グラント王国と小さな騎士
グラント王国、シオンの故郷
活気があって綺麗な町並みなのよ
跳ね橋付きの城も負けていないわね
「シオン様、キアラ様ご無事で何よりです」
堀の外でスパイのルークが出迎えてくれた
「ここから先は城内ですが、雲さんはどうします?」
やっぱりビックリするかしら?
「モックン、少しの間お空で休んでてね」
「プルンプルン」
また後で呼ぶからね
跳ね橋が降りて、いざ城の中へ!
馬から降りた私を、シオンとルークが車椅子に乗せて押してくれている
段差では私ごと持ち上げているけど、重くないかな?
お城の中には赤絨毯の長い通路
大きな窓の外には、庭が見え赤薔薇白薔薇がイ--ッパイ!
部屋がたくさん並んでいるけど何処に行くのかな?
「ここが謁見の間です」
「今戻った、父上、母上」
おお、ぶっきらぼうにドンドン進んで行くわ
「キアラ、父のカルローゼ国王に母のアメリーン王妃その隣が兄のセヒィロ、姉のアンネ、妹のカリンだ」
な、何て? 全然覚えれなかったんだけど?
それはともかく、挨拶だけはちゃんとしとかなくっちゃ
「キアラクリストです 」
緊張するわね
「よく来てくれた」
王様は優しそう
「この子に合わせたら倒れてしまうわよ」
穏やかそうな王妃様はシオンを目で怒っている
だけど本人はソッポ向いちゃった
この人も優しそうだし合格ね
「まあ次期国王様の婚約者さんだ、この城では好きに振舞っていいよ。じゃ、僕はこれで」
もう帰っちゃった……
あの人がお兄さんなのかな、ひょろひょろしててシオンに似てないわね……
という事で評価は保留です
「こんな車椅子の女が将来王妃になるんですって? この国も終わりね、じゃ!」
文句だけ言って帰ったよ、嫌な感じすぎ!
お姉さんっぽいけどシオンと血が繋がっているのかしら、余裕で不合格!
「わたしはカリンよ、よろしくね! さっきの2人はきにしないでね?」
妹さんよね
目がぱっちりしてて可愛い子ね
軽く合格!
「こちらこそ宜しくねカリン。私は大丈夫だから気にかけないでいいわよ」
ホントはダメージ大きかったけどさ……
この子とは仲良くなれるかな?
「あの連中の言葉など聞き流して置けばいい。所詮は外野だ 」
シオンってば心が強すぎる!
「相変わらず口の悪い事だ······」
「ですがこの子の言う事も尤もです。キアラ、何も気にせずこの城で暮らすのですよ?」
やっぱり王妃様は優しいわね
「王妃の言う通り、シオンもお前の為に大急ぎで別館を用意したぞ」
「父上······」
「まあまあシオン様、別に言っても良いではないですか」
うん、言ってくれた方が嬉しいわ
「シオン、さっそく案内してあげたら?」
「そのつもりです母上、では」
慌てて私を外に連れ出すシオン
長い渡り廊下を無言で渡って行く
照れているのかしら?
屋根だけの廊下から近くには湖、遠くには山が見えている
本当に綺麗な国よね
別館の前にはメイド服のオバさんが立っているけど、もしかして私を睨んでない?
「初めましてキアラ様、今日からお世話をさせて頂くサラです 」
やっぱり気のせいかな?
「ルーク、俺が頼んでおいたメイドとは違うがどういう事だ?」
「アンネ様がキアラ様の為にと言われまして」
「アンネが······」
と言う事でやっぱり怪しいわ
まあ、とりあえず考えるのは後回しにしよっと
「こちらにどうぞ」
サラが大きな扉を開くと
広いわね!
部屋も両側に3つずつあるけど、全部私の為に用意してくれたのかしら
「こちらがキアラ様のお部屋になります」
左奥の部屋の扉を開けて私達を招き入れるサラ
「こちら側は全てお前の住居だ」
え--っ、贅沢すぎないかな
「反対側はリハビリ室、ルークの部屋とサラ······だったか、彼女の部屋だ」
さすがシオン、至れり尽くせりね
「ここからは俺が案内する、お前達は下がっていいぞ」
聞かれたらマズイ事でもあるのかな
2人っきりの方が私もイイけどね
「隣が寝室、その奥が衣装部屋だ」
お洒落なシャンデリアがきらびやかで素敵、暖炉もあるじゃない!
