王子が来た!
いつもの朝と思ったら外が騒がしくザワめいているわ
「コン、コン、コン」
あっルークが食事を持って来たのかしら
「外が騒がしくなってるみたいだけどどうしたの?」
「今日は隣国の王子が来るので準備に急いでおります」
「へぇ、そうなんだ」
うふふ、来たわ! けど、待ってたらいいだけなのかしら
——————王子シオンが2人の共を従えて謁見の間に来ている。最上段には不安顔の王妃と、それと対照的な頬に朱が差した少女が座っている。
まだ若い王子を迎えるにしては、城の皆には緊張の顔が濃い様に見られる。恐らく、立場は対等では無いのであろう。
最初に口を開いたのは王妃だ。
「これはこれはシオン様、ようこそおいで頂きました。突然どうしたのですか? 」
「キアラは何処だ?」
挨拶の言葉もせず、ぶっきらぼうに要件だけを言う王子。
イラついている様子さえ見て取れる。
「キアラは今流行り病にふせっておりますので、近づく事はできません」
「ふんっ、そう言うと思った」
王妃は隔離している理由を話すが、王子は全く意に介さない。
「隠してもムダだ、キアラは何処にいる」
「そ、それは······ 」
王子の余りの迫力に観念した王妃が、しぶしぶ執事のルークを呼んだ。
「ちょっと待って下さい!」
玉座に座っていた少女が、興奮した面持ちでシオンの眼前に立ちはだかる。
「どうしてそんなにキアラに会いたいのですか?」
「俺は婚約者だ。気にするのも当然だ。そこをどいてくれ、イライザ」
「嫌です! わ、私、貴方の事が······以前から好きだったんです!」
「······悪いな、イライザ」
泣き崩れるイライザの横を通り、キアラの元に王子は急ぐ······
「バーン!」
びっくりした! いきなり扉が、
「なんてひどい部屋なんだ······キアラ、迎えに来たぞ」
シオン、本当に来てくれたんだ!
「キアラ、すぐに出よう」
優しく抱き上げてくれるシオン。私を車椅子に乗せて部屋から出してくれた
「あっ!お母様」
ヤ、ヤバくない? この状況
「キアラは俺がもらい受ける」
カッコ良すぎ!シオンったらキッパリ言い切っちゃった。堂々としてるし、誰も文句は言えないみたいね。グレース王妃も悔しそうに睨んでるだけだわ。
「シオン、これからどうするの?」
「まだ俺の城では準備が整っていない。キアラ、少し遠出をして俺の信頼している宿屋に行こう」
「うん、シオンに任せるわね」
それから馬車に乗せてくれて······さあ、出発!
————結構時間がかかったわ。本当に遠くへ来たみたい
「ドウドウ」
馬車が止まってドアを開けたら、綺麗な宿屋が視界に入った。
3階建てのレンガ作り
大きな窓があるわ。これならモックンを呼んで散歩にも行けそうね
「ベルクに事情は説明しているから、安心して少しの間待っててくれ」
部屋へ通されビックリ!
まるでバリアフリーみたい
「今日は旅の疲れが出てるのでは? 夜も更けて来ましたのでゆっくりお休み下さい」
——————部屋で眠る前に、
そう言えばモックンは出てきてくれるのかな? 心配だな、呼んで見よ
「モックン出てきて!」
ポワーン!
「やっぱり出てきてくれたのね、嬉しいわ!」
うふふ、私と一緒、喜んでいるのね
「また散歩に連れて行ってくれる?」
「プルプル」
いつも以上に縦に振っているわ。
「早速だけどここの町並みを見たいの。こんな夜遅く怖いかな? モックンがいるから大丈夫よね」
そっとモックンが乗せてくれたわ。あっという間に夜空の中へ。
綺麗な光が見えている。家の灯りかな?
またシオンとこの景色を見れたらいいな。
名残り惜しいけど、そろそろ帰らなくっちゃ。
お休みモックン、また明日、って何か影が動いた!
あれっ!? モックンてば私をグルグル包み込んじゃった。何で? あっ、解いてくれた······ けど、黒マントの男が2人倒れてるんだけど!?
私を守りながら雷でやっつけてくれたのね
モックンの体がピカピカ光ってるわ
この人達だれ? なんか城で見た事がある顔だわ
きっとあの2人が差し向けたのね。だって、いかにも私を殺しますって顔してたもん
だけど、この人達どうしよう? こんなとこで倒れられていたら、気になって眠れないわ。
そ—言えば、ここに来る途中駐在所みたいな所があったわね。
「モックン、悪いけどこの2人、駐在所の前に置いてきてくれる? 」
「プルンプルン!」
よし、これで一件落着かな。とりあえずベッドで横になって······
ウトウトしてきた。寝ぼけまなこの瞳に映る。いつの間にかモックンがベッドの横に居てくれているの
お休みモックン
心配なんて何も無いわ、うふふ