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第6問 空気清浄機は必須アイテム

「さてと、次は……光魔法か」


 杖や手、いや口からでもいい。レーザー系の攻撃を行う魔法少女は少なくない。


「そうだ、ちょうどいい。前から疑問に思っていたんだが……」


 一度話を止め、帳先輩は先程描いた火炎放射器の図を消し始めた。銅先輩はというと、私達の後ろで「ば~ん☆ば~ん★」と何かを放つ真似をしていた。こんなので全教科一位なのか……。


「アニメでも何でも、大抵の光魔法はちゃんと描写されてるだろ? 人Aが人Bに射ったとしても、人Cがそれを目視できる……おかしいよな?」


 あー、言いたいことはなんとなく分かった。レーザーのような攻撃視認できている人は、その光が目に届いているわけだから、攻撃をもろに受けてるじゃねぇか、と。


「だがそんなわけがないだろう、ノーダメージっぽいしな。レーザー光を横から視認できるようにするには……」


「はいはーい! チンダル現象~☆」


「くっ、何故一番おいしいところをっ!!」


 ……それ、おいしいですか?


 普通、レーザーポインターの光を水の入ったビーカーの横から当てても、光の経路を見ることはできない。その先の壁に点として確認できるだけだ。


 だが、その水をコロイド溶液にすると、見事にそれが可能になる。

 コロイドというのは普通の原子や分子よりも大きい粒子が分散している状態のこと。そこにレーザーポインターの光が当たり、散乱することで光の経路が見えるようになるのだ。


 ちなみに牛乳やコーヒー、泥水もコロイド。埃が漂う空気なんかもそうだ。なお、それらを見るたびに「あ、これコロイドじゃん」と一々言っていると周囲からヤバイやつだと思われかねないので注意。


「まあ単純に考えれば……」


『その世界の空気が異常に埃っぽい』


 なんでや! と、心の中でツッコミをいれた。魔法少女ってそんな汚い空気の中で生活してるの?


「いや、そうじゃなくて……」


「ん? ああ、こうか!」


『光魔法を使う魔法少女はレーザーを放ちながら同時に埃を撒き散らしている』


「これじゃ、魔法少女が悪いことしちゃってるじゃ~ん」


 銅先輩から飛び出す割とマトモな指摘。確かにそれじゃ、環境を破壊しているだけでは……。


「……チンダル現象起こす意味ないですよね?」


「ああ、ないな。むしろ起こさない方がメリットあるだろ。見えないんだから。いや、それなら……」


 どうせ、再び意味不明なことを書くのであろう帳先輩の手を掴み、たった今気づいたことをペンを奪ってホワイトボードに記した。


「それなら、こうです!」


『その世界はやはり埃だらけで、実は埃が魔素』


「……えぇ」


 あれ? なんですかその反応は。完璧じゃないですかね?


「夢をぶち壊すのはアウトだろ……」


「それ先輩が言います?!」


 二刀流での防御を否定し、トラックの運動エネルギーをラーメンで表し、魔法少女を放火魔にした先輩が?!


「せめてこうしてくれよ」


『ある魔素を分解すると副産物として埃がでる』


 何故だろう。ツッコミたいのにツッコミが思い付かない。いや、まてよ魔法を使うたびにそんなことしていたら……。


「結局、世界が埃だらけになるじゃないですかっ!!」


「ああ、そうさ。つまりさっきのは合ってたってわけだ」


 妙に白熱しているこの議論。要約すると「魔法少女がいる世界は埃っぽいのか?」なのだが……。


「あれ? 分解したら埃になるって、どんな物質ですか?」


 埃というのは繊維屑とか髪の毛とかダニの死骸とかの集まりじゃないか。「分解したらそれになる」って意味わからないよね?


「コロイドから埃と考えたのが間違ってたな、これ。しかし、その世界が全部コロイド溶液に沈んでると考えるのも変だろ?」


「もしそうだったら、こっちの世界じゃ再現できないですよ。牛乳にでも潜るんですか?」


「……私でもそれはイヤだな」


「……ですよね」


 光魔法の結論『再現不可能』。これは、うん。描写の為の補正ってやつだよ、きっと……。


「これは仕方ない、次にぴゃ!?」


 突如、帳先輩が普段の彼女からは想像もできないような可愛い声を上げた。その後ろにいたのは……!!


「ねぇ、そんなに驚くことかい?」


 髪がボッサボサで、メガネの度がめちゃくちゃ強い、書類上はこの部活の顧問をしている化学教師。この時点で完全に陰サイド(こちらがわ)なのは明白である。


塩安(しおやす)先生、いるなら声かけてください」


「えぇ、さっきから何度も呼んでたんだけどなぁ」


 そしてこの先生、影が薄いことで有名なのだ。噂によれば、教室に入ってきていたことにクラスの生徒全員が気付かず、一時間が自習と化したとかなんとか……え、これは流石に嘘だよね? てか嘘であってくれ。なんかもう可哀想になってくる。


「それで、何か要件があるから来たんですよね?」


「あぁ、そうだよ。そろそろ時期が時期だからね。準備を始めるころじゃないか?」


 そう言って、先生は持ってきた紙を机の上に置いた。


「あ~そっかぁ~! もうそんな時期なのか~♪」


「完全に忘れてたな。今年は何をするべきか……」


「私、初めてです!」


 陰の者でも楽しめる(むしろ一部はガチモード)唯一のイベントと言っても過言ではない、そう、「文化祭」であるっ!

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