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女王様に花束を

作者: 美緒
掲載日:2016/12/07

冬童話祭2017参加作品です。


時々、わざとひらがなで書いている部分があるので、読みにくい可能性が多々ありますが、ご了承下さい。

ちょっと長いですが、少しでもほっこりして頂ければ幸いです。

 王様のお触れを見て、はーちゃんが言いました。


「どうして冬の女王様は塔から出てこないんだろうね?」

「それが分かっていたら、王様もお触れなんて出さないよ」


 ふーちゃんが呆れたように言い、お触れを見上げます。


「春の女王様は、どうして塔に行かないんだろうね?」

「わかんな~い」


 2人は顔を見合わせて、頷きます。


「「分かんないなら、聞けば良いんだよね!」」


 こうして2人は、居場所の分からない春の女王様ではなく、居場所の分かっている冬の女王様に会うため旅立ちました。


 季節を司る女王様が一時的に住む塔は『季節めぐりの塔』と呼ばれ、国の中心にあります。

 そこへ行くには、山を越えて、川を越えて、野原を越えて行かなければなりません。

 2人は女王様に会いたいからと、小さい足を一生懸命に動かして進みます。

 でも、今の季節は冬。塔に続く道は雪に覆われ、歩くのは大変です。

 がんばって進むけれど、2人の足では、ほんのちょっとしか行けません。


「遠いね」

「大変だね」

「でも、会いたいね」

「うん。会いたいね」


 2人はお互いにはげまし合いながら進みます。

 山を越えて、川を越えて。ようやく、野原へとやってきました。

 遠くに、塔の先端が見えています。


「もう少しだよ」

「うん。がんばろうね」

「会うんだもんね」

「そう。会いたいんだもんね」


 2人でうんと頷き合い、また少しずつ歩き始めます。

 お話して、はげまし合って、一歩一歩確実に進んでいきます。

 でも、そうしているうちに、2人は今1人で塔に居るであろう冬の女王様が心配になってきました。


「女王様、さびしいだろうね」

「女王様、つまらないだろうね」


 2人でいるから、どんなに大変な道も進んでこれました。1人だったら、途中で帰っていたでしょう。

 2人はいつの間にか、どうして塔から出ないのかを不思議に思うより、1人で居る冬の女王様の心の心配をするようになっていました。


「会いたいね」

「会いたいね」

「会おうね」

「うん。会おうね」

「お話もしたいね」

「楽しいお話をしたいね」


 がんばって進んできた道は、あともう少し。先端しか見えなかった塔の全体が見えるようになってきました。

 真っ白い雪で覆われた真っ白い塔。あそこに、冬の女王様がいます。

 2人は喜びました。ようやく冬の女王様に会える。

 嬉しさのまま、小さな手足を一生懸命に動かして走り出しました。

 すると――。

 なぜか塔の周りが猛吹雪になり、2人の小さな体は風に吹かれてポーンと飛んでしまいました。


「「なんで!?」」


 会いたくて、会いたくて、がんばって進んできたのに、吹雪に飛ばされてしまい、塔が小さくなっていきます。


「あ……」

「う……」


 遠くなる塔を見つめながら、2人の目に涙が浮かびます。


「どうしてじゃまするの?」

「会いたいと思っちゃいけないの?」


 2人の目から涙がポロリと零れ落ち、それは冬の寒さでこおってしまいました。

 でもそのこおった涙が、なぜか冬の女王様の涙に見え、2人は必死になって自分たちを飛ばす風の力にあらがいます。


「ダメ!」

「行くの!」

「「絶対に会うの!!」」


 2人の叫びに応えるように、温かな風が2人の体を包み込み、ゆっくりとその場に下ろしてくれました。


「大丈夫ですか?」


 優し気な声に、2人は顔を上げ、声の主を見ます。


「「春の女王様!!」」


 そう。2人を助けてくれたのは、どこに居るか分からなかった春の女王様でした。


「あなたたちは、春と冬に属する精霊ですね?」


 女王様の言葉に2人は頷きます。


「春の花の精霊のはーちゃんです」

「冬の花の精霊のふーちゃんです」


 人間のおとなと同じ大きさの女王様からすると、春と冬の花の精霊である2人はとても小さなもの。自分のてのひらくらいの大きさの2人がペコリと頭を下げるのを見て、春の女王様は首をかしげました。


