心と身体 Another End もしも… (R15版
※※性的描写があります※※
「旦那様。お客様がいらしております」
「客?」
誕生日パーティーの前日、慌ただしく最後の準備が進む中、一人の来客が執事より告げられた。
急ぎ客室に向かうと、その来客であるフリードリヒが待っていた。
「フリードリヒ、どうしたんだいきなり。明日では間に合わないような用なのか?」
親友であるフリードリヒは当然、明日の招待客の一人だ。話す時間くらいは充分に有る。
「まぁな。お前の奥さんにも関係する内容だ、呼んで貰えるか?」
「エリーゼ? 今は明日の挨拶の最終確認をしている筈だが……」
そう言いながら、呼び紐を引くとすぐにノックが返ってきた。
『コン コン コン』
「入れ」
「失礼致します、旦那様。お呼びでしょうか」
「ああ、エリーゼを呼んでこられるか?」
「畏まりました。すぐにお伺いして参ります」
「いや、待て。 すぐにこちらに来させるようにしてくれ」
「畏まりました」
「旦那様から至急のお呼びです。客室へお越し下さい」
「旦那様から?」
「はい」
執事から旦那様からの呼び出しが告げられた。
なんだろう? そう思いながら客室に向かいドアを叩く。
入室を促され、ドアを開けるとそこには……
「エリーゼ。私から説明しに来たぞ」
「ハイデッガー……様……」
「どうした? 他人行儀だな、エリーゼ。いつものように呼んではくれないのか?」
「………………」
この男は苦々しい顔をした私を見て満足そうに鼻で笑った。
「ふっ」
そのやり取りにリーンハルト様が訝しげな顔をして問いかけてきた。
「エリーゼ。フリードリヒの用事を知っているのか?」
「…………はい」
この男の用事とは、間違いなく……
「それは私から説明しよう、リーンハルト」
「フリードリヒ?」
「済まないな、リーンハルト。お前のエリーゼはもう俺が頂いた」
「「なに?」「違っ!」」
旦那様と私の声が被る。
「違わないだろう、エリーゼ。あんなに何度も何度も俺のものを銜え込んで離さなかったじゃないか」
「……そ、それは…………でも!」
「エリーゼ」
反論しようとした私をリーンハルト様が止めた。
「はい……」
「今の話は本当か?」
「はい…………ですが……」
「本当の事だからな。私の腕の中でエリーゼ自らが私を求め、精をその身に受け続けていたのは間違いない事だ」
それはリーンハルト様の温もりを貴方の中に求めた私の身体が止まらずに……
けれども不貞を働いたのは事実で、それが言い訳にすらならないのは解っている事……
「もうお前のものだったエリーゼは過去のものだ。エリーゼは私を求めているのだからな」
「違う!!! わたくしは…… わたくしは…………」
私の心はその時もずっとリーンハルト様に残ったままだった。
けれども、いくら言葉を重ねようとそれを証明することは出来ない。
心の中を見せることなど出来はしないのだから……
だからこそ、必要なのは最初から信頼を積み重ねて裏切らないこと。
そして、その積み上げてきた信頼を自ら崩してしまった私は……
そうだ…… それに、これは元々私が望んでいた事だった。
彼に蔑まれ、捨てられて、怨まれること……それを望んでいたのは私。
それさえ叶うのであれば……
この男に我が身を奪われてしまう事になってしまったのは悔しいけれど。
これもまた、私が負うべき罰なのでしょう…… 後はもう、今後、如何にリーンハルト様のご迷惑にならないようにできるかだけを考えるべき……
何も言えなくなって、自分が情けなくて……俯いたまま涙が溢れる……
「ごめんなさい……あなた……」
「ふん」
ハイデッガー様の勝ち誇ったかのような鼻息が聞こえた。
もう…… これで終わり………………
その時……
「エリーゼ。俺のことが嫌いになったか?」
私は、その言葉にその一瞬で反応して顔を上げた。
「そんなわけ!!」
そして私を見るリーンハルト様と目が合った……
そこにあるのはいつもと変わらないリーンハルト様の優しい瞳。
ああ…… リーンハルト様っ…………
「と言うわけだ、フリードリヒ。エリーゼは渡さない」
「なっ!?」
「何を驚くことがあるフリードリヒ。エリーゼの心が俺にある以上、エリーゼは俺の妻だ。当たり前だろう」
「エリーゼの身体は俺のもので汚れきっている。お前はそれでも――――」
「それがどうした」
「っ!」
そしてリーンハルト様がちらりと私を見た。
「ここには綺麗好きで美しい俺の妻しか居ないが? お前のものなどとっくに洗い流しているさ。なんなら俺が隅々まで洗ってやろう」
そう言って、にやりと笑う。
「エリーゼは何も変わりはしない、俺の愛しい妻だ」
「………………くっ」
堂々と自信満々に告げるリーンハルト様を相手に、顔を真っ赤にしたハイデッガー様は何も言えず、ただ黙って睨んでいるだけだった。
そして、リーンハルト様は呼び紐を引くと、入室してきた執事にいつものように指示された。
「フリードリヒがお帰りだ。丁重にお見送りしろ」
執事に連れられハイデッガー様は項垂れたまま退室して行きました。
そして二人きりになるとリーンハルト様は私を抱きしめキスをされ、頭を下げられた。
「すまなかったな、エリーゼ。お前に辛い思いをさせた」
「いえ、わたくしが…… わたくしが愚かだっただけで……」
「それはもういい。お前は何も変わってはいない、俺の愛しの妻だ。いいな?」
「はい……」
私は両の目から止めどなく溢れる涙を抑えることなど出来るはずもなく……
そして、ずっとリーンハルト様に抱きしめられていたのだった。
その夜、私たちは二人で浴室にいた。
「あの…… あなた?」
「言っただろう? 俺が隅々まで洗ってやると」
そう言いながら、にやにやと笑っている。
あぅ……
「あの…… 恥ずかしいのです……けど…………」
「遠慮するな」
「え、遠慮など」
「さあ、いくぞ!」
「え―――――っ?」
本当にいっぱい隅から隅まで余すところなく可愛がって頂きました。
彼は以前と変わる事無く優しくて……
それがすごく気持ち良くて、愛されてるって思えて……だからこそ申し訳無くて、更に後悔して、一杯泣いて……
ご免なさい…… 今日だけは泣かせてください…… 明日からはあなたの愛に応えて笑ってみせます。
私は罪を犯した私を決して許すことはないでしょう。
それでも、あなたが信じてくれる私を信じて、あなたが愛してくれる私を愛して、ずっとあなたの妻として、あなたの隣で生きていきます。
だから、どうかおねがいです。
私より少しだけでもいいですから、長く生きて下さい。
もう、私はあなた無しでは生きていけないから……
心と身体のもう一つのあったかもしれない結末です。
こちらのルートでは女神な娘は産まれません。