「床はフローリングだ、段差も無い完璧バリアフリーだ」
そ、そこまでやる?
「ベッド柵もつけてある、これなら自分で車椅子の移乗が出来るはずだ」
凄い、シオンは天才に決定!
それにしても、シオンたら私の為に色々工夫してくれたのね
よっぽど私の事が好きなのよ、って思ってもいいかしら? ウフフ!
あれっ、暖炉の横に変な穴があるわ?
「あの穴は何?」
「モックンの隠れ家さ、屋根から出入りも出来る」
そこまで気が回る貴方は何者?
けどさ、これならモックンも喜んでくれるわね
「シオン、モックンを呼んでいい?」
「ああ」
「モックン、カムヒア--!」
モックン専用の煙突から呼びかけたら
「ポワワン!」
はや--い、もう来た!
呼ばれたのが嬉しいのか煙突が嬉しいのか、とにかく部屋の中をグルグル飛び回り始めたわ
急にベットの下で止まったけど
どうしたのかな?
「君は誰でプか?」
「プルンプルン!」
小さくて可愛らしい声がしたわ
小人でも居るのかしら?
「モックン、大丈夫?」
゛チョコチョコ゛
ベットの下からちっちゃい何かが出て来た!
「我はウスタップの騎士でプ!」
なんか偉そうね
「モンスター種別はウスタップ、名前はテトラでプ」
ふ〜〜ん、全然知らないモンスターね
「喋るウスタップなんて珍しいな」
シオンは知っているみたい
どれどれ、私もよく見てみよう
「じ----っ!」
「見つめられると照れるでプ······」
モジモジしているこのモンスター、モルモットよりは大きいかな
全身は茶色なのにお腹は真っ白ね、ゴールデンハムスターの大きいバージョンかな。小さな羽が生えてるのが変わっているけど、愛嬌が有りそうね
「プル、プルン!」
「どうしたのモックン?」
「友達になって遊びたいんじゃないか?」
そうなのかしら
そう言えば、さっきからこのモンスターにスリスリしてるわ
「そうなのモックン?」
「プルンプルン!」
大当たり!
シオンてば雲の読心術でも出来るのかしら?
「テトラだったけ、私達とお友達になってくれる?」
「そう言う貴女は誰でプか? 」
「私はキアラ、この子は雲のモックン、彼はシオンよ」
「シオン王子は知ってるでプ」
そ--なの?
「なぜ俺の事を?」
シオンもキョトンとしているわ
「ここがボロボロだった頃からずっと住んでいたんでプ」
へ〜〜、ここは元々ボロボロだったんだ
シオンたら頑張ったわね
「住み心地が良かったでプから、引き続き住む事にしたんでプ。しょっちゅう本館の方も探検に行っているでプから、王子もよく見かけているんでプ」
私の先輩ってわけね
「モックンよ、友達が出来て良かったな」
「プルンプルン!」
桃色モックンになったわ、照れてるのね
「俺は用事があるのでそろそろ行くぞ」
えっ、もう?
「今日はこの部屋で夕食をする予定だ、また来る」
なんだ、すぐに会えるじゃん
「あと俺の部屋は南棟の見張り台の下だ、旗があるからすぐに分かる。いつでもモックンに乗って来ていいぞ」
それなら一瞬ね、良かった······
「身の周りの用事はルークやサラに言ってくれ。モックン、キアラを頼んだぞ」
行っちゃったよ
シオンとの再開が終わって城のみんなも眠りにつく頃
窓から空へと踊り出すわ
今夜は新しい友人も一緒なの
堀に囲まれたお城も静まり帰り
見張り台の兵士も欠伸を噛み殺す
白の建物、緑の尖った屋根
明かりが灯った部屋はシオンの部屋よ
微笑みを浮かべたら街の上空へ
小さな公園にはブランコや滑り台
水が出ていない噴水も情緒があっていいものね
教会の三角屋根では鳥さん達が羽を休めて眠っている
たくさんの装飾が施された時計台をグルグル回って堪能したら、いよいよ湖に向けて出発よ
楽しすぎて、今日は寝不足になっちゃうかもね




