表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
障がい転生、幸せになろう   作者: オータム・ひのもと
14/17

誰の仕業?


 今日は仮面舞踏会があるの。

 メイドのサラが着替えを手伝ってくれたわ。

 綺麗なドレスを着てティアラも付けて、ルンルン気分なのよ。


「いつにもまして綺麗でございますよ」


 ルークが嬉しそうに褒めてくれたわ、うふふ。

 けど今日は公爵令嬢ってのも来るんだって。

 優しい人だったらいいな。


「モックン、テトラ今日はお留守番していてね」

「わかりましたでプ」

「プルン、プルン!」


 ルークに車イスを押して貰って、さっそく仮面舞踏会場に。

 うわ、いっぱいの人が来てる。さすがにみんな着飾ってお洒落にしているわ。

 変わった仮面を付けてるから顔は分からないけど、お偉さんなのかしら。アクセサリーが豪華すぎるわ。


 それにしてもシオンったら何処にいるのかしら?

 みんな仮面を被っているから見分けがつかないんだけど。


 ゛ツカツカツカ゛


 おっ、あの颯爽とこっちに向かって来るのはきっとシオンね。


「ほう、なかなかイケてるじゃないか」


 やっぱりシオンだ!

 だけどさ、もうちょっと褒めてもいいんじゃないの?


「私と踊って頂きませんこと?」

 

 急に誰か来たわ。

 真珠が散りばめられた純白のドレスに胸元の大きなルビー。全身を光らせて、かなり身分が高そうな女性だわ。


「悪いが、連れがいるんでな。他をあたってくれ」


 いいのかしら、社交辞令も大事なんじゃ。


「私は食事をしたいから、先に踊っておいでよ」

「何を言っているんだ。俺は踊りなんて全く興味がないぞ?」

「いいってば、王子なんだから付き合いも大事でしょ」


 シオンの最初の一言だけで私は満足なのよね。


「お連れさんもこう言っているのですし、(わたくし)と踊りましょうよ」


 おっと、シオンの腕を取ったぞ。

 強引な女だな~〜。


「おいおい、待ってくれ……」


 シオンも満更で無かったりして。

 あっ、演奏が始まった。

 周りの人が騒いでいるけど、どうしたんだろう。


「さすがエリアス様とシオン様、絵になるわあ」


 へえー、さっきの人が公爵令嬢だったのね。

 どうりで高そうな宝石を着ている訳だわ。

 それにしても、よくシオンが分かったわね。


「それに比べてキアラ姫は車椅子か。王子も物好きだな」


 私の悪口も聞こえてきたよ。

 気にしちゃダメよね……


 だけどさ、二人の姿も見えないってのは悲しいわね。

 人垣のせいで、私の座っている視線じゃ全く見えないわ。


「ルーク飲み物を取って来るわ」

「私が取りに行きますので、キアラ様はここに……」

「大丈夫だから、ルークはここで待ってて」


 一人で行きたいのよね。だって、ちょっと覗きたいだけだし、はしたなく思われたくないしね。


 さ~て、どこから覗けるかな。どこかに隙間はないかしら。

 うんしょ、うんしょっと。

 こういう時、車イスじゃ分厚い絨毯は進みにくいわね。


 よし、ここのテーブルの前は人が少ないわ。ここからならテーブル越しに見えるかも。


 ゛ギュリン゛


 あっ、ドレスの裾が車イスのタイヤに引っかかった!

 このままじゃ倒れる、テーブルで支えなきゃ……

 

 うわあ! 手をついたらテーブルクロスを引っ張っちゃった!


「キャア!」


 ゛ガッシャン!゛


 イタタ……結局転んじゃったじゃないの。

 最悪だわ、頭からお酒やスープをかぶっちゃった……


 おまけに魚のムニエルまで背中に乗ってるし。

 湯気も出ていて、みっともないったら、ありゃしない。

 

「キアラ様大丈夫ですか!」 

 

 青ざめた顔のルークが飛んできた。


「お怪我はありませんか!?」

「大丈夫よ、ちょっと腕と足が痛むくらいだわ」 

「そうですか……ですが、お体がびしょ濡れでございます、急いで部屋に戻って着替えさせましょう!」


 そうね、こんな姿じゃもうここには居られないわ。

 みんなもほくそ笑んで、ただ眺めているだけだし、晒し者になるのは御免だわ。


 ルークが自分も汚れてしまうのに、これっぽちも気にしないで抱きかかえてくれた。

 そっと車イスに乗せてくれた後は、ダッシュで私の部屋に。

 

 サラが入浴と着替えを手伝ってくれたの。

 ボーグ先生も来て体を見てくれたわ。打ち身が少し有るけど心配ないんだって。


 けどね、心はボロボロなの。

 こんな時は一人になって、泣きたいわ。


 ベッドの横にはプカプカ浮いているモックン。テトラは枕元で、じっと私を見つめている。


 何も言わない二人だけど、優しく私を慰めてくれているのよ。

 そんな二人に見守られて、少しの間泣いたわ。声を押し殺して……


 

 ゛コンコン゛


 誰か来たよ、今は取り込み中なのにさ。


「キアラ様、お手紙を預かって参りました」


 あれっ、サラじゃないわ。誰だろう。


「ドアの下に入れておいて!」

「かしこまりました」


 泣き顔なんて見られたくないのよね。

 テトラも、ベッドを降りて素早く手紙を持って来てくれたわ。


「僕が読むでプか?」

「うん、お願い。今は手紙なんて読んでる気分じゃ……」

「シオン王子からでプ」


 何ですって、俄然、読む気になったよ!


