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第10話 天使


 フィアーズリードと呼ばれる惑星に、天使と言う生命体が存在している。

 過去に、人間達が召喚をおこない、やって来た者たちだ。


 一人の美しい天使を召喚したのだが、それ以降この世界に次々と降臨して来る事になった。


 天使達はこの世界を調査し、自分らに住む適した惑星と判断した。

 それから先ははやかった。この世界に大規模な次元ゲートを開き、戦闘部隊を送り込んで来たのだ。


 天使たちの住処とする環境の惑星は少ない。

 オゾン層が存在する領域を捜し、光のエネルギー食糧を確保できる惑星を探し求めている。


 天使が誕生した有史から、生存範囲を広げるために、住める星を探し侵略行為をおこなってきた。移住先の原住民を根絶やしにする行為を続けてきたのだ。

 フィアーズリードも標的にされてしまった。


 天使達の侵略行為は進んだが、原住民を全滅に至らしめる事はできなかった。

 原住民の一部の種族に、テラ人の遺伝子が混ざる者たちが存在したのだ。


 過去の大戦により天使たちはテラ人から、贖罪誓約という罪の烙印らくいんが施されている。

 天使史に残る、最大の悲劇、最悪の汚点がテラ人との大戦が関わってくるのだ。


 遠い過去にテラと言う人類に対し、天使たちは争いを起こした。2つの勢力は全面戦争に突入し、天使たちは敗北したのだ。

 それも圧倒的な力の差を見せつけられ、敗れたのである。

 

 テラ人は普通の人類ではなかった。余りにも進みすぎた超化学技術、兵器を用い天使たちを殲滅せんめつしていった。


 遭遇時の初頭は、天使たちの持っている特殊能力で圧倒的に優勢だったのだが、時がたつにつれ天使たちの力は無力化されていった。


 日、単位で新たな武器が配備され攻略される。最終的に天使の光体を無散化させる、光分散攻撃イレーサーと言う武器を開発し天使たちを殲滅せんめつしていったのである。


 天使たちは、テラ人の本拠地さえも特定できていない。

 それどころか、テラ人全員が今争っている宇宙から消え、消息をたってしまった。


 突然、空間が開き現われ、攻撃を受け一方的に蹂躙じゅうりんされる。


 次元のはざまに彼らは住んで居るのではないかと、ささやかれたほどだ。

 あながち、間違いではない。テラ人は電脳空間に一時避難し、天使達の対策を練っていたのだ。


 テラ人は自分たちをデータ化できる技術を持っていた。

 サイバー空間を作り、その中で天使たちの対応策を考えていたのだ。


 無数の仮想空間を創り、その中での時間を早めシミュレーションをする。

 天使たちに有効な武器を、わずか数日間で生み出して、前線に投入させる。


 そのため、技術が速く進み、圧倒的な戦力を有する事に至った。

 数日で、新たな進化した武器が投入され、圧倒的な力を使って攻めてくるのだ。


 天使達は、そのような事を知らないで戦いを繰り広げていた。


 自分たちが、光体と言うはかり知れない異能な力を持っているゆえに高慢に成り、技術の進化もほぼしていなく考えもつかなかった。


 その逆に人間たちは、自らを弱い存在と知っている。

 こと宇宙においては非力な存在で、技術の進歩なくして生きてはいけない。 

 切磋琢磨せっさたくま、研磨を繰り返し技術力を進めて来たのだ。


 …… …… ……


 侵略をおこなった宇宙はいとも簡単に奪還され、自分らが治めている宇宙にまで、被害が齎された。

 それどころか最終的に、天使の発祥地とされる母星にまで攻め込まれる事態に陥った。


 他の宇宙で戦っていた天使たちも、母星を占拠された事を知り降伏を余儀なくされたのだ。

 宇宙全域にに降伏勧告がなされ、天使たちが全面敗北に至ったのである。


 …… …… ……


 テラ人は天使を徹底的に調べた。

 最終的に人類に対し危険因子を持つ存在と認定した。

 敗戦時に人類に対し贖罪誓約を施すと言う事で、殲滅せんめつをしない事に位置付けた。


 議論はあったが、降伏勧告を受けいれたので贖罪誓約を施すと言う事に至った。

 受けいれなければ、人類はすべての天使を消滅させる判断を下していただろう。

 それほど被害が甚大で、危険因子を持つ存在として位置づけをしたのだ。

 

