第12話 追跡者
巨大亀を討伐したあと、森林地帯に入った。
入った森の中は、なぜかヘドロの臭い匂いがした。
腐臭が漂うので匂いがしなくなるところまでとりあえず移動をする。
かなり森の奥まで入ってしまった、匂いも消えたので、一端たちどまり様子をみる。
索敵と望遠透視能力で確認するが特に危険をともなう生物とか感じられない。
追手の反応も今のところは感じられない、しかしつけられているいわく感があるので、ここで休みながら探してみよう。
残りMPが少ないな。
さすがに最上級魔法を使えばそれなりに減るか、ダンジョンから持ってきた石片を食べて回復をはかる。
石片を食べたら半分くらいのMPが回復したのがわかった。
少しだけ食べたのに回復量が思った以上にたかい。
今のところこれだけ回復してればいいだろう。
休みをとってどのぐらい回復するか様子を見る。
その前に行先の方向がわかるように、目印を木につけておこう。
巨大亀が移動しようとした方向に同種族のローパーがいるかもしれないので向かってみる予定だ。
さてと一休みしよう。大きな木を背にして休憩をとる。
ある程度休んでいたら、東の方から日が差してきた。
おお、日が差してきたな、それも懐かしい東から日が昇ってくるのがわかる。
なるほど地球と日の入りは同じようだな。
あとは日の落ち具合と時間か、それと季節の具合を見定めてみよう、今は暑くも寒くもないな。
先ほど休んだおかげで、MPが8割ぐらい回復している。
思った以上にMPの回復が早い。
休んでいた時も感じたが、大地からまるで吸い上げているよにMPが回復している。
これは星からエネルギーをもらっていると言う事か、元居た世界と同等か、それ以上の回復が感じられるので、安心感が出てきた。
いつもだったら起きた時に石片を食べるのが日課だが、8割までMPが回復しているのでやめておこう。
石片を食べたい気持ちもあるが、MPが回復する貴重なアイテムなので大切に使おうと思う。
さてと移動しようか。
! 索敵反応が見られる。
どうやら私を付けてきた者が索敵で引っかかった、望遠透視能力でも確認するが姿もはっきりとらえた。
子供が2人! 犬の獣人か。
中学生くらいの体格をしている。
両方とも男だな、双子ってほど似ている。
双子ではないか?
違う国の人から見れば、日本人など誰でも同じように見えるって言うから、種族でかわり映えしないと余計同じに見えてしまうのだろう。
私の場合食糧と判断すれば、どれも同じように見えてしまうんだ。
奈落のダンジョンにいるモンスターは大きさが違うだけでまったくわからないよ。
一応、同族のローパーは違いがわかるんだよね。
さすがに自分の子供の特徴がわからないとそれはそれでいけないよな。
まぁ、モンスターなんて、細かいところなど見ないしそんなもんだろう。
うーん 元の世界と似ている獣人だけど、なんか汚いボロをもとっている。
首輪をつけているな、もしかして奴隷ってやつか。
そういえば元の世界では奴隷はいなかったみたいだな。
そのことは救いな感じだったんだよね。
確か300年前、黒翼人が人間に憑依し、獣人にたいして弾圧やひどい悪行をしていた時には、似たような事があったらしいけど、その一件から奴隷制度がなくなったみたいなんだよね。
守護者のドラゴンが黒翼人の討伐で動いた時に、人類滅亡と言うくらいやったらしいからさすがに懲りたんだろう。
人類滅亡の危機まで起こさないと悪い風習などなくならないかもしれない。
死んでもバカは治らないと言うから、あながちそれは言えるな。
とりあえず追跡者のターゲットは捕らえた。
新たに覚えたスキル追跡を使ってみる。
似たようなことは出来たのだが、スキル仕様では使っていなかった。
スキル仕様で使ってみたら簡単にできた。
元から持っている能力だが、スキル仕様にすれば優秀に使える。
スキルを使うとターゲットを補足し自動追尾できるように位置がわかるんだ。
遠くに逃げたとしても方向がわかって獲物は逃がさなくなったんだよ。
私の彼女のローパーは追跡を使っていたみたいなんだ。
私の事を離れずついて来たみたいなんだよ、どうやってもまくことができなかったからね。
自分でも最初から持っている優秀なスキルを使わないとは私って抜けているな。
とりあえずターゲットは補足した。後はどう動くか見守るとしよう。
私は巨大な亀がむかおうとした方向に歩き出す。この方角に同種のローパーがいるのだろう。
透明化能力を使い移動する。
ある程度移動したら、索敵に不穏な気配をしたやつがあらわれた。
私に用があるのだと思っていたら、どうやら私をつけている犬の獣人の方向へむかって行った。
姿を消していたから、見えなかったのか。
まぁ、いいか、私もあとをつけ犬の獣人の方へ行ってみる。
索敵でとらえた相手はバカでかい恐竜?