「花の精霊であるあなたたちが、どうしてこのような場所に居るのですか?」


 2人は元気いっぱい答えます。


「「冬の女王様に会いに来たの!」」


 その途端。春の女王様は悲しそうな顔をして首を振りました。


「無理です」

「どうして?」


 はーちゃんがたずねると、春の女王様はそっとひざをつき、2人を持ち上げました。


「冬の女王は、とても悲しんでいて、誰にも会おうとしません」

「どうして?」


 今度はふーちゃんがたずねると、春の女王様は悲し気に目を伏せました。


「冬の女王は、自分は嫌われていると思っているのです」

「「えー?」」


 嫌われているなんて、絶対にありえない。

 2人は首を振りますが、春の女王様は悲し気な目で塔を見つめます。


「季節の女王が交替で住む塔は、世界中とつながっています。わたしたちは、その塔に住んでいる間、世界の様子を見て、多くの声を聞いて、自分の季節を楽しみます」


 春の女王様は2人に目を向け、悲しそうに微笑みました。


「その様子や言葉の中に、冬を嫌うものがあったようなのです」


 雪や寒さに文句を言い、冬なんて嫌いだと言ったのを、冬の女王様は聞いてしまったのです。

 雪のように真っ白な優しさを持つ冬の女王様は、その言葉に傷ついてしまいました。

 冬の女王様は、みんなのために冬を司っていたのに、その冬を象徴するすべてが嫌われてしまったのです。

 冬の女王様は泣きました。冬がくるのは良いことだと思っていたのに、嫌われていたなんて、と。そして、悲しみのあまり塔の奥深くに閉じこもってしまったのです。


 春の女王様は必死に呼びかけました。冬の女王様は嫌われていないと。

 でも冬の女王様は、その言葉を信じられませんでした。嫌いと言ったのを聞いてしまったのです。だから、嫌われていないなんてうそだと。

 それ以来、塔の周りは冬の女王様を守るように雪が吹き荒れ、春の女王様も近づくのが困難になってしまいました。


 春の女王様のお話を聞いた2人の目に、再び涙が浮かびます。

 そんな悲しいことになっていたなんて知らなかった。


「優しい花の精霊たち。あなたたちが冬の女王に会いに来てくれたことは、必ず冬の女王に伝えましょう。だから今は、花のつぼみが寒さで凍ってしまう前にお帰りなさい」


 春の女王様の言葉に、2人は首を振りました。


「「会いに行く!!」」


 涙が浮かんだ目には決意が浮かんでいます。絶対に、冬の女王様に会うんだという決意が。


「「冬の女王様に、好きだって伝えるの!」」

「誰かが言った『きらい』なんて消えちゃうくらい」

「いっぱいの『すき』を伝えるの」


 花の精霊は体は小さいけれど、好きという気持ちはとても大きいようです。

 春の女王様は少しだけびっくりしましたが、花の精霊たちの言葉が嬉しすぎて、思わず泣いてしまいました。


「春の女王様、泣かないで」

「なにか悲しいの?」

「いいえ。悲しくなんてないですよ。わたしは今、嬉しくて泣いているのです」


 はーちゃんとふーちゃんはそろって首をかしげます。


「嬉しいのに泣くの?」

「ええ。嬉しい時の涙は、とても温かいのです」

「あったかいの?」

「そうです」


 春の女王様の言葉に、2人はにっこり笑います。


「じゃあ冬の女王様をあったかくするの!」

「嬉しいって言ってもらうの!」


 春の女王様は涙をふき、2人の頭をそっとなでました。


「では冬の女王に会えるように、少しだけですが手助けしましょう」


 春の女王様は無理でも、体の小さな花の精霊ならば通れる道があると、春の女王様は2人に教えました。


「わかった!」

「ありがとうです!」


 2人は元気よくお礼を言うと、また小さな手と足を一生懸命動かして塔へ向かって歩きはじめます。


「いってらっしゃい」

「「いってきまーす!」」


 春の女王様に挨拶して、2人は力づよく進みます。


「ねーねーはーちゃん」


 少し進んだとき、ふーちゃんがはーちゃんに話しかけます。


「どうしたの?」

「冬の女王様に会うのに、おみやげないのはさびしくない?」


 ふーちゃんの言葉に、はーちゃんは少し考えたあと、うんとうなずきました。


「さびしいね」

「じゃあ、お花もっていこう!」

「冬のお花ある?」

「ふーちゃんは冬の花の精霊です! まかせて!」


 ふーちゃんはそう言うと、雪の中に小さな手をいれました。


「うんしょ」


 ずぽっと雪の中から手を抜いた時、ふーちゃんの小さな手には不釣り合いな大きな花がにぎられていました。


「はい。スノードロップ」

「わあ、きれいな白だね」


 はーちゃんが花を受け取ると、ふーちゃんはまた手を雪の中にいれました。


「プリムラ」

「えっと、白にむらさきに、わあっ! はなびらのまわりがピンクだ」

「オンシジウム」

「きいろだー」

「ふくじゅそう」

「これもきいろ!」

「お花じゃないけどクリスマスローズ」

「むらさき! みどり! って、お花じゃないの?」

「うん。これもだね。ポインセチア」

「はっぱ! 赤とみどりだぁ!」

「それからぁ……」


 またまた雪の中に手をいれたふーちゃんをはーちゃんはあわてて止めます。


「まってまって、ふーちゃん! これ以上は持てないよ!」

「まだいろんな冬のお花あるのにぃ……」


 ふーちゃんは残念そうに雪から手を抜くと、はーちゃんが雪の上に置いたお花を半分、両手で抱えました。