 贖罪誓約は厳しい条件になっている。全天使に適用された。


 贖罪誓約は天使の有無を結わさずおこなったのだ。

 戦時中に試験的にテラ人に対して、敵対行動を起こせない特殊装置をあみ出した事も大きい。


 その装置を進化させ、天使たちに贖罪契約を施したのだ。

 抵抗する者も居たが、成すすべもなく光体のコアに誓約を入れてしまう。


 誓約を入れられた天使は人類に対して、一切の敵対行動は出来ない。

 これはテラ人の良識範囲内で緩和されているが、天使たちにとっては屈辱の誓約である。


 二度とテラ人と争わないと言う戒めを付けたのだ。

 この誓約は子孫代々にも受け継がれる。

 誓約はある一定期間のみ、有効に受ける。

 テラ人と天使は、住み分けをし、一緒に行動してはいけない。

 その他にもいろいろ誓約はあるが、テラ人の良識範囲で誓約はなされている。

 

 すでに100万年以上たっているが誓約は解けていない。

 実は秘密裏で天使が知らない贖罪誓約も付けているのだ。


 期間は一定とされたが、緩和すれど永遠に解けないと言う事が施されている。

 それ以外にも力の抑制とか、新たに誓約を増やすとかもできる。

 その他にもテラ人に不利な事が有る時には、人知れず発動する誓約があるのだ。


 天使のおこないによって、制約の緩和する事も有れば、強化する仕組みも備わっている。この事は、一部の上層部しか知らない。

 人類を守るために施されている、最終処置と言う形で秘密裏に仕掛けてあるのだ。


 天使たちは時が来れば誓約は消えると思っている。

 争いから100万年もたつので、誓約が解けていると判断している者もいる。

 宇宙に散らばった同胞の天使たちは、テラ人から受けている贖罪誓約を知らない者まで存在する。


 知り得る者も、天使の長を任されるほどの人物に秘密裏に伝えられているのだ。過去にテラ人と争った事も知らされていない。

 ましてや大戦により、テラ人に敗北しているなど口に避けても言えない事なのだ。

 自分らは至高の存在だと思っているからだ。


 …… …… ……


 この惑星、フィアーズリードにも、テラから来た人類が召喚されて来ている。

 いや召喚ではない自ら来ている者もいるのだ。


 この惑星では基本的な星団法の一部は適用されない。

 惑星事態に特質な事があるのだ。


 フィアーズリードと言う惑星事態、終わりを迎える星なのだから、テラ人も関与しない方針でいるのだ。

 星団法により、終わりを迎える星に対し、テラ人の生存義務法は適用されない。

 何があっても自己責任で自ら生きる選択を強いられる事になっている。


 フィアーズリードが在る銀河系は、ブラックホールにゆっくり飲み込まれている地域で危険水域に入っており、あと5万年もすれば、惑星に影響が出始め、人が住めなくなる環境になると言われているからだ。

 5万年と言う月日は長いと思われるが、過去の研究者の発表で星団法では10万年存続できない惑星は放棄しすると位置付けられていたのだ。


 星団法が適用されないため、ある意味テラ人からすれば治外法権の無法地帯となっている。この星に行く者は自己責任となる。


 負傷したり死んでも、データのバックアップは適用されない。テラ人特有の生存義務法が認められず再生出来ないのだ。


 この惑星には無法者か、よほど変わった来訪者しか来てはいない。

 テラ人にはサイバー空間やもっと住みやすい娯楽施設を備えた星などを数多く誘致しており、エネルギー問題も解決しているので必要のない惑星なのだ。

 