おぉー、ステゴザウルスかあれは、どうやらやはりモンハンの世界に来てしまったのか。
まさか亀の次に恐竜だよ、爬虫類系のモンスターはダンジョンにいたがステゴザウルスみたいなのは居なかった。
ちょっと興味がわいたので観察して見る。
骨ばった板のような鱗が背中に何枚もついている恐竜だ。
突起物の槍のような棘が体から何本も出ていて、棘の部分から雷撃を放ち辺り一面を焼き焦がせている。
雷を出すとき骨板の鱗がエメラルドグリーン色に光るのだ。
うむ、恐竜じゃなくて魔獣だな、雷を出すなんて進化しすぎているよ、恐竜は雷撃をさすがにださないだろう。
でも、ちょっとかっこいいなぁと思ってしまった。
ここから2キロくらいは離れているのか、走って言っても間にあうかわからないな。
とりあえず行くだけ行ってみるか、助からなくてもそれは自然の摂理だ仕方がない。
「ドキャバコン、バリ、バリ、バリ」
雷をまとったステゴサウルスに似たの魔獣が暴れている。
体長12メートルはある大型の魔獣だ。
頭は意外とでかい、確かステゴサウルスは小さかったと思ったけど、体から棘を生やしているし、似ているだけで違う魔獣か。
理由がわからないが犬の獣人たちをもて遊ぶように攻撃している。雷の攻撃を直接食らわせれば一瞬で終わるだろう。
魔獣でもサディストっていうやつはいるのか、見ていると胸クソが悪くなってきたぞ。
獲物だったら痛みをなく苦しまずに狩るのが良い方法だ。
あっ、昨日の巨大な亀は違うよ。
あれはたまたま倒す方法が限られていたからあんな事になったんだ。
でもあれはひどかった。
あれだけ悲痛な鳴き声は聞いた事がなかった。
ブラックホールに吸い込まれていては私の意志ではどうにもならなかったんだよ。
私を追っていた犬の獣人のところまでやってきた。
遅かったか2人とも倒れている、しかしまだ息があるどうしようか、助けてあげようか。
そういえば朝食はまだだったし、魔力を使ったから腹が減ってきたんだよ。
このでかいステゴサウルスでも狩って食べよう。
隣に近づいているのだけど、私の事を気づいていない。
ここは不意打ちで頭を切り裂く、アサシン戦法でさくっと狩ってしまおう。
私は大きな触手の1本の先を剣の形に変え臨戦態勢を整える。
透明化能力を使っているのでどうやら相手にはまったく見えていないようだ。
ステゴザウルスの魔獣はゆっくり犬の獣人に近づいている。
油断大敵だね。
私は左サイドから、ステゴザウルスの首を目がけ先端を剣に変えた大きい触手で切りつける。
「スパン」
ステゴサウルスの魔獣の首をいとも簡単にはねた。
首が転げ落ち首すじ部分から、緑色の血しぶきが飛ぶ。
念のため体も切り裂いておく。
返し切りで触手を振るう。
「スパン、スパン、スパン」
いとも簡単にステゴザウルスの魔獣の胴体を切り裂いてしまった。
ステゴザウルスの魔獣は死んだって事に気づいてない。
それほどあっけなく切り裂いてしまったのだ。
切り裂いた感じがあまりしなかったな。
神剣・神威で切るのだったらまだしも、触手を刃状に変えてきるとそれなりにあたりがいつもあるんだよ。
弱いなこいつ、アサシン戦法で簡単に倒せてしまうとはね。
ずうたいだけでかいってやつか、もしかしてこの星の重力が影響しているのかな?
重力が軽いと抵抗が少なくなるから、大きく育って聞いたけどそんな感じかな、それって本当かわからないけど聞いた事があるようなないような気がする。
でも、人間と獣人は大きくないし、元の世界と同じなんだよね。
モンハンの世界ではないのかな。
それじゃこの判断は間違っているのかも知れないな。
やはり、私みたいに召喚されて連れてこられた可能性があるな。
まっ、良いか余計な詮索はあとにしておこう。
それよりも朝食にするかな。
その前に倒れている2人の犬の獣人を回復しておくか。
私は、姿を現し、子供の犬の獣人に対して回復魔法を使ってあげる。
見る見るうちに傷が回復した。
2人の子供の犬の獣人は起き上がり、私を見たとたんに、すとんと腰が砕けたように座りだしてしまった。
2人は抱きあって震えている。
まっ、良いかそれじゃ食事といこうかな。
私がステゴザウルスの魔獣を食べている間に逃げるだろう。
魔物の場合、餌が目の前にあれば夢中に食べるから、よほどの事がない限りは襲ってこない事くらい知っているだろう。
私のいるダンジョンは違うか、目の前にいる敵対するもの全部相手にするからね。最後に生き残った者が食にありつけると言う。
でも、死んでも時間がたてばリポップするので死んだって感じがしないんだよな。
同じようなモンスターが現れるからね。
私は夢中になって食べる振りするからその前に逃げてね。
私はステゴザウルスの魔獣を、ガッツクようにわざと食べて見せた。
あれれ? まだ逃げないなどうしたんだろう?
