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1. 朝の驚き


 朝目を覚ますと、ガタガタと音を立て、戸棚のものやぶら下がるライトが揺れていた。


地震だ。


外はまだ暗いみたいだし、何より寒かった。

時計を見るとまだ午前5時59分。揺れはそんなに強くはなさそうだ。

まだ大学の講義が始まるまであと3時間もある…、まだ寝ててもいい時間のはずなのに…。

揺れが収まって冷静になった僕が、もう一度眠りにつこうとしたその時、ケータイが騒がしく母からの着信を知らせた。


「優月、地震大丈夫?あなたのところは、海辺じゃないわよね?」


言葉の意味がイマイチわからず、地震の揺れで酔っているのかぼーっとしていた僕は、母の次の一言で目が覚めた。


「茨城に津波が来るってニュースになってるわよ。」


僕は、4月から大学に通うために茨城に越してきた。

この地域は、驚くほど地震が多い場所だ。

多い時で月に3回ぐらいは来るし、一度揺れると2日連続とかで立て続けに来ることが多い。

だから、今回みたいに、震度4ぐらいの地震が来ても周りを見ても誰1人動じていないのだ。

地震の時は、やるべきことはした上で、みんな冷静なのだ。

最初は驚いてあたふたしていた僕も、3ヶ月も経たないうちに慣れてきて、いつしか、隣の道を車が走り去る時の振動と変わらないぐらい地震に動じなくなっていた。



その矢先の出来事だった。この地震は、体験する規模としては、いつもと変わらない揺れに感じた。

だからしばらく津波が来るという話が信じられなかった。

でも、ラジオをつけたら、聞こえてきたのは、いつものクラシック番組や朝の体操ではなかった。

繰り返し流れる地震の情報が、アナウンサーの力のこもった言葉が、その深刻さを伝えていた。

震源は僕が住む県の西の海底で、あと1時間ほどで海岸には津波が来るそうなのだ。


「津波が来ます。逃げてください。」


中継先から聞こえる防災無線の声と重なったアナウンサーの呼びかけ、


「間も無く津波が来ます。近所の方と声を掛け合って、高台に逃げてください。」


この声が、耳から離れない。

この緊張感、必死さが、みんなの命を救う日が、いつか来るのかもしれない。

結果的にはこの日、堤防を超えるほどの津波は来なかった。

でも、この日の体験は、5年半前に起きた大きな地震に対する僕の意識を変えた、大事な1日になったんだ。


 これから、僕が勉強したり、知り合いに聞いたりした、東日本大震災の後の、いろんな場所での現状を、飾りっ気なく書きたいと思う。

だって、僕がこの6年で出会った知り合いの話は、当時のイメージとのギャップがありすぎると思ったから。

みんなが話してくれたことは、奇跡が起きる話でも、今よく語られる感動的な努力話でも、悲劇のヒロインが出てくる暗い話でもない。


これは、話題にならない普通の人たちが見てきたこと、学んできたことの話だ。

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