種飲んじゃった
「う〜〜ん......」
背伸びをしながら、
「おはようモックン」
今日もいい天気ね。
森での襲撃以来、毎晩ベッドの横で見張りをしてくれているモックンにナデナデをする
「プルンプルン!」
モックンもおはようを言ってるみたい、うふふ。
やっと明日、シオンが迎えに来てくれるのね。今日は最後の森の散歩になるのね。思いっきり楽しむぞ!
おっと、その前にまず腹ごしらえね
けど、まだ今朝はベルクが来ていないわね、どうしたのかしら?
それに、何だか外が騒がしい様な······見に行ってみよう
モックン少し隠れていて、何だかおかしいわ
「ベルク、何処〜〜」
あれ?呼んでも返事がないわ
バタン······
玄関の扉が開いたけど、ベルクかな······
「お姉様、私ですわ」
ええーーっ!? 妹の人!?
「アンタ、ここに何しに来たのよ!?」
私を殺そうとしているのにどういうつもりなのかしら······
「率直に申しますわ、シオン王子と別れて欲しいのです。お姉様より私の方が先に好きだったのですよ」
えっ、この子もシオンを好きだったの? けど、こんな殺し屋の言う事なんか聞けないわ
「アンタの事情なんか知らないわ。とにかく私からはシオンと別れません」
ああ言っちゃった
「そこまでお姉様が言うのなら仕方がありませんわね」
うん? やけにアッサリ引き下がったわね
「お姉様、一緒に森へ散歩に行きませんか?」
な、何よ急に······
「最初で最後だから、私に車イスを押させて下さいね」
なんか怪しくない? まあ、いざとなったらモックンがいるから大丈夫かな
それから、外へ出てみたら······
うわっ、兵士がいっぱいいる--!
これって50人くらい居るんじゃないかしら?
外が騒がしいはずだわ。こんなに大勢で宿屋を囲んでいるんだもん
「さあ、森へ行きましょ」
なんかガタガタ跳ねるわね、嫌そうに押しているオーラを後ろから感じているんですけど······
暫く嫌な空気で森を進む私達
いきなり目の前が開けた
あれ? 崖になってる、どうしてこんな所に?
もしかしたら······
「さあ付きましたわよ」
車イスを突き放した?
「お姉様後ろをご覧なさい」
何よ······って、仮面の兵士がいっぱい!? 宿屋より多いじゃん、100人くらい!?
「助けてくれ!」
えっ? あれはベルク? 縄でグルグル巻きにされている!
「ベルクをどうするつもりなの、ロープをほどいてあげて!」
「お姉様が悪いのよ、王子を諦めないから!」
やっぱり、この子は極悪人だわね
「便利な雲がいる事も知っているわ」
なんでこの子が知ってるの?
「雲を出せばベルクの命はないわよ」
コイツ、殺し屋の本性を出したわね
逆らったマズイわ、ここは大人しく······
「わかったわ言う通りにするから。私は王子を諦めるからベルクを放して」
腹が立つけど今は我慢よ
「言葉だけでは信用できませんわ、この種をお食べ」
兵士が指輪箱みたいなのを持ってきたけど、何かしら?
蓋を開けて差し出して、イライザがアサガオの種みたいな丸い粒を取り出したわ。これが種なのね。
「この種は何の種?」
「真実の種よ、嘘を言うと腹から木が生えるの」
そんな凄いのを食べさせるなんて、どうかしてるんじゃない!?
はあ〜〜、けどベルクの命が掛かっているんだわ…⋯
「その種を食べればいいのね、パクリ、ゴックン!」
イライザの手からひったくる様に種を取って食べてやったわ
「さあベルクを放して」
怒り心頭で大声で怒鳴る
すると、ベルクの横に立っていた兵士が縄を切った
「ありがとう、キアラ助かったよ」
そう言いながら私の元にやって来るベルク
とにかく無事で良かったわ。ベルクも嬉しくて笑っている······のかしら? ニヤついてる様な······
剣を振りかざした!? いったい何を!?
「ベルク、待て!」
「「シオン!」」
後ろの兵士が叫んだけど、この声ってシオンよね!? ベルクもビックリして振り返っているし。
「お、お前はシオン!?」
「そうだ、俺だ」
あっ、仮面を取った、やっぱりシオンだ!
どうしてここに居るのかしら?
「お前が何故ここに?」
「ふん、お前達の企みなど、とうの昔にわかっていたのさ」
ベルクも敵だったの!?
「流石だなシオン。しかし、この場にノコノコ出てくるなんてお前はやっぱり馬鹿だよ、アッハッハ!」
「それはどうかな······」
シオンってば、大勢の兵士に剣を向けられても余裕なんですけど?
「そのすまし顔がいつまで続くかな、者共かかれーー!」
ぎゃあ! 兵士達に殺されちゃう!
「みんな、来い!」
えっ? シオンったら誰に言ってるの?
と思ったら、森の中からまた兵士がいっぱい来たーー!
すぐにイライザの兵士達と戦い始めたけど······
わかった、シオンの部下なのね!
「ガキーン!」
シオンもベルクと戦闘開始!
激しくぶつかる剣の音が迫力あり過ぎですよ!
「なぜキアラを狙う?」
「あの便利な雲が欲しいんだ! 雲がいれば宿屋も助かるんだ!」
「下らん考えだ······」
シオンが呆れている、私も呆れ果てたわ
ふとシオンの兵士達を見てみたけど、結構強いみたいね。もう何人もやっつけているわ
「お姉様はここから落ちるのよ!」
ハア? 今何て?
イライザが急に、私が乗った車イスを押して走り出した
どんどん崖が迫って来る
まさか、あそこから私を突き落とすんじゃ!?
「さよなら、お姉様、死んだらあの世で歩けるかもね」
「またすぐに会えるわよ」
そうして私は崖から落ちて行った······