「テトラ、何て書いてあるの?」

「そう急がさないで欲しいでプ」


 だって、シオンを置いて来ちゃったんだもん。怒っていないかな?


「じゃあ、始めるでプね。キアラよ、さっきは気が付いてやれなくて済まなかった。お詫びと言っちゃなんだが、新しいドレスをプレゼントしたいんだ。一人で本館の客間に来て欲しい」


 怒っているどころか、私を心配してくれていたのね。

 さすがシオン!


「場所は、本館に入ってすぐを左に曲がって、そのまま廊下を進んで、突き当たりの右の扉を開けて、通路をまた進んで奥まで行って、奥の左の部屋に俺はいる」


 や、ややこしいわね。


「怪しいでプね、この手紙は本当にシオン王子からの物でプかね?」

「そうよね……」


 けど、もし本当にシオンだったら待たせてしまうわね。


「一応行ってみるわ。一人で来いって事だからモックンとテトラは待っていてね」

「何かあったらすぐにモックンを呼ぶでプよ、怪しすぎるでプからね」

「わかった、そうするわ。じゃあ行って来るね」

 

 えっちら、ほっちら。

 この絨毯、相変わらず進みにくいよ。

 豪華すぎるのも場合によりけりね。


 さーーて、この扉を開いて奥の左の扉だったっけ。

 

 ゛ギギィィ……゛


 この扉、建てつけが悪いな。

 さっそく入ってみよう……って、随分と薄暗いじゃない。


 こんな所にシオンは本当にいるのかしら?

 何にしろ折角ここまで来たんだから、行くきゃないか。


 ゛カラカラカラ゛


 車イスの車輪の音が通路に響いている。

 もうすぐ扉の前ね。

 シオン、来たわよ!


 ゛パーーン!゛


 わっ、びっくりした!


 な、何の音!? ってタイヤのパンクした音か……

 まったく、運が悪いこと。まあ嘆いても仕方ないわね、壁伝いに歩くか。


「ベタ、ベタ……」


 ん? なんか手がベトベトする……

 えっ、なにこの真っ黒な手!?

 

「きゃあ!」


 滑っちゃった!

 今度は顔からこけちゃったよ、これはホントに痛いわ!


 おデコと鼻をしこたま打って……アレっ!?

 顔もヌルヌルする……


 と、とにかく這ってでも部屋に入らなきゃ。


 ゛カチャ゛


 この扉はスンナリ開いたわよ。

 シオンは…………いないじゃない!


 ヤッパリ嘘だったのね、いったい誰がこんなイタズラを……


 あっ、奥に鏡がある?

 どうしてこんな所にあるんだろう?


 どれどれ……

 なんか真っ黒な人が映ってる?


 まさか、これって私?

 顔も服も真っ黒じゃない!


 嫌、こんなの嫌よーー!

 

「モックーーン、助けてぇーー!」


「ボワーーン!!」

「来てくれたのね、ムギュウー!」


 思いっ切り抱きついたの。


「ヒック、ヒック、ここから連れ出して、お願い!」

「プルン、プルン!」


 泣きながらモックンに頼んだわ。

 

 ゛バコン!゛

 

 一瞬で車イスを回収したモックン。壁を突き破って一気に部屋まで戻ってくてた。


「どうしたんでプか!?」

 

 テトラが慌てて擦り寄ってきたわ。


「テトラ、ヒック、あなたの言う事が正しかったわ、ヒック……」

「どういう事でプか!?」


 泣きながら騙された事を説明したの。


「ゴシ、グシュ」 


 その間にも、モックンが顔や手を綺麗にしてくれている。

 そしたら、テトラが机の上に駆け上がって、凄い速さで足踏みをしだしたわ。


「許せないでプ! キアラ姫、一切合切何も心配することはないでプよ。この僕が悪党を見つけ出して、きっと成敗してやるでプ!」

 

「ブルルルル!」

 

 テトラが拳を振り上げて、モックンが激震した。

 テトラ、モックン、無茶はしないでね。


 だけど、そうね……

 私も許せないわ、許してなるもんですか!

 やられぱなしじゃ終わらせないわ。


 よーーし、反撃開始だーーっ!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