 …… …… ……

 

 過去にテラ人が来訪しているので、現住民の一部にテラ人の因子が組み込まれている。

 天使たちは過去に贖罪誓約を受けているので、この星の原住民を殲滅せんめつまで至らしめなかった。


 …… …… ……


 テラ人は基本的に未開発の文明の者達に積極的に関わっていけない事になっている。

 星団法適用外地域でもそれは言える。


 科学技術の提供や現地人の侵略、略奪行為は重罪な犯罪に位置付けされている


 原住民に気づかれず、現地調査と観光目的程度では交流は許されている。

 決まりを守らずそこに住み着き、子孫を残している者も居る。むしろ多く存在するのかも知れない。


 原住民と深くは関わってはいけない事が、問題になる事もあるのだ。

 他の異世界人が原住民達に侵略をすることも稀にある。

 その過程で、原住民が虐殺をされていても関わってはいけない。

 自分たちが危険にさらされれば、正当防衛として反撃はできるが、過度の戦闘行為は禁止されている。


 原住民が非人道的に殺されていても、見過ごす事しか出来ない決まりになっている。これはどの国、世界でも同じだろう。


 テラ人に対しても無用に争いが広がってしまう可能性があるので決してしてはならない行為なのだ。

 退避して、原住民を見守る事しかきない事案もあったのだ。


 わかりきった事だが、敵対する存在が出て来てしまったら、全テラ人類に関わりのある生命体を巻き込んだそれこそ人類の命運をかけた争いにまで、発展しかねないのは絶対に回避しなければならない。


 テラ人は過去に全人類の命運をかけた争いを数度経験している。

 その経験を生かしよほどではない限り、脅威とみなさなければ関わっていけないのだ。


 しかし、そうはいっても手助ける人など多くいるのだ。

 この世界にもテラ人が来て居ため、原住民としたしく関わりを持った者が天使たちを撃退する事を秘密裏で力を貸していた。


 わずかにしか、力が貸せなかったので原住民たちの被害は大きかった。


 しかし、5千年前に転機が訪れる。

 天使たちがこの星を侵略する手前まで追いやった時に、1匹の竜が異世界から召喚されたのだ。


 召喚するように持っていくように仕組んだのは、この地に来ていた一般のテラの人たちだった。


 近くの宇宙に上位次元のテラ人が、惑星調査、游地開発名目で、来ている事が知り得たのだ。


 その宇宙は特殊な場所にある。

 この星が飲み込まれているブラックホールを背に、他に2つブラックホールが近くに存在する宙域がある。


 3つのブラックホールに囲まれている宙域に、安定している宇宙が存在するのだ。

 その宇宙を調べるために送り込まれた、化学者のテラ人なのだ。


 資源調査、游地開発名目だが、その宇宙で起こり得る不可思議な現象を調査しているらしい。


 安定している宇宙だが、3つのブラックホールに囲まれた宇宙を調査するのは危険を伴う。よほど酔狂のある者しか居ないだろう。


 宇宙航路は確保しているので、安全と言っているが、辺鄙へんぴな場所に存在するのは確かだ。

 

