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障がい転生、幸せになろう   作者: オータム・ひのもと
13/17

シオンと空のお散歩

 


「いいわね、殺しちゃ駄目よ。怪我させる位ならいいけど」

「わかりました、泥でも出しておきます」

「そうね、それでいいわ。じゃあ時計台の12時の鐘が鳴り終わってから頼むわよ」

「お任せを、アンネ様」



         ♢♢♢♢♢♢♢♢


「ふぅ、ふぅ、もうちょっと……」


 このスロープのリハビリは手強いわね。


「その調子です、キアラ様」


 上手く足が上がってくれているわ、なかなかイイじゃん。


「ゴール! ハア疲れた!」

「良く頑張りましたなキアラ様」


 ドクターに褒められちゃったよ。確かに真剣になった時間だったわ。

 だって結構動いてくれる様になってるんだもん。

 この分じゃその内に、自力で歩ける事も出来るんじゃないかしら?


 それに王妃だってリハビリ運動を応援してくれたし、期待に応えなくっちゃね。


「ではマッサージしましょうね」


 このリハビリの人って名前はピカルだっけ。マッサージが上手だし、なんだか眠気が……


「ピカル君、明日は段差も使ってみたまえ」

「わかりましたボーグ先生」


 生真面目そうなドクターね、黒縁の眼鏡が似合いそう。

 明日のリハビリ運動の事もしっかり考えてくれてるし、信頼出来そうだわ。


 それにしても眠いな、今朝は寝坊しちゃったくらいだしさ。

 けど、今夜も空のお散歩には行きたいな。ついでにシオンも誘ってみたいし。


「はい、これでマッサージは終わりですよ」


 涎を垂らす前に終わってくれて良かったわ。


「明日もこの調子で続けますぞキアラ様。私はスパルタですからな」

「よ、よろしく……」


 やっぱり仕事熱心なドクターね。まあその方が私の為になっていいかもね。


「楽しみにしてるわ、先生。じゃあまた明日!」



 ベッドの横に車イスを止めて、両手で柵を持って安定させながら立ち上がって。

 左手で柵を持ちつつ軸足を左足に移して、ゆっくりお尻をベッドに向けて、右手も柵を持って、そのまま座って完了!


 ああ疲れたーー!


「キアラ姫!」


 あっ、テトラが車椅子に登って来た。何かな?


「キアラ姫、失礼と思いましたでプが、カーテンの隙間からリハビリ室を見ていたんでプ」


 そーなんだ。


「どうだった?」

「キアラ姫の身体が壊れると思いましたでプよ!」


 壊れるって、大袈裟ねぇ。

 

「次からは程々にして欲しいでプ 。モックンも心配しているでプよ」

「プルプルプルプルン!」


 わあ、いつもより激しい揺れ!

 ホントに心配していたのね〜〜、うんうん。


「分かりましたっ、無理はしないって約束するねっ!」


 ちゃんとドクターの指示にしたがって、体に負担をかけない様に気を付けなくっちゃね。

 

 だけど、コレとアレは別問題なのよ。


 

「テトラ、今夜も少しだけモックンと空の散歩をしない?」

 

 ウフフ、これは外せないのよね。


「今日もでプか? 身体は大丈夫でプか?」

「プルンプルン!」


 あれ位のリハビリ運動でへこたれる私じゃないのよ。


「全然大丈夫よ、心配しないで」

「そこまで言うならわかりましたでプ 」

「じゃあ決まりね。ウフフ、楽しみだわ!」


 


「そろそろ行くか、時間に遅れたらアンネ様に大目玉を食らっちまう」

「あの池の周りにある生垣なら見つからないわよ」

「そうしよう。しかしサラよ、こんな事であの姫さんがこの城を出て行くのかねぇ?」

「さあね……。けどやるしかないでしょ、命令なんだし」

「そうだな……じゃあ行ってくるとしよう」





「さあ、みんな寝静まった頃だわ、レッツゴー!」


 窓から飛び出した私達、魔女にでもなった気分よ。

 外に出たら今日はボートの形になってくれたの。


 ソファーベッドも付いていて、これならみんな仲良く並べるわ。


 いち、にの、さん、でシオンの部屋の前。

 モスグリーンのカーテンは淡く光っているわ。

 まだ起きてくれているのね。


 怒らないかしら……

 だけど、いつでも来て良いって言ったわよね?


「テトラ、シオンを呼んでくれない?」

「キアラ姫が呼んだ方がいいでプよ?」


 私は……照れくさいんだよね、テヘペロ!


「プルンプルン!」


 この震えはなんの意味かしら。


「ほら、私はさ、リハビリで疲れて呼ぶ元気が無いのよ!」

「ズルイでプ! さっきは全然疲れて無いって言ってたでプ!」

「そ、それはアレよ、年頃の娘は疲れやすいのよ!」

「僕だって疲労困憊、ヘロヘロでプ!」

「ええーーっ!? テトラは夜行性でしょっ!」

 

「お前達、こんな所で何をしているんだ?」 


 あわわ、いつの間にかシオンが窓から顔を出してる!?

 

「エヘヘ、空の散歩に誘おうと思ってさ。一緒に行く?」


 遂に言っちゃたよ。

 だ、大丈夫かな?


「着替えるから待ってろ」


 ヤッターー! 大成功!

 すっごいアッサリじゃん、悩む必要なんて無かったのね。


 それにしてもシオンったら、バスローブ姿で上半身がはだけていたわ。お風呂でも入っていたのかしら?

 鎖骨が浮き出ていて綺麗ね〜〜


「待たせたな」


 …………相変わらず早いわね。


「俺は重いが大丈夫か?」

「プルンプルン!」

「ほら、モックンも大丈夫だってさ。出発ーー!」

「オイオイ、急がすな……うっ!」


 急速発進、ゴーー!


 

 ------月明かりの映った湖も綺麗ね。

 夜空を見上げたら、星の明かりが城のシャンデリアの様だわね。

 湖を超えたら標高の高い山に到着かしら。

 だけど今日はここまでね。

 綺麗な風景も見れたし、シオンとも散歩出来たし、今夜はサイコーー!


「あの山を超えた海にロクア島がある……」


 シオンがポツリと呟いたの。

 真剣な目をしているわ。

 何処かに行ってしまいそうで怖いわ……


「ロクア島でプか……」


 何よ、テトラまで遠い目しちゃってさ。


「明日もリハビリでプ。寝坊したら大変なのでそろそろ帰るでプ」


 私に隠したい事でもあるのかしら。

 聞いても今は言ってくれない気がするわ。


 だけど、きっといつかは話してくれるわよね。

 信じているわ、シオン………



「じゃあお休み、シオン」

「ああ、お休みキアラ」


 モヤモヤが残るけど、まあ楽しかったわね。

 また今度も誘おーと。


 ゛ゴーン、ゴーン゛


 あら鐘の音が鳴っているわ、もう12時だわ。


「モックン、早く部屋に帰って寝ましょ」


 寝坊したら大変だもん。

 あれっ、生垣に怪しい男がいるわね。

 私の部屋の方向を見てるけど、何かする気かしら?


 あっ、泥人間がいっぱい現れた!

 きっとあの男が召喚して、私を襲わせようとしているのね! 

 

 許すまじ!


「モックン、やっつけて!」

「プルンプルン!」


 ゛ビシッ゛


 うん、男の方は一瞬でした。

 落雷一発KOね。


 ゛ビシビシビシッ!゛


 引き継ぎ泥人形も瞬殺ね。

 モックンも仕事が速いわねぇ。


 さ~〜て、寝よ寝よ。

 お休み、シオン!


 

 


 

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