよね。
決して私が余計なことをやらかしたから、これから起こる事ではないよな。
まぁ、争いごとが起こるなんて杞憂だしね。
他の国と戦争をやっているみたいなんだけどそれほどこの世界問題があるのか。
私は被害者だ、これから良くない事がおこるかもしれないけど私は悪くないのだ。
そうだ、すべてこの世の中が間違っていて悪いのだ。
決っして私は悪くない、そう言い聞かせよう。
世の中が間違っていると言うのは定番な言い訳だけど、犯罪者やテロリストが言い訳で考えそうな言いまわしだなまったく。
まぁ、今回は仕方ないと思えば良いかな。
 