 その調査隊に、天使との大戦を経験している化学者がいると話を聞いたのだ。

 それも戦時中、兵器開発部門で多大な活躍した人物だそうだ。


 光分散攻撃イレーサーの基礎技術を開発したと言われている。


 うわさではかなり危険な人物だと言うが、天使関連の専門家なので手を貸してくれるか、話だけでも通して見たかったようだ。

 それに、その宇宙でも天使がいると言う。


 居るのだったら、天使対策の警備兵器など置いてあってもおかしくないと判断したのだ。


 今の時代はモンスター型の生物兵器が定番なので、番犬代わりに配置されていると予想された。

 中でも、戦時中活躍した、生物兵器、光分散攻撃イレーサーが搭載されていると言うジュブ・ニクラウス。


 当時ご家庭に1匹いるようでしたら天使相手に安心ですよと言う触れ込みで売られていた警備兵器があったのだ。

 今の時代でも重宝されているタコ型のモンスターでAI積んでいてお掃除もしてくれると言う。


 性的サービスもしてくれると言う怪しげな警備兵器だ。

 しかし、今の型はさすがに光分散攻撃イレーサーは搭載されてはいないようだ。


 広告で以前だがその宇宙で新しいテーマパークが出来ると言う見だしがあった。

 死と痛みを体験できる疑似フラワーパークの広告があるのだ。


 広告には、モンスターがうろついた動画もあった。今でも検索すれば残っている。

 しかし、何か事故があったようで頓挫してしまったようだ。

 今は開発中となっていて工事も中断されていると言う。


 天使との争いがあって頓挫した事は知らされていない。

 テラ人の1人が大暴れしたのが、知れたら大問題になるので秘匿されているのだ。


 今は調査隊で数人のテラ人が居ると言う話がわかっている。

 その事を知り得たので、コンタクトを持ち掛けたのである。


 レジスタンスに助けを求めても良かったのだが、彼らは余りにも過激で宇宙そのものを壊しかねない集団なので敬遠していたのであった。

 駄目もとで、その惑星にゲートを結び、原住民からの呼びかけと言う形でコンタクトを取った。


 運よく応じられ、テラ人と関わり合う、AIが搭載された竜型の防衛兵器とコンタクトが成功したのだ。

 そのAIを搭載した竜は気さくに応じかけてくれた。


 本来はテラ人の誰かか、警備で配置されているであろうジュブ・ニクラウスを1匹でも召喚したかった。

 光分散攻撃イレーサーが統制されていれば天使を殲滅せんめつできる。


 もしくは上位のテラ人に知恵を求める事ができる。

 ただそれはあくまで思惑のみなので、うまくいかないものだ。


 しかし、召喚をした竜はジュブ・ニクラウス以上にとてつもない能力を秘めていた。

 うわさであった上位のテラ人が創ったとされる最強の竜だっだのだ。

 光分散攻撃イレーサーは搭載されていなかったが十分すぎるほどの力を要していた。


 竜召喚と同時に、天使たちは大きな力に気付き、脅威とみなし竜を排除に向かう。

 召喚した竜もいきなり攻撃を受けたので激怒し、自己防衛として天使を撃滅していった。


 この地の情報を知り得て、余りにも天使たちのおこないが非道な事がわかり、星団法の除外項目の特例として排除に動いたのだ。


 この地にいるテラ人の血をひく者達と契約を交わし体裁をも整える。

 召喚されたのだが、天使から仕掛けてきたので問題なく、排除の条件は整った。

 それ以前に竜が拠点にしている星も天使と関わりあっている。

 自分を創った者も、天使に対してかなり悪い感情しか持っていないのはわっている。