 スノードロップ、プリムラ、クリスマスローズはふーちゃんが。オンシジウム、ふくじゅそう、ポインセチアははーちゃんがもちます。


 真っ白な雪の上を、白や黄色、赤や緑、紫にピンクが進んでいきます。

 おみやげを持っているから2人の進む速さはさっきより遅いけれど、冬の女王様に会いたい、会うんだという気持ちはずっとずっと大きくなっています。


 がんばって少しずつ進んできたら、ようやく、吹雪の近くまでたどり着きました。

 塔を包む雪と風を見て、はーちゃんは首をかしげます。


「道はどこだっけ?」

「このした~」


 ふーちゃんは楽しそうに笑うと、手に持ったお花に話しかけます。


「お花さん、お花さん。これから雪のしたを進むけれどがんばろうね。冬の女王様に会おうね」


 まかせてと言うように、色とりどりのお花たちが風もないのに揺れます。


「うん! はーちゃん! 春の女王様にもらった『ひみつへいき』出して!」

「うん! まかせて!」


 春の花の精霊であるはーちゃんに、春の女王様は小さな春色のリボンを渡していました。

 そのリボンは春の力を少しだけ込めたもので、冬から春に変わるように、少しずつ雪をとかしてくれるものです。

 はーちゃんはそのリボンをふーちゃんの持つプリムラに結び、ふーちゃんがそっとプリムラを雪に近づけました。

 すると、雪が少しずつとけてかたまり、2人と花が通れるような雪のトンネルが現れました。


「行こう!」

「うん!」


 雪のトンネルの中は温かく、そして、トンネルのうえで吹き荒れる雪や風を通しません。

 これなら、もう飛ばされる心配がないので、冬の女王様に会いに行けます。

 2人はトンネルの中を楽しそうに進み、やがて、塔の入り口が見えてきました。


 塔の入り口は誰かが来るのをこばむようにピッタリと閉じています。

 でも、2人は知っていました。春の女王様が言っていたのです。かぎはかかっていないと。

 だから2人はとびらに手をつけ、うーんとがんばって押しました。

 とびらはゆっくりだけれど、少しだけ開き、2人はお花を持ったまま塔の中にはいりました。


 塔の中は雪のように真っ白できれいなのに、とてもとても寒く、2人は少しだけ震えます。

 この寒さは『冬』のせいではないと、花の精霊である2人は気がつきました。冬の女王様の悲しみが、塔の中を寒くしているのです。


「早く会いに行こう」

「奥に居るんだよね」


 こんなに寒くなるくらい冬の女王様は悲しんでいる。

 少しでも早くその悲しみをなんとかしたくて、2人は奥へ向かって走り出しました。

 2人の動きに合わせお花はヒラヒラと揺れ、寒さの中できれいに咲いています。それに元気をもらい、2人はまっすぐ進みます。


 しばらく進むと、塔の中心あたりに上へとグルグル続く階段が現れました。階段の奥には通路が続いています。

 2人は立ち止り、螺旋階段と通路を交互に見ます。


「うえ?」

「まっすぐ?」


 2人はこまってしまいました。冬の女王様がいる『塔の奥深く』の場所がわかりません。

 どっちだろうと考える2人のまえで、春色のリボンがついたプリムラがくるりとまわり、まるで道をしめすように通路のほうをむきました。


「こっち?」

「こっちだね!」


 2人はうたがうことなくプリムラがむいた通路を進み始めました。


 真っ白な道を進んでいた2人は、進めば進むほど寒くなっていくのに気がつきました。

 冬の女王様がいる。2人はお花のくきをぎゅっと抱きしめぱたぱたと走ります。

 小さな足音をひびかせながら進むと、ようやく、白い大きなとびらが見えてきました。

 2人は力をふりしぼって走り、お花を守りながらとびらに体当たりしました。

 ぎっと少しだけとびらは開き。


「ふーちゃん!」

「うん!」


 はーちゃんに言われたふーちゃんがとびらのすきまにはいり、とびらをがんばって押さえ、そのすきにはーちゃんが部屋の中にとびこみます。

 ふーちゃんははーちゃんがはいったのを見ると、急いでとびらからはなれてホッと息をはきました。


「……誰?」


 寒い寒い部屋の奥から小さな声が聞こえます。

 2人は声の方を見ますが、真っ暗でなにも見えません。

 2人は顔を見合わせてうなずくと、真っ暗な中に進んでいきました。


「……誰かいるの?」


 また声が聞こえました。

 2人はその声にさそわれるように進み、カーテンをしめきった窓のしたに白い人が1人で座っているのを見つけました。

 会いたかった冬の女王様です。

 2人はそれに気がつくと、わき目もふらずに走りだし、冬の女王様に抱きつきました。


「「うわーーーんっ!」」

「――え!?」


 驚いたのは冬の女王様です。

 1人でうつむき、ぼんやりしていたところにやってきた2人の精霊。

 色とりどりのお花をかかえて走ってきた小さな精霊たちは、自分に抱きついたと思ったら泣きだしてしまったのです。

 悲しかったのもわすれ、冬の女王様はオロオロしながら2人の頭をそっとなでました。


「どうしたのですか?」


 優しく問いかけてくる冬の女王様に、ふーちゃんもはーちゃんも涙がとまりません。


「会いたかったの!」

「冬の女王様に会いたかったの!」

「会えてよかったー」


 2人はまた冬の女王様に抱きつきます。

 山を越えて、川を越えて、野原を越えて。やっと塔に近づいたと思ったら吹雪に飛ばされて、春の女王様に会って。春の女王様に協力してもらって、塔のまわりの雪のしたを通って中に入って。寒い寒い道を進んでようやく出会えた冬の女王様。