腰でも抜けてしまったのかな?
これは、まずいな。
獣人とはいえ、子供に私の食べている姿を見せるのはまずいだろう。
でも食べ始めてしまったから食い終わるまでどうすることもできないか。
なるべく大きく口を開け丸呑み状態でがぶりつき、とっとと食べてしまおう。
お肉は柔らかいけどいまいちだな。
もうちょっと濃い味がしても良いと思うんだけど、これだけ口の中に入れてあまり味がわからないとは駄目だな。
ダンジョンだったら丸呑みしたら結構味わえるんだよね。
やはり異世界だから、味も違うと言う事があるのかも知れないな。
ゲップ、食べ終えたな。
残った部分は凍らせて空間収納魔法に入れておこう。
さすがにこの大きさは食べきれん。細かく切って入れておくか。
空間収納魔法から神剣・神威を取り出し魔獣を細かく切り裂いてしまう。
さすが神剣・神威、切心地は最高だな、刺されたときは痛かったけど今は私のものだからな、手に入れられて良かったよ、形は変わってしまったけどね。
細かく切り裂いた魔獣の肉を氷結魔法で凍らせる。
真空冷凍は出来ないけど、まぁ、良いだろう。
さて、切り裂き終わったので収納するか、ちょうど昨日地上に行って草木を取ったあと倉庫に入れ直したので、十分に空きがある。
凍らせた魔獣の肉を空間収納魔法にしまってしまう。
さてとこれからどうするかな。
2人の獣人はこの世の終わりみたいな顔で私を見ているんだよ。
このまま去った方が良いかな、どのみち話しても会話は通じないだろうな。
一応、話しかけるだけやってみるかな、あの巨大な亀はテレパシーだけど一応会話できたしね。
私は2人の犬の獣人に近づいてみる。
犬の獣人の1人は震えながら私の前に手を掲げた。
? 魔法かなこれはいけないな。
魔法無効化領域魔法をすぐさま唱え魔法を無効化する領域を作り出す。
魔法はどんなものでも厄介だからな、意味が不明なものほど怖いものはない。
肉弾戦ではさすがにこの幼い獣人に負けることはないだろう。
魔法無効化領域魔法をこの辺一帯に作り出した瞬間、2人の犬の獣人は苦しみだした。
なに! どういうこと?
2人とも首輪を手にかけ痙攣しもがいている。
首輪が焼け焦げて切れ落ちてしまう。
なんなんだこれは、犬の獣人たちの痙攣は治まったけどぐったりしている。
どうやら生きてはいるようだ。
念のためもう一度、回復魔法をかけておくか。
あっ、しまった、魔法無効化領域魔法をとかなくてはいけないか、面倒だが一度解除し、回復魔法をかけ直して回復してからもう一度、魔法無効化領域魔法をかけ直す。
面倒なことをしてしまったな。
自分自身だったら神剣・神威を持っていれば使えるんだけど、他はそうはいかないからな、魔法無効化領域魔法は使い勝手が難しい。
どうやら無事に生きているみたいだから、良いとするか。
とりあえず声をかけてみる。
「おい、おまえたち大丈夫か?」
無駄だと思っても声をかけてみる。
! 私の声が届いたようで2人はびっくりしているみたいだ。
「おまえたち、話は出来るか。
先に言っておくがおまえたちに危害をくわえる気はないぞ、一応、魔獣に襲われていたの助けてやったのだからな。
感謝してもらいたいくらいだ」
2人の犬の獣人は顔御見合わせ、何かを確認している。
体の肩のところを2人は見まわしている。
これはなにかを仕掛けてくるのかな、念のために注意を払っておくか。
そう思っていたら2人の獣人は上に手を広げ、土下座するように両手を開き前に地面につけた。
これってもしかして降伏の合図か、服従の合図ってやつか?
とりあえず頭をあげさせて、話でもしてみるか、どうやら話は通じるみたいだからね。