 天使を排除するプログラムも組み込まれており、状況を確認、異常事態と判断し、能力を抑えているプロテクトも外し殲滅せんめつする事を始めたのだった。


 竜は圧倒的な力をもって、暴れまわり天使どもを殲滅せんめつしていった。


 天使を撃退する過程できた、悪魔達も蹂躙じゅうりんしていった。

 天使達の被害は拡大し、のちに竜があのテラ人と関係があるものだとわかり、上層部の命令で撤退を余儀なくされた。


 圧倒的な竜の力も恐れたのだが、後ろにいるテラ人らしきものが関わってくると、天使たちの存続事態あやぶれる事を知っていた。

 天使とテラ人よる全面戦争がまた勃発したら未来がない事がわかっていたのだ。


 竜がやってきた世界にも別宇宙から来た天使がおり、やはりテラ人の一部の者と争っている情報は届けられていた。


 遥か昔にわかれ、別の宇宙から来た天使たちなのでささいな連絡以外の交流はなかった。

 ささいな情報だが、それを元に対策を考えていたのだ。


 テラ人にも、星団法と言う自らを縛る制約がある事を知り得たのだ。

 他の惑星に対して侵略行為をしないと言う、意味のわからない制約を…… 


 天使としては不可思議な制約だと判断している。

 自らは生存範囲を広げるためであって、他の惑星を攻めても侵略だと思ってはいない。

 侵略と言う意味の言葉さえも理解しがたいのだ。


 その制約を目につけて天使達は一端退いたのだ。

 竜がいなくなりほとぼりが冷めるまで天使たちは沈黙を守っていった。


 月日は流れ原住民が忘れかけた時に、また侵略を開始したのである。


 今回は、力による侵略ではなく、原住民を裏から操る方法で侵略を開始したのだ。

 別の宇宙で進化をとげている天使たちに、原住民を操る術を聞いたのだ。


 原住民を利用し自ら争わせ、裏から支配しようとした。

 天使たちは自分らが住めるオゾン層領域を確保できればよい。

 その領域を維持できれば良いのだ。


 天使たちは神と言われる存在になって、地上を支配しようと考えたのである。

 原住民に自分たちか持っている力と知恵を授けた。


 それも天使達に都合の良い事のみ教え、自らを天神として導いたのだ。

 神となり侵略行為がうまくいきかけた頃、また同じようなテラ人が関わると思われる事件が起きてしまった次第だ。


 …… …… ……


 (天空城戦略都市ユグドラシル)


 「カルツウォーン様、大変です。

 ミスティリア大陸を中心に、膨大な光エネルギーの拡散が始まりました。

 これはわが天使たちの発する光です。

 瞬く間に広がっています。 抑えられません。

 どうなされますか? ご指示を願いします」

 「現状維持で待機だ。 治まるまで待つ」

 「? 了解いたしました」

 …… …… ……。

 「カルツウォーン様、光の拡散が定着しました。

 駐屯していた我ら天使の大多数が消失しました。

 その数約7万人以上。

 この惑星に送り込まれた我ら天使10万の軍勢の、その7割以上が消滅する事態になりました。

 ご報告申し上げます」

 空中に浮遊するユグドラシル城の管制室で、職員一同があぜんとし沈黙している。


 「司令官、どうなっているのでしょうか?」

 別の職員が話しかけてきた。


 「何がおこったのかわかりません。理解不明な出来事です。

 しかし、まさかこれは伝説で聞いた、光分散攻撃イレーサーそんなはずはないと思うのですが」

 「そうか、起きてしまったか」

 「! カルツウォーン様、何かご存じなのですか?