 ほっとして、抱きついて気がつきました。冬の女王様が冷たいことに。

 冬の女王様は自分を温めることもしないで、こんな寒くて暗い部屋にずっと1人でいたのです。

 そんな冬の女王様の姿が、2人が泣きだした原因でした。


 ふーちゃんはぐしぐしと泣きながらむらさき色のクリスマスローズを冬の女王様にさしだします。

 冬の女王様はさしだされたクリスマスローズを受け取り、首をかしげました。


「冬の女王様の不安がなくなりますように」


 冬の女王様がびっくりして目を見開いていると、こんどははーちゃんがきいろいオンシジウムをさしだしました。


「冬の女王様はみんなに守られているんだよ?」


 お花を受けとってくれた冬の女王様を見ながらはーちゃんは言います。

 ふーちゃんが、春色のリボンがついたむらさき、ピンク、白のプリムラを差しだします。


「ふーちゃんもはーちゃんも、冬の女王様が大好きだよ? だから、会いにきたの」


 はーちゃんは、きいろいふくじゅそうと赤とみどりのはっぱのポインセチアを差しだします。


「冬の女王様が幸せでありますように」


 ふーちゃんが、白いスノードロップでそっと、冬の女王様の手にふれました。


「あのね。冬が好きっていう、ふーちゃんたちの声も聞いてほしいの」


 冬の女王様は泣きました。

 自分に抱きつく小さな精霊たちをそっと抱きしめながら泣きました。

 小さな体はここにくるまで大変だったことをものがたるようにとても冷たく、だからこそよけいに泣けました。


「ごめんなさい、ごめんなさい……」


 繰り返される小さな「ごめんなさい」。

 2人は自分たちを抱きしめる冬の女王様の体を、小さな手をいっぱいに伸ばして抱きしめます。


「冷たい涙も、ごめんなさいもいらないの」

「冬の女王様が笑ってくれるのがいいの」

「ふーちゃんたちはね、冬の女王様に会えて嬉しいの」

「嬉しい涙だから、はーちゃんたちの涙はあったかいの」

「春の女王様がね、嬉しい涙はあったかいって言ってたの」

「だからね、冬の女王様にもあったかくなってほしいの」


 冬の女王様に会えて嬉しいのだと、せいいっぱい伝えてくる精霊たちに冬の女王様はようやく気がつきました。

 冬の女王様のことを好きな人たちにとても心配をかけていたのだと。

 春の女王様が言っていた、冬の女王様は嫌われていないという言葉はうそではなかったのだと。

 冬を、嫌いな人もいるでしょう。でも、冬の女王様を好きな人はいっぱいいるのです。

 嫌いという『いやな言葉』ばかりではなく、好きという『よい言葉』もたくさんあるのです。

 どうして『いやな言葉』にばかり耳をかたむけてしまったのでしょう。世界には『よい言葉』もあふれているというのに。


「――ありがとう」


 冬の女王様は2人を見つめてお礼を言います。

 大切なことを思い出させてくれてありがとう。好きと言ってくれてありがとう。

 その顔には、優しく温かい微笑みが浮かんでいます。

 2人はそんな冬の女王様の微笑みに嬉しくなり、にっこりと笑顔を返します。


 冬の女王様を抱きしめる精霊たちの手に、冬の女王様の最後の涙が1つ落ちました。

 それはもう、冷たくはありませんでした。




 ゆっくりと雪がとけはじめます。

 季節めぐりの塔の前には、王様と、春の女王様、夏の女王様、秋の女王様がいます。

 4人が見守るなか、ピッタリと閉ざされていた扉が静かに開きはじめました。

