雲のモックンの活躍
静かに佇む数え切れない程の兵士
「イライザはどうなったのですか?」
風の調べに乗って、悲痛な声が聞こえるわ
どう説明しよう······
「彼女は木になった。美しい木にな」
淡々とシオンが言いはなった
「もの共、かかれ!」
涙を零しながら叫ぶ王妃
そりゃそうかもね······
けど感傷に浸っている場合じゃないのよ
私達めがけて大勢の兵士達が攻めて来るの!
゛ヒュン、ヒュン!゛
雨かしら? って現実逃避しても無理!
弓矢がいっぱい飛んで来たわ!
「モ、 モックン······」
「プルプルン!」
私を一瞬で地上に降ろして、
「パコーン!」
うわっ、卓球ラケットになって打ち返しちゃった
それからぁ--
あれってハエ叩きかしら?
「バチン!」
みんなまとめてはっ倒したけど随分と遠くまで飛んで行くわね、モックンてば雲なのにゴム要素でもあるのかな?
゛ゴオオオ!゛ ゛ビカビカビカ!゛
今度は火の玉と雷です! ちょっとは休ませなさいよね!
「ギュリ--ン!」
「うわあぁぁ--っ!?」
おお、これはまさしく扇風機。巨大すぎるけど·····
それはともかく、魔法ごとみんなしてグルグル回転しながら吹き飛んでくよ
凄すぎるんですけど······
「怯むな、行くぞ!」
「「 オウッ!」」
あっ、王妃の周りにいた兵士達が突進して来たわ
綺麗な甲冑を着てるけど親衛隊とかそういうのかしら?
けど、この状況でよくメゲないわね
こっちも凄すぎるわ······
「キアラ、モックンを下がらせろ」
ん? シオンが何か言ってきたぞ?
「姫、我々の分も残して下さいよ!」
「そうですよ、せっかく張り切って来たのに、チョットは恰好つけさせて下さい!」
そ、そうなの?
シオンの部下もたいがいだわね〜〜
「モックン、あとはシオン達に任せて」
「プルンプルン!」
すぐに戻って私を乗せてくれたわ
うふふ、お疲れ様!
「「ワア----!!」」
こっちもワアッ! 大声にビックリしちゃったよ!
それにしても······
あ〜あ、スンゴイ混戦になっちゃって。みんな、そんなに恰好つけたいのかなぁ?
シオンもど真ん中で戦ってるけど、部下の手前で張り切っているのかしら?
それとも私の手前だからだったりして、うふふ!
「グレース王妃、ここまでだ」
あら、空想してる暇もなく敵をやっつけちゃってるし
しかもシオンが王妃の首元に剣を向けている
シオンったらどうするつもりなんだろう······
「殺すならサッサとしなさい!」
「では、お望み通りに」
ええ--っ!? もう剣を振り上げてる!
「シオン待って!」
あっ、剣を降ろした、なんかニヤついてないかな?
「なぜ止めるんだ、何度もお前を殺そうとした相手だぞ?」
うっ、そりゃそうだけどさ······
「私にもわかんないや、どうしてかな?」
わからないけど、こんなの良くない気がするのよね
「フッ、お前らしいな······」
笑ってる?
「さて、行くぞ」
ありゃ、後ろを向いて歩き出しちゃった
王妃もキョトンとしてるわ
「ま、待ちなさい!」
あれ、まだ用があるのかしら? なんか顔が赤くなってる様な······
「お、お前なんかに借りを作りたくないからね」
それが何よ?
「私からいい事を教えてあげます、これで貸し借り無しですからね!」
このシーンでなんでそんなに偉そうなのよ?
「足を動かなくさせたのは私です」
ええ--っ!?
「ど、どぼじでそんなごどしたの!?」
お、驚き過ぎて舌が回らない!
「障害を持ったらシオンと別れてイライザが王妃に······そんな事はよろしい、たまたま城に立ち寄ったディラハン魔王から障害者魔法を授かったのです」
何じゃそれぇ--っ!!
「私の魔力ではなく魔王の魔力を使った呪い。もしかしたら魔王を倒せば足は元に戻るかも知れません」
マジっすか!?
「ププルン!」
モックンが真っ赤になってる、夕焼け雲みたいで綺麗······ってそんな事言ってる場合じゃないわ
今すぐ魔王を倒しに行きそうなんだけど?
「モ、モックン落ち着いて、ね!?」
もしかしてシオンも······
ぎゃあ! やっぱり遠くのどっかを見つめて考え込んでる!?
「シ、シオン、モックン、私の足は自力で治すから心配しないでいいわよ? 魔王なんて倒さなくてもいいからね!」
こ、これで大丈夫············かな?
何も言ってくれないシオンだけど
私を優しく見つめる瞳は、きっと何かを決心しているのね
ねえ、シオン、モックン
私の足なんてどうでもいいから······
何処にも行かないでね······
「よし、グラント城へ戻るぞ!」
大声で部下達に命令するシオン
過ぎ去った過去と、その場に佇むグレース王妃をこの場に残し、颯爽と歩き出したわ
王妃も早速森に入って行ったの
きっとイライザに会いに行ったのね
よかったわねイライザ、これで寂しくないわよね
·········シオンと2人で馬の上
たずなを引くのはもちろんシオンよ
モックンは横でプカプカ浮いてるわ
兵士達は前と後ろでワイワイしてるわ。すっかりリラックスしているみたい
田園地帯をゆっくり進んだら並木道に入ったの
私達の出発を祝ってくれているかの様な
元気で青々とした若葉を揺らせているわ
私の心も揺れているのよ
新しいお城にはワクワク感と戸惑いがあるわ
正式な挨拶はどうするんだっけ?
うん、まあ女は愛嬌よ、どうにかなるわよね
そう言えば······
冷たい水に足が触れた時、少し動いたって話をシオンにしたら、笑顔で頷いて喜んでくれたわ
そんな、宿屋に泊まっている間の出来事をいっぱい話していたら、もう街に着いたの