 ぜひ、お答えしていただきたい」

 「このような出来事が、あるなんていまだに信じられません。

 どうなっているのですか?」

 「先日、本星からの緊急の連絡がありました。

 その件については、私たちは知らされておりません。

 ご関係があるならばお聞きしたいです」

 職員それぞれ、司令官に質問をしている。かなりの不安が混じっているのだ。


 「ああ、そうだな、おまえたちにはまだ知らせてはいなかったな」

 「……」

 「これはまだ、司令官クラスの階級以上にしか、しり得てはいけない事項だ。

 このような事があったのだ、話さなければいけないだろう」

 カルツウォーンと言う上位天使は神妙な面持ちで話始める。


 「つい先日だ、われわれが支配している第13宇宙で、テラ人との戦闘があり、われわれは敗北した」

 「敗北ですか」

 「バカな、われわれは天使一族でも戦闘に特化した者たちですぞ」

 「ああ、完全敗北だ。

 テラ人と戦闘を開始してから、わずか43600時間で第13宇宙のわがが同胞の天使たちは全員消滅し滅んでしまったのだよ。

 おまえたちには、知らせられない話だった」

 「そんな事、信じられません。

 あの宇宙にはわがが同胞は、680億人の人口が居るのですよ。

 それが全員消滅したなんて」

 「だな、われも信じられん。

 それも1万人足らずのテラ人の勢力がおこなったらしい」

 「たった1万ですか」

 「他の星域で、私たちと同じように原住民を攻めていた区域があるのだ。

 その惑星の1つでテラ人とぶつかったようだ。

 テラ人のレジスタンス、エンジェル開放戦宣のやつらだと話を聞いている。

 先日、全天使に対し、レジスタンスのリーダーらしき者が声明を出し発表があった」

 「それでなんと」

 「天使どもはわれらテラ人に対しておこなった過去の過ちを、同じように他の宇宙で種族を弾圧を繰り返している。

 われわれエンジェル解放戦宣は、他の惑星を開放しに動くと、声明を出したらしい」

 「あり得ません。テラ人はわれわれと別世界で活動しているのです。

 そのテラ人が居たなんて、なぜへ隠れて居たのですか。

 われらが支配している領域にテラ人が存在していること事態、誰もしり得ませんよ。

 それに、第13世界はわれわれの管轄です。

 135万年前から統治してきた宇宙ですよ。

 それを攻撃するなんて条約違反です。

 それをわかっていないのですか?」

 「確かにそうだ。テラ人の統括機関であるメビウス機関へ抗議はしたらしいのだが。

 その前に別宇宙で、テラ人たちが我らの同胞によって被害を受けたらしい。

 それもこちらからの条約違反だ。

 その事は先に知らされていた。

 メビウス機関から遺憾に思うと声明も出されている。

 まったく関係のない、一般のテラ人が被害が受けてしまったのだ。

 こちらとしても何も言い返すことは出来ない。

 しらなかったでは済まされないのだよ。

 しかし、こちらの件は事故だとはっきりしている。

 故意的にはやったのではないのだよ。

 メビウス機関とで話し合いでつくはずだったが、テロリスト連中はそうはいかないと判断したらしいな」

 「そんな事があったなんて」

 「報復をおこなったのだろう。

 それも一宇宙の天使を滅ぼすと言う残虐な行為をな」

 「テラ人の被害はどのくらいだったのですか」

 「旅客船1隻と他護衛の船が2ほど、あわせて2千256名だそうだ」

 「バカな、そんな少数の犠牲で、一宇宙の天使を滅ぼすんなんて、どういう思考していると言うのですか」

 「われわれと文化形態が違う。

 やつらの考えは、われらより複雑で個人的要素が強いのだ。

 考えている事など理解は出来ない」

 「……」

 「テラ人のメビウス機関もテロリスト共は人類とは縁を切っている者たちなのでおさえることはできないと言っている。

 重要指名手配はテラ人から受けている者たちだ。

 敵と判断しているとの事だ。

 今回の件はメビウス機関とはまったく何の関係もない。

 むしろテロリスト共を処分してくれと言われたらしいな」

 「私は理解不明です。

 これはテラ人がやった事ではないですか」

 「先に事故を起こしたのはわれわれだ。

 事故と言っても、敵と勘違いし、遠距離から攻撃をしたのだ。

 テラ人とわかっていれば誓約により攻撃も出来ない。

 それが出来てしまった。

 上の者は誓約がとけているのかと判断したが、どうやら間違えだったらしい。

 あくまで誓約が緩和されていたようだ。」