 冬から春に変わる優しい光が塔の中にさしこみます。

 その光を受けて、冬の女王様が微笑んで立っていました。

 その足元では、小さな春の花の精霊と冬の花の精霊が笑顔でみんなを見ています。


 冬の女王様が一歩踏みだし、塔の外にでます。

 それに合わせて、春の女王様が塔の中に一歩入ります。


「ありがとう。わたしは幸せ者だわ」


 冬の女王様の言葉に、王様と女王様たちは嬉しそうに微笑みます。


「わたしも、冬の女王の微笑みが見れて幸せです」


 春の女王様の言葉に、冬の女王様は少しだけ照れました。

 そんな女王様たちの姿を嬉しそうに見ていた王様は、扉を開けた精霊たちをそっとのぞきこみます。


「ありがとう、小さな精霊たちよ。さあ、褒美を取らせよう。なにがよい?」


 王様の言葉に、2人は元気いっぱい答えます。


「「塔で、いつでも女王様たちに会える『けんり』をくださいっ!」」


 おどろく王様と女王様たちに気づかず2人は続けます。


「あのね、1人はさびしいの」

「あのね、1人はつまらないの」

「さびしいとね、いやなことを考えちゃうの」

「つまらないとね、心が寒くなるの」

「だからね、お花をたくさん持って会ってね」

「いっぱい、いーっぱい楽しいお話をしたいの」

「「女王様たちが大好きだから、いつでも会いたいの!」」


 いっしょうけんめいはなす2人に冬の女王様が笑います。


「あら。塔でしか会ってくれないの?」

「「えっ!?」」


 ぽかんとする2人を春の女王様が優しく見つめます。


「優しくかわいい精霊たち。わたしたちも、あなたたちにいつでも会いたいわ」

「だから、塔の『外』にも会いにきてちょうだい?」


 女王様たちの言葉に、2人はびっくりしながらも嬉しそうに笑います。

 そうして、王様を見上げると首をこてんとかしげました。


「許そう。いつでも女王たちと会いなさい」


 王様の許可に女王様たちと精霊たちが喜びます。

 そんな笑顔があふれるみんなを、王様は優しく見守っていました。




 季節は、ゆっくりとめぐります。

 春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へ。

 季節めぐりの塔からは、時々、楽しそうな笑い声が聞こえるそうです。

 その少し前には、色々なお花が塔に向かうのを、人や動物、精霊たちが見ています。

 それは、いつのころからか大きな花束へと姿を変え。


 季節めぐりの塔からは、誰もはいれない扉が消え。

 雪はとけ、必ず春がめぐってきます。

花については、冬に咲くものを選んでいます。

だいたい、2~3月くらいには咲いているものを選んでいるはずですが、ずれていたらすみません。

また、それぞれ花言葉も少し参考にしています。


クリスマスローズ = 私の不安を救いたまえ

オンシジウム = 可憐、気立てのよさ

プリムラ = 永続する愛情、富貴、神秘的な心、運命を開く

福寿草 = 永遠の幸せ、祝福

ポインセチア = 祝福、聖なる願い

スノードロップ = 希望、慰め、逆境の中の希望


花の大きさとか違うのに持てるの!? 的なツッコミはなしの方向でお願いしますm(_ _)m

だってこれ、なんでもありななんちゃって童話ですから……。

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