 「誓約とはなんですか、司令官」

 「そうかおまえたち、新しい世代の者たちは知らないのだな。

 テラ人との条約を結んでいる前に誓約がある事を」

 「いったい何なんですか」

 「それは、ここで言うのは控えさせてもらおう。

 皆が集まり次第、話すことにする。

 我ら天使の最大の汚点だ」

 「汚点ですか」

 本来ならテラ人と全面戦争に至ってもおかしくはない事だった。

 それがテロリストの暴走だけで済んだ。

 幸いな事だったのかもしれない」

 「これが、幸いの事なのですか。一宇宙の天使が滅ぼされているのに」

 「メビウス機関から今回、犯行をおこなった主犯各のリーダーらしき人物の名前を記載もされている。

 カズマ・サイトと言う人物でテラ人の中でも最重要指名手配されている人物だと言う。

 テラ人の中でも発見しだい、消滅勧告がなされるほどの、最悪の重要指名手配人物だ。

 戦争終結したあともわれわれと対立し、すでに100万年以上敵対している要注意人物だ」

 「100万年! われわれと敵対している者がいるのですか。

 そんな危険人物が組織だって動いているのですか?」

 「ああ、そうだ。

 しかし、しかしだ、元老院のやつら話が違うぞ。

 すでに贖罪の誓約は長年の我らの能力を使い無効化されたと言っていたのだが、まったくとけてなどいないではないか。

 緩和もされてはいない、むしろ誓約が増しているように感じる。

 あの光分散攻撃イレーサーは脅威だ。

 その対策を施したというが、威力は変わりがない。

 むしろ増しているような気がするぞ。

 あんなわれわれを消滅させるために開発された兵器など使用されてはどうにもならん」

 「何を言っているのですか司令官、言っている意味がわかりません」

 「それは後から話す」

 「カルツウォーン様お言葉ですが、我らにも人間に対して特殊能力を使えば簡単に消滅させる能力があります。

 なのになぜ、やつらと交戦はしないのでしょうか?」

 血気盛んな部下の一人が言い放った。


 「それはおまえたちが知らない贖罪誓約だよ。

 われわれは過去にテラ人と接触し、敗北している」

 「テラ人に敗北、バカな、戦争終結はしたと聞いていましたが、敗北したなど聞いておりません」

 「テラ人に敗北、そんな事、プライドの高いわれらに言えるわけがないじゃないか」

 「……」

 「くそう、元老院は誓約はとけていると話していたがまったく解除されてはいない。

 われらの力はやつらに対し制限がかけられている。

 おまえは戦闘に参加していないのでわからんだろうが、他の地上に降りた者たちは原住民の一部に攻撃行為ができないでいる。

 やつらがわれらにほどこした贖罪しょくざいが関係しているのだ。

 純粋なテラ人に対してはもっと強固な誓約がなされている。

 すでに100万年以上たった子孫のわれわれまで誓約がなされているのだからな」

 「司令官、先ほどから言っている意味がわかりません。詳しいお答えを」

 「やつらの軍事部隊とあったならば戦いすらならないのだよ。

 それにおまえらは知らないのだ。

 テラ人の本当の怖さをな、やつらの脅威は光分散攻撃イレーサーだけではないのだからな」

 「……」

 「詳しい話は皆が集まり次第話す。

 われわれは第13宇宙から来たものだ。

 第13宇宙に関係したテロリストが、われらのところにも来た可能性もある。

 この星を開放しにやつら1人来ただけで、この世界の天使は死滅はま逃れないだろう。

 それほど危険な存在なのだ」

 「……」

 「今までわれわれが他の星を侵略をおこない、原住民をおいやっていった。

 その付けが回って来たのかもしれないな。

 われらも覚悟を決めねばならん。

 幸いにも光分散攻撃イレーサーは痛みもなく消滅できるらしいからな。

 竜と戦いがあった時よりはましだろう。

 それが救いであるだろうな」

 「……」

 「われわれは帰る場所を失ったのだ。

 この星にしかいる場所はない。

 しかし、まだ、テロリストが来たとは限らない。

 あくまで推測の話だ。

 一端、原住民の支配をやめる事にする。

 天使全員に伝えよ。

 われわれの存在を気づかされる行為をするなとな。

 5千年前と同じく潜伏するように指示を出してくれ。

 ユグドラシルも結界を張り沈黙する」

 「了解いたしました」

 職員は小さな声で返事をした